予選ラウンド終了!
プレイヤーズツアーファイナル(以下PTF)はスイスラウンドを終え、決勝トーナメントへと進む8名のプレイヤーが出揃った。戦前の予想とは打って変わり、マルドゥウィノータや黒単アグロといった予想外のデッキがトップ8へと残り、誰が優勝するか予断を許さない。
Hareruya Prosからはマジック25周年記念プロツアーチャンピオンであるアレン・ウー/Allen Wuと殿堂プレイヤーであるラファエル・レヴィ/Raphael Levyの2名が決勝トーナメントへと進んでいる。興味深いことに2人が選択したデッキは、本命のティムール再生とメタ外ともいえるアゾリウスヨーリオンだ。トッププロ同士がメタゲームを眺めた結果、まったく別の切り口から挑むこととなったのだ。
トップ8入賞を果たした2人だが、それぞれどのような理由からスタンダードのデッキを選択したのだろうか。また、ティムール再生をどのように意識しているのだろうか。スタンダード環境の解明のため、決勝トーナメントを間近に控えた2人にインタビューをお願いした。
アレン・ウー(Twitter)
使用デッキと選んだ経緯を教えてください
2 《島》
1 《山》
4 《繁殖池》
1 《神秘の神殿》
3 《踏み鳴らされる地》
3 《蒸気孔》
4 《ケトリアのトライオーム》
3 《ヴァントレス城》
2 《爆発域》
4 《寓話の小道》
-土地 (29)- 2 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
1 《厚かましい借り手》
2 《夜群れの伏兵》
-クリーチャー (5)-
1 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
2 《長老ガーガロス》
4 《焦熱の竜火》
2 《精神迷わせの秘本》
1 《ナーセットの逆転》
1 《否認》
1 《炎の一掃》
1 《嵐の怒り》
1 《終局の始まり》
1
-サイドボード (15)-
アレン「テストプレイの段階で最高のデッキと判明していたので、ティムール再生を選択しました。私たちのチームはティムール再生をスタンダードにあるすべてのデッキとマッチングしてみましたが、 ほかのデッキがティムール再生を意識しても、ミラーマッチを意識したティムール再生にすら勝てなかったのです」
アレン「1ゲーム目で4枚の《神秘の論争》と使うことのない6枚の打ち消し呪文を積んだ状態でも、緑単や黒単のアグロデッキを倒していました。白単アグロはティムール再生に唯一勝てる可能性がありましたが、全体除去などをメインに積んでいないことが前提でした。この時点でミラーマッチをもっとも意識したティムール再生を作ることに決めましたね」
メタゲームの予想を踏まえて、デッキ構築で意識したことはありますか?
アレン「参加者の70%は《成長のらせん》入りのデッキを選択するだろうと想定していたので、メインボードには《焦熱の竜火》のようなコントロールマッチに不向きなカードは入っていません。メインはすでに青のデッキに強い構成になっていますから、サイドボードは対アグロのカードを多めに用意しています。ただ、ミラーでさらに戦いやすくなるようなカードにも若干の枠を割いていますね」
今回のPTFは家から参加する大型イベントでしたが、イベントへの参加や進行に際して心掛けたことはありますか?
アレン「睡眠と食事に気をつけるようにしました。自宅からプレイするのはとても快適だったので、ラウンド後におやつを食べたり、気分転換に散歩に行ったりして落ち着いて集中できるようにしましたね」
ティムール再生に大きく注目の集まる大会となりましたが、こういった仮想敵が明確な場合にはどういうアプローチを行ってきましたか?
アレン「最初の質問でも少し触れましたが、これはチームとしてのテストプレイのプロセスに影響を与えます。メタゲームが固まっていれば、チーム全体が「ベストデッキを打ち倒す」という共通の目標を持つことができるので調整がしやすくなります。もしその目標を達成する方法が見つからなければ、ミラー用のベストな構成を摸索していくことになりますね」
対ティムール再生に際し、プレイ、サイドボードで意識していた点を教えてください
アレン「話したいのはやまやまですが、決勝トーナメントが控えているのでサイドボードプランやアプローチについては解説を控えます。私が言えるのは、ティムール再生の強さは柔軟性にあるということですね。75枚のカードはどれも本質的に強いカードなので、どんなマッチアップであろうともデッキの型やプレイスタイルを変えて柔軟に立ち回ることができます。相手がどのようにアプローチしてくるかに注意を払い、その裏をかくような構成・プレイングに変更しましょう」
トップ8のほかデッキを見て、自分のデッキの立ち位置はどうですか?
アレン「ティムール再生はミラーを除くすべてのデッキに有利だと思っていますし、私たちのデッキはミラーに強い構成ですからね。ダークホースは、テスト中に想定していなかったMichael Jacobのマルドゥウィノータです。とはいえ、ほかのアグロデッキと大差ないはずです」
トップ8への意気込みを聞かせてください
アレン「私の調整プロセスにはいくらかの欠点があり、今回のPTFに向けてその改善を図りました。そして、この結果が進歩を裏付けてくれたのでとても嬉しい気持ちですね。そのほかに望むことがあるとすれば、マジックを通して最高のゲームをすることぐらいです。私にとってマジックをプレイする主な目的な自己の成長ですからね。それ以外のことを考えるエネルギーなんて無駄でしかないですよ」
ラファエル・レヴィ(Twitter)
使用デッキと選んだ経緯を教えてください
7 《平地》
4 《寓話の小道》
2 《ラウグリンのトライオーム》
4 《神聖なる泉》
4 《啓蒙の神殿》
2 《ヴァントレス城》
1 《アーデンベイル城》
2 《廃墟の地》
-土地 (35)- 2 《太陽の恵みの執政官》
2 《空を放浪するもの、ヨーリオン》
-クリーチャー (4)-
2 《霊気の疾風》
2 《神秘の論争》
2 《意味の渇望》
3 《空の粉砕》
4 《海の神のお告げ》
3 《メレティス誕生》
2 《太陽の神のお告げ》
4 《エルズペス、死に打ち勝つ》
4 《サメ台風》
3 《ガラスの棺》
4 《覆いを割く者、ナーセット》
4 《時を解す者、テフェリー》
-呪文 (41)-
2 《空の縛め》
1 《厚かましい借り手》
1 《太陽の恵みの執政官》
1 《終局の始まり》
1 《ナーセットの逆転》
1 《空の粉砕》
1 《ガラスの棺》
1 《巨人落とし》
1 《幽体の船乗り》
1 《ヘリオッドの介入》
1 《軽蔑的な一撃》
1 《空を放浪するもの、ヨーリオン》
1
-サイドボード (15)-
レヴィ「アゾリウスヨーリオンを選ぶことにしたよ。数日かけてティムール再生を中心としたメタゲームの攻略に躍起になったが、思ったほどうまくはいかなかった。白単や黒単アグロはティムール再生とのマッチアップでは勝機があったが、ほかのデッキに対しては非常に弱いと思えたんだ」
レヴィ「自分がティムール再生を使おうという気にはならなかった。誰しもが対策を練ってくるなかでこのデッキを使うのは気が引けたし、これまでに一度も使ったことのないデッキだったから、ミラーで腕の差を受けることもできなかったからね。同じようにバントランプもメタゲーム上であまりポジションが良くないと感じていたね」
レヴィ「そこでデッキ提出の数時間前にガブリエル・ナシフ/Gabriel Nassifに助けを求めたところ、彼は自分が使うアゾリウスヨーリオンのデッキリストをシェアしてくれた。このデッキは環境のほとんどのデッキに対して互角以上に戦えたが、ティムール再生に対しては少し不利だったんだ。私はもちろんティムール再生がメタゲーム上多くいるとわかっていたが、リスクを取ってもいいと思い選択したよ。そして、実を結んだというわけだ」
メタゲームの予想を踏まえて、デッキ構築で意識したことはありますか?
レヴィ「ティムール再生以外のデッキを倒すにはもってこいだろう。ティムール再生を意識したデッキのほとんどは、アゾリウスヨーリオンに対して相性が悪いと思うね。先ほどティムール再生に対して不利だとはいったけれど、アゾリウスヨーリオンにはサイドボードを駆使して勝つ方法はある」
今回のPTFは家から参加する大型イベントでしたが、イベントへの参加や進行に際して心掛けたことはありますか?
レヴィ「当初、この大会にはあまり期待していなかったんだ。Wizards of the Coastの次のシーズンの発表を見て、ミシックポイントやランキングも関係なくお金のためだけにプレーするということを知って、何週間も少し落ち込んでいた」
レヴィ「そんな気持ちを引きずってラウンドを重ねていたが、途中でグランドファイナルへの出場権がかかっていることに気づいたのさ。興奮が高まると同時にプレイは冴えわたり、結果としてトップ8に進出できたのは間違いなく嬉しいことだったよ」
ティムール再生に大きく注目の集まるイベントとなりましたが、こういった仮想敵が明確なイベントに対してどういうアプローチを行ってきましたか?
レヴィ「倒すべきデッキが明確な場合、自分は悪者になりたいのか(メタゲームの中心にある倒すべきデッキをプレイする側)、善人になりたいのか(環境の中心にいる悪者を倒そうとするデッキをプレイする側)、それともよそ者になりたいのか(メタ外からすべてを倒そうとするデッキをプレイする)を、自分自身に問いかける必要がある」
レヴィ「私はよそ者になることを選んだのさ」
対ティムール再生に際し、プレイ、サイドボードで意識していた点を教えてください
レヴィ「プレイヤーズツアーファイナルで対戦したティムール再生とは、3戦とも接戦の末に負けてしまった。今週はこのマッチアップを徹底的に練習し、決勝トーナメントに向けて準備をしていきたいと考えているよ」
トップ8のほかデッキを見て、自分のデッキの立ち位置はどうですか?
レヴィ「自分の立ち位置は問題ないと思っている。良いマッチアップが3つ(マルドゥウィノータ、黒単アグロ、ジャンドサクリファイス)、そこそこのマッチアップが2つ(4色再生)、悪いマッチアップが2つ(ティムール再生)あるからね」
レヴィ「ただ、私はスイスラウンドを7位で通過したので、ほとんどの試合で後手スタートになる。それを克服するのは厳しいね」
トップ8への意気込みを聞かせてください
レヴィ「先週末は大会に向けてのきちんとした準備ができていなかったので、いくつかのラウンドでプレイミスをしてしまった。けれども決勝トーナメントに向けてしっかりと練習するし、うまくいけばオンライン上でトロフィーを掲げることができると思っているよ」
決勝トーナメント迫る!
スタンダード環境は間違いなくティムール再生を中心にメタゲームが形成されているが、プレイヤーの意識はさまざまなベクトルに向いていることがわかる。アレンのようにミラーマッチ前提のメインボードを作り使用するものもいれば、レヴィのように本命以外にガードが下がった隙を突く選択をしたものもいる。それこそMichael Jacobのマルドゥウィノータのようにまったく想定外のデッキを持ち込むものまでいるのだから。
しかし、決勝トーナメント開始までは1週間あり、各マッチアップごとのプレイは適正化されているはずだ。さらに対戦組み合わせも発表され、今ごろは最後の調整となっているところだろう。
明日未明(8月2日1:00~)からプレイヤーズツアーファイナル決勝トーナメントが始まる(Twitch/YouTube)。トップ8に残ったプレイヤーたちの勇姿と手に汗握る華麗なプレイ、そしてプレイヤーズツアーファイナルチャンピオン誕生の瞬間をぜひ見届けていただきたい。