スタンダード環境の分析

Jeremy Dezani

Translated by Nobukazu Kato

原文はこちら
(掲載日 2020/3/13)

メタゲームを読もう

みなさんお久しぶりです。

前回の記事からだいぶ時間が空いてしまいました。結婚式やフランスから日本への引っ越しの準備があり、最近は忙しい日々を送っていたのです。そう、再び日本で生活をしようと思っています。とても楽しみですね。

そんな状況ではありますが、スタンダードについてお話しようと思います。ここまで健全で見事にデザインされたスタンダード環境はしばらくありませんでした。強力なデッキがひしめいており、どのデッキがベストともなかなか言い切れないほどです。メタゲームは毎週変化し、一番人気のデッキは移り変わるため、我々としてはそれに対応してデッキを選択せねばなりません。これは本当に素晴らしいことです。

ベストデッキを選択することよりもメタゲームを的確に読むことが重要な時代であり、かつてのエクステンデッドやモダンを彷彿とさせる良い環境です。スタンダードではこれらのフォーマットほど相性の差が出ませんが、それでもフィールドに対してわずか数パーセントでも有利に戦えるデッキを選択する価値はあります。

そこでこの記事では、デッキ間の相性とメタゲーム予想に合わせたデッキ選択方法について解説していくことにしましょう。

マナベースから見える現スタンダードの構図

聖なる鋳造所神秘の神殿

まず分析するのは、環境のマナベースです。3色(あるいは4色以上)のデッキを選ぶ場合、多色土地としてショックランドと占術ランドが使えます。一般的に3色デッキではショックランドが12枚、占術ランドが4~8枚の構成です。ゆったりとしたマッチアップであれば問題ないマナベースですが、赤単が今も顕在である大きな理由はここにあると考えています。これらの土地は強力ですが、自ら2点食らわないようにしたり、土地がタップインしたりすると動きが鈍るため、赤単はその弱点を狙い撃ちしようとしているのです

このような環境の構図というのは、これまでのマジックの歴史においても広く確認されてきました(モダンやレガシーでも同様です)。直線的な戦略を駆使する単色デッキが複数存在し、それを打ち倒そうと2色のデッキが出てくる。そして2色デッキよりも強いアクションをとろうと3色目を足し、ミラーマッチで差をつけ始める。そこで単色デッキの立ち位置が改善されて復帰を果たす。

自然の怒りのタイタン、ウーロ嵐の怒り

現スタンダードでも全く同じことが起きています。3色のデッキは《自然の怒りのタイタン、ウーロ》や全体除去といった赤単を苦しめるカードを擁していますが、結局はマナベースの問題で相性の差を広げづらくなっています

これでお察しがつくと思いますが、3色のデッキ(今回でいえばティムールアドベンチャー)から2色のデッキへ乗り換えるプレイヤーが出てきているのは、赤単に対抗しようとしているからです。

ツイート摘訳「3色のマナベースにせずに《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を使うデッキ。赤単との1ゲーム目は勝てない動きをされることもあるが、基本的に相性は良さそうだ。」

この2色への乗り換えには問題があります。現スタンダードでは単色のデッキがたった1つ、赤単しかいないのです。白単アグロもいなければ、黒単アグロもいません。2色デッキを選ぶ利点が少ない状況が生まれているわけです。全体の20%を超えることのないデッキへの相性を改善しても、メタゲーム全体でみたときの勝率が下がってしまいます。

環境の中心に存在するデッキ

現時点でのTier1~3は解説しません。その内訳が毎週変わっていくと確信しているからです。Tier1に入り得る上位8つのデッキについて議論し、みなさんがメタゲームに適応できるようになった方が生産的でしょう。

上位8つのデッキ

では、これら8つのデッキ同士が戦った場合の勝率はどうなるのでしょうか?私なりに評価して表にまとめてみました。

デッキ間の相性

Jeremy Dezani_Standard Win-Rates

クリックして拡大

ご覧いただいたとおり、ティムールアドベンチャーは世界選手権で結果を出したデッキ、アゾリウスコントロール・赤単・ジェスカイファイアーズのすべてに有利だと考えています(表の赤字部分)。世界選手権後にベストデッキとなり、多くの大会で優勝したのがその証拠です。

その後、ラクドスサクリファイスやティムール再生が人気を博しましたが、これはティムールアドベンチャーを倒す目的でした。さらに時が進むと、そのラクドスやティムールを倒そうとバントランプが登場します。

グランプリ・リヨンとPTQの結果

ここで先週末のグランプリ・リヨン併催のPTQの成績上位者デッキを確認してみましょう。

アーキタイプ グランプリ トップ8 PTQ トップ8
バントランプ 2 3
赤単 2 1
ラクドスサクリファイス 2 0
ティムール再生 1 2
スゥルタイコントロール 1 0
アゾリウスコントロール 0 1
ジャンドサクリファイス 0 1

当時のメタゲームでティムールアドベンチャーが溢れかえっていたとすれば、ラクドスやティムール再生が勝てたのは驚きではありません。当時は今ほどスゥルタイコントロールの使用者がいませんでしたから、バントランプにとって極端に相性の悪いデッキは赤単しかいませんでした。バントランプを選択した強豪プレイヤーが上位に入賞したのも自然なことでしょう。

赤単との相性をあまり気にしないのであれば、今選ぶべきはスゥルタイかもしれません。赤単との試合を諦めるべきか、それともサイドボードの枠を10個も割くべきかは今は何とも言えないですね。

「まだ諦めないぞ!《永遠神の投入》を4枚入れて赤単にリベンジだ!」
「スゥルタイ好きのみんな、やったよ!勝てない相手に勝てた!」

来週のメタゲーム予想

来週のTier予想をどうしても知りたいという方のために、Tier1~Tier3を考えてみました。おそらくこのようなものになるでしょう。

Tier 1 Tier 2 Tier 3
ティムール再生 ラクドス/ジャンドサクリファイス ジェスカイファイアーズ
赤単 ティムールアドベンチャー アゾリウスコントロール
バントランプ スゥルタイコントロール

アゾリウスコントロール復権のときかもしれませんね。

ではまた次回お会いしましょう。

ジェレミー・デザーニ (Twitter / Twitch)

この記事内で掲載されたカード

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

Jeremy Dezani 2013-2014年シーズンのプレイヤー・オブ・ザ・イヤー獲得プレイヤー。 プロツアー『テーロス』では、「青単信心」を使いこなし見事優勝の栄冠に輝いた実績を持つ。グランプリのトップ8入賞回数は14回にも上り、優勝3回、準優勝4回を記録している。 海外のプレイヤーとしては初のHareruya Pros加入となる。 Jeremy Dezaniの記事はこちら