ストリームから世界選手権2019へ
ピオトル・グロゴゥスキ/Piotr Glogowskiで語るべきはもちろん彼のプロシーンでの活躍に違いないが、それだけにとどめるのはいささか物悲しい。我々の目の前にいるのはMPLに所属するピオトル・グロゴゥスキだけではなく、アンドレア・メングッチ/Andrea Mengucciを一方的にライバル視するPiotr Glogowskiであり、音楽リクエストを募って口ずさむ有名配信者のKanisterであり、コンボデッキとエモート機能を愛用するKanikiでもあるのだ。
もちろん、これまでの戦績も申し分ない。プロツアー『イクサラン』でトップ8を皮切りに、ワールド・マジック・カップ2017準優勝など多数の入賞を誇る。今シーズンはMPLのメンバーとなり、その勢いは留まることを知らず、MTGアリーナで初開催となった大型のイベントであるミシックインビテーショナルで準優勝。2019ミシックチャンピオンシップⅦ(MTGアリーナ)では1マッチも落とすことなく、無敗で優勝しているのだ。
2019ミシックチャンピオンシップⅦ(MTGアリーナ)王者、Kanister: The Emotive Championとして、マジック:ザ・ギャザリング世界選手権2019へログインする。
《コンボ・プレイヤー、カニスター/Kanister, Combo Player》
――デジタル&リアル両方で素晴らしい成果をあげていますね。特にデッキ選択は素晴らしいと思います。あなたが使用するデッキの決め手は何でしょうか。
「競技マジックプレイヤーとしての理想は、いかなるデッキでも完璧に扱えること、また先入観なしにデッキの良し悪しが判断ができること、そして自身が一番良いと信じるデッキを選ぶことだね。ただ、俺はこのカテゴリーに当てはまらないのさ」
「俺にとって強く心惹かれるデッキもあるし、反対に基本的に大会では使いたくないデッキもある。結局のところ自分の好みによるところが大きいのさ」
「自分が好む複雑なコンボデッキは平均的なプロプレイヤーよりも断然上手く扱えるし、ある意味ラッキーだと思ってる。この手のデッキが環境に適している時、選択肢としてかなり良いだけではなく、とても奥深く安易に使えるものではないからね。そういうデッキは理解するために多くの時間を必要とするけど、時間を使ったら使った分だけアドバンテージが取れるんだ」
《選択》
――デッキパワーを適切に評価することは大変難しいことです。ただ使うだけではなく、どういった点に着目すれば、適切にデッキを評価できるのでしょうか?
「ほとんどはオンラインで、MOとMTGアリーナどちらも使ってテストしてるよ。俺の場合チームメイトと集中してテストプレイするなんてことはかなり珍しいね。オンラインで調整するときはメタデッキとの勝率を計測できるけど、その結果は常に割り引いて考えなくちゃいけない」
――それはどんな意味でしょうか?
「もし自分がMPL選手だとしてラダーにおける特定のマッチアップでの勝率が50%だったとしても、競技レベルのイベントではその勝率を保てるとは限らない。むしろかなり相性が悪いと感じるだろうね」
「だからこそ、オンラインで調整するときはそのマッチアップの感触を掴むことに重きをおいているし、他のデッキからの視点を得られるようにほぼ全てのデッキを触るようにしている。苦戦するマッチアップを相手の視点に立ってプレイすれば、今まで見落としていたことに気づくきっかけになり得るからね」
《瞑想パズル》
――代表的なデッキではアイアンワークスやジャンドサクリファイス、アミュレット、ランタンなどガチャガチャとしたカード同士のシナジーが多いものがあげられますね。複雑な動きをマスターするのに練習量以外でコツはありますか?
「上でも触れたが、練習がほとんどだよ。けれどもここでいう練習は単に勝つことやマッチアップ間の流れを確認することだけではない」
「《クラーク族の鉄工所》からどれほどのマナが絞り出せるか試したり、《波乱の悪魔》の能力を一番多く誘発させる方法を探したりするのがパズルのようで楽しいのさ。数多くのパターンが存在するが、対戦中に遭遇しやすいパタ-ンが結構ある。それらをしっかり頭に入れておけば、実際の対戦では思考を他のことに使うことができ、盤面などその場で考えることにより集中することができるんだ」
《歌を食うもの》
――配信では日本語の曲が流れ、それに合わせて踊っているときがありましたが、歌詞の意味などは分かるんでしょうか?また、好きな日本語の曲はありますか?
「日本のアニメを見て覚えたくらいだから、日本語は数えるぐらいしか知らないんだ。私のストリームには視聴者からリクエスト曲が来るんだが、日本の曲が多いのさ。自分はアニソンやJ-POPといった曲は全般的に好きだよ。特に好きな日本のアーティストはREOL(れをる)だね!」
《世界大戦》
3大勢力に分かれる中で、ただ一人ジャンドサクリファイスを選択したカニスター。キャラクターだけではなく、勝利を見越してのことではあったが……
Actually I did#MTGWorlds https://t.co/HgoKvJdVzF
— Piotr 'kanister' Głogowski (@kanister_mtg) February 15, 2020
(「簡単には敗退しないさ。」という自身のツイートに対し)すまん、負けたわ。
名手といえど、2日目で敗退してしまう。
世界選手権は終わり、MPL所属プレイヤーピオトル・グロゴゥスキへと戻る時間がきたようだ。ここからは再び画面越しに彼の活躍をみることにしよう。
画面を開けばそこに、Kanisterはいる。