Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2019/12/18)
デッキ選択に迷いなし
みなさんこんにちは。私は以前からずっと《集合した中隊》のファンですから、パイオニアで真っ先に構築したデッキがバントカンパニーであるのは自然なことでした。《呪文捕らえ》の登場から間もなくして開催されたグランプリ・広州2016(モダン) では、オリジナルの構成であるバントカンパニーでトップ8に入賞し、それ以来チャンスがあれば必ずバントカンパニーを使うようにしているのです。
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モダンのバントカンパニーを参考にしながらデッキの核となる部分を構築してみたところ、《復活の声》や《反射魔道士》といった一部のクリーチャーはモダンのときほど強力ではないことがわかりました(詳しくは後述します)。実践とともに構成に調整を施してみると、Magic Onlineで勝ち星を重ねられるようになり、5-0のトロフィーも8つ獲得。地元の参加者1000人ほどの大会を優勝することもできました。
Just submitted my article yesterday and Oko got ban😭. Never really expect it to be ban this week. This is the updated list I would start testing pic.twitter.com/9EnwC0w65W
— Kelvin Chew (@KelvinCh3w) December 17, 2019
昨日寄稿したばかりなのに《王冠泥棒、オーコ》が禁止に。まさか今週に禁止されるとは思いませんでした。禁止後のリストはこのようなものになるでしょう。
残念なことに《王冠泥棒、オーコ》は先日の告知で禁止されてしまった ため、彼に代わる人材を探さなければなりません。禁止を機に人気に火が付きそうなアーキタイプは、アグロやアゾリウスコントロールです。そういった経緯を踏まえて新しく構築したリストがこちらになります。
《時を解す者、テフェリー》は《王冠泥棒、オーコ》の穴を完全に埋められるわけではありませんが、《呪文捕らえ》を[-3]能力でバウンスして相手の呪文を永久的に追放したままにできるコンボがあります。そのほかにも、必要に応じて《拘留代理人》や《秋の騎士》を[-3]能力で戻して再利用することも可能です。いったん着地してしまえば、すべての打ち消し呪文を無力化するためアゾリウスコントロールに苦戦を強いることができますし、副次的に《吹き荒れる潜在能力》《荒野の再生》《霊気池の驚異》といったコンボデッキに歯止めをかけることもできます。
個別カード解説
バントカラーで使用できるあらゆるクリーチャーの可能性をこれまで探ってきました。カード選択の裏にある理論をご説明しましょう。
1マナ域
《エルフの神秘家》《ラノワールのエルフ》《金のガチョウ》
はじめのころは《金のガチョウ》4枚、《ラノワールのエルフ》4枚という構成でした。しかし使っていくうちに、《金のガチョウ》は1マナのマナクリーチャーのなかでも最弱の1枚であることが判明しました。バントカンパニーは非常にマナに飢えたデッキであり、1ターン目に《金のガチョウ》を出しても、2ターン目に3マナ域を展開、3ターン目に《集合した中隊》を唱えるという動きができません。それでも1枚採用しているのは、中盤/終盤に《集合した中隊》で展開するマナクリーチャーとして優れているからです。食物トークンを毎ターン生成していれば、相手はダメージレースをするのが非常に困難になるでしょう。
1/1というパワータフネスである《エルフの神秘家》と《ラノワールのエルフ》は、私がパイオニアでベストクリーチャーの1つであると信じる《恋煩いの野獣》との相性がよいという魅力もあります(《恋煩いの野獣》の強さについては後ほど)。マナクリーチャーをサイドアウトするときに注意していただきたいのですが、《エルフの神秘家》4枚を残す構成ではなく《エルフの神秘家》2枚、《ラノワールのエルフ》2枚という散らした構成にしましょう。《軍団の最期》や《拘留代理人》に一掃されるリスクを軽減できます。
2マナ域
パイオニアのバントカラーには優秀な2マナ域が不足しています。以下に掲げたクリーチャーたちは、メタゲームによっては使用に値するでしょう。
評価が高いもの:《無私の霊魂》《成長室の守護者》
単体除去や《神々の憤怒》《至高の評決》といった全体除去を大量に使う相手に対して《無私の霊魂》は真価を発揮します。クリーチャー全体に破壊不能を与える能力は、相手にとって戦闘を難しくする側面もあります。《王冠泥棒、オーコ》と《運命のきずな》が禁止になり、ベストデッキになるかもしれないアゾリウスコントロールに対して非常に強力です。さらには、《呪文捕らえ》や《拘留代理人》を除去から守ってくれるという強みもあります。
《密輸人の回転翼機》が禁止されるまでは《成長室の守護者》を採用していました。《密輸人の回転翼機》や《氷の中の存在》に対して攻撃をしかけられますし、何よりも《石とぐろの海蛇》と《鉄葉のチャンピオン》をブロックし、中盤でカードアドバンテージ源となってくれます。
評価が低いもの:《羊毛鬣のライオン》《復活の声》《魅力的な王子》
1~2枚入れているリストを見かけますが、スタッツは悪くない程度であり、突出したカードではありません。ただ、「怪物化」したときの《アーク弓のレインジャー、ビビアン》との相性は目を見張るものがあります。
赤単が環境に溢れていない今のメタゲームでは特に強くない2マナ域です。《成長室の守護者》の対極にあるカードであり、環境に適合した能力がない単なる2/2では使用に値しません。
占術2と3点のライフ回復はパイオニアで求められる能力ではありません。《反射魔道士》がメタゲーム上の立ち位置をよくすれば、《ちらつき鬼火》効果でコンボを狙うこともあるでしょう。
3マナ域
《呪文捕らえ》
必須のカードであり、バントカンパニーを使うひとつの理由となっています。このデッキが必要とする妨害手段でありながら、《集合した中隊》や《時を解す者、テフェリー》との相性が抜群です。パイオニアは優れた除去が少なく、最善の除去が《致命的な一押し》であることから、《呪文捕らえ》を難なく対処できるデッキはそう多くありません。
《恋煩いの野獣》
《エルフの神秘家》や《ラノワールのエルフ》から2ターン目に展開する呪文として、あるいは《集合した中隊》から出すクリーチャーとして極めて優秀で、相手に多大なプレッシャーをかけることができます。《恋煩いの野獣》がいるからこそ、このデッキは攻撃的に動けるのです。ダブルマリガンでも1ターン目にマナクリーチャー、2ターン目と3ターン目に《恋煩いの野獣》を展開して勝ったことは幾度もありました。このクリーチャーがパイオニアで屈指のクリーチャーであると考えているのは、攻撃でも守備でもよい仕事をしてくれるからなのです。
《不屈の追跡者》
フェッチランドがなくても《不屈の追跡者》の偉大さは変わりません。カードアドバンテージ源として黒単には《ロークスワイン城》が、シミック信心には《ハイドロイド混成体》が、赤単には《実験の狂乱》がありますが、バントカンパニーにはカードアドバンテージを稼ぎながら盤面を打開してくれる《不屈の追跡者》がいます。
《拘留代理人》
《反射魔道士》と違い、《拘留代理人》は欠かせない除去枠です。プレインズウォーカーを筆頭として、土地以外の厄介なパーマネントを対処してくれます。しかも、環境の除去の質が低いため非常に除去されづらいです。《反射魔道士》が強みを発揮するのは《闇の腹心》《死の影》《グルマグのアンコウ》といったクリーチャーがいる環境であって、《恋煩いの野獣》《意地悪な狼》をバウンスしてしまったり、コントロール相手に2/3のクリーチャーになってしまうのは歓迎できません。
《クルフィックスの狩猟者》
フェッチランドがなければ《クルフィックスの狩猟者》を使う理由は薄れてしまいます。カードアドバンテージを稼ぎづらいだけでなく、環境に存在する《恋煩いの野獣》《鉄葉のチャンピオン》《栄光をもたらすもの》などのクリーチャーに対して心許ないサイズです。
サイドボードガイド
シミック信心
《王冠泥棒、オーコ》を禁止されてもこのデッキが生き残るかは不明ですが、このマッチアップで重要なのは相手のプレインズウォーカーに睨みを利かせ続けること、そしてマナクリーチャーで相手の一歩先を行くことです。相手の除去手段は《意地悪な狼》しかなく、《無私の霊魂》がクリーチャーを守ってくれるので《拘留代理人》が非常に頼りになります。
対シミック信心
シミックストンピィ
シミック信心と比べれば圧倒的に戦いやすいです。シミックストンピィは《世界を揺るがす者、ニッサ》と《ハイドロイド混成体》がおらず、序盤をしのぐことができればアドバンテージを多く稼げるのはこちらです。生け贄に捧げれば破壊不能を付与できる《無私の霊魂》が戦場にいれば、相手は攻撃をしかけられないでしょう。相手のデッキには《頑固な否認》があるため、《恋煩いの野獣》を「出来事」モードで唱える際は注意が必要です。
サイドボーディングでは《無私の霊魂》などのブロッカーに向かないクリーチャーの代わりに軽量の除去を投入します。相手のクリーチャーと1:1交換を繰り返し、終盤に《不屈の追跡者》と《集合した中隊》で優位を築きます。
対シミックストンピィ
アゾリウスコントロール
《至高の評決》への最善の解答は《無私の霊魂》と《呪文捕らえ》ですが、《集合した中隊》ですぐに建て直すこともできます。相手のほとんどの除去は《アゾリウスの魔除け》や《神聖な協力》のように攻撃に反応するものなので、《至高の評決》の解答がほかにない場合は《無私の霊魂》を攻撃させないようにしましょう。その点、《時を解す者、テフェリー》はそういった除去や打ち消し呪文を完封する役割を果たしてくれます。唯一の負け筋は《ドミナリアの英雄、テフェリー》を対処できずにアドバンテージ差をつけられることです。
対アゾリウスコントロール
赤単
赤単は《恋煩いの野獣》に対して損なく攻撃することは難しいですし、《秋の騎士》《漁る軟泥》などが安全水域までライフを回復してくれます。できることなら《拘留代理人》と《秋の騎士》は《実験の狂乱》のために温存しましょう。カードパワーで劣る赤単は《実験の狂乱》なくして勝てないはずです。
サイドボーディングでは、序盤の猛攻をしのぐ追加の除去として《不可解な終焉》や《霊気の疾風》などを投入し、《ゴブリンの鎖回し》に弱い《無私の霊魂》をサイドアウトします。
対赤単
黒単吸血鬼
何も対処する術がないと《傲慢な血王、ソリン》は最大の脅威になります。いち早く《薄暮の勇者》を戦場に出したり、《拘留代理人》や《呪文捕らえ》などを繰り返し除去するなど、多大なアドバンテージをもたらすのです。《才気ある霊基体》はあらゆる地上のクリーチャーと相撃ちしてくるので、《不可解な終焉》をサイドインして対抗手段を用意しましょう。
対黒単吸血鬼
《吹き荒れる潜在能力》
禁止となった《王冠泥棒、オーコ》に代わって入った《時を解す者、テフェリー》が戦場にいる限り、相手は《吹き荒れる潜在能力》で追放した呪文を唱えられないので、コンボによる勝ち筋を潰すことができます。サイドボーディングは難しく、相手が投入してくるものに左右されます。《ゴブリンの鎖回し》や《恋煩いの野獣》を使ったアグロプランになりそうなら《不可解な終焉》を入れますが、不透明な状況下では以下のような入れ替えにするでしょう。
対《吹き荒れる潜在能力》
イゼットフェニックス
相性はよいと考えています。主な負け筋は、変身するとテンポで差をつけてくる《氷の中の存在》を対処できない場合です。この枠に《若き紅蓮術士》を採用したリストが出てきており、バントカンパニーにとっては《氷の中の存在》よりも厄介なクリーチャーですが、状況に応じて《拘留代理人》でエレメンタルトークンを一掃できます。《恋煩いの野獣》はここでも素早いダメージ源となります。
対イゼットフェニックス
まとめ
これにてバントカンパニーの解説は終了です!このデッキへの理解を深めていただけたでしょうか。私としては大好きなカードを再び使う機会に恵まれて本当に嬉しく思っています。《王冠泥棒、オーコ》は禁止になってしまいましたが、バントカンパニーは依然としてパイオニア界でも非常に強いと思います。ひとつひとつの判断が結果に影響するだけに、使い方をマスターしたときには一層その強さを実感していただけることでしょう。
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ケルヴィン・チュウ (Twitter)