Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2020/02/07)
黒単ダイナソー
みなさんこんにちは。
ずっと心待ちにしてきた初のプレイヤーズツアーがとうとうブリュッセルと名古屋で開催されました。この大会でプレイし、プレイヤーズツアーファイナルの参加権利を得ることを心に描いてきましたが……本当に権利を得ることができました!
ドラフトが3-3と不甲斐ない結果だったにも関わず、権利を獲得できた理由は構築ラウンドを8-2としたパイオニアのデッキ選択にあります。
まずはそのデッキをご覧いただくことにしましょう。
4 《ロークスワイン城》
4 《変わり谷》
1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》
-土地 (24)- 4 《血に染まりし勇者》
4 《戦慄の放浪者》
4 《漆黒軍の騎士》
1 《どぶ骨》
4 《屑鉄場のたかり屋》
4 《残忍な騎士》
4 《朽ちゆくレギサウルス》
-クリーチャー (25)-
友人であるウンベルト・パタルカ/Humberto Patarcaと懸命に調整したものであり、完成したデッキリストには本当に満足できました。まず何よりも目を引くのは《朽ちゆくレギサウルス》が4枚採用され、《騒乱の落とし子》と《悪ふざけの名人、ランクル》が不採用である点でしょう。
「絢爛」で3ターン目に必ずしも唱えられるわけではない《騒乱の落とし子》とは異なり、《朽ちゆくレギサウルス》は確実に3マナで唱えられますし、この3種のなかでもクロックが最も大きいクリーチャーです。
黒単アグロはマナカーブが低く、マナコストが軽い除去と手札破壊を備えた、非常に攻撃的なデッキです。マリガンに強く、テンポの良い初動をすることが勝利へのカギになります。《騒乱の落とし子》や《悪ふざけの名人、ランクル》などはトップデッキしたときに素晴らしいカードですが、初手においては理想とかけ離れた存在です。
マナを非常に効率的に使っていくデッキですから、唱えるのに4マナも要求する呪文は望ましくありません。《変わり谷》《ロークスワイン城》《漆黒軍の騎士》の起動型能力や、墓地から戻ってくるクリーチャーがマナの使い道になりますからね。
《影槍》は最後の最後にデッキに加えました。長時間をかけて話し合ったカードでしたが、ほかのプレイヤーに知られないようにデッキ登録締め切りの36時間前からMagic Onlineには触れないようにしていました。《朽ちゆくレギサウルス》と相性が良いだろうと思っていましたが、多く入れすぎて本番でガッカリしたくはありませんでした。1枚にとどめましたが、入れて良かったと思っています。
主なアーキタイプとの相性
ディミーアインバーター
高速のクロックと手札破壊を擁する黒単アグロは、ディミーアインバーターに非常に有利です。《朽ちゆくレギサウルス》が相性の良さを加速させています。攻撃が数回通れば勝てるだけでなく、《肉儀場の叫び》や《衰滅》に巻き込まれません。
5色《ニヴ=ミゼット再誕》とアゾリウスコントロール
5色《ニヴ=ミゼット再誕》とアゾリウスコントロールと戦ううえでは、《朽ちゆくレギサウルス》よりも《悪ふざけの名人、ランクル》が優れています。それでも相性は互角ですし、これらのデッキはプレイヤーズツアーでは思わしい結果が出せていません。今後数週間のメタゲームにおいて、重要なポジションにつけることはないでしょう。
《ゴブリンの鎖回し》入りの赤単
黒単アグロにとって《ゴブリンの鎖回し》を搭載した赤単は、以前から最悪の相性でした。ですが、盤面に1/2のクリーチャー、手札に《ショック》がある相手からすれば、3ターン目に7/6のクリーチャーが出てくるのは耐え難いものでしょう。依然として簡単な相手ではないですが、少なくともこの構成ならば十分に希望が持てます。
イゼットエンソウルとスピリット
イゼットエンソウルやスピリットとの戦いにおいては、先手側がダメージレースを制するのが一般的です。とはいえ、黒単ほど初手が安定しているデッキではないと思っているので、相性としては有利をつけたいと考えています。《ネベルガストの伝令》がいるスピリット戦では《朽ちゆくレギサウルス》をすべてサイドアウトします。
ロータスブリーチとランプ
さまざまな構成を持つロータスブリーチや速度の遅いランプは相性の良いデッキです。
不測の敵
事前に予想もしていなかった、黒単アグロにとって相性が非常に悪いアーキタイプ。それが《サテュロスの道探し》と《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を用いる「昂揚」デッキです。ブリュッセルで連勝の末にトロフィーを掲げたヨエル・ラーション/Joel Larssonに最後に黒星をつけたのは私ですが、勝利した1ゲーム目と3ゲーム目は手札が極めて強いうえに先手という条件でした。
スゥルタイ昂揚はディミーアインバーターに対してあまり有効なプランを持っていないと思っているので、ディミーアインバーターが睨みをきかせ続けてくれることを期待しましょう。
みなさんならどうしますか……?
お互いに10-3で迎えた14回戦。私はイゼットエンソウルに1ゲームを先取した状況でした。勝者はプレイヤーズツアーファイナルの権利を獲得し、トップ8まであと1勝のポジションにつけます。他方、敗者は次のラウンドを勝たなければプレイヤーズツアーファイナルの権利を得られず、トップ8の可能性はほとんどなくなります。
5ターン目。私はまだ土地を出しておらず、手札には《ロークスワイン城》と《残忍な騎士》があり、相手の手札は2枚でした。成功まであと一歩という状況で達成したい気持ちが強く、私は非常に緊張していました。
《搭載歩行機械》を対象に《残忍な騎士》を唱え、相手が《爆片破》を持っていなければ勝てます。仮に持っていたとしても、ゾンビトークンを献上しないためには《幽霊火の刃》を生け贄に捧げて《ゲトの裏切り者、カリタス》を除去しなければならず、依然として有利な状況です。
私が《残忍な騎士》を戦闘前に唱えると、相手は《爆片破》で対応してそのターンをしのぎました。その後、別の《搭載歩行機械》を含めて3体のクリーチャーを引き込む相手。ブロッカーで地上は固められ、私は数ターンに渡るソプタートークンの攻撃の前に散りました。続く3ゲーム目も敗北し、私はトップ8の可能性を失ったのです。
あの命運を分けるターンに私はどんなプレイをすべきだったのでしょう?
決着をつけたいという焦りから、《変わり谷》で攻撃すれば《ゲトの裏切り者、カリタス》をブロックされた際に致死量のダメージを与えられることに気づきませんでした(《朽ちゆくレギサウルス》の7点、《変わり谷》の2点、《漆黒軍の騎士》の2点。残る3マナは《漆黒軍の騎士》の起動型能力か必要に応じて《残忍な騎士》)。
つまり、相手は《朽ちゆくレギサウルス》をチャンプブロックせざるを得ず、加えて戦闘ダメージが通る前に《爆片破》を唱えるかどうかになります。呪文を唱えずに攻撃したときのシナリオがどんなものであれ、私が実際にたどったシナリオよりもはるかに優れていたでしょう。しばらくは忘れられない教訓になりそうです。
サイドボードガイド
ディミーアインバーター
対 ディミーアインバーター
十分に戦ったことにある相手ではないので入れ替えに100%の確信は持てませんが、《虚空の力線》は必要ないと思います。コンボから遠ざける手札破壊が豊富にありますから、プレッシャーをかけて決着を急いだ方が良いでしょう。
相手がよくとってくる動きは、2/1のクリーチャーをブロックするために《タッサの神託者》を2ターン目に唱え、《致命的な一押し》で除去されたら《真実を覆すもの》でライブラリーに戻すというものです。そのためこのマッチアップでは《軍団の最期》を優先させ、《タッサの神託者》を追放し、あわよくば手札からも追放できるようにします。《群れネズミ》や《ヴリンの神童、ジェイス》を使っていることもありますしね。
黒単アグロ
対 黒単アグロ(先手)
対 黒単アグロ(後手)
先手で、かつ相手が《軍団の最期》を採用していないという確証があるなら、同名カードを追放される心配がなくなるため、サイドアウトするのは複数枚採用している《戦慄の放浪者》ではなく1枚しかない《どぶ骨》にします。
5色《ニヴ=ミゼット再誕》
対 5色《ニヴ=ミゼット再誕》
《影槍》の隠された能力が有効なマッチアップのひとつで、《森の女人像》や《楽園のドルイド》を除去できるようになります。《朽ちゆくレギサウルス》に+1/+1修正を与えることで《ニヴ=ミゼット再誕》と相撃ちにならないのもちょっとした利点です。
アゾリウスコントロール
対 アゾリウスコントロール
サイドボード後、アゾリウスコントロールはクリーチャーを投入するのが一般的です。多くの場合は《浄光の使徒》や《夢さらい》なので、《自傷疵》をサイドインするようにしています。あまりにも採用枚数が多いようなら3枚目を入れても良いでしょうね。
イゼットエンソウル
対 イゼットエンソウル(先手)
対 イゼットエンソウル(後手)
アゾリウススピリット
対 アゾリウススピリット
《集合した中隊》を搭載したバントカラーとの対戦経験は多くありません。おそらく《思考囲い》を多めに残し、《屑鉄場のたかり屋》を減らすと思います。
赤単アグロ
対 赤単アグロ
1マナ域と2マナ域が多い赤単を想定した入れ替えです。ミッドレンジ型であれば《思考囲い》はすべて残し、《血に染まりし勇者》を4枚抜き、《軍団の最期》はサイドインしません。
ロータスブリーチ
対 ロータスブリーチ
ランプ
対 ランプ
スゥルタイ昂揚
対 スゥルタイ昂揚
さまざまなアプローチの取り方が考えられるため悩ましいマッチアップです。《虚空の力線》?手札破壊?それとも除去でしょうか?今のところの予測では、手札破壊を最大枚数投入し、除去を減らすのが良いと思っています。《虚空の力線》は4枚入れたいほど重要ですが、クリーチャー除去をもう少し残して《自然の怒りのタイタン、ウーロ》が稼働しないことを期待した方が良いかもしれません。
これからの黒単ダイナソー
メインデッキの構成には非常に満足しているので、今週もまったく同じ60枚を使おうと思っています。サイドボードに関しては、《自傷疵》はもう3枚も必要ないという印象ですので、《害悪な掌握》と散らして採用した方が良い可能性があります。《最後の望み、リリアナ》は依然として評価が難しく、《霊気圏の収集艇》を1枚採用する枠がぜひとも欲しいので、彼女には入れ替わってもらうべきかもしれません。
黒単ダイナソーは安定性とデッキパワーを備えており、メタゲーム上に相性が良いデッキが多く存在しています。完成度の高いコントロールやコンボが数を増やし、黒単にとって大きな懸念点であったミッドレンジのクリーチャーデッキは支配力を弱めました。数か月は立場を維持していくデッキだと思いますし、これからのメタゲームの変化に順応していくことでしょう。
ここまで読んでいただきありがとうございました!
ファブリツィオ・アンテリ (Twitter)