Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2020/08/11)
生え抜きのアグロ
みなさん、こんにちは。ベルナルド・サントス/Bernardo Santosです。今日は立ち返ってパイオニアの話をしようと思います😄。テーマは禁止告知後の新環境、もうひとつは他のプレイヤーたちが新しい可能性を探っている環境初期におすすめのデッキ、黒単アグロです。
友人のティアゴ・サポリート/Thiago Saporitoと私はパイオニアの黎明期から黒単を使用していました。特に彼は精密機械のようにこのデッキを操り、これまでパイオニアの大型大会で驚くべき結果を残してきています。プレイしていて楽しく、なおかつ全体除去で崩れ落ちない多角的な攻め方をするデッキです。まさに私が好みのタイプのアグロですね。
デッキの構造
黒単アグロは、モダンの《死の影》デッキや人間デッキと同じ方針を採ります。つまり、妨害で時間を稼いでいる間にライフを削りきることが基本コンセプトです。妨害呪文と攻撃的なクリーチャーの強さを融合させることにより、相手が解決策をトップデッキする前に倒しきることを狙いとします。
当然モダンとパイオニアとでは環境の事情が異なりますが、《思考囲い》、汎用除去(《残忍な騎士》《致命的な一押し》)、攻撃的なマナカーブという組み合わせは普遍的に有効なプランです。たとえ相手が対策していようとも、圧倒的に不利になることは決してありません。
このデッキの最大の強みのひとつは、カードアドバンテージを付随的に稼げることです。《血に染まりし勇者》《戦慄の放浪者》《屑鉄場のたかり屋》といった墓地から戦場に戻ってくるアグロクリーチャーを計12枚採用しており、追放できない単体除去を大幅に弱体化させます。また、単色であることからマナベースを毀損することなく、アドバンテージ源である《ロークスワイン城》や《変わり谷》を採用できるのです。
《漆黒軍の騎士》は非常に強いアグロクリーチャーであり、喜んで採用したいものです。
除去の枠を増やす選択肢もあり、増やすならば優秀な選択肢がカードプールには用意されています(《喪心》《無情な行動》《破滅の刃》)。現在は《無情な行動》を優先させていますが、これは現環境のほぼすべてのクリーチャーに触れる除去だからです。ですが、メタが変わった場合にはほかの選択肢が評価を上げる可能性はあるでしょう。
そしてデッキの最後の枠を締めくくるのは飛行の大型クロック、《悪ふざけの名人、ランクル》と《騒乱の落とし子》です。
《騒乱の落とし子》は戦場に残れば毎ターン5点ダメージを与えることができる正真正銘のパワーカードです。このデッキには1~2ターン目に並べるクリーチャーやその攻撃を通す除去が豊富に採用されており、3ターン目に「絢爛」を達成する手段は申し分なく、《騒乱の落とし子》が真価を発揮できるような構成になっています。
このデッキの《悪ふざけの名人、ランクル》も魅力満載のクリーチャーです。まず、速攻を持つ飛行のクリーチャーであること。一般的に黒にないタイプの効果であり、全体除去のあとにライフを詰めたり、戦闘を狂わせたりできます。
そして次に、デッキ内のカードとシナジーが多いことです。墓地から再利用できるクリーチャーを生け贄に捧げたり、手札から捨てたりすれば、相手に不等価交換を突きつけられます。自分に有利に働く状況であれば、ドロー効果やそれに伴うライフルーズ効果も使えます。これが汎用性をさらに高めており、4枚採用を後押しする理由になっていますね。
これでメインデッキは完成しましたから、続いてはサイドボードへと移りましょう。このタイプのアグロデッキでは、特定のマッチアップを意識したカードを用意するとともに、追加の手札破壊や除去といった幅広く使える呪文も揃えておきたいところです。
デッキリスト
こうして完成したリストがこちらになります。
4 《ロークスワイン城》
4 《変わり谷》
1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》
-土地 (24)- 4 《血に染まりし勇者》
4 《戦慄の放浪者》
4 《漆黒軍の騎士》
4 《屑鉄場のたかり屋》
4 《残忍な騎士》
4 《悪ふざけの名人、ランクル》
2 《騒乱の落とし子》
-クリーチャー (26)-
サイドボードガイド
サイドボードについてですが、禁止後のメタゲーム変化を見守り、調整していく必要があるでしょう。ここでは、今後も存続しうる既存のデッキを想定した小型のサイドボードガイドを示してみようと思います。
5色ニヴ
対 5色ニヴ
簡単な相手ではありませんが、《空を放浪するもの、ヨーリオン》型のほうが戦いやすいです。というのも、このマッチのカギを握るのが2ターン目の《森の女人像》だからです。
5色ニヴが大流行するようであれば、この厄介な壁クリーチャーを対処するために《自傷疵》の枠をサイドに作ってもいいでしょう。《害悪な掌握》は《先駆ける者、ナヒリ》にも対応できるため《無情な行動》よりも若干便利ですが、役割はほぼ同じです。
スゥルタイ昂揚
禁止を受けてスゥルタイはサイドボードの枠に余裕ができ、《肉儀場の叫び》や《軍団の最期》がそこに入ってくると考えられるため、このマッチアップは近い将来に大きく変わると予想されます。現時点ではスゥルタイは《絶滅の契機》に頼っているため、《屑鉄場のたかり屋》《騒乱の落とし子》《悪ふざけの名人、ランクル》といった偶数マナのクリーチャーによって比較的ケアしやすくなっています。
対 スゥルタイ昂揚
《魂標ランタン》は《自然の怒りのタイタン、ウーロ》と《ウルヴェンワルド横断》を妨害する狙いで投入します。「紛争」なしの《致命的な一押し》は《ヴリンの神童、ジェイス》しか除去したいものがなく、腐りやすいのでサイドアウトしましょう。
唯一墓地から戻ってこられない《漆黒軍の騎士》は特にサイドアウトしやすいカードです。《帆凧の掠め盗り》はゲームプランを立てる序盤のクリーチャーとして適しており、3ターン目に《騒乱の落とし子》を出すにも有効です。
バントスピリット
面白いマッチアップです。こちらにはキーとなるクリーチャーをさばく除去があり、相手にはブロッカーとなるクリーチャーがいるため、お互いに常に判断を求められるようなテンポ重視のマッチアップになります。
対 バントスピリット
相手の切り札は《集合した中隊》です。《思考囲い》はそれを狙うように使いましょう。それ以外の用途で使うとすれば、先々のターンのプランを立てたいときです。
《悪ふざけの名人、ランクル》の攻撃が通ることはほぼあり得ず、ブロッカーとしても頼りになりません。対して《霊気圏の収集艇》は《鎖霊》の能力に対して強いうえに、たいていの盤面において殴っていけるサイズです。先手であれば《呪文捕らえ》に引っかからないマナ域でもあります。
ありったけの除去が欲しいゲームになります。《軍団の最期》はソーサリーで対象に取れないものもあり、《害悪な掌握》も範囲が限定的ですが、どちらも攻撃を邪魔している/ライフを果敢に狙ってくるキーとなるスピリットをさばけます。
緑単信心
このデッキは《歩行バリスタ》を失い、メインデッキにも《大いなる創造者、カーン》からサーチするサイドボードにも採用できなくなりました。パイオニア初期から警戒されてきた緑単信心ですが、マナクリーチャー、《ニクスの祭殿、ニクソス》、大型の脅威の組み合わせは常に有効な戦略であり、また息を吹き返すことでしょう。
対 緑単信心 (非プレインズウォーカー型)
対 緑単信心 (プレインズウォーカー型)
緑単信心のカードは役割が明確に分かれています(マナ加速とフィニッシャー)。そのため、マナ加速を潰せるタイミングがあるならばそこを狙う、あるいはマナ加速は無視してその後のプレインズウォーカーや大型のクリーチャーを除去することが望ましい妨害の形です。
だからこそ、どっちの軸で妨害していくのかを決められる手札破壊はこの戦略の肝となる部分になります。こちらは大きなプレッシャーをかけられますから、いずれかの一方のカード群を封じておけば勝てるはずです。
赤単
攻守が毎ターンのように入れ替わる面白いマッチアップです。攻撃をすべきタイミングと守備すべきタイミング、すぐに除去すべき脅威と放置すべき脅威を見極めねばなりません。《大歓楽の幻霊》は一般的に戦場に残してはならないものですが、あえて生存させたほうが有利に働くこともあります。こういった奥深さに反して、サイドボーディングは非常にシンプルです。
対 赤単
《思考囲い》は有効な場面もありますが、たいていは弱く、トップデッキした場合も悲惨です。《ゲトの裏切り者、カリタス》や《霊気圏の収集艇》といったライフ回復カードの必要性は言うまでもないでしょう。《軍団の最期》は対象に取れるものが多いうえに、1:複数交換という夢のシナリオもあります。
《悪ふざけの名人、ランクル》はそこまで弱くありませんが、このマッチアップで4マナ域を山積みしたくありませんし、サイドインする《ゲトの裏切り者、カリタス》も同じ4マナ域です。思う以上に《残忍な騎士》は絆魂を持つ2/3のクリーチャーとして使用するほうがいいことが多いので覚えておきましょう。
ミラー
対 ミラー
サイドインするものはどれも極めて有効で、不利な状況を均衡した状況に持っていったり、必要ならば有利な状況をさらに加速させることもできます。《思考囲い》は敗因になり得るもので、《致命的な一押し》は墓地から戻るクリーチャーしか安定して除去できないためサイドアウトします。
アグロミラーで気軽に使える戦法ではありませんが、このマッチアップではテンポを重視したプレイをとったほうがいいこともあります。たとえば、相手が2~3マナを構えている状況で《騒乱の落とし子》を出すのではなく、《霊気圏の収集艇》を展開するといったプレイです。こういった判断が勝敗を分かつこともあります。
バントコントロール
対 バントコントロール
このマッチアップでは、《残忍な騎士》以外の除去がほぼ死に札であり、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》にしか当たりません。役割のない《致命的な一押し》の枠には手札破壊を入れ、《無情な行動》の枠にはキャントリップができて《自然の怒りのタイタン、ウーロ》へのよりよい解答になる《魂標ランタン》を投入します。
そして最後に《騒乱の落とし子》に替わって《霊気圏の収集艇》を入れます。《至高の評決》で盤面が全壊しないようにすると同時に、墓地から戻ってきたクリーチャー/手札から唱えたクリーチャーに疑似的な速攻を付与できるるようにするためです。《ロークスワイン城》と《変わり谷》が強いマッチアップであり、強固なマナベースの恩恵を感じられる瞬間ですね。
おわりに
パイオニアが面白い時期を迎えました。以前から人気だった戦略が再び日の目を見ることになったり、まったく新たなデッキが開かれた環境から飛び出してきているのです。今私が試してみたいと思っているデッキは、《先祖の結集》デッキ、バントカンパニー、《霊気池の驚異》デッキ、ビッグレッド、青単信心、イゼットフェニックスなどですね。
しかし、私が思いもしなかったようなデッキを誰かが思い付き、そのデッキが広まっていく可能性があるのは間違いないでしょう。ようやくパイオニアはあるべき姿になっているという印象です。これからどうなっていくのか本当に楽しみですね。
相変わらずこうして晴れる屋に記事を寄稿できることを誇りに思います。今回の記事もお楽しみいただけたでしょうか。パイオニアの黒単アグロは使っていて本当に楽しいデッキですから、妨害を挟みながら攻めるアグロが好きな方に自信をもっておすすめします。ではまた次回お会いしましょう。