プレイヤーズツアー・名古屋に向けたディミーアインバーター調整録

Lee Shi Tian

Translated by Nobukazu Kato

原文はこちら
(掲載日 2020/2/7)

環境の新星

みなさんこんにちは。私は初の大型パイオニアイベントであるプレイヤーズツアー・名古屋2020でトップ8に入賞し、帰国してきたところです。

タッサの神託者真実を覆すもの神秘を操る者、ジェイス

2週間前、パイオニア環境に関する記事を執筆しました。しかし、《真実を覆すもの》を使った新たな2枚コンボが発見され、環境は少し変化しました。このデッキ、ディミーアインバーターは《真実を覆すもの》でライブラリーの枚数を一気に削り、《タッサの神託者》《神秘を操る者、ジェイス》の能力で勝利を目指すデッキです。

そしてこちらが、名古屋で使用したデッキリストになります。

一般的なデッキリスト(ピオトル・グロゴゥスキ/Piotr Glogowskiのデッキリスト)とは大きく異なる点がいくつかありますので、その調整プロセスについてお話することにしましょう。

カード選択

メインデッキ

マナベース

思考囲い致命的な一押し

このデッキは《思考囲い》《致命的な一押し》を4枚ずつ採用しています。フランク・カーステン/Frank Karstenによる健全なマナベースの構築を扱った記事(リンク先は英語)をご覧になった方であれば、1ターン目に1マナの呪文を唱えるにはアンタップイン土地の理想的な枚数が14枚であることはご存知でしょう。一般的なデッキリストが9枚しかないことは衝撃的で、ディミーアインバーターの調整を始めた当初はこれが敗因になっていました。後手のゲームを筆頭に、さまざまなアグロデッキに踏みつぶされることが何度もあったのです。

詰まった河口

そのマナベースをアグロ戦でも機能するように施した工夫が《詰まった河口》です。過去の経験から《詰まった河口》の採用にためらう人がいるのはわかっています。ですが、そのアンタップインを助ける土地としてショックランドとサイクリングランドがあれば、シャドウランドは十分に機能するのです。

このマナベースの最大のデメリットは、《時を越えた探索》と相性が良い《寓話の小道》を使えないことにあります。とはいえ、最初の2ターンに呪文を唱えられるのならば安いものです。コンボデッキでは序盤に動くことが何よりも大切ですからね。マナベースの見直しこそがあらゆる友好色デッキの大幅な改善につながるかもしれません。ディミーアインバーターの調整をしていなければ、この大きな気づきを得ることもなかったでしょう。

《海の神のお告げ》

海の神のお告げ

《海の神のお告げ》はこのデッキの動きに非常に噛み合っています。《検閲》や除去を構えながら、相手が少し様子見をしてきた場合に《海の神のお告げ》を唱えるという選択肢が生まれるのです。また、占術能力は余ったマナの使い道を作り出すため、《ヴァントレス城》などの「城」の不採用を埋め合わせてくれます。このエンチャントのおかげでマナフラッドする機会はめったにありません。

さらに、「信心」を1つ稼いでくれる側面があり、ライブラリーの残り枚数が1枚で《タッサの神託者》が誘発能力の解決前に除去されるリスクがある場合に「信心」カウントが頼りになります。他のソーサリースピードのキャントリップ呪文とは比べ物になりません。《寓話の小道》と同様、《時を越えた探索》の「探査」コストになりづらいのが最大の弱点です。

除去一式

致命的な一押し暴君の嘲笑衰滅

マナベースの項で触れたように、このデッキの唯一の負け筋はアグロデッキだと思っており、その解決に役立つのが除去呪文です。《究極の価格》《喪心》は柔軟性に難があるため採用していません。《暴君の嘲笑》は除去なりバウンスなりで脅威を対処して時間を稼いでくれます。1枚だけ採用した《衰滅》は、プレイヤーズツアーのデッキ公開制度を利用し、相手にクリーチャーの展開をためらわせる狙いです。

サイドボード

《久遠の闇からの誘引》

久遠の闇からの誘引

サイドボードについてですが、代替の勝ち手段として唯一用意しているのが《久遠の闇からの誘引》です。《真実を覆すもの》《漂流自我》《失われた遺産》《殺戮遊戯》で全て追放されない限りは別の勝ち筋は一切必要ありません。根こそぎ追放する呪文を最も使用するのは5色《ニヴ=ミゼット再誕》やミラーマッチですが、これらのデッキには他の勝ち筋を用意するよりも《真実を覆すもの》を解決する方が優れています。

漂流自我失われた遺産殺戮遊戯

だからこそ追放呪文への対抗策として《久遠の闇からの誘引》を選びました。《久遠の闇からの誘引》をライブラリーに戻せれば、再び唱えることで追放された他の3枚の《真実を覆すもの》を手札に加えることができます。つまり、たった1枚のカードが実質的に複数の脅威になるのです。勝ち筋を増やしてデッキの純度を下げる事態にならないのは《久遠の闇からの誘引》のおかげです。

《宝物の地図》

宝物の地図

採用を見送った3~4枚目の《時を越えた探索》の代わりとなるのが《宝物の地図》です。先手2ターン目に着地させ、ミラーやコントロール戦で勝ちにつながることもよくあります。《神秘の論争》はパイオニア環境でサイドボードとして屈指の人気を誇りますが、《宝物の地図》はそれをすり抜け、変身後は無力化します。

《湖での水難》

湖での水難

最後に言及するのは《湖での水難》除去や手札破壊などの適切な妨害を並行してサイドインしますから、墓地が肥えた後の《湖での水難》は最高の呪文になります。しかし、テストプレイ期間中はメインデッキで何度か機能しないことがありました。仮に私が毎試合サイドインしていても驚かないでくださいね。根拠があってメインデッキではなくサイドボードに配置しているのですから。

サイドボードガイド

単色アグロ

赤単/黒単/緑単

vs. 赤単/黒単

Out

思考囲い 思考囲い 思考囲い 思考囲い

In

闇の掌握 闇の掌握
湖での水難
残忍な騎士

vs. 緑単

Out

思考囲い 思考囲い 思考囲い 思考囲い

In

闇の掌握 闇の掌握
湖での水難
害悪な掌握

サイドボード後は相手が除去を減らしてくるため、《真実を覆すもの》を2体並べて勝つプランが機能します。緑単だけ《残忍な騎士》の枠を《害悪な掌握》にしているのは、2/3というサイズがブロッカーとして適していないからです。

白単

vs. 白単

Out

暴君の嘲笑 暴君の嘲笑 選択 選択
海の神のお告げ タッサの神託者

In

闇の掌握 闇の掌握 湖での水難 残忍な騎士
思考消去 害悪な掌握
思考囲い害悪な掌握

白単は他の単色アグロよりも速度が劣りますが、《太陽冠のヘリオッド》《歩行バリスタ》のコンボを内蔵しています。そのため、手札破壊呪文が実に有効です。また、《スレイベンの検査官》《秘儀術師のフクロウ》といったアドバンテージをもたらすクリーチャーが豊富であるため、除去に偏重するのではなく早期の決着も求められます。あと、《試練に臨むギデオン》を除去できる呪文は温存しておきましょう。

クロックパーミッション

スピリット

vs. スピリット

Out

タッサの神託者 タッサの神託者 タッサの神託者
検閲 検閲 検閲
思考囲い 思考囲い 神秘を操る者、ジェイス

In

神秘の論争 神秘の論争 神秘の論争
闇の掌握 闇の掌握 残忍な騎士
思考消去 害悪な掌握 湖での水難

《タッサの神託者》がブロックできるクリーチャーは一切いません。《真実を覆すもの》と除去でゲームをコントロールするプランになるでしょう。環境のなかでも特に厄介な相手のひとつです。

イゼットエンソウル

vs. イゼットエンソウル

Out

思考囲い 思考囲い 思考囲い 思考囲い
検閲 検閲 検閲
神秘を操る者、ジェイス タッサの神託者

In

闇の掌握 闇の掌握 湖での水難 強迫
神秘の論争 神秘の論争 神秘の論争
思考消去 残忍な騎士

《爆片破》を有する相手に《思考囲い》はお荷物です。《タッサの神託者》は先ほどよりはブロッカーとして機能してくれるでしょう。サイドボード後の《真実を覆すもの》を使ったコントロールプランはここでも非常に現実的です。

ミッドレンジ

5色《ニヴ=ミゼット再誕》

vs. 5色《ニヴ=ミゼット再誕》

Out

致命的な一押し 致命的な一押し 致命的な一押し 致命的な一押し
暴君の嘲笑 暴君の嘲笑 選択 選択
衰滅

In

神秘の論争 神秘の論争 神秘の論争 残忍な騎士
思考消去 害悪な掌握 湖での水難 強迫
久遠の闇からの誘引
久遠の闇からの誘引殺戮遊戯

価値の低い除去を減らし、《殺戮遊戯》などの追放呪文への対抗策として《久遠の闇からの誘引》を入れます。《真実を覆すもの》を追放されない限りは相性が非常に良いです。打ち消しが非常に強いマッチアップですので、3ターン目の《時を解す者、テフェリー》は必ず対処できるようにしておきましょう。そうすれば相手の脅威をさばいて有利な状況を作れるはずです。

コントロール

アゾリウスコントロール

vs. アゾリウスコントロール

Out

致命的な一押し 致命的な一押し 致命的な一押し 致命的な一押し
暴君の嘲笑 暴君の嘲笑 タッサの神託者 タッサの神託者
衰滅 選択

In

神秘の論争 神秘の論争 神秘の論争 残忍な騎士
思考消去 害悪な掌握 湖での水難 強迫
宝物の地図 宝物の地図
宝物の地図時を解す者、テフェリー

ここでも《時を解す者、テフェリー》が大きな脅威です。相手がサイドボード後に打ち消し呪文を増やすなかで、こちらの打ち消し呪文を無価値にしてきます。《宝物の地図》は先手では文句なしのカードであるものの、後手2ターン目にタップアウトで出すと《時を解す者、テフェリー》に痛い目にあわされます。《宝物の地図》はコントロールに強いですが、先手後手で使い方が異なるという点は肝に銘じておいてください。

ディミーアインバーター

vs. ディミーアインバーター

Out

致命的な一押し 致命的な一押し 致命的な一押し 致命的な一押し
暴君の嘲笑 暴君の嘲笑 タッサの神託者 タッサの神託者
衰滅

In

神秘の論争 神秘の論争 神秘の論争 残忍な騎士
宝物の地図 宝物の地図 湖での水難 強迫
思考消去

相手が《群れネズミ》《ヴリンの神童、ジェイス》《正気泥棒》を使っているとわかった場合は、除去を1~2枚残すことを検討します。同様に《漂流自我》《失われた遺産》を確認したら、《久遠の闇からの誘引》が選択肢に入ります。

コンボ

ロータスコンボ

vs. ロータスコンボ

Out

致命的な一押し 致命的な一押し 致命的な一押し 致命的な一押し
暴君の嘲笑 暴君の嘲笑 衰滅 選択

In

神秘の論争 神秘の論争 神秘の論争 湖での水難
減衰球 減衰球 思考消去 強迫
神秘の論争減衰球

《睡蓮の原野》が着地して《演劇の舞台》でそれをコピーされると、《神秘の論争》《検閲》は急速に価値が下がります。それを回避するコツは序盤のキャントリップ呪文を打ち消すことであり、自分よりも相手が先にコンボを始動させないことを期待しましょう。《減衰球》《睡蓮の原野》を展開させた後に使うと決定打になります。土地を2枚生け贄に捧げさせる前に《減衰球》を出す必要はありません。

次の環境に備えよう

時を越えた探索

これで主要なアーキタイプとの戦い方は解説できたと思います。今後のメタゲームですが、単色のアグロが減ってクロックパーミッションやディミーアインバーターが増えていくと予想しています。そうなれば、メインデッキの除去とサイドボードの手札破壊を入れ替えるかもしれません。3枚目の《時を越えた探索》もおそらく採用します。ミラーマッチなら《寓話の小道》がなくとも手札破壊などでリソース交換をすれば、「探査」コストが自然と確保できるからです。

それでは今回はここまでにしたいと思います。ぜひみなさんも環境の新入りデッキを試してみてくださいね。ではまた。

リー・シー・ティエン (Twitter / Twitch)

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Lee Shi Tian リー・シー・ティエンは香港出身のスーパースター。プロツアートップ8が5回、グランプリトップ8が10回 (内優勝1回) と凄まじい戦績を誇り、特にモダンフォーマットを得意とするプレイヤー。 リーは偉大なプレイヤーとしてのみならず、アジア圏のコミュニティの育成に尽力した人物としても広く知られており、彼とそのチームメイトである "チームミントカード" の面々はプロシーンで次々と好成績を残し続けた。 プレイヤーとして、そしてコミュニティリーダーとしての功績が世界中で高く評価され、2018年にマジック・プロツアー殿堂入りを果たす。 Lee Shi Tianの記事はこちら