プレイヤーズツアーのためのメタゲーム予測

Fabrizio Anteri

Translated by Nobukazu Kato

原文はこちら
(掲載日 2020/1/27)

とどまることのないメタゲームの変化

みなさんこんにちは。

プレイヤーズツアーが目前に迫っていますが、パイオニアラウンドはどんな展開になるのでしょうか?先月に発表された禁止告知、さらには新セット『テーロス還魂記』の参入により、パイオニアのメタゲームは目まぐるしく変化し続けているのです!

記事を執筆しているのはプレイヤーズツアー・ブリュッセル/名古屋の前週の日曜日ですが、今から3~4日前に執筆していたら私は違うデッキを取り上げていたでしょうし、逆に3~4日後なら環境について違った考えを持っていたかもしれないと思うほどです。

1番の仮想敵

ここ数週間で幅を利かせていたのは5色《ニヴ=ミゼット再誕》でした。ミッドレンジが多いメタゲームが確立されていたため、巨大なドラゴンを唱えて大量のリソースを確保する動きがほかのデッキに対して明確に差をつけていたのです。

ニヴ=ミゼット再誕白日の下に

このデッキに勝てるアーキタイプを模索し始めたのはごく最近のことですから、プレイヤーズツアーまでに答えを見つけられるプレイヤーは限られてくるだろうと思います。ドラゴンを使ったこのデッキが本番で最大勢力になるのではないでしょうか。

挑戦者

5色《ニヴ=ミゼット再誕》を食い物にできるデッキは何なのか?みなさんはそう思われたかもしれません。5色《ニヴ=ミゼット再誕》に勝つための条件は、高速のクロックに妨害を絡め、相手が手札の呪文を使いきる前に倒すことです。

クロックと妨害を兼ね備えたデッキ

イゼットエンソウル

アーティファクトの魂込め技量ある活性師爆片破

第一候補は高速のクロック、テンポの良さ、極めて高いデッキパワーの三拍子が揃ったイゼットエンソウルです。できるだけ早くかつ多くの5点クロックを用意できる手札を求めて、積極的にマリガンをしていきます。相手のデッキに4~5マナの呪文が多いほど相性が良くなります。

黒単アグロ

血に染まりし勇者思考囲いロークスワイン城

続いては安定性と持久性に優れた黒単アグロです。環境のベストカードである《思考囲い》を最も上手く使えるのはこのデッキではないでしょうか。攻撃的で、対処の困難なクリーチャーたちによる高速クロックがありますからね。しかも効率的な除去と有用な能力を持った土地があるのですから、勝利に必要な要素が完璧に揃っていると言えるでしょう。

アゾリウススピリット

霊廟の放浪者鎖鳴らし呪文捕らえ

このカテゴリで最後にご覧いただくのは、アゾリウススピリットです。飛行、瞬速、テクニカルなクリーチャーが揃っています。このデッキに慣れ親しんでいない場合、あるいは相手に回したことがない場合、アゾリウススピリットが有するシナジーやプレイパターンのいくつかを知らないままにしてしまう確率は高くなるはずです。

クロックとなるクリーチャーに”加えて”妨害呪文を採用していないのは、ビートダウンするクリーチャーが相手のゲームプランの妨害も担ってくれるからです。相手に介入する呪文、特にソーサリータイミングのものでアゾリウススピリットが欲するものはほとんどないでしょう。

コンボデッキ

続いてご紹介するのは、『テーロス還魂記』の新カードを軸にしたコンボデッキたちです。

ロータスブリーチ

ロータスストームは《死の国からの脱出》で安定性が大幅に増した期待が高まるデッキです。3ターンキルが可能ですが、適切な妨害をされなければほぼ確実に4~5ターンキルができますし、妨害されても同等の速さで勝つこともあります

このデッキの最大の弱点は、準備を整えてきた相手とのサイドボード後の戦いです。墓地対策が最も一般的な対抗策ですが、手札破壊、打ち消し、エンチャント破壊、《減衰球》といった手段も頻繁に見かけるようになっています。

タッサの神託者願いのフェイ

デッキの構成はいくつかのタイプに分かれています。勝利手段には《タッサの神託者》が採用されることがほとんどですが、従来通り《願いのフェイ》をその枠に搭載しているものもあります。また、《死の国からの脱出》をまったく採用せず、デッキの速度を下げる代わりに墓地やエンチャント対策による被害を抑えようとするものもあります。

睡蓮の原野慢性的な水害見えざる糸死の国からの脱出

あるいは緑を含めずに《睡蓮の原野》プランをおまけとして使ったものや、まったく《睡蓮の原野》を採用しないものも存在します。サイドボードから有効なプランBを用意できると思うのですが、現状はまだ見つかっておらず、ほかに見つけたプレイヤーがいるのかもわからない状況です。

《タッサの神託者》コンボ

タッサの神託者真実を覆すもの神秘を操る者、ジェイス

こちらも《タッサの神託者》を勝利手段に据えたデッキですが、今回は青黒であり、《タッサの神託者》が着地した瞬間に勝てるように《真実を覆すもの》を採用している点で異なります。そのほかのカードはコントロール要素の強いもので、相手を妨害/遅延させて、勝利に直結する2枚のコンボパーツを探すまでの時間を稼ぎます。

スポットライトを浴びたばかりのデッキで十分に洗練されているわけではないですが、ポテンシャルは高いです。プロやグラインダーを筆頭に、多くのプレイヤーは本番直前にネットで話題になった直近のテクノロジーを持ち込む傾向がありますが、今回はこのデッキがその立場になることでしょう。今週末の活躍・人気は不明ですが、私はどちらの点でも期待しています

《太陽冠のヘリオッド》コンボ

歩行バリスタ太陽冠のヘリオッド

コンボデッキの最後を飾るのは、《歩行バリスタ》《太陽冠のヘリオッド》コンボです。多様な構成で試されているようですが、さまざまな理由から2色目を足すことが多いようですね。私としては《太陽冠のヘリオッド》をクリーチャー化して攻撃できるようにするのが最善のアプローチではないかと思っています。そのため、あらゆる選択肢のなかから最も人気に火が付きそうなのは、白単色で構成した2つのデッキだと予想しています。

ゼンディカーの同盟者、ギデオンニクスの祭殿、ニクソス大天使アヴァシン

白単信心は多角的に攻められるミッドレンジデッキです。単体で勝てる《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》、理不尽なマナアドバンテージを生み出して瞬く間に手が付けられなくなる《ニクスの祭殿、ニクソス》、盤面を一掃する《大天使アヴァシン》。そしてこれらのカードを使ったプランを遂行している間に、即座にゲームに幕を引く2枚のコンボカードが揃っていくのです。


レオニンの先兵アジャニの群れ仲間太陽に祝福されしダクソス

白単アグロは、絆魂を持つ軽量のクリーチャーで《太陽冠のヘリオッド》《アジャニの群れ仲間》の能力を誘発させながら、白単信心よりもはるかに速く攻めるデッキとなっています。そしてここでも4ターン目という早さで決着をつける2枚コンボが搭載されています。

白単に採用されたクリーチャーたちはいずれも単体ではパイオニア環境では劣るものですし、コンボも非常に対応しやすい部類のものだろうと思いますが、コンボパーツ2種を併用するという選択肢がプレイヤーズツアーで大きな脅威となるでしょう。

その他のデッキ

次に取り扱うのは、ここ数週間で実力を証明してきたデッキたちですが、トップ層と争うことは荷が重いかもしれません。数日前に登場した最新のデッキを十分に練習するのは誰にでもできることではないですから、そういった人々が愛機から乗り換えない可能性は考えられます。これまでに紹介してきたデッキが互いを今以上に強く意識した場合は、これから紹介する”旬の過ぎたデッキ”が勝つために最適な選択になることもあるでしょう

アゾリウスコントロール

スフィンクスの啓示至高の評決ドミナリアの英雄、テフェリー

まずはアゾリウスコントロール。このアーキタイプを愛するプレイヤーは基本的にフォーマットや時代を問わず存在します。アゾリウスコントロールならパイオニアに存在するあらゆるデッキに勝てると思いますが、同一の75枚ですべてのデッキに勝つのは難しいでしょう

特定のメタゲームにおいて理想に近しい構成を構築することができるとしても、安定して勝てない相手は必ずいくつか存在するものなのです。プレイヤーズツアーの各ラウンドの制限時間が50分であることも考慮すべきでしょう。1-1の引き分けは99%の状況で両者にとって悪い結果ですし、精神的な疲弊も軽視できません

ランプ

茨の騎兵ニッサの巡礼精霊龍、ウギン

続いてはランプです。従来から存在する緑単の構成はあらゆるミッドレンジを終盤戦で圧倒することに長けていましたが、アグロ、コンボ、ときにはコントロールに苦戦を強いられてきました

そこで登場したのがシミックカラーの構成で、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》《成長のらせん》《ハイドロイド混成体》を使うことで安定性とライフ回復手段を手にし、アグロ、コントロールとの相性を改善しています。しかしコンボとの相性は依然として最悪です

エルフの再生者ウルヴェンワルドのハイドラ絶え間ない飢餓、ウラモグ

自然の怒りのタイタン、ウーロ成長のらせんハイドロイド混成体

墓地利用

墓地デッキの二大巨頭はドレッジレスドレッジと《魂剥ぎ》です。どちらも安定してゲームプランを遂行でき、ミッドレンジ戦略に対して非常に強力です。現在はメタゲームがミッドレンジ戦略から脱却しているため、墓地利用デッキが好成績を残すとは思いませんが、私のように過小評価をするプレイヤーが多ければ、私の推測と違う結果になってもおかしくありません。

ナルコメーバ秘蔵の縫合体這い寄る恐怖

森の女人像魂剥ぎ原初の夜明け、ゼタルパ

ゴルガリストンピィ、ビッグレッド

最後に触れておきたいのは、ゴルガリストンピィとビッグレッドです。いずれも強力なデッキですが、現在のメタゲームでは立ち位置が悪いように思います。考え方によっては、デッキ構成やカード選択次第では特定のアーキタイプとの相性が改善でき、この2つのデッキを選ぶ人間がいるだろうという主張も成立するでしょう。

ラノワールのエルフ鉄葉のチャンピオングレートヘンジ

ゴブリンの鎖回し栄光をもたらすもの反逆の先導者、チャンドラ

おわりに

ここまでご紹介してきたデッキや構成が今週末のプレイヤーズツアーで人気になる/成功するであろうと予想しているものです。何らかの根拠があって使われている/使われていたデッキはほかにも多くあり、そのすべてに言及することはできませんでしたが、私がMagic Onlineで使ってきたデッキについてはほとんど解説してきました。異なる見方をする方もいらっしゃるでしょうし、私が完全に見落としている傑作がある可能性もあるでしょう。

パイオニアに関するみなさんの考察はTwitterで募集しています。私の考えは合っていたでしょうか?それとも違うと思いますか?みなさんのご意見をお待ちしています!

ではまた次回!

ファブリツィオ・アンテリ (Twitter)

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Fabrizio Anteri ファブリツィオ・アンテリはベネズエラ出身のプロプレイヤー。11回ものグランプリトップ8入賞回数を誇り、そのうちの5回で優勝を収めている。2018年の春に開催されたグランプリ・ボローニャ2018で準優勝に輝き、第2回Hareruya Hopes公募でHareruya Hopesに加入。 Fabrizio Anteriの記事はこちら