Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2020/4/7)
はじめに
今日紹介するアーキタイプは古くからあるものだけど、今現在とても立ち位置が良いと思っているものだ。パイオニアのバントスピリットはプレイヤーズツアーからずっと環境に存在している。当時は赤単やスゥルタイが多い環境だったけれど、今やディミーアインバーターが圧倒的だ。最近になり、白単信心と緑単信心も結果を出して数を増やしている。
飛行部族デッキにとっては、赤単やスゥルタイよりも今人気の3つのデッキのほうが戦いやすい。除去が多くてカードアドバンテージを稼げるデッキ、あるいはとてつもなく速いデッキには基本的に当たりたくないんだ。バントスピリットはクリーチャーが多いデッキの割にはそこまで速くないけど、若干の妨害ができてインスタントタイミングで動ける性質から、特定のキーカードを通すことに大きく依存しているデッキにはめっぽう強い。
バントスピリットについて
デッキリスト
ごく一般的なデッキリストだね。メインデッキを変更する余地はあまりない。4枚から減らすとすれば、《幽体の船乗り》《ネベルガストの伝令》《無私の霊魂》だ。空いた枠に入れるカードとしてよく見かけるのは《厚かましい借り手》、あるいは《拘留代理人》や《悔恨する僧侶》だね。みんなが予想するメタゲームに合わせて調整すると良いだろう。未知のフィールドだとすれば、それぞれ4枚ずつの構成が良いと思う。
デッキの細部
1マナ域
《霊廟の放浪者》は優秀な能力が詰め込まれている。大きなプレッシャーをかけられるし、打ち消し能力を煩わしく思うデッキは少なくない。たとえば、《時を越えた探索》を打ち消されずに唱えようと思ったら相当苦労するよ。
《幽体の船乗り》はそこまで印象的なカードではないけど、ロードクリーチャーを一層強力なものにするには1ターン目の動きが必要なんだ。1マナのクリーチャーが展開できていないと、2ターン目の《至高の幻影》の価値は大幅に下がってしまう。
また、《鎖鳴らし》が戦場にいなくても瞬速を持っているから、《ネベルガストの伝令》と組み合わせて相手のターンにクリーチャーをタップすることで、ダメージレースを制しやすくなる。ドロー能力は長期戦になるゲームで重宝するよ。
ロードクリーチャー
解説せずともわかるだろう。こいつらが数ターン生き残っているとすれば、それはもうほとんど勝ったようなものだ。《集合した中隊》を唱えるときに、ほぼ毎回めくれて欲しいカードだね。例外があるとすれば、スタックに積まれている重要な呪文を《呪文捕らえ》で打ち消したいときだろう(厳密には打ち消しではなく追放。だから本来なら打ち消されない《突然の衰微》も”打ち消す”ことができる)。
《鎖鳴らし》
このクリーチャーは序盤でも終盤でも素晴らしい。序盤なら、後続のスピリットたちをインスタントタイミングで唱えられるようになる。終盤なら、相手の除去からロードクリーチャーを守ってくれるんだ。
《無私の霊魂》
全体除去に対して有効なのはもちろん、このデッキではロードクリーチャーや《呪文捕らえ》を守ることがとても重要なので、《無私の霊魂》は非常に使い勝手が良い。ミラーマッチのようにクリーチャーデッキ同士の戦いでは、戦闘で大量のクリーチャーが相撃ちになる状況でその能力が活躍する。
《ネベルガストの伝令》
マナレシオの観点で見ると、間違いなく《幽体の船乗り》と並んでデッキ内で最弱のカードだ。だけど、ダメージレースで競り勝つ際のキーマンになる。それに、《呪文捕らえ》と《ネベルガストの伝令》を同時に構える動きはとても強力だ。相手が《呪文捕らえ》を警戒して打ち消したいような呪文を唱えてこなかったら《ネベルガストの伝令》を出すんだ。
《呪文捕らえ》
このカードはスピリットデッキでなくても採用されるほどの強さを持っている。ただし、理想的にゲームが運んでいれば《呪文捕らえ》をプレイするか別のスピリットをプレイするかで選択肢があるため、そのマッチアップでキーとなるカードを把握しておく必要がある。
仮にこのカードがなかったとすれば、バントスピリットの扱いやすさは段違いだっただろう。メインデッキにある妨害要素はこれだけだからね。だけど、相手からすれば戦いづらいカードでもある。先ほど言ったように、《呪文捕らえ》を守り、獲得したテンポとカードアドバンテージを損なわないように、《無私の霊魂》を並べておくことが大切だ。《霊廟の放浪者》も《呪文捕らえ》の護衛に大いに役立ってくれる。
《集合した中隊》
最後に紹介するのは、緑を足す理由となるカードだ。このデッキは3マナを超える呪文がこれ以外にないため、《集合した中隊》が見事に噛み合っている。当たりをめくるか土地をめくるかしかない。それにバントスピリットはシナジーデッキだから、ロードクリーチャーはできるだけ多く並べたいし、《ネベルガストの伝令》の誘発型能力を連発させたい場面もある。
直観的には、《集合した中隊》を唱えるタイミングは相手のターン終了時だと思うだろう。しかし実際には状況に左右される。ときには戦闘前メインフェイズで唱えて、《霊廟の放浪者》のパワーを最大限まで引き上げたり、ロードクリーチャーを当てて最大のダメージを狙う。あるいは、相手の呪文に対応して《呪文捕らえ》がめくれることを期待することもある(除去なら《鎖鳴らし》でも良いね)。相手のクリーチャーをタップしたいこともあるだろう。そういうときは相手が攻撃クリーチャーを指定する前に《集合した中隊》を唱える。
そして最後に、これが一番難しいんだけど、相手が全体除去を唱えたときだ。《呪文捕らえ》や《無私の霊魂》が(あるいは全体除去を無力化できるならロードクリーチャーが)めくれることを期待して全体除去の解決前に唱えるのか。それとも、全体除去を解決させた後に唱えて、《集合した中隊》からめくれたクリーチャーの安全は確保し、全体除去に巻き込まれるクリーチャーを増やしてしまう大惨事を避けるのか。このどちらの筋書きをたどるのかを僕らは考えなくちゃいけない。
マジックにおいては、各シナリオにおける定石を示すことは難しい。だから練習を最高の友として、直観を磨くことが大切だ。ゲームが終わるたびに、キーとなったターンに違うプレイをしていたらどうなっていたかを分析してみよう。
ひとつ大切なアドバイスをしておくと、自分が今からとろうとしているゲームプランが本当に勝ちにつながるのかを考えること。ありがちなミスは、裏目がないプランを選ぶあまりに、最終的に勝てる状況につなげられないパターンだ。ときにはリスクをとったほうが良いこともある。各ゲームプランの勝率を見積もり、その見積もりを直観でできるようになるには、このバントスピリットというデッキがピッタリだ。
サイドボードガイド
ディミーアインバーター
対 ディミーアインバーター
墓地対策としては《安らかなる眠り》よりも《悔恨する僧侶》を優先している。相手の高速コンボを防ぎつつ、プレッシャーをかけられるからだ。《安らかなる眠り》をサイドインしなくとも、《神秘の論争》4枚、《軽蔑的な一撃》2枚、《霊廟の放浪者》4枚があるから、《時を越えた探索》を抑え込める。相手は除去や《神秘の論争》を増量させてくるので、《天穹の鷲》はサイドアウトしよう。
白単信心
対 白単信心
《軽蔑的な一撃》がヒットするカードは多くないが、バントスピリットにとって非常に厄介な《歩行バリスタ》と《秘儀術師のフクロウ》に対応できる。《拘留代理人》は、《太陽冠のヘリオッド》を3ターン目に展開するような、序盤からコンボの成立を目指す動きに待ったをかけられる。
スゥルタイ昂揚
対 スゥルタイ昂揚
このマッチアップでは《神秘の論争》はいらないだろう。相手は軽量の妨害を多く抱えているため、クリーチャーをできるだけ多く並べて《集合した中隊》で追い打ちをかけるのが最善の勝ち筋だ。ゲームを長引かせてしまえば、たいていは相手に有利に働いてしまう。
ミラーマッチ
対 ミラーマッチ
どのカードをサイドアウトするかは難しいけど、どれか1つを4枚抜くというよりは、まばらに少しずつ抜いたほうが良いと思っている。どのカードも特定の状況下で大活躍するポテンシャルがあるからだ。《集合した中隊》はゲームを決定づけるカードだが、ロードクリーチャーでパワーが上昇した《霊廟の放浪者》によって解決するのが一層困難になっている。一般的にゲームの勝敗を分ける要因は、どちらが多くのロードクリーチャーを戦場に送り込むかだ。
緑単信心
対 緑単信心
相手は爆発的なスタートが決められる可能性がある一方で、飛行クリーチャーから身を守る手段に乏しいため、こちらもロケットスタートを狙いたい。そのためにはマリガンを積極的に行おう。
ロータスブリーチ
対 ロータスブリーチ
《集合した中隊》をサイドアウトしているけど、これは単純にサイドボードから有効な非クリーチャー呪文を多く投入しているからだ。相手は後々になってマナを大量に生み出せるため、あまり重要ではない呪文に対して《神秘の論争》を放ってしまって構わない。ある程度のプレッシャーを盤面に用意したら、相手の展開を滞らせることだけを考えれば良いだろう。
赤単アグロ
対 赤単アグロ
相性は良くない。相手にはこちらを上回る速度、そして軽量の除去もあるからだ。この状況を打開するには《集合した中隊》が最高のツールとなる。
黒単アグロ
対 黒単アグロ
同じアグロでも赤単ほどは相性が悪くない。黒単のほうが少し速度が遅く、ダメージレースで競い合える。後手では《呪文捕らえ》がやや悠長なので、何枚かサイドアウトして《ネベルガストの伝令》と《無私の霊魂》はすべてデッキに残しておいたほうが良いかもしれない。
おわりに
今日はここまでにしよう。今からバントスピリットを知ろうという人に役立ててもらえたら嬉しい。
勝率を直観的に見積もれるようになりたいなら、自信を持ってバントスピリットをおすすめするよ。
セバスティアン・ポッツォ (Twitter)