はじめに
みなさんこんにちは。
カードプールの広いフォーマットにおいて「相棒」は強すぎるとの意見も多く見受けられましたが、今回の禁止改訂ではモダンはノーチェンジでした。「相棒」は確かに強力ですが、現在のモダンはさまざまなアーキタイプが結果を残していてバランスが取れている印象なので、もうしばらく様子を見るという判断は妥当だと思います。
さて、今回の連載ではModern Super QualifierとModern Challengeの入賞デッキを見ていきたいと思います。
Modern Super Qualifier #12155940
環境を定義する相棒
2020年5月16日
- 1位 Eldrazi Tron
- 2位 Boros Prowess
- 3位 Rakdos Prowess
- 4位 Jund
- 5位 Restore Balance
- 6位 RG Moon
- 7位 Heliod Combo
- 8位 Boros Prowess
トップ8のデッキリストはこちら
《夢の巣のルールス》を「相棒」にしたBoros/Rakdos Prowessが多数入賞し、その内1名が予選通過と安定した成績を残しています。
ProwessのほかにJundへも採用されており、「相棒」の条件を満たすためにデッキ構成にも大きな変化が見られます。
Modern Super Qualifier
「Boros Prowess」「Rakdos Prowess」「Jund」
Boros Prowess
モダンのアグロデッキの中ではBurnと同様に軽いクリーチャーとスペルが中心であり、Prowessはほとんどデッキ構成を変えることなく《夢の巣のルールス》の「相棒」条件を満たします。元々Mono Red Prowessは追加のドロー手段として《灼陽大峡谷》を採用していたこともあり、白マナを組み込んだマナ基盤を整えるのは容易です。
これまで中盤以降のアドバンテージ源であった《騒乱の歓楽者》を諦めることになりますが、確実にキャストできる《夢の巣のルールス》のほうが優れているでしょう。《ミシュラのガラクタ》などを使い回すことで手軽にアドバンテージを稼げるようになっています。
☆注目ポイント
元々軽いクリーチャーとスペルが中心で構成されていたため、《夢の巣のルールス》が「相棒」になってもデッキの内容に大きな変化はありません。相性を考慮して《炎の印章》など従来のデッキでは見られなかったカードも一部採用されています。
「果敢」をもつ《ケラル砦の修道院長》はこれまであまり見られなかったカードですが、このデッキではアドバンテージ獲得手段兼マナフラッド防止にもなっています。
同型やJundなどのクリーチャーを主体としたデッキが増加傾向にあり、環境に存在するほとんどのデッキが「相棒」を採用しているため、《流刑への道》がメインから採用されています。追放することで《夢の巣のルールス》自身も含めて再利用を防ぎます。
Rakdos Prowess
1 《沼》
2 《血の墓所》
1 《聖なる鋳造所》
4 《血染めのぬかるみ》
1 《樹木茂る山麓》
4 《黒割れの崖》
3 《灼陽大峡谷》
-土地 (19)- 4 《僧院の速槍》
4 《損魂魔道士》
4 《ケラル砦の修道院長》
1 《戦慄衆の秘儀術師》
-クリーチャー (13)-
4 《稲妻》
3 《塵へのしがみつき》
2 《コジレックの審問》
2 《思考囲い》
4 《魔力変》
2 《コラガンの命令》
3 《炎の印章》
4 《ミシュラのガラクタ》
-呪文 (28)-
アグロのBoros型と比べると、Rakdos型はハンデスや除去が多めに採用されているミッドレンジ寄りの構成となっています。
軽いクロックとハンデスの組み合わせはコンボデッキに強く、除去も優秀なため対クリーチャー戦も優秀です。ですがこのデッキの真価はハンデスに加えて墓地対策の《塵へのしがみつき》、《虚無の呪文爆弾》を採用できることにあります。
☆注目ポイント
多くのデッキが《夢の巣のルールス》を「相棒」として採用しているため、キャントリップかライフゲインしつつ墓地対策ができる《塵へのしがみつき》は問題なくメインに入るカードです。《虚無の呪文爆弾》は毎ターン墓地対策しつつアドバンテージが得られるので、ミラーマッチで輝きます。
《コラガンの命令》や《発掘》といった墓地に落ちた《夢の巣のルールス》を再利用する手段を持ち合わせているのもこのデッキの強みです。特に《コラガンの命令》は天敵である《虚空の杯》を対策しつつ、クリーチャー除去や墓地に落ちた《夢の巣のルールス》の回収するなどさまざまなマッチで使えます。
トップメタの一角であるBurnを意識していたようでサイドには《集団的蛮行》がフル搭載されています。
Jund
1 《森》
1 《山》
2 《草むした墓》
1 《血の墓所》
1 《踏み鳴らされる地》
4 《血染めのぬかるみ》
4 《新緑の地下墓地》
4 《黒割れの崖》
2 《育成泥炭地》
1 《怒り狂う山峡》
-土地 (23)- 4 《タルモゴイフ》
3 《死の飢えのタイタン、クロクサ》
2 《漁る軟泥》
-クリーチャー (9)-
Jundはモダンを代表するミッドレンジデッキで根強いファンも多く、大会では常に一定数見かけるアーキタイプです。《血編み髪のエルフ》の禁止解除以来コンスタントに結果を残し続けており、最近では《レンと六番》、《死の飢えのタイタン、クロクサ》などの新戦力にも恵まれていました。
基本的に環境が変わっても構造に大きな変化はなく、ミッドレンジらしくメタゲームに合わせて微調整を続けて生き残ってきたデッキでしたが、『イコリア:巨獣の棲処』の導入によって大きな変更が生じました。Burn、Prowessなどで採用されることの多い《夢の巣のルールス》は、ハンデスと除去で序盤をしのぎ中盤以降にカードアドバンテージで差をつけるJundのミッドレンジ戦略にもフィットしていたのです。
☆注目ポイント
強力な《夢の巣のルールス》に合わせ、Jundのデッキ構成は大きな変更が加えられました。最大の変更点は「相棒」を使用するために、《血編み髪のエルフ》と《ヴェールのリリアナ》が不採用となっていることです。必然的に《タルモゴイフ》や《死の飢えのタイタン、クロクサ》といったコストの軽いクリーチャーが多めに採用され、今までのミッドレンジ寄りの構成からアグロ寄りになっています。
《夢の巣のルールス》とのシナジーを度外視しても、アーティファクトの《ミシュラのガラクタ》とエンチャントの《炎の印章》はゲーム序盤から《タルモゴイフ》のサイズアップに役立ちます。
《コラガンの命令》は墓地に落ちた《夢の巣のルールス》を再利用できるため評価が上がったカードであり、メインから3枚と多めに採用されています。ただし、最近のBoros Prowessにはメインから《流刑への道》が採用されているため注意が必要です。
Modern Challenge #12155980
《夢の巣のルールス》と双璧をなす相棒
2020年5月17日
- 1位 Urza
- 2位 Scapeshift
- 3位 Dredge
- 4位 Rakdos Prowess
- 5位 4C Control
- 6位 Boros Burn
- 7位 Temur Scapeshift
- 8位 Niv Control
トップ8のデッキリストはこちら
強力な「相棒」は《夢の巣のルールス》だけではありません。《空を放浪するもの、ヨーリオン》はデッキ総数を80枚にするという条件がありますが、ミッドレンジ/コントロール/コンボを中心に採用され結果を残しています。
そのなかでも先々週にMOで開催されたModern Super Qualifierを制し、今大会でも入賞しているのは《空を放浪するもの、ヨーリオン》を「相棒」に据えたTemur Scapeshiftです。コンボベースのTitan Shiftと大きく異なり、《空を放浪するもの、ヨーリオン》によって《氷牙のコアトル》《豊かな成長》《アーカムの天測儀》などのキャントリップ持ちパーマネントを「明滅」させてアドバンテージを稼ぐ、コントロール寄りの構成になっています。
Modern Challenge
Temur Scapeshift
2 《冠雪の森》
1 《冠雪の山》
3 《ケトリアのトライオーム》
4 《蒸気孔》
2 《踏み鳴らされる地》
1 《繁殖池》
3 《神秘の聖域》
4 《霧深い雨林》
4 《沸騰する小湖》
2 《虹色の眺望》
2 《樹木茂る山麓》
1 《魂の洞窟》
2 《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》
-土地 (36)- 4 《氷牙のコアトル》
4 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
-クリーチャー (8)-
マナ加速して《風景の変容》や《原始のタイタン》に繋げていくビッグマナスタイルのコンボであるTitan Shiftと大きく異なり、カードアドバンテージを稼ぎながら《風景の変容》で勝利するコントロールコンボです。《豊かな成長》と《アーカムの天測儀》のおかげで多色デッキでありながら《血染めの月》に耐性があり、《謎めいた命令》など色拘束が強いスペルもキャストし易くなっています。
《風景の変容》コンボ以外にも《空を放浪するもの、ヨーリオン》や《自然の怒りのタイタン、ウーロ》、《レンと六番》の奥義、《謎めいた命令》+《神秘の聖域》の疑似ロックコンボなど、コントロールデッキとしても十分に勝てるフレキシブルさがこのデッキの魅力です。
☆注目ポイント
「相棒」として採用されている《空を放浪するもの、ヨーリオン》は《氷牙のコアトル》、《豊かな成長》、《アーカムの天測儀》といったカードを「明滅」させることで多大なアドバンテージを得ることができます。より多くのカードをドローできるように、マナを伸ばしつつこれらのパーマネントを揃え下準備していくことになります。
《ケトリアのトライオーム》は3つの基本土地タイプをもっていることでフェッチランドから探して場に出せるため、マナ基盤の安定性向上に貢献しています。「サイクリング」できるので《レンと六番》で使い回してカードアドバンテージを稼ぐこともできます。もちろん、山としてカウントされるので《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》を誘発させることも可能です。
サイドボードは《夏の帳》や《神秘の論争》など定番のカードで占められています。《嵐の乗り切り》はBurnやProwessといった速攻でライフを攻めてくるデッキ用のスペルです。特にスペルを多用することでクリーチャーをパンプラップするProwessとのマッチアップでは大量のライフを得ることができるため、コンボを決める、もしくはゲームをコントロールしきるまでの時間も稼ぎやすくなります。
総括
モダンではレガシーのように《夢の巣のルールス》が完全に環境を支配しているわけではないものの、今後フォーマットの多様性や健全性を損なうことがあれば何かしらの変更が加えられる可能性があると公式でも語られています。
現在お勧めのデッキは、やはり『イコリア:巨獣の棲処』の登場によって大きな変貌を遂げたJundです。《夢の巣のルールス》デッキと比べると速さでは劣るものの、Temur Scapeshiftも《空を放浪するもの、ヨーリオン》とキャントリップつきパーマネントの織りなすカードアドバンテージとコントロール要素、明確な勝利手段を持ち合わせているため好きなデッキの1つです。
USA Modern Express Vol.40は以上となります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!