アリーナ・オープンに向けて~サバイバルガイド~

Javier Dominguez

Javier Dominguez

Translated by Nobukazu Kato

原文はこちら
(掲載日 2020/5/29)

今週末はアリーナ・オープン!

やぁみんな!こんにちは!

今週末、史上初のアリーナ・オープンが開催される。アリーナ・オープンは2日制の大会であり、両日のフォーマットは若干の違いがある。2日目は2本先取(BO3)である一方で、初日は1本先取(BO1)で行われるんだ!つまり、BO3に慣れ親しんだプレイヤーにとっては、勝手が違う部分が出てくるってことだね。

闘技場の競技者

BO1の特徴

BO3とBO1とで特に大きく違うのは、サイドボーディングの欠如初手補正アルゴリズム、そしてこの2点を原因として作り出される独自のメタゲームだ。

サイドボーディングの欠如

サイドボーディング後のゲームがない。これはメタゲーム上の各デッキの立ち位置に影響を与える。なぜなら、BO3においては、サイドボーディング後の強さが、デッキパワーを測る重要な指標のひとつだったからだ。一般論ではあるけど、サイドボーディングの入れ替えが少ないデッキほど、BO1向けのデッキだといえる。わかりやすい例をあげるとすれば、《願いのフェイ》デッキやサイドボードが極端に弱い赤単のようなデッキだね。

義賊裏切りの工作員

ただ、ひとつ気を付けてほしいことがある。サイドボーディングをしないとはいえ、サイドボードにごくわずかな使い道を見いだせるデッキは多いということだ。《義賊》《裏切りの工作員》などでサイドボードにアクセスできるカードを奪うことがあるからね!

初手補正アルゴリズム

初手補正アルゴリズムの詳細を知ることはできないけど、わかっているのはBO1においてはゲーム開始時に”手札選択”が行われているということだ。つまり、単にライブラリーの上から7枚を引くのではなく、複数の初手を用意し、そのなかからデッキの土地と呪文の比率により近しいものが初手として配られるようになっているんだ。もうひとつ明らかになっているのは、このアルゴリズムにおいては色は考慮されておらず、呪文のタイプも差別化されていないということ。このアルゴリズムは土地か呪文かで判断しているってことさ。

この補正によって大きく恩恵を受けるデッキがある一方で、さほど恩恵を受けないデッキもある。たとえば、比較的土地が少ないデッキはマリガンをする機会が減るようになる。ゲームを始めるのに必要最低限の枚数の土地が初手に来ない確率が下がるからね。他方、恩恵が小さいのはマリガンがもともと少ないデッキ、ボロスサイクリングのようなデッキだ。

熱烈な勇者焦がし吐き鍛冶で鍛えられしアナックス

そのほかにこのアルゴリズムが有利に働くのは、単色のデッキだろう。単色ならば色事故もないし、タップイン土地が過剰な手札が来ることもない。このように、このアルゴリズムはあらゆるデッキの事故率を下げる一方で、すべてを等しく強化するわけではないんだ。

ここまで解説してきたサイドボーディングの欠如、初手補正アルゴリズム。この2点を踏まえれば、BO1においては単色デッキの立ち位置がかなりいいと考えるのは自然な流れだ。しかし、もうひとつ。古今東西、マジックにおいて大切な要素がある。それは2019年のミシックインビテーショナルに向けてBO1に打ち込んだ俺が得た教訓だ。

独自のメタゲーム

マジックの大会に備えるなら、メタゲーム予想は絶対に欠かせない。いくらいいデッキであっても、誰しもがそれを仮想敵としているなかでそのデッキを使おうと思うだろうか?それだったら、多少デッキパワーを下げても警戒されていないデッキを使ったほうがいいんじゃないだろうか?メタゲーム予想とは常に難しいものだ。それはBO1においても当てはまる。

ここまでの結論をまとめておくと、サイドボードがないことや手札補正アルゴリズムがあることから、赤単のようなデッキがBO1では強そうだ、ということだった。しかし、これは自分以外のプレイヤーにとっても知りえることだ。周囲がアグロの流行を予想し、アグロに特化したカードを詰め込むなかでも本当に赤単アグロはいい選択だといえるのだろうか?多分そうじゃないだろう

こういった理由から、自然とアグロデッキに強く、かつミラーマッチ用のカードに若干の枠を割けるデッキを使うことがBO1に対する最善のアプローチであることが多い。過去の話になってしまうけど、かつてのエスパーコントロールはこの条件に当てはまる好例だった。《ケイヤの誓い》《ケイヤの怒り》といった赤単などのアグロデッキにめっぽう強いものが含まれていたんだ。

ケイヤの誓い

《ケイヤの誓い》はBO1で特に評価が高くなるわかりやすい例だ。対アグロ戦ではゲームのほぼどの時点で引いても嬉しいものであり、メインデッキから投入できる”対策カード”でありながら、《覆いを割く者、ナーセット》などのプレインズウォーカーの対処にも使えるため、完全に腐ることはない。BO1のデッキ構築でとても大切なのは、《ケイヤの誓い》のように、想定するマッチアップでは効果抜群であると同時に、決して完全に腐ることがないカードでデッキを埋めるようにすることだと思う。

あらためてここまでの話をまとめておこう。BO1においては、赤単アグロなどが強化され、《願いのフェイ》のためにサイドボードの大半を埋め尽くすという高い代償を実質的に無視できるティムールアドベンチャーなども立ち位置がよくなると思われる。また、ジェスカイルーカがBO1においても非常に有効な選択肢であることも確かだ。他方、どんな敵が来ても適切なサイドボーディングができることを強みにしているバントヨーリオンは間違いなく弱体化する

ここまでの議論を踏まえて、”あの”話題へと移っていこう。

アリーナ・オープンで使うデッキは?

俺がデッキに求める条件は、高速のアグロデッキと速度勝負できる爆発力があることだ。同時に、アリーナ・オープンで特に使用率が高いであろうデッキを踏まえた選択をしなくちゃいけない。具体的に多いと思っているのは、アグロ戦略(《獲物貫き、オボシュ》)とヨーリオンデッキ(その大半はジェスカイルーカ)だ。

そして本番で使おうと思っているのが、このデッキだ。

ジェスカイルーカはBO3において明確なベストデッキの座についていて、その強みの多くはBO1でも十分に通用するものだと思う。だけど、上記のリストは若干の変更を加えている。

鍛冶の神のお告げ

そのひとつが、3枚採用された《鍛冶の神のお告げ》だ。これはジェスカイルーカにおいて《ケイヤの誓い》にもっとも近しい存在だから採用した。

《鍛冶の神のお告げ》は後手でもアグロデッキに対して遅れをとらないようにしてくれるし、ルーカミラーなどにおいても一定の役割が果たせる。《覆いを割く者、ナーセット》《銅纏いののけ者、ルーカ》の能力起動の回数を減らすことが一般的な使い方で、こういった使い道があるからこそBO1においては《空の粉砕》などよりもはるかに魅力的な選択肢になっているね。

否認

もうひとつの変更点が、1枚だけ採用した《否認》《否認》はあらゆるマッチアップで使えるという意味で《鍛冶の神のお告げ》と似ているんだけど、《否認》はヨーリオンデッキの《エルズペス、死に打ち勝つ》などを打ち消けせればそれが勝利に直結する。赤単アグロなどに対しても完全に腐ることはなく、随所で《舞台照らし》といった呪文を打ち消してくれるんだ。

ことBO1においては《否認》《ドビンの拒否権》よりも優れていると思う。色拘束が弱くて唱えやすいし、打ち消し合戦が起きて「打ち消されない」という文言がその唱えやすさに勝るなんてことは考えづらいからね。

アーク弓のレインジャー、ビビアン大いなる創造者、カーン

さらに変更点がもうひとつある。この変更点は《アーク弓のレインジャー、ビビアン》に対峙したときに実際に意味があったし、《大いなる創造者、カーン》に対しても同様のことが起きるだろう。BO1ではサイドボーディングをしない。だからこれらのプレインズウォーカーのコントロールを奪ったときに、たいていの状況を解決できるようなサイドカードを入れておいたんだ。《願いのフェイ》とそれでサーチできるカードも入っているのは、《アーク弓のレインジャー、ビビアン》の能力で全体除去にアクセスできるようにするためさ!

ジェスカイルーカを使いたくない/使えない人はどうしたらいい?

まっさきに思い浮かぶのは、素直に赤単オボシュを使うことだ。

赤単オボシュは合理的なデッキ選択だと思うけど、たいていのプレイヤーの目の敵にされている可能性がある。そこで、ジェスカイルーカを使いたくないという人におすすめしたいのが、ジャンド城塞だ。

ジャンド城塞はアグロデッキに対してもともと悪くない相性だし、クリーチャー除去を満載した相手に対してもさほど苦しまない。ジェスカイルーカなどと対戦したとしても、《パンくずの道標》《ボーラスの城塞》の2枚で常に勝てる可能性があるからね。《フェイに呪われた王、コルヴォルド》はクロックが大きくて早期決着に向いているし、危うい状況からでもサイズを引き上げることで一撃で倒せる力がある。

ジャンド城塞を試してみたいと思った人は、昨日公開されたばかりのマティアス・レヴェラットの秀逸な記事をチェックしてほしい。おすすめの記事だ。


今回も読んでくれてありがとう。アリーナ・オープンでの健闘を祈るよ!

ハビエル・ドミンゲス (Twitter / Twitch)

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Javier Dominguez

Javier Dominguez スペインを代表するプレイヤー。 グランプリトップ8入賞は6回。【グランプリ・パリ2014】と【グランプリ・ロッテルダム2016】で優勝も経験している。 プロツアーでもその力を発揮し、【プロツアー『戦乱のゼンディカー』】と【プロツアー『破滅の刻』】では9位に入賞を果たすなど、輝かしい戦績を誇る。【ワールド・マジック・カップ2016】では母国スペイン代表のキャプテンを務めた。 Javier Dominguezの記事はこちら