深海の開拓者 ジャイルーダコンボ~パイオニアデッキガイド~

Kelvin Chew

(編集者注:この記事は6月1日(月)の禁止改定告知前に書かれたものです。)

Translated by Nobukazu Kato

原文はこちら
(掲載日 2020/5/28)

はじめに

『イコリア:巨獣の棲処』のリリース以降、構築条件が達成しやすい《空を放浪するもの、ヨーリオン》《夢の巣のルールス》を筆頭として、「相棒」はパイオニアを席巻しています。「相棒」は8枚目の手札であると同時に、構築段階から意識すればその強力な効果を引き出すことが可能で、環境のトップデッキのほとんどが「相棒」を採用している状況です。

灯の分身たなびき織りの天使深海の破滅、ジャイルーダ龍王コラガン

本日ご紹介するのは、Super Qualifierで結果を出すようになってきているジャイルーダコンボです。このデッキを知ったのはMagic Onlineの5-0のデッキリストを眺めていたときでした。私はすぐに回してみることにしたのですが、特にロンドンマリガンとの相性の良さには驚きました。

このデッキのゲームプランはとてもシンプルで、マナ加速呪文を求めてマリガンをし、4ターン目に《深海の破滅、ジャイルーダ》を唱えるだけ。そして、頭数を稼げる《たなびき織りの天使》《灯の分身》がその効果でめくれることを期待し、横に並んだクリーチャーたちに《龍王コラガン》で速攻を与えてとどめを刺すのです。

難題の予見者

「相棒」が手札破壊されないという性質上、ジャイルーダコンボは《思考囲い》などへの耐性が備わっています。パイオニアにおいて《ジャイルーダ》への解答を持っているデッキは多くなく、ほかのフォーマットに比べて《クローン》することは非常に容易です。仮に相手が除去を持っていると思うのであれば、《ジャイルーダ》の前に《難題の予見者》を挟むことができます。

現在のデッキリスト

今現在、私がMagic Onlineで使用しているデッキリストがこちらになります。

お気づきのとおり、メインデッキに関しては現在の一般的なジャイルーダコンボとほぼ同じ構成です。メインデッキの呪文枠はよく調整されているため、変更を加えるとすればマナベースでしょう。《野望の試練》《轟音のクラリオン》を使うデッキが増えていることを受け、マナクリーチャーではなく《成長のらせん》や追加の《狼柳の安息所》を試したこともありました。

成長のらせん

ただ、《成長のらせん》で安定して追加の土地を置くには土地の枚数を増やさせねばならず、結果的に《クローン》系の呪文を数枚減らすことになります。そうなれば《深海の破滅、ジャイルーダ》の効果がハズれる確率が高まってしまうことでしょう。《森の女人像》《楽園のドルイド》《クローン》系と相性が良く、コピーすることで4ターン目に《ジャイルーダ》を唱えやすくなります。

たなびき織りの天使

私が最初にコピーしたMagic Onlineのデッキリストには入っていませんでしたが、《たなびき織りの天使》は採用すべきだと感じています。5枚目以降の《灯の分身》であり、《灯の分身》を引きすぎてしまったり、マリガンでライブラリーの底に送ったりしたときに、こういったカードの存在は必要です。それだけでなく、《龍王コラガン》を戦場に出して勝利するには、十分な数のクリーチャーが戦場に並んでいなければなりません。

カード選択とそのほかの採用候補

さて、ここからは一般的なジャイルーダコンボを改善しうるカード選択について解説しましょう。

メインデッキ

《爆発域》

爆発域

メインデッキで唯一変更したのが《爆発域》の採用です。《墓掘りの檻》《静寂をもたらすもの》《ドラニスの判事》といったコンボを妨害してくる厄介なパーマネントへの追加の解答として入れました。このデッキに無色の《爆発域》を含めるリスクはほぼ0です。

サイドボード

《ケンタウルスの養育者》

ケンタウルスの養育者

環境トップの一角であるボロスバーンにはこのカードが最善であると考えました。マナ加速を達成しつつ、3点回復することで《深海の破滅、ジャイルーダ》を唱えるまで生き長らえさせてくれます。必要であればコピーしたり《たなびき織りの天使》で「明滅」することも可能です。

《運命を紡ぐ者》

運命を紡ぐ者

《苦悶の悔恨》の枠には《運命を紡ぐ者》を選択しました。《ジャイルーダ》を対処できない単体除去は通常サイドアウトされるため、《運命を紡ぐ者》は生き残りやすく、相手の手札に打ち消しが複数ある状況なら《苦悶の悔恨》よりも優れています。

《一瞬》

一瞬

《墓掘りの檻》《静寂をもたらすもの》《ドラニスの判事》への最善の解答は《一瞬》だろうと思います。相手のターン終了時に目ざわりなパーマネントをバウンスしてコンボを決めてもよいですし、最悪でも4マナのキャントリップになります。

《霊気化》

霊気化

今はボロスバーンが多いですが、「英雄的」やオーラデッキの使用率が高くなってきたとすれば、《霊気化》がベストな対策となるでしょう。《ジャイルーダ》を唱えるまでの時間を稼げるだけでなく、打ち消されなければたいていはゲームをひっくり返せるはずです。

サイドボードガイド

ディミーアインバーター

対 ディミーアインバーター

Out

賢いなりすまし 賢いなりすまし 賢いなりすまし

In

運命を紡ぐ者 運命を紡ぐ者 運命を紡ぐ者

ディミーアインバーターには2つの型がありますが、《空を放浪するもの、ヨーリオン》型は呪禁を持つマナクリーチャーに触れる《野望の試練》を有しているため、やや戦いにくくなります。

難題の予見者

相手が《深海の破滅、ジャイルーダ》へ解答を持っていると思う場合は、複数枚用意できない限り、素直に飛び込むようなことは避けましょう。《難題の予見者》は相手のコンボを遅らせるだけでなく、《ジャイルーダ》の安全を確保できる強みがあります。

《思考囲い》で捨てさせられる可能性があるので、サイドボードと手札の両方に《ジャイルーダ》がいる場合は手札のものから使用していきましょう。

ボロスバーン

対 ボロスバーン

Out

賢いなりすまし 賢いなりすまし
龍王コラガン 龍王コラガン

In

ケンタウルスの養育者 ケンタウルスの養育者 ケンタウルスの養育者 ケンタウルスの養育者
ケンタウルスの養育者森の女人像

《ケンタウルスの養育者》がサイドボードに4枚欲しい理由はこのマッチアップにあります。ランプしながら3点ゲインできるのです。同じく《森の女人像》は「果敢」を持たないクリーチャーすべてをブロックでき、このマッチアップのベストカードといえます。ただし、《森の女人像》でブロックしたときに《ボロスの魔除け》で二段攻撃を付与されると、《ジャイルーダ》までの道のりが遠のいてしまうおそれがあるので注意が必要です。

基本的に《一瞬》をサイドインするのは、相手のデッキに《静寂をもたらすもの》を確認したときだけです。速攻がないと間に合わない状況はごくまれにしかないので、《ジャイルーダ》さえ唱えられれば《龍王コラガン》は必要ないと感じました。サイドアウトしているのはそういった理由からです。

アゾリウスコントロール

対 アゾリウスコントロール

Out

楽園のドルイド 楽園のドルイド
多面相の侍臣

In

運命を紡ぐ者 運命を紡ぐ者 運命を紡ぐ者

対コントロールの1ゲーム目のプランは、《難題の予見者》で打ち消し呪文を追放し《ジャイルーダ》を通すことです。打ち消し呪文を複数引かれていない限り、1ゲーム目は有利だと思います。

運命を紡ぐ者

2ゲーム目以降は《ジャイルーダ》に強い《神秘の論争》を4枚投入してきますが、そこで打ち消しのゲームプランを無力化する《運命を紡ぐ者》が活躍します。クリーチャーを並べ過ぎて《至高の評決》の被害を拡大しないように注意しましょう。忘れないようにしたいのは、《賢いなりすまし》が相手の《時を解す者、テフェリー》をコピーできるということ。相手の打ち消し呪文をすべて無価値にできます。

ロータスブリーチ

対 ロータスブリーチ

Out

もう一人の自分 もう一人の自分
深海の破滅、ジャイルーダ 深海の破滅、ジャイルーダ

In

減衰球 減衰球 減衰球 減衰球

特に相性が悪い相手のひとつであり、このマッチアップを見据えて《減衰球》を4枚用意しています。相手がコンボを決めるよりも先に《ジャイルーダ》を唱えられることを期待するしかありません。《クローン》系を《難題の予見者》のコピーに充てることで相手の速度を落とすこともできます。

ジャイルーダコンボミラー

対 ミラーマッチ

Out

難題の予見者 難題の予見者 難題の予見者 難題の予見者
深海の破滅、ジャイルーダ 深海の破滅、ジャイルーダ 深海の破滅、ジャイルーダ

In

ケンタウルスの養育者 ケンタウルスの養育者 ケンタウルスの養育者 ケンタウルスの養育者
一瞬 一瞬 一瞬

先手をとったプレイヤーに勝利が約束されます。お互いに《クローン》系を採用しており、《ジャイルーダ》の効果でそれらがヒットする確率は単純計算で倍になっているので、コンボが途切れる可能性は限りなく低いでしょう。しかし、サイドボーディング後は《一瞬》をケアする必要が出てくるので難しくなります。

Kelvin Chew

これは私が実際に体験した面白い状況です。相手の手札は3枚であり、《神秘の神殿》をセット、《狼柳の安息所》をエンチャントしてターンを返してきました。ここで《ジャイルーダ》を唱えることはできますが、《一瞬》を握られていた場合、戦闘前に《龍王コラガン》をバウンスされてしまうため、ライブラリーアウトし損なうと負ける可能性があります。私はターンを返すことにしましたが、相手が《苦悶の悔恨》から《ジャイルーダ》と動いたとき負ける裏目がありました

結果、相手は《ジャイルーダ》を唱えただけだったので、《たなびき織りの天使》《ジャイルーダ》を「明滅」するときを狙って《一瞬》でコンボを途切れさせ、返しのターンでライブラリーアウトすることに成功しました。

ボロス英雄的

対 ボロス英雄

Out

賢いなりすまし 賢いなりすまし 賢いなりすまし

In

一瞬 一瞬 一瞬

このマッチアップは非常に厳しいと実感しました。ブロックしようとすればクリーチャーのサイズを引き上げて討ち取られてしまうため、マナクリーチャーをブロッカーに回すことはできません。加えて相手のクロックが大きいことも痛手です。このデッキの使用者が増えるようであれば、《霊気化》の採用を検討するでしょう。

ジェスカイルーカ

アゾリウスコントロールと似たデッキですが、全体除去としてより厄介な《轟音のクラリオン》を採用している点で異なります。また、《銅纏いののけ者、ルーカ》《裏切りの工作員》のコンボで土地を奪われれば、《ジャイルーダ》のキャストが遠ざかります。

虚空の選別者轟音のクラリオン

サイドボーディング後、ジャイルーダコンボのほぼ全体を否定する《虚空の選別者》が投入されるでしょう。このマッチアップで《運命を紡ぐ者》をサイドインしていないのは、相手の全体除去プランにまんまとはまってしまうと感じたからです。《轟音のクラリオン》をケアするいい方法は、《森の女人像》《灯の分身》でコピーし、タフネスが4の《森の女人像》を作ることです。

おわりに

今回の記事は以上になります。ジャイルーダコンボの理解を深めていただけたでしょうか。

このデッキはとても安定していて、マリガンに強いデッキです。今の「相棒」はあまりにも強く、今のパイオニア環境を定義しているといっても過言ではありません。このデッキについて何か疑問点があれば、Twitterを通して喜んでお答えいたします。

ではまた次回!ありがとうございました!

ケルヴィン・チュウ (Twitter)

この記事内で掲載されたカード

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Kelvin Chew ケルヴィン・チュウはシンガポールのトッププロ。得意フォーマットにはモダンを挙げているが、その他のフォーマットもそつなくこなすオールラウンダーで、スタンダードやリミテッドといったフォーマットでもしっかりとグランプリでトップ8に入賞している。 特に初栄冠となったグランプリ・北京2017で披露した「カルトーシュ戦略」は印象的であり、観戦していたプレイヤーの度肝を抜いた。その後も着実に成長を続けたケルヴィンは世界選手権2017でトップ4に残り、名実ともに世界有数のプレイヤーとして認知された。 Kelvin Chewの記事はこちら