Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2020/01/24)
パイオニア環境の今を知ろう
前回の記事からパイオニア環境は激変しました。禁止リストに大幅なアップデートが加えられ、ようやく環境が少し落ち着いたところで、2月にプレイヤーズツアーがパイオニアで開催されます。
- 2019/11/05
- パイオニアで頭角を現したデッキたち
- Lee Shi Tian
アグロ
環境で不動の存在なのが2つの単色アグロデッキ、黒単と赤単です。パイオニアのマナベースは見た目以上に弱く、デッキを2色や3色にするのは大きな犠牲が伴います。それだけなく《変わり谷》や「城」、「砂漠」といったカードが存在するため、単色デッキはマナフラッドを軽減し、長期戦を戦う手段を備えているのです。そのため、2色のアグロデッキを使う理由は今のところ見当たりません。
黒単アグロデッキリストを検索する / 赤単アグロデッキリストを検索する
ミッドレンジ
環境を代表するミッドレンジと言えば、5色ニヴ=ミゼットでしょう。除去、ライフドレイン、《ニヴ=ミゼット再誕》で固められたデッキです。狙いはシンプルで、何度か除去を使って《包囲サイ》を出し、《ニヴ=ミゼット再誕》でリソースを回復する。この動きを《白日の下に》を駆使しながら連鎖させていくのです。攻撃を1回から2回通せば、《木端/微塵》や《ケイヤの誓い》などの直接火力でとどめをさせます。
それにしても面白いデッキだと思います。2色デッキがかろうじて存在している環境で5色デッキが頭角を現すなどと誰が予想したでしょう?しかし、このデッキのゲームプランは現在のメタゲームでは非常に有効で、昨今にますます人気を博してきています。
5色ニヴ=ミゼットデッキリストを検索する
コントロール
環境の遅いデッキに目を向けてみると、アゾリウスコントロールがあります。パイオニアでコントロールを使うなら筆頭に挙げられるデッキです。環境で最強のプレインズウォーカーを抱えているのが強さの大きな要因となっています(どちらもテフェリーという名前なのですが)。同様にパイオニアで最強の4マナの全体除去である《至高の評決》があるのも強さの理由です。
アゾリウスコントロールを検索する
墓地利用
アグロ、ミッドレンジ、コントロールという一般的なメタゲームにとどまることなく、別軸の人気デッキもいくつか存在します。墓地戦略で言えば、ゴルガリ《魂剥ぎ》が挙げられるでしょう。《原初の夜明け、ゼタルパ》やキーワード能力が複数付いたクリーチャーを利用して、完全無欠な《魂剥ぎ》を展開することを狙いとします。
ゴルガリ《魂剥ぎ》デッキリストを検索する
アーティファクト
アーティファクトをお探しならイゼットエンソウルがあります。《アーティファクトの魂込め》《技量ある活性師》《爆片破》などで5点クロックを刻んで勝利を目指します。序盤から高速でダメージを与えていき、4ターン目を迎える前に決着をつけようと動いていくのです。
イゼットエンソウルを検索する
ランプ
誰よりもフィニッシャーが強いデッキといえば緑単ランプです。『戦乱のゼンディカー』がカードプールにある限り、巨大なエルドラージを使ったデッキの居場所がなくなることはないでしょう。このデッキを支えるのは《見捨てられた神々の神殿》と《ギャレンブリグ城》で、”ウルザランド”として機能するこれらの土地は《精霊龍、ウギン》と《絶え間ない飢餓、ウラモグ》をいち早く唱えられるようにしてくれます。
ランプデッキリストを検索する
コンボ
そして最後にご紹介するのは、コンボを愛する人に贈るロータスストームです。どういったデッキかと言いますと、戦場に出した《睡蓮の原野》を《演劇の舞台》でコピーし、土地をアンタップできる《砂時計の侍臣》《見えざる糸》《熟読》を使って大量のマナを生み出します。そして《願いのフェイ》で《全知》《無限への突入》《神秘を操る者、ジェイス》をサイドボードから手札に加えて勝利するのです。
ロータスコンボデッキリストを検索する
現在のパイオニアには幅広い種類のデッキが存在しており、各々のプレイスタイルに適ったものが見つけられるようになっています。さて、環境を手短に概観したところで、『テーロス還魂記』からパイオニアに影響を与える可能性があるカードたちを見ていくことにしましょう。
『テーロス還魂記』からの新入りたち
《太陽冠のヘリオッド》
《太陽冠のヘリオッド》と《歩行バリスタ》は2枚コンボです。単体でも強いカードたちですから、白単は環境で名乗りを上げ、少なくともTier1に近しい存在になるのではないかと思っています。
現在のカードプールから《太陽冠のヘリオッド》の使い方を考えてみると、アグロデッキに組み込んで+1/+1カウンターを置く能力を悪用するアプローチ、あるいはアドバンテージに重きを置いたデッキでコンボが成立するまで生き残るアプローチの2つが考えられます。私としては前者のアプローチの方が今のメタゲームではやや有利だと確信しています。現環境はアグレッシブな戦略が多いですからね。コンボ偏重になってしまうのは得策ではないかもしれません。
《ティマレット、死者を呼び出す》
《ティマレット、死者を呼び出す》は自分のライブラリーを削る手段として有用です。従来、ライブラリーを削る呪文はテンポロスという問題点を抱えていましたが、このカードはそれを解消しています。墓地肥やし呪文はほかに《忌まわしい回収》や《群れの結集》がありますが、これらは唱えても盤面の構築に貢献しません。
対する《ティマレット、死者を呼び出す》は次のターンを迎えればライブラリーを合計6枚削ることになりますが、1枚の呪文で削る枚数としては多いですし、しかも見返りとして2体のゾンビトークンが付いてくるのです。《魂剥ぎ》デッキでは、ほかのクリーチャーとキーワード能力が重複しているクリーチャーを墓地から追放すればゾンビトークン生成のコストには困らないでしょう。この英雄譚があれば《魂剥ぎ》デッキが盤面で大きく後れをとることを防げるのではないかと思います。
《悲哀の徘徊者》
《悲哀の徘徊者》はサクリ台でありながら、トークンの生成、ライブラリーの操作、《集合した中隊》で戦場に出せるという特性を持っています。かつてのスタンダードで猛威を振るった《先祖の結集》を覚えている方であれば、《悲哀の徘徊者》がいかにピッタリなカードかお分かりになることでしょう。
このカードが収録されたことでパイオニアでも《先祖の結集》のようなデッキが出てくる可能性が生まれたのは良いことですね。それから《戦列への復帰》も使えることをお忘れなく。
《死の国からの脱出》
《死の国からの脱出》は《慢性的な水害》と《見えざる糸》と合わさると、自分のライブラリーをすべて墓地に落せるコンボが成立します。自分のライブラリーをなくし、手っ取り早く《タッサの神託者》で勝利するのです。先日のパイオニアチャレンジのトップ8には、《死の国からの脱出》と《睡蓮の原野》を組み合わせたコンボデッキも登場しています。
ロータスストームに取って代わって《死の国からの脱出》コンボがパイオニア最強のコンボデッキになる可能性はあるでしょう。しかし、どんな構成が最適なのかは様子見する必要がありそうです。
《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
《自然の怒りのタイタン、ウーロ》がフィットする戦略は多岐に渡ります。
まずはランプ。《茨の騎兵》は《自然の怒りのタイタン、ウーロ》や《世界を壊すもの》を掘り当て、ランプの息切れを防止してくれます。真っ先に採用すべき5マナ域でしょう。
続いて墓地利用デッキ。ドレッジレスドレッジは一定数存在したものの、環境全体で見れば突出した功績を出したデッキではありませんでした。しかしこうして墓地から蘇る強力なカードを得たことでデッキパワーが強化されました。
さらに、多色カードであるため《ニヴ=ミゼット再誕》で手札に加えることができます。言うまでもないですが、ライフ回復とドローを達成しながら、4ターン目に《ニヴ=ミゼット再誕》(あるいはそれをサーチする《白日の下に》)を唱えられるようにもしてくれます。まさに完璧とはこのことでしょう。
《自然の怒りのタイタン、ウーロ》が「脱出」する光景を幾度と目にすることになるでしょうね。
《魂標ランタン》
《魂標ランタン》はパイオニアで屈指の墓地対策です。《トーモッドの墓所》や《墓掘りの檻》は重ね引いたときに弱いという問題点があります。その点、《魂標ランタン》は勝ちに向かうときに追加のリソースが必要となればドローに変換できるのです。《大祖始の遺産》にはおよびませんが、モダンレベルの対策カードですからあまり贅沢は言えないでしょう。
というわけで、『テーロス還魂記』でパイオニアに影響を与える可能性があるカードたちをご紹介してきました。ほかにも「信心」デッキをサポートする《海に愛されしカラフィ》や《太陽に祝福されしダクソス》といったものがあります。とはいえ、これらは使い方が明白なものですからここでは深入りしません。
まとめ
パイオニアによるプレイヤーズツアー開幕まで残りわずかです。参加者がどんなデッキを持ち込み、どんな嗜好を持っているのかを今から楽しみにしています。みなさんが楽しめるデッキを選択できることを期待して。
ここまで読んでいただきありがとうございました。