Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2020/4/1)
はじめに
やぁみんな!ホセバ・ガルシア/Joseba Garcia(Elfkid)だ。またモダンの記事をお届けするよ。
今回取り上げたいのは《虚ろな者》デッキ、ホロウワンだ。Twitterをフォローしてくれている人なら知っているかもしれないけど、最近はずっとこのデッキの調整をしていて、みんなの目を引くようなデッキリストを何度か投稿してきた。
だけど、本当に紹介したデッキは強いのか疑問に思う人もいるだろう。今回はその真相を確かめてみることにしよう。
そもそもホロウワンって……?
ホロウワンがどんなデッキか知っている人も多いだろうけど、かつてのホロウワン、そしてこのデッキにどんな変化が起きたのかを念のため少しだけ話しておこう。
黒赤ホロウワンの強さの源は、《虚ろな者》と「手札を捨てることを肯定するカード」にある。後者の例を挙げると、《黄金牙、タシグル》や《グルマグのアンコウ》などが該当するね。
元祖デッキリスト
まずは行弘 賢が以前に使用していたデッキリストを見てもらおう。
1 《沼》
3 《血の墓所》
1 《踏み鳴らされる地》
4 《血染めのぬかるみ》
2 《樹木茂る山麓》
1 《乾燥台地》
1 《沸騰する小湖》
3 《黒割れの崖》
-土地 (18)- 4 《炎刃の達人》
4 《恐血鬼》
4 《炎跡のフェニックス》
4 《虚ろな者》
4 《通りの悪霊》
1 《黄金牙、タシグル》
3 《グルマグのアンコウ》
-クリーチャー (24)-
ところが、2019年8月26日。ウィザーズは《信仰無き物あさり》を禁止にする判断を下し、ホロウワンは姿を消した……。
しかし今は違う!『テーロス還魂記』で《アゴナスの雄牛》が収録されたんだ!
この生まれ変わったアーキタイプにおいて、《アゴナスの雄牛》はキーカードのひとつだ。そして、このデッキを蘇らせた立役者はもう一人いる。『モダンホライゾン』で登場した《歴戦の紅蓮術士》だ。
デッキの核
さて、ここからはホロウワンに欠かせない特に重要なカードたちを紹介しよう。その後、ホロウワンのさまざまな構成を解説していく。
手札を捨てる手段
《燃え立つ調査》や《ゴブリンの知識》は《虚ろな者》を1~2ターン目に0マナで唱えられるようにしてくれる(ときには2体以上出ることもある!)。それに、手札から捨てられた《炎跡のフェニックス》や《アゴナスの雄牛》は墓地から再利用できるから、実質的にリソースを損しない/増やす呪文になる。ランダム性が伴うけど、ホロウワンはその能力を活かせるように構築してあるから、思うほどランダム性は問題にならない!
デッキと噛み合った有用なクリーチャー
この3種のクリーチャーたちは、冒頭からこれまでに紹介してきたカードと相性が良い。《炎刃の達人》は優秀なアグロカードで、本来のゲームプランを進めている間にプレインズウォーカーや相手のライフを攻めることができる。
《通りの悪霊》は《虚ろな者》を2マナ軽くするだけでなく、《アゴナスの雄牛》の「脱出」墓地コストの1枚になってくれる。《炎跡のフェニックス》は「獰猛」を達成できる《虚ろな者》や《アゴナスの雄牛》を展開すれば墓地から戻ってくるんだ!
大型クリーチャー
このデッキのフィニッシャーだ。《虚ろな者》は最速で1ターン目に戦場に出る。1体だけのこともあるし、複数並ぶこともある。一方、《アゴナスの雄牛》は中盤から終盤向けのカードだ。早ければ3ターン目に「脱出」でき、新鮮な3枚のカードを引きつつ《炎跡のフェニックス》を蘇らせることもできる。しかも手札を捨てているから、ドローした3枚の中に《虚ろな者》が入っていたら唱えられることもある!
除去
このカードについて今さら語る必要はないだろうね。序盤の除去に使っても良し、ライフをつめるために使っても良しだ!
さて、じゃあ生まれ変わったホロウワンの構成をいくつか見ていこう。
多彩な構成
赤単徴兵ホロウワン
まずはサフロン・オリーヴ/Saffron OliveがMTGGoldfishに投稿した衝撃的なデッキを紹介しよう。自分も実際に使用して、いくつか変更を加えてみた。完成したリストがこれだ。
※(編集者注:Magic Onlineでインポートする際、《ドラゴンの爪》が認識されない場合がございます。インポートした後、漏れがないかご確認ください。)
気づいたと思うけど、見慣れないカードがいくつか入っている。《嵐の伝令》と《エルドラージの徴兵》は強烈なシナジーを持っていて、このコンボは手札を墓地に送れるカードたちと相性が良い。
とても魅力的なデッキだったけど、《エルドラージの徴兵》を捨てる手段がなくて困る場面が何度かあった。そこで《嵐の伝令》と《エルドラージの徴兵》のパッケージは諦めることにし、別の構成を試すことにした。
イゼットホロウワン
1 《島》
2 《蒸気孔》
4 《沸騰する小湖》
1 《乾燥台地》
1 《血染めのぬかるみ》
3 《尖塔断の運河》
2 《焦熱島嶼域》
-土地 (18)- 4 《炎刃の達人》
4 《バザールの交易魔道士》
4 《炎跡のフェニックス》
3 《歴戦の紅蓮術士》
4 《虚ろな者》
4 《通りの悪霊》
3 《アゴナスの雄牛》
-クリーチャー (26)-
※(編集者注:Magic Onlineでインポートする際、《ドラゴンの爪》が認識されない場合がございます。インポートした後、漏れがないかご確認ください。)
初めて青を足した作品だ。手ごたえは良く、《イゼットの魔除け》はまさに求めていた1枚だった。しかし、《バザールの交易魔道士》は《アゴナスの雄牛》が3枚しかない構成では採用に値するほどの強さを発揮できなかった。《アゴナスの雄牛》を4枚にしたら、デッキのパフォーマンスは格段に上がったけど、相変わらず《バザールの交易魔道士》の問題は解決できなかったね。このカードは《虚ろな者》か《アゴナスの雄牛》を引けていないとイマイチなんだ。
だから《バザールの交易魔道士》を入れず、《歴戦の紅蓮術士》と《安堵の再会》を増やした構成に手を伸ばした。これが功を奏すことになった。
イゼットホロウワン(アップデート版)
※(編集者注:Magic Onlineでインポートする際、《ドラゴンの爪》が認識されない場合がございます。インポートした後、漏れがないかご確認ください。)
イゼットカラーの構成は今のところ上記のもので落ち着いている。メインデッキに関しては、少し変更を加えただけで元のリストとほとんど同じだ。《歴戦の紅蓮術士》と《アゴナスの雄牛》の4枚目を採用したのは大正解だった。《イゼットの魔除け》を入れているデッキなら《アゴナスの雄牛》は最大限まで採用すべきだと思うよ。
青を足すもうひとつのメリットは、サイドボードにも青のカードを採用できることだ。《夢を引き裂く者、アショク》と《霊気の疾風》を選んだのは、最近になって《原始のタイタン》デッキが数を増やしているからだ。どちらも青を足した恩恵と言えるね。青のデッキが増えると予想する場合は、《神秘の論争》を何枚か採用することを検討してみよう。
ラクドスホロウワン
※(編集者注:Magic Onlineでインポートする際、《ドラゴンの爪》が認識されない場合がございます。インポートした後、漏れがないかご確認ください。)
一番気に入っているリストだ。従来のラクドスホロウワンに近しいものだね。《恐血鬼》が入っているし、《黄金牙、タシグル》や《グルマグのアンコウ》といった墓地をコストにする大型クリーチャー枠には《アゴナスの雄牛》と《死の飢えのタイタン、クロクサ》が代わりに採用されている。
新たなフィニッシャーたちは従来のものよりもデッキとのシナジーが大きい。《グルマグのアンコウ》や《黄金牙、タシグル》は、《燃え立つ調査》や《ゴブリンの知識》を唱えた後に手札に残っていないと唱えられなかった。だけど、現在のフィニッシャーたちは手札から捨てたとしても墓地から唱えられるんだ。《安らかなる眠り》や《虚空の力線》は相変わらず大きな問題だけど、《安らかなる眠り》の採用数は減ってきているから、今こそラクドスホロウワンを選ぶべきときじゃないかな。
黒を足すことで、5色人間やその他のアグロデッキと戦いやすくなる。《致命的な一押し》や《集団的蛮行》をサイドボードに採用できるからだ。《致命的な一押し》は除去として一級品だし、《集団的蛮行》は自らの手札を捨てつつ、クリーチャーを除去したり相手の手札を破壊できたりする。
《発掘》を採用しているから、《恐血鬼》などと入れ替える形で《稲妻の骨精霊》を何枚か採用しても良いだろう。この2枚のシナジーはとんでもないからね!
サイドボードガイド
ラクドスカラーの構成は一番のお気に入りだし、個人的には紹介した3つのなかで最強だと思うから、ここからはラクドスカラーのサイドボードガイドを書いていく。もし赤単やイゼットカラーの構成でのサイドボーディングが気になる場合は、Twitterで気軽に聞いて欲しい。喜んでお答えするよ!
アミュレットタイタン
対 アミュレットタイタン
あまり相性は良くないと思っている。今のアミュレットタイタンはブロッカーが増えているし、着地した《原始のタイタン》は対処できない。だからここで狙うべきは、とにかくスピード勝負をすること、あるいは《血染めの月》を設置することだ。
《炎刃の達人》と《燃え立つ調査》はこのマッチアップでもっとも頼りになるカードだから覚えておこう。《発掘》をサイドアウトする理由は、《ボジューカの沼》で無力化されてしまうし、「サイクリング」するだけでは役割が狭すぎるからだ。
赤単果敢
対 赤単果敢
こっちには赤単果敢に有効なカードが揃っているから、相手からすれば2ゲームを勝ち取るのは難しいだろうね。《ドラゴンの爪》は、一気にゲームにケリをつけてくれる《歴戦の紅蓮術士》や《アゴナスの雄牛》を見つけ出す時間を稼ぐ。
おそらく相手は《虚ろな者》対策として《削剥》を入れてくるだろうから、《虚ろな者》をエサにして《削剥》を釣りだし、それから《ドラゴンの爪》を展開だ。サイドアウトするカードだが、《恐血鬼》はブロックできないからで、《通りの悪霊》はアグロ相手にライフを失いたくないからだ。
バント石鍛冶
対 バント石鍛冶
難しい相手だ。《悪ふざけ》をサイドインしたこともあったけど、相手は《石鍛冶の神秘家》だけを頼りにしているわけじゃないから、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》や《氷牙のコアトル》などで粘り勝ちされてしまう。もしかしたら《虚空の力線》が有効なのかもしれない。《致命的な一押し》も選択肢として考えられるね。
《流刑への道》を持つ相手には《発掘》は好ましくない。《集団的蛮行》は手札破壊、除去、ダメージ源の役割を担う点で評価している。このマッチアップを経験したことがあって、適切なアプローチ方法を知っている人がいたらTwitterで教えて欲しい!
ウルザ系
ディミーアウルザ
対 ディミーアウルザ
シミックウルザ
対 シミックウルザ
《燃え立つ調査》が弱いマッチアップだ。ディミーアであれ、シミックであれ、相手のデッキには墓地で機能するカードが多く含まれているからね。シミック相手には《致命的な一押し》をサイドインして、《湖に潜む者、エムリー》や《氷牙のコアトル》に対抗する。
《炎刃の達人》は《大魔導師の魔除け》にコントロールを奪われるから注意が必要だ。《ゴブリンの知識》と《炎刃の達人》で大ダメージを与えたいときは気をつけよう。
エルドラージトロン
対 エルドラージトロン
均衡した相性だね。早い段階での《大いなる創造者、カーン》や後手のときの《虚空の杯》は厄介だ。でもこの2点を除けば、《死の飢えのタイタン、クロクサ》は相手のクリーチャーよりサイズが大きいし、《アゴナスの雄牛》も渡り合えるサイズを持っている。《炎刃の達人》を《発掘》できるタイミングがあったら、ぜひ実行しよう。《大いなる創造者、カーン》にプレッシャーをかけるカードとしてうってつけだ。
エルドラージトロンは《虚空の力線》をサイドボードに有している。墓地を利用する大型クリーチャーを1枚ずつサイドアウトし、《悪ふざけ》で対処できる《墓掘りの檻》しか持っていないことを祈ろう。
デスシャドウ系
対 デスシャドウ系
たいていの《死の影》デッキ(デスシャドウ)は《ウルヴェンワルド横断》《瞬唱の魔道士》《グルマグのアンコウ》などが入っているため、真っ先にサイドアウトしたいのは《燃え立つ調査》だろう。デスシャドウやジャンドに対しては、《死の飢えのタイタン、クロクサ》と《アゴナスの雄牛》を駆使した長期戦にもつれ込ませたい。いずれのカードもこれらのデッキに極めて強く、《歴戦の紅蓮術士》もトップデッキ勝負になったときに頼りになるクリーチャーだ。
4色型もグリクシス型も基本土地を1~2枚しか採用していないから《血染めの月》が有効だ。《虚空の力線》が《ウルヴェンワルド横断》型にどれほど効果的かはわからないけど、《グルマグのアンコウ》と《瞬唱の魔道士》を擁するグリクシス型に有効なのは間違いない。《思考掃き》も弱体化させられる。だってホロウワンのプレイヤーを対象にとりたくないだろうしね!
4色型と対戦するときは《致命的な一押し》を入れよう。相手のクリーチャーはどれも2マナ以下だ。
ジャンド
対 ジャンド
ジャンドはデスシャドウ系とおおよそ同じで、違うのは《虚空の力線》をサイドインしないことだ。《致命的な一押し》は《漁る軟泥》や《タルモゴイフ》に対して欲しいだけでなく、終盤戦では《死の飢えのタイタン、クロクサ》の対処にも使える。
ゲームプランはデスシャドウ戦とほぼ同じだ。《アゴナスの雄牛》や《死の飢えのタイタン、クロクサ》で長期戦を制する。
おわりに
今回も楽しく記事を書かせてもらった。みんなも楽しんでくれたかな?ホロウワンは本当に使っていて楽しいし、1ターン目から《虚ろな者》を2体並べたりできるド派手なデッキだ。
何か気になることがあったら下記のTwitterで直接コンタクトをとって欲しい。
じゃあまたね!お元気で!