インタビュー:マルシオ・カルヴァリョ/Marcio Carvalho

晴れる屋メディアチーム

MPLから世界選手権2019へ

マルシオ・カルヴァリョ/Marcio Carvalhoはポルトガルのトッププロプレイヤーであり、グランプリトップ8入賞15回(3回は優勝)、プロツアー/ミシックチャンピオンシップトップ8入賞6回など数々の輝かしい実績を誇る。過去のグランプリ優勝はすべてリミテッド(内1回はチームリミテッド)であり、特に2015-2016シーズンの活躍は目覚ましく、ドラフトマスターとしてマジック:ザ・ギャザリング世界選手権2016に招致されたほどである。

その後も数々の大会でトップ8の座を射止め、これまでの結果が認められ2019年シーズンから始まったMPL(マジックプロリーグ)の初期メンバーへ選出された。同シーズンに開催されたミシックチャンピオンシップ・クリーブランド2019では、トップ8に入るなどシーズンを通して安定した活躍をみせた。

順調にミシックポイントを積み重ね、MPL内において上位4名に入り、見事マジック:ザ・ギャザリング世界選手権2019への出場権を獲得している。

はじめの一歩

――MPLの初期メンバーの一員として過ごした1年間はどうでしたか?率直な感想を教えてください。

マルシオ・カルヴァリョ

 「とても光栄だったさ!これまでの結果が認められて、MPLの初期メンバーに招待されたことを誇りに思うよ!そしてMPLとしてもさらに結果をだしたことで、俺は今回の世界選手権へ参加できることになったからね」

人外の者だけが棲む場所

マルシオ・カルヴァリョ

――今シーズンは活動するうえで、テーブルトップとデジタルの両立が必要なように思えます。生活サイクルなどに影響はないですか?

 「最初はテーブルトップとデジタルの両立に苦労したよ。少々大変だったのは事実だね。けれども、経験から俺らプロプレイヤーは環境に適応することに慣れている。だからちょっとばかし努力はしたが、すぐ慣れたさ。これまで同様、マジックをライフスタイルに組み込むだけだ。大きな変化はなかったね」

目標のチャンピオン

――動画配信は自宅で実施しているのでしょうか?どのようにオン/オフを切り替えていますか。気分転換があれば教えてください。

 「自宅で配信してるよ。行き詰ったり、疲れを感じたら、リラックスするためにはビーチへよく行くんだ。住んでいるところが浜辺の近くだから、気分転換にはもってこいさ。めっちゃ気に入っているよ」

 「ビーチでは、本や大好きな漫画を持ってよく読んでいるよ」

――それは日本の漫画だったりするのですか?

 「実ははじめの一歩の大ファンなんだ!特に鷹村が好きなんだ。彼の姿勢、努力を惜しまないところはチャンピオンとして相応しい。俺自身の目標なんだ!」

ベストパートナー

――昨シーズンはハビエル・ドミンゲス/Javier Dominguezアンドレア・メングッチ/Andrea Mengucciとチームを組み練習していたと聞きました。チームを組んで練習することでどのような相乗効果が生まれましたか?また、チームを組む際に実力差はあっても問題ないですか?

 「ハビエルとは付き合いも長く、大の仲良しだ。メングッチはここ2~3年の付き合いだが、こんなにいいやつとはそうそう巡り合えない!2人もトッププレイヤーであるし、お互い足りない点を補い、また刺激しあいながらトーナメントへ挑んできた」

 「もちろん実力は関係するけど、優劣は二の次だ。優れたプレイヤーが優れた調整チームとは限らないのさ、特に俺にとってはね。例え実力が劣っていてたとしても、気の合う仲間やよく知っているプレイヤーとチームを組むことが何よりも大切なんだ

Pick Up the Card

マルシオ・カルヴァリョ

――マルシオ選手といえばドラフトを得意としていますね。ドラフトの練習に際して8人揃えることが難しい場合、工夫できる練習方法があれば教えてください。

 「人が足らないことはいつだってあるさ。そんなときは人数にこだわらず、6人ドラフトをしているよ。もちろん8人揃うに越したことはないけれど、揃わないことを嘆くよりもその状況でベストを尽くすべきだと思うね」

 「俺らプロプレイヤーは環境に適応することに慣れているから。どんなデッキタイプがあるのか、カードの使い勝手がどんな感じかを知るためには6人でも十分さ」

目指すべき頂

マルシオ・カルヴァリョ

マルシオ・カルヴァリョと応援のため同行している親戚

――世界有数のプレイヤーであるマルシオ選手にとって、今現在マジックで達成したい目標は何でしょうか。

 「世界で一番のプレイヤーになることは目標ではあるが、もっと大切だと思うことは別にある」

 「この世界最高のゲームで、仲間や友人をより多く助けることさ

※マルシオ選手はプロツアーに際し有名プレイヤーたちからの招致を断り、地元のコミュニティの参加者たちと調整を行うなど、地域に根差した活動を続けながら結果を残している。

《栄光の終焉》

マルシオ・カルヴァリョの実力は疑いようもない。だが、一筋縄でいかないのが世界選手権という舞台だ。優勝候補の筆頭だったハビエル・ドミンゲスでさえ、まさかの初日落ちの憂き目にあったのだから。

それでも、この男には杞憂だったようだ。

4-0でトップ8だ、っしゃオラ!

順調に5-0でトップ4まで来たぜ!

なんと彼は、5戦全勝で最速でトップ4へ名乗りをあげてみせた!彼の世界王者に対する想いは強い。


パウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ/Paulo Vitor Damo da Rosaとの準決勝に敗れたものの、敗者グループから勝ちあがってきたセス・マンフィールド/Seth Manfieldを倒し、決勝戦へと進出する。初日の予選ラウンドからここまでマルシオ・カルヴァリョとパウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサの成績は1勝1敗。そう、雌雄を決するべく対峙したのだ!

熱戦は続き、最終マッチまでもつれた決勝戦。わずかな差で勝負は決してしまった。

勝利の女神は時に優しく、時に残酷に、プレイヤーへと微笑みかける。決まり手は実にマジックらしく、土地事故で。

まあ過去にも同じ経験してるから慣れてるけど、それでも”来る”ものがあるね!そして優勝おめでとうパウロ!本当に彼は世界最強の漢だ、当然の結果だね!

この瞬間、マルシオの世界王者への道は絶たれた。努力家で、優しく、陽気な、仲間想いのMPLは最後の最後で報われなかった。我々からすれば、あと一歩、寸でのところで取り逃がしてしまったように思えた。

いつも明るくフランクな印象的なためか、憔悴しきったマルシオの顔は辛いものであった。だが、しばらくしてマルシオに一人のスペイン人プレイヤーの姿が重なった。世界選手権2017の決勝で敗退しながらも、翌年の世界選手権2018の覇者となったハビエル・ドミンゲスの姿が。

誤解しないでいただきたいのは感傷的になり、敗北を重ねあわせることで来季への希望を漠然と述べたいわけではない。マルシオがその程度の薄っぺらい人間とはこれっぽちも思ってはいない。ただ、事実として、マルシオの世界選手権へかける想いは並々ならぬものであった。

それはこれまでのマルシオの人生と密接に関係している。プレイヤーとしてのはじまり、一時的な栄光、挫折、更生、コミュニティリーダーへ。そしてプレイヤーとしての終着点をこの世界選手権に合わせていたためだ。

だからこそ、このままでは終わるわけにはいかないのだ。まだ、マルシオ・カルヴァリョの物語はエンディングロールをむかえてはいない。

1年後、きっとこの物語は完結する。アリーナの中央で、マルシオがトロフィーを掲げて。

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