Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2020/6/18)
はじめに
はい、すみません。ラクドス騎士を使ったのは私だけだったので、ちょっとした釣りになってしまったかもしれません。ですが、実際には総合成績が9-5-1であり、勝率は64%。あのティムール再生には3-0という結果でした。
もう少し詳しくご説明しましょう。現環境のベストデッキは《成長のらせん》デッキ(バントランプとティムール再生)であり、ラクドス騎士はおそらくTier 2にすら入れないでしょう。ですが、私はこのデッキの環境の立ち位置が極めてよいと確信しています。ティムール再生はもっとも相性のよい相手のひとつであり、アゾリウス系とはほぼ互角、相性の悪い《大釜の使い魔》 + 《魔女のかまど》デッキの勢力は衰えてきているのです。
特にプレイヤーズツアー初週のあとは、打倒コントロールデッキを掲げてあらゆるデッキが調整を施してくるでしょう。バントランプは《空の粉砕》を2枚しか採用していないリストもあり、今後はメインデッキから完全にカットするプレイヤーが出てきてもおかしくありません。
さて、私はすべて正直にお話しましたが、まだなにか気になるところはありますか?
ラクドス騎士の出番が再来!
誰しもが《王冠泥棒、オーコ》を使うなか、ウィリー・エデル/Willy Edelと私はミシックチャンピオン VIでラクドス騎士を選択しました(詳しい経緯についてはこちらの記事をご覧ください)。今回も当時と状況が似ており、ラクドス騎士は環境でベストデッキではないものの、メタゲームが確立されており、周囲のプレイヤーの隙を突いて優位な立ち位置を築ける状況が整っていました。
私はさまざまなデッキをトライし、アリーナのランク戦で多少勝ち越す程度の結果を出していたものの、満足のいくデッキはひとつとして見つけられませんでした。特に、プレイヤーズツアーで最大数を誇るであろうティムール再生との対戦には疑問が残り続けました。
そこで私はティムール再生に相性がとてもいいデッキとしてラクドス騎士があることを思い出し、《王冠泥棒、オーコ》の禁止からほどなくして放置していたリストを掘り起こすことにしたのです。運命のいたずらか、ラクドス騎士を使うと2回連続でティムール再生とマッチング。コテンパンにやっつけました。冗談交じりにウィリーにメッセージを送ると、なんと彼もまたラクドス騎士を使っていたのです!
ウィリーのリスト
私のリスト
アリーナのランク戦を破竹の勢いで勝利してミシックの#10に到達すると、私は覚悟を決めて、愛着の湧いたラクドス騎士をデッキ登録することにしました。
ラクドス騎士
これがプレイヤーズツアー・オンライン2で使用することになったリストです。
大会の詳細には触れませんが、初日は5-4、2日目は4-1-1でした。タイブレイカーが低く、最終ラウンドはIDしても勝利した場合と賞金が変わらなかったため引き分けを選択しました(最終勝ち点ではなく最終順位を参照して賞金が決まる理由が気になるところですが、まぁいいでしょう……)
アーキタイプ | 結果 |
---|---|
ティムール再生 | 3-0 |
バントランプ | 2-2 |
スゥルタイランプ | 2-0 |
ジャンドサクリファイス | 1-0 |
ティムールアドベンチャー | 1-0 |
ラクドスサクリファイス | 0-1 |
緑単 | 0-1 |
アゾリウスヨーリオン | 0-1 |
カード選択
変更してはいけない枠
《朽ちゆくレギサウルス》/《エンバレスの宝剣》
このデッキが存在するゆえんです。4枚確定。次の解説に移りましょう。
1マナ域
ラクドス騎士が《エンバレスの宝剣》を使ったほかのアグロデッキと差別化できているのは、この強力な12枚の1マナ域にあると感じています。
2マナ域
マナベースの都合上、1マナ域に《熱烈な勇者》《どぶ骨》《漆黒軍の騎士》を入れるのであれば、2マナ域は騎士クリーチャーか黒のクリーチャーである必要があるでしょう。できることなら2マナ域に《戦慄衆の解体者》を入れたいのですが、すでに2ターン目の《砕骨の巨人》のマナを安定して捻出できるかに少々の不安がある状態です。その点、再録情報が公開されたばかりの《帆凧の掠め盗り》はこの枠に無理なく入るでしょう。
土地24枚
このデッキは土地23枚でも回るでしょうが、アンタップインの2色土地の数が少ないため、色マナ源を増やすことで適切なターンに適切な色マナが確保できる確率を多少なりとも上げたいと考えました。マナフラッドすることもときにはありますが、以下のようなシナリオも頻繁に起きることを忘れてはいけません。
自由枠
さて、メインデッキのカードでほかに解説していないのはこの4枚になりました。
この4種の枠はデッキ内の自由枠だと考えています。
《石とぐろの海蛇》
《石とぐろの海蛇》はマナカーブが可変的であり、《時を解す者、テフェリー》《戦争の犠牲》《エルズペス、死に打ち勝つ》《波乱の悪魔》《自然の怒りのタイタン、ウーロ》といったカードへの「プロテクション」を持っています。トランプルだけでなく、到達もあることをお忘れなく!
《影槍》
《影槍》は《朽ちゆくレギサウルス》にトランプルを与える追加の手段であり、メインデッキから投入できるクリーチャーデッキへの切り札です。
《砕骨の巨人》
《忘れられた神々の僧侶》などの小型クリーチャーが戦場に並ばない環境だと思うのであれば、《砕骨の巨人》は明らかにデッキ内で最弱のカードになります。思い切ってティムール再生に効果的な《誓いを立てた騎士》を再び採用してもおかしくはないでしょう。
《無情な行動》
《無情な行動》は、《苦悶の悔恨》や《ドリルビット》といったメインデッキに搭載できる妨害手段と入れ替えることも可能です。もし私が入れ替えるとすれば、プレイヤーズツアーで一番頼りになった《苦悶の悔恨》にするでしょう。《自然の怒りのタイタン、ウーロ》は盤面に残ると厳しいカードの1枚ですが、結局メインデッキの《無情な行動》の除去の的に何度もなっていました。
注意点:どんな変更を加えるにしろ、マナベースには誠実でありましょう。フランク・カーステン/Frank Karstenが作成したカンニングペーパーを使い、少なくとも90%の確率で唱えられるようにしましょう。土地の枚数を増やすことになっても、です。
今週末に向けたアップデート
メインデッキ:変更なし
現状のメインデッキには満足しています。《無情な行動》の代わりに《苦悶の悔恨》を入れる構成は検討に値しますが、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》デッキとの1ゲーム目はすでに有利だろうと思っています(こういったデッキはミラーに目がいっていることが主な理由)。そのため、ラクドスサクリファイス・ジャンドサクリファイス・緑単・赤単といったそのほかのデッキとの1ゲーム目の相性を改善することが優先だろうと考えました。
サイドボード
先にもお伝えしたように、《苦悶の悔恨》はこちら対して強い相手のカードを対処することに長けており、予想以上にパフォーマンスが高かった呪文でした。最近では採用率も高まってきているようです。《猛火の斉射》はほぼ赤単専用の枠ですが、赤単は目に見えて数を減らしているデッキです。この枠には、厄介な《魔女のかまど》への追加の対策を入れたほうがいいかもしれません。
ワンポイントアドバイス
その1
アップキープに《朽ちゆくレギサウルス》のコストでカードを捨てる前に呪文を唱えたいのであれば、必ず事前にアップキープで止まるようにチェックを入れておきましょう。
その2
アリーナの設定にある「誘発型能力の解決順を自動で決める」のチェックを外しておきましょう。こうしておかないと、《嵐拳の聖戦士》の能力が先に解決され、せっかくその効果でドローしたカードを《朽ちゆくレギサウルス》で捨てることになりかねません。
その3
《熱烈な勇者》は《エンバレスの宝剣》と《影槍》を装備コストなしで装備できます。《初子さらい》をケアするなら、《エンバレスの宝剣》を装備した《朽ちゆくレギサウルス》で攻撃したあと、《熱烈な勇者》に装備を付け替えたほうがいいこともあります。
その4
接死とトランプルが組み合わさることで、《漆黒軍の騎士》が《朽ちゆくレギサウルス》よりも大きなダメージを与える状況もありえます。接死を持っていればブロッカーに1点与えるだけで十分ですからね。
その5
《嵐拳の聖戦士》はアップキープにダメージを与えられるため、《ドリルビット》を戦闘前から唱えられるようにしてくれます。
その6
《漆黒軍の騎士》の誘発型能力は、こちらのターンに自分が4点以上のライフを失っても誘発します。稀な状況ではありますが、《嵐拳の聖戦士》、ショックランド、《苦悶の悔恨》、《ロークスワイン城》、《大釜の使い魔》などが絡み合うことで+1/+1カウンターを置けます。忘れないようにしておきましょう。
その7
《試合場》では《エンバレスの盾割り》の「出来事」を唱えられません……。フレイバー的に唱えられてもよさそうなものですが……。
その8
《無情な行動》は+1/+1カウンターが置かれたクリーチャーを除去/収縮させるモードもあります。《ギャレンブリグの領主、ヨルヴォ》、《石とぐろの海蛇》、《ハイドロイド混成体》、《世界を揺るがす者、ニッサ》でクリーチャー化した土地などが該当しますね。
さて、それではみなさんがお待ちかねの内容に移っていきましょう。
サイドボードガイド
ティムール再生
vs. ティムール再生
相手の構成が《炎の一掃》型であるならば、《嵐拳の聖戦士》を数枚サイドアウトして《砕骨の巨人》を残すプランを検討しましょう。相手のベストプランは《夜群れの伏兵》なので、《害悪な掌握》を2枚ほど投入します。
グルール/緑単
vs. グルール/緑単
どちらのデッキに対しても戦い方は似ています。《石とぐろの海蛇》は《水晶壊し》に破壊されてしまう弱みがありますが、盤面をこう着させることが多いのも事実。数枚は残しておくべきだと考えています。《害悪な掌握》を3枚投入するサイド後を筆頭として、「変容」に対応して「変容」の対象となったクリーチャーを除去することもできますしね。
《どぶ骨》はあっさりとサイズ負けしてしまうので、サイドアウトは確実です。先制攻撃を持つ《熱烈な勇者》は《黒槍の模範》による接死との組み合わせがあるので、サイド後も残しておく価値があります。
ジャンド/ラクドスサクリファイス
vs. ジャンド(《フェイに呪われた王、コルヴォルド》が3枚以下の場合)/ラクドスサクリファイス
vs. ジャンド(《フェイに呪われた王、コルヴォルド》が3枚以上の場合)
こちらも両デッキに対して同じような展開になります。比較的戦いやすいのはジャンドです。土地からダメージを受けやすく、《エンバレスの宝剣》によるキルターンが早くなります。また、《パンくずの道標》《ボーラスの城塞》《フェイに呪われた王、コルヴォルド》など、マナコストが重めの呪文がラクドスよりも多いですからね。
サイド後は脅威への解答を増やせるうえに、相手は《エンバレスの宝剣》の対処に苦しむことになるのでチャンスが生まれることでしょう。
スゥルタイランプ
vs. スゥルタイランプ
相手のリストにインスタントの単体除去が多い構成であれば、《砕骨の巨人》2枚の代わりに《朽ちゆくレギサウルス》をサイドアウトします。《漆黒軍の騎士》は《どぶ骨》よりも《絶滅の契機》や《肉儀場の叫び》への耐性がありますが、《どぶ骨》のほうが手札破壊や単体除去に強いです。どちらを残すべきかははっきりわかっていません。
アゾリウスコントロール/バントランプ
vs. アゾリウスコントロール/バントランプ
この2つのデッキはスゥルタイランプと違って3マナの全体除去がないため、1~2マナ域の価値が一気に高まります。他方、《エルズペス、死に打ち勝つ》の対象になってしまう3マナ域は大きく価値を下げます。最低限の枚数に抑えたほうがいいでしょう。
《ガラスの棺》がフル投入されていることを確認した場合は、さらに踏み込んで《砕骨の巨人》の枠に《エンバレスの盾割り》をサイドインします。あっさりと2:1交換できれば一気に形勢を変えられるでしょう。
アゾリウスコントロール、バントランプ、スゥルタイランプに対しては《山》を1枚減らします。基本的にマナコストの重い呪文は減らしますし、サイド後は《エンバレスの宝剣》を着地させるまでに時間が少々かかるようになり、4ターン目に赤マナが2つ必要になる可能性が低いからです。
赤単
vs. 赤単(先手)
vs. 赤単(後手)
《嵐拳の聖戦士》は後手のとき相手に有利に働いてしまいますが、先手であればこちらが攻め手に回るプランがうまく機能します。相手が《災厄の行進》型のときは、先手後手問わず《どぶ骨》をサイドアウトしましょう。あの構成には1マナの先制攻撃持ちが8体いるため、《嵐拳の聖戦士》のほうがブロッカーとして適しているからです。
ボロスサイクリング
vs. ボロスサイクリング
《無情な行動》をサイドアウトしているのは、最大の問題となりやすい《繁栄の狐》を対処しづらく、サイド後はほかの除去の枚数を増やしているからです。《悪魔の職工》を入れた構成が増えるようであれば、除去をすべて残してもいいでしょう。
おまけ:『基本セット2021』によるアップデート
《帆凧の掠め盗り》
先述したとおり、《帆凧の掠め盗り》はデッキに自然とフィットするでしょう。相手の手札から妨害手段を追放したり、(飛行を持つ!)追加のアタッカーとなったりすることで、《朽ちゆくレギサウルス》と《エンバレスの宝剣》の一撃必殺コンボを決めやすくさせてくれます。
《取り除き》
《取り除き》は《無情な行動》や《溶岩コイル》と入れ替わるでしょう。《忘れられた神々の僧侶》《波乱の悪魔》《自然の怒りのタイタン、ウーロ》《サメ台風》のトークンなどを除去する強みがありながら、《繁栄の狐》《生皮収集家》《ギャレンブリグの領主、ヨルヴォ》といった+1/+1カウンターを使う煩わしいクリーチャーにも対応できるのです。
《リリアナの軍旗手》
《リリアナの軍旗手》はサイドボードに居場所を見つけるかもしれません。ラクドス騎士に全体除去への耐性をつけてくれることでしょう。
おわりに
ラクドス騎士にご興味を持っていただけたでしょうか。今後の大会やランクマッチの参考になれば幸いです。ランクマッチを走るにはこのデッキは現時点でのベストデッキであり、大規模な大会で結果を出せるだけのいい立ち位置にあると思っています。
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