ネクストレベルプレイをするために

Kasper Nielsen

Kasper Nielsen

Translated by Nobukazu Kato

原文はこちら
(掲載日 2020/03/19)

“ネクストレベルのプレイ”とはなんだろう

ネクストレベルのプレイ

この言葉は一体何を意味しているのだろうか。どんなときにネクストレベルのプレイを選べば良いのだろう。結果を残したプレイヤーはなぜネクストレベルのプレイを選んだのだろうか。“ネクストレベルのプレイ”を自分自身に取り入れてプレイヤーとして成長するにはどうすればいいのだろう

この記事を読み終わったとき、これらの疑問に多少なりとも答えられるようになっていれば幸いだ。そして、ネクストレベルのプレイを自ら実践するやり方さえも理解してもらえればと思う。

そもそも標準レベルのプレイとは

ネクストレベルのプレイを理解するには、まず標準レベルのプレイを考える必要がある。

基本に帰れ

マジックプレイヤーにとって、標準レベルのプレイとは「現時点で利用できる情報から導かれた、技術的に正しいプレイ」のことである。ここでいう情報とは、自分の手札内容、戦場に出ている自分のパーマネント、墓地にあるカードなどである。技術的に正しい筋書きを見つけられる者は技術面ではトップクラスであるとみなされることが一般的で、その多くはいずれかの時点でマジックの頂点へと登り詰めてきている。

マジック以外で例えるならば、チェスはどうだろうか。チェスにおいては、コンピューターの技量が向上し、グランドマスターの最上位プレイヤーたちでさえも機械にほとんど勝てないところまで来ている。その主たる理由は、技術的に正しく最も隙がない動きを原則とするならば、それは機械の方が向いているからだ。

順応する自動機械

これはマジックのプレイヤーにも言えることである。多くの状況において、正しいプレイとは目立った欠陥がない/ほとんどないプレイだ。では、両者がこのような技術的に正しいプレイを常にしたらどうなるのだろうか?ゲームの勝敗はほぼカードの流れに身を任せるしかないだろう。互いに技術的に完璧なプレイばかりをしていれば、デッキ間の相性や引きの強さで勝負は決まるはずだ。包み隠さずに言ってしまうが、そんなゲームは実に退屈なものだろう。

ネクストレベルを考える

ここまで標準レベルのプレイを議論してきた。次はネクストレベルが何たるかを検証していこう。標準レベルのプレイは隙がなく、基本に忠実なプレイだとすれば、一体ほかに何ができるというのだろう?

劇的な逆転

実は、マジックにおいてはリスクをとった方が良いことがある。その隙を突かれる可能性があったとしてもだ。ときにネクストレベルのプレイが成功したときのリターンは、失敗したときのリスクを上回る。最も基本的なネクストレベルのプレイの例を挙げてみよう。

繁殖池マナ漏出

いずれもごく基本的なネクストレベルのプレイであり、競技プレイヤーであればほとんどの人が時折やっているだろう。どちらのプレイもリスクがある一方で、潜在的なリターンがある。《マナ漏出》を持っているふりをするためにショックインした場合を考えてみよう。

相手がお構いなしに呪文を唱えてきたとすれば、大して意味のない2点を払ったことになる。しかし、ショックインしたことで相手が呪文を唱えることにためっていたら、突如として2点のライフが大幅なテンポの獲得につながっていただろう。たった2点のライフで《時を解す者、テフェリー》の着地を避けられるかもしれない

ルーン爪の熊ケンタウルスの狩猟者

同様に、2/2のクリーチャーで3/3のクリーチャーに向かって攻撃し、コンバットトリックを持っているというブラフをしかけることがある。2点のダメージが通れば、後々のゲーム展開に響いてくるかもしれない。


これらの例は本当に基本的なものであり、慣れ親しんだ人も多いことだろう。しかし、ごくシンプルな見方をすれば、“ネクストレベル”と呼ばれるあらゆるプレイはこれらの例と同じ原理原則にのっとったものに過ぎない。かけ金を引き上げて成功したときのリターンを大きくすることもあれば、ローリスク・ローリターンのネクストレベルのプレイをした方が良いこともある。

では、ネクストレベルのプレイをすべきどうかの判断はどうやって下せば良いのだろう?

危険な賭け

基本的には、メリットとデメリットのどちらが大きいかを判断するというごくシンプルなやり方で良い。成功したときのリターンはリスクを上回るだろうか?ネクストレベルのプレイのなかにはゲームの形勢を一方のプレイヤーに傾けるものもあれば、比較的小さなリスクをとるだけで勝利につながり得るほどの結果をもたらすものもある。

具体例を通して理解する

具体例を使って考えてみよう。

これはグランプリ・ブリュッセルの初日での出来事だ。私は良き友人であり、Hareruya Hopesのメンバーであるオスカー・クリステンセン/Oscar Christensenと対峙していた。私が1ゲームを先取して迎えた2ゲーム目。私のデッキは5色《ニヴ=ミゼット再誕》、相手はディミーア《真実を覆すもの》であり、こちらの4ターン目に突入したときの状況は以下のようなものであった。

Kasper_Niv_Dimir

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オスカーは3ターン目の《思考囲い》《時を解す者、テフェリー》を捨てたが、幸運にも私は直後に《時を解す者、テフェリー》を引き込んだ。

神秘を操る者、ジェイス

彼は4ターン目に《神秘を操る者、ジェイス》を展開し[+1]能力を起動すると、ライブラリーを削る対象を自分ではなく私にした

完全なる終わり

私の4ターン目。大したカードは引けず、《時を解す者、テフェリー》の[-3]能力でドローを進めることにした。そしてデッキ内に1枚しかない《完全なる終わり》を引き込んだ

神秘の論争

さて、ここが運命の分かれ道だ。オスカーはこちらの手札のほぼ全てを把握していて、知らないのは2枚だけ。その内の1枚は、ゲームに大きな影響を与える《完全なる終わり》。友人であるオスカーは私のデッキリストとサイドボードを知っており《神秘の論争》が3枚あることも承知している。また、オスカーは卓越したプレイヤーであり、グランプリで優勝/複数のトップ8、ミシックチャンピオンシップでトップ8を一度経験している。

ここから先を読み進める前に、この状況を踏まえて、このターンの動きを根拠と合わせて考えて欲しい。

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考えよ

私の見立てでは、この状況下で考えられる選択肢は3つある。

この3つのなかから選択することになるわけだが、その内の2つは戦略として堅実かつ標準的なものである。その2つのなかにも優劣があり、すぐに《完全なる終わり》《神秘を操る者、ジェイス》を追放する選択肢(1)は、《包囲サイ》を展開する選択肢(2)よりも優れている。(1)は《真実を覆すもの》に対して無防備にならず、オスカーの継続的なカードアドバンテージ獲得の機会を奪うからだ。

時を越えた探索

選択肢(3)は一定のリスクが伴う。オスカーが《真実を覆すもの》を手札に抱えておらず、《神秘を操る者、ジェイス》の[+1]能力を自分を対象として起動し、選択肢(1)なら妨害できたはずの《時を越えた探索》を唱える可能性が大いにある。防ぐこともできたテンポとカードアドバンテージをオスカーに与えてしまうのだ。ところが、この選択肢には即座にゲームに勝てる可能性も備わっている。わずかに不利、あるいは拮抗していると思われる状況下で勝てるチャンスが。

さて、技術的に堅実なプレイとネクストレベルのプレイ。どちらを選ぶべきだろうか?

情報をかき集める

情報 その1 : 《神秘を操る者、ジェイス》は真実をささやく

神秘を操る者、ジェイス真実を覆すもの

ここまでに収集した情報を活用していこう。まず、オスカーは《神秘を操る者、ジェイス》の能力の対象を自分にしている《神秘を操る者、ジェイス》が除去された場合、《時を越えた探索》の「探査」コストが不足するのは明らかなのに、だ。この情報から、ある強固な確信が得られる。彼は《真実を覆すもの》を後続に控えさせて勝利を狙っている。よってこの時点で《包囲サイ》を展開するプレイは選択肢から完全に外れる。

情報 その2 : オスカーの技量

オスカーは非常に優れたマジックプレイヤーであり、ハイレベルな戦略や打ち消し戦略への理解がある。今回の事例においては、これがもっとも重要な情報のピースかもしれない。

情報 その3 その4 : 手札と対戦相手の情報

包囲サイ

オスカーは、《完全なる終わり》ともう1枚を除き、こちらの手札の中身を知っている。何もせずにターンを渡せば、彼は何かを構えていることをすぐに察知するはずだ。彼は私のことをよく知っており、もし何も構えるものを持ってなければ、《包囲サイ》を叩きつける傾向にあるプレイヤーだと承知している。オスカーもまた対戦相手である私に関する知識を持っており、”尖った”プレイよりも技術的に正しいプレイを重視することを把握しているのだ。

情報 その5 その6 : サイドボードの《神秘の論争》と手札の《白日の下に》

神秘の論争白日の下に殺戮遊戯

オスカーは私のデッキリストを知っており、サイドボードに《神秘の論争》が3枚あることも認識している。仮に引き込んでいれば、何もせずにターンを渡すという選択肢をとらせるであろう呪文だ。さらに、こちらの手札に《白日の下に》があることも明かされている。このターン中に《真実を覆すもの》を解決させなかった場合、アンタップインの土地を引かれると《殺戮遊戯》によって永久に使えなくなってしまう。

私の結論

ここまでの情報をひとつの結論に導こう。相手は何かしら構えられていることを察知するだろうが、次のターンの展開はおそらくこうだ。オスカーは《神秘の論争》で打ち消されるだろうと思いながら《真実を覆すもの》を唱えて勝利へ向かう。

これまでに列挙した根拠から考えるに、オスカーがこの展開を選択し、選択肢(3)を選んだ私がこのゲームに勝てる可能性はかなり高いだろうと思う。こういった経緯から実際に私は選択肢(3)を選び、ほかの選択肢だったら厳しい展開になっていたであろうゲームにたちまち勝利した。

オスカー視点で見たほかの可能性

では何が違っていたら選択肢(1)を選ぶことになっていただろうか?

神秘を操る者、ジェイス

オスカーが《神秘を操る者、ジェイス》の能力の対象を自分自身にしていたら、選択肢(3)は無意味なものになっていただろう。ライブラリーアウトさせて即刻勝利する見込みが立たないからだ。

対戦相手がオスカーでなかったとしても、選択肢(3)を選んでいた可能性はあるだろう。しかし、今回のケースでは、オスカーに関する前知識がプレイを選択する最大の決め手となった。たいていの場合は《神秘を操る者、ジェイス》を追放してゲームを続行するだけだっただろう。しかし、オスカーと対戦しているという状況を踏まえたからこそ、自分が標準的だと思うプレイから逸脱するという決断が下せた。

まとめ

具体例を通じてネクストレベルのプレイを検討するタイミング、そのプレイの仕方を解説してきた。要約しておくと、ネクストレベルのプレイを画策する場合、自ら判断することが求められるが、一般的に以下の事項を評価することになる。

リスク

危険因子

リスクになり得るものをいくつか列挙してみよう。カードアドバンテージの損失、テンポの損失、あるいはゲームの敗北も含まれる。どんなリスクについても言えることだが、ゲームの状況が不利であるほどリスクは小さくなる。すでに敗色濃厚だとしても、イチかバチかのネクストレベルのプレイで形勢を逆転できる可能性があるなら、成功する確率が低くともそれに懸けるべきだ。

反対に、明らかに有利である状況では、成功する確率がある程度あるとしても、Youtubeの名場面集に載るような派手なプレイはしない方が良いだろう。技術的に堅実な判断を下した方がゲームの仕上げには適しているはずだ。

リターン

苦痛の報償

基本的にリターンはリスクの裏返しだ。リスクになり得るものが全てリターンになり得る。テンポの獲得、カードアドバンテージの獲得、わずかながらの追加ダメージ、あるいはゲームの勝利などだ。

成功する確率

多様な洞察力

成功する確率を合理的に見積もるには、手元にある情報を使って、当てずっぽうでない推測をする必要がある。これは意思決定のなかで最も捉えどころのないものであるし、確定できない要素も数多いが、その推測はみなさんの手に委ねられている。

その際に根拠となるのは、対戦相手は誰か、相手が選択しているゲームプランは何だと思うか、相手の手札には何があるだろうか、相手のライブラリーには何があるだろうか、相手は緊張しているだろうか、などである。このようにプレイに影響する要素は多く存在している。

おわりに

“ネクストレベル”と呼ばれるプレイの本質を実感してもらえただろうか。そういったプレイを自身のゲームプレイに組み入れる方法・タイミング・価値への理解を深めてもらえたら幸いだ。

では、戦場で会おう。

カスパー・ニールセン (Twitter)

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Kasper Nielsen

Kasper Nielsen カスパー・ニールセンはデンマーク出身のプロプレイヤー。小さなころから大舞台での成功を夢見ていたニールセンは、グランプリ・ユトレヒト2017で自身初となるトップ8進出を果たすと、後にチームメイトとともにグランプリ・リヨン2017でもトップ4に入賞。プロツアー『ラヴニカのギルド』ではボロスアグロを駆り、念願のプロツアー決勝ラウンドへとたどり着いた。 Kasper Nielsenの記事はこちら