はじめに
みなさんこんにちは。
構築フォーマットを激変させた新メカニズム「相棒」はハンデスで落とされない実質8枚目の初手となり、レガシーにも多大な影響を与えています。
さて、今回の連載ではLegacy Super QualifierとLegacy Challengeの入賞デッキを見ていきたいと思います。
Legacy Super Qualifier #12148149
最高の《夢の巣のルールス》デッキを探せ
2020年5月7日
- 1位 Grixis Control
- 2位 Sultai Delver
- 3位 Sultai Delver
- 4位 Hogaak
- 5位 Grixis Delver
- 6位 Jeskai Delver
- 7位 Miracles
- 8位 Turbo Gyruda
トップ8のデッキリストはこちら
レガシーでは禁止に指定されているものを除き歴代すべてのカードを使用できるため、「相棒」をサポートする手段も豊富です。数多の優秀な軽量スペルがあるため《夢の巣のルールス》はアグロ~コンボまで幅広く採用されており、もっとも相性の良いデッキを見つけることこそが現環境での成功条件となっています。
Legacy Super Qualifier #12148149
「Grixis Delver」「Jeskai Delver」「Sultai Delver」「Miracles」「Grixis Control」
Grixis Delver
3 《Volcanic Island》
1 《Badlands》
4 《汚染された三角州》
4 《沸騰する小湖》
1 《カラカス》
3 《不毛の大地》
-土地 (19)- 4 《秘密を掘り下げる者》
4 《戦慄衆の秘儀術師》
2 《悪意の大梟》
-クリーチャー (10)-
『イコリア:巨獣の棲処』リリース直後から《夢の巣のルールス》を採用したDelver系は結果を残していました。
元々GrixisカラーはDelver系のなかでもミッドレンジ寄りの構成でしたが、《夢の巣のルールス》の登場によって《ミシュラのガラクタ》や《悪意の大梟》を使い回してアドバンテージを稼げるようになりその傾向がより顕著になりました。
☆注目ポイント
《夢の巣のルールス》によって《ミシュラのガラクタ》を使い回してアドバンテージを稼げるようになったため、よりロングゲームに強くなりました。《コラガンの命令》はミラーマッチで相手の《夢の巣のルールス》を対策しつつ、墓地に落ちた《夢の巣のルールス》を回収し、苦手とする《虚空の杯》を対策したりと要所で活躍します。
追加の土地としてサイドボードに採用されている《カラカス》はこのデッキにとって厄介な《自然の怒りのタイタン、ウーロ》対策であり、同時に《夢の巣のルールス》を除去から守ることもできるため今まで以上に重要なカードとなります。メイン、サイドと合わせて4枚採用されている《悪意の大梟》は《夢の巣のルールス》と相性が良く、ミラーマッチでは無類の強さを発揮します。
一見すると《ミシュラのガラクタ》と相性が悪い《無のロッド》ですが、《黎明起こし、ザーダ》を「相棒」とするZirda Bombermanが環境に一定数存在するため必須カードとなります。
Jeskai Delver
2 《Volcanic Island》
1 《Plateau》
3 《溢れかえる岸辺》
3 《沸騰する小湖》
2 《乾燥台地》
2 《カラカス》
4 《不毛の大地》
-土地 (20)- 4 《秘密を掘り下げる者》
3 《ルーンの母》
4 《戦慄衆の秘儀術師》
1 《翻弄する魔道士》
-クリーチャー (12)-
Jeskai DelverはStonebladeとのハイブリットとしてこれまで一定数存在していましたが、現環境のものは《夢の巣のルールス》を「相棒」にした全く新しい構成となっています。
このデッキで最初に大きな大会で結果を残したのはSneak and Showの名手として輝かしい成績を残しているJPA93ことJonathan Anghelescu選手であり、デッキの調整経緯や各カードの選択理由については彼自身の記事でも詳しく解説されています。
- 2020/4/24
- JPA93のジェスカイルールス ~デッキガイド~
- ヨナタン・アンゲレスク
☆注目ポイント
白を使うメリットは最良の「相棒」対策である《剣を鍬に》とコンボ対策になる《翻弄する魔道士》を採用できることです。《翻弄する魔道士》は予め「相棒」を指定しておくことで、多くのデッキに対して有利にゲームを進めていくことができるようになります。
《ルーンの母》は単体除去が中心の各種《夢の巣のルールス》デッキとのマッチアップで自軍の《翻弄する魔道士》や《夢の巣のルールス》を守る役割を果たし、1マナという軽さながら相手に追加のリソースを費やすことを要求します。
《剣を鍬に》は相手にライフを回復させてしまうため、速度重視のDelver系には合わずこれまでは2枚程度の採用に留まっていました。しかし《夢の巣のルールス》の登場により《ミシュラのガラクタ》などを使い回しアドバンテージを稼いでいくミッドレンジ寄りの構成にシフトしたため、最近はメインからフル搭載されています。
Sultai Delver
3 《Underground Sea》
1 《Bayou》
3 《霧深い雨林》
3 《汚染された三角州》
2 《新緑の地下墓地》
4 《不毛の大地》
-土地 (19)- 4 《秘密を掘り下げる者》
4 《敏捷なマングース》
1 《タルモゴイフ》
-クリーチャー (9)-
メタゲームが進み、《夢の巣のルールス》Delver系のミラーマッチにフォーカスしたタイプも見られるようになりました。
黒を足したことで優秀な軽量除去を採用でき、ほかのクリーチャーデッキに対しても強い構成となっています。
☆注目ポイント
《夢の巣のルールス》を「相棒」とするデッキはその恩恵を最大限に得るためにマナカーブを低く保ち、除去スペルは《剣を鍬に》、《致命的な一押し》、《稲妻》など単体のものが中心となっています。そのため除去耐性がある《敏捷なマングース》が再評価されています。「スレッショルド」すればDelver系の主力である《戦慄衆の秘儀術師》も止まります。
メインから《突然の衰微》を採用しているため、ほかのDelver系と比べて《虚空の杯》に耐性があります。Sultaiカラーは元々Delver系のなかでもミッドレンジ寄りでしたが、《夢の巣のルールス》の登場によって完全にテンポからミッドレンジにシフトしました。除去の性能で勝る黒を使っているためほかのDelver系には有利な構成となっていますが、《悪意の大梟》を採用したGrixis Controlや《終末》を使うMiraclesなどのコントロールに対しては分が悪くなります。
Miracles
2 《冠雪の平地》
2 《Tundra》
1 《Volcanic Island》
1 《神秘の聖域》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《沸騰する小湖》
1 《虹色の眺望》
1 《カラカス》
-土地 (20)- 2 《瞬唱の魔道士》
-クリーチャー (2)-
4 《思案》
4 《剣を鍬に》
2 《呪文嵌め》
3 《予報》
1 《対抗呪文》
1 《天使への願い》
1 《セヴィンの再利用》
4 《意志の力》
3 《終末》
3 《相殺》
4 《ミシュラのガラクタ》
1 《仕組まれた爆薬》
3 《アーカムの天測儀》
-呪文 (38)-
2 《赤霊破》
2 《夏の帳》
1 《Tropical Island》
1 《紅蓮破》
1 《天使への願い》
1 《花の絨毯》
1 《浄化の印章》
1 《仕組まれた爆薬》
1 《トーモッドの墓所》
1 《魂標ランタン》
1 《夢の巣のルールス》
-サイドボード (15)-
Delver系で活躍している印象がある《夢の巣のルールス》ですが、Death and TaxesやMaverick、TES、ElvesそしてMiraclesにも「相棒」として採用されています。
《夢の巣のルールス》の「相棒」条件を満たすために《僧院の導師》、《王冠泥棒、オーコ》、《精神を刻む者、ジェイス》といったフィニッシャー、プレインズウォーカーは不採用となり、従来のMiraclesと異なり低マナ域に寄せられています。
パーマネントでないスペルは制限されないため《終末》や《天使への願い》といった「奇跡」スペルや《セヴィンの再利用》などの強力スペルは使用可能であり、デッキとして成立します。《夢の巣のルールス》の性質上、このカードを「相棒」にしたデッキはDelver系やDeath and Taxesなどクリーチャー主体のデッキとなることが多く、《終末》などスイーパーが使えるMiraclesは良チョイスといえます。
☆注目ポイント
多くのデッキが《夢の巣のルールス》を「相棒」とするために低マナ域のスペルを多用している環境なので《相殺》の価値が上がりました。流石にあの《師範の占い独楽》のようにはいきませんが、ライブラリートップを確認できる《ミシュラのガラクタ》と相性が良く、フェッチランドと併用することでヒット率も上がります。《ミシュラのガラクタ》は《予報》ともシナジーがありカードアドバンテージを稼ぎやすくなっています。
プレインズウォーカーは採用されていませんが、《夢の巣のルールス》をはじめとした強力なパーマネントを再利用できる《セヴィンの再利用》は最近の白系コントロールでよく見られるスペルになりました。《セヴィンの再利用》と《カラカス》によって《夢の巣のルールス》を守りつつカードアドバンテージを稼ぎ、最終的に《天使への願い》で勝負を決めにいくのが現環境のMiraclesです。
Grixis Control
1 《冠雪の山》
1 《冠雪の沼》
3 《Underground Sea》
3 《Volcanic Island》
1 《Badlands》
4 《汚染された三角州》
4 《沸騰する小湖》
1 《不毛の大地》
-土地 (19)- 4 《若き紅蓮術士》
3 《悪意の大梟》
2 《戦慄衆の秘儀術師》
2 《瞬唱の魔道士》
-クリーチャー (11)-
2 《狼狽の嵐》
2 《虚無の呪文爆弾》
2 《無のロッド》
1 《ゴブリンのクレーター掘り》
1 《陰謀団式療法》
1 《赤霊破》
1 《苦花》
1 《仕組まれた爆薬》
1 《夢の巣のルールス》
-サイドボード (15)-
コントロールとされていますがGrixis Delverから《秘密を掘り下げる者》が抜けて《不毛の大地》やソフトカウンターも減り、よりミッドレンジに寄せられています。
コントロールといっても《夢の巣のルールス》を「相棒」にするためにプレインズウォーカーは不採用で、カードアドバンテージ源は《若き紅蓮術士》や《戦慄衆の秘儀術師》といったクリーチャーが中心です。
☆注目ポイント
《夢の巣のルールス》を「相棒」にしている関係でアドバンテージ源はクリーチャーが中心となっています。現環境には《戦慄衆の秘儀術師》や《瞬唱の魔道士》、《悪意の大梟》といった低マナでありながらアドバンテージを獲得できるクリーチャーが豊富です。
《夢の巣のルールス》を含めて墓地を活用するデッキなので、墓地対策をケアする必要があります。《若き紅蓮術士》は墓地に依存することなくクリーチャー・トークンが並ぶため、単体除去が中心の現環境では有力な勝ち手段となり得ます。
このデッキでもっとも印象的だったのはメインから採用されている『イコリア:巨獣の棲処』の青いカード、《心を一つに》でした。通常は《予言》と同様の効果で極めて平凡なドロースペルとなりますが、このデッキでは《若き紅蓮術士》と呪文1枚でコスト軽減の条件を満たすため1マナドロー2として使える機会が多くあります。
Legacy Challenge #12152347
覚めることのない悪夢
2020年5月10日
- 1位 Grixis Delver
- 2位 Zirda Snow
- 3位 Grixis Delver
- 4位 Mono Red Stompy
- 5位 Grixis Delver
- 6位 Sultai Delver
- 7位 Mystic Forge
- 8位 Miracles
トップ8のデッキリストはこちら
今大会も『イコリア:巨獣の棲処』リリース後のほかのレガシー大会と同様に、《夢の巣のルールス》を「相棒」にしたデッキが中心です。
《夢の巣のルールス》デッキ対それを無視できるデッキという極端な結果になっています。
Legacy Challenge #12152347
Zirda Snow
2 《冠雪の平地》
2 《Tundra》
1 《Savannah》
1 《Tropical Island》
4 《溢れかえる岸辺》
3 《霧深い雨林》
1 《汚染された三角州》
1 《吹きさらしの荒野》
1 《カラカス》
1 《古えの墳墓》
-土地 (19)- 3 《歩行バリスタ》
-クリーチャー (3)-
4 《思案》
4 《剣を鍬に》
2 《呪文貫き》
1 《夏の帳》
2 《セヴィンの再利用》
1 《至高の評決》
3 《意志の力》
3 《アーカムの天測儀》
1 《改良式鋳造所》
4 《厳かなモノリス》
3 《王冠泥棒、オーコ》
2 《時を解す者、テフェリー》
4 《大いなる創造者、カーン》
-呪文 (38)-
1 《歩行バリスタ》
1 《狼狽の嵐》
1 《夏の帳》
1 《解呪》
1 《至高の評決》
1 《意志の力》
1 《トーモッドの墓所》
1 《大祖始の遺産》
1 《液鋼の塗膜》
1 《玄武岩のモノリス》
1 《罠の橋》
1 《マイコシンスの格子》
1 《黎明起こし、ザーダ》
-サイドボード (15)-
《夢の巣のルールス》を活用したデッキがあまりにも多いため陰に隠れがちですが、強力な「相棒」はほかにもあります。
《黎明起こし、ザーダ》は《厳かなモノリス》と組み合わせることで無限マナを生み出すため、Bombermanに見られる「相棒」です。《黎明起こし、ザーダ》+《厳かなモノリス》+《歩行バリスタ》による無限ダメージコンボを勝ち手段としたSnow Controlが結果を残しています。
☆注目ポイント
かつてモダンで猛威を振るったSplinter Twin、最近ではパイオニアのDimir Inverterなどマジックの歴史上コンボによる勝ち手段を搭載したミッドレンジやコントロールは、多くのプレイヤーに好まれる傾向にあります。これらのデッキは対戦難易度が高く、安定した成績を期待できるためです。
プレインズウォーカーを多用するSnow Controlは守りの要となる《氷牙のコアトル》とお手軽アドバンテージ源兼プレインズウォーカーの牽制役であった《瞬唱の魔道士》を諦める必要がありますが、《黎明起こし、ザーダ》を「相棒」とすることはそれほど難しくありません。これにより《黎明起こし、ザーダ》と《厳かなモノリス》による無限マナから《歩行バリスタ》の無限ダメージという明確な勝ち手段を獲得しました。
対戦相手のアーティファクトの起動型能力を禁止にする《大いなる創造者、カーン》は《夢の巣のルールス》の活躍も相まって、環境の半数以上のデッキに対して有力な妨害手段として機能します。《ミシュラのガラクタ》のほかにも《ライオンの瞳のダイアモンド》や《水蓮の花びら》など何かしらのアーティファクトを採用しているデッキが多いためです。
《大いなる創造者、カーン》は勝ち手段となる《歩行バリスタ》のほかに、クリーチャーデッキをシャットアウトする《罠の橋》や相手をロック状態にする《マイコシンスの格子》など状況に応じて最適な1枚を手札に加えることができます。妨害手段が豊富でありコンボを揃えるのも容易なため、《夢の巣のルールス》の対抗馬として有力なデッキのひとつです。
総括
『イコリア:巨獣の棲処』リリース直後に開催されたLegacy Challengeでは、《夢の巣のルールス》を「相棒」にしたGrixis Delverが多数入賞したことで早い段階からそのカードパワーの高さが評価されていました。
その後Delver系だけに留まらずDeath and Taxes、Elves、TES、Miraclesなどもこのカードを「相棒」に採用し始めたため、現在は《夢の巣のルールス》を使うかそれらに有利なデッキを使うかの極端な環境となってしまいました。
カードプールが広大なレガシーでは「相棒」のメカニズム、特に《夢の巣のルールス》は強すぎるという意見が多く、5月18日に予定されている禁止制限告知で何かしらのテコ入れがあることが予想されます。
USA Legacy Express Vol.165は以上となります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!