Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2020/08/12)
禁止告知への私見
バイバイ、《荒野の再生》《時を解す者、テフェリー》《成長のらせん》《大釜の使い魔》。残念に思う人もいれば、そうでない人もいるでしょう。正直なところ、ローテーション間近の時期にウィザーズが4枚もの禁止を出すとは想像だにしていませんでした。ただ、僕としてはいい判断だったと思っています。
環境を先読みして《大釜の使い魔》を禁止にしたのは用心深い判断であり、個人的にも賛成です。《荒野の再生》と《成長のらせん》の禁止に関しては全面的に支持します。
《時を解す者、テフェリー》の禁止は必須ではなかったかもしれません。仮に環境に幅広いデッキがいるオープンな状況にあれば、単体のカードパワーは禁止に相当するほど強力ではありません。ただ、《時を解す者、テフェリー》は特定のアーキタイプや全体的なゲーム体験を制限するものであり、楽しさを損ねるという意味では退場に値するのでしょう。だからこそ、こういった結末を迎えたのだと思います。
新環境になり、話題に挙げるべき大会の結果がすでにいくつか出ています。僕個人としてもここ数日は多種多様なデッキをテストしました。環境の感触を掴み、デッキ間の力関係を把握したかったのです。
パワフルなセットデザイン
まず取り上げたいのは、およそ『灯争大戦』以降のカードパワーを引き上げるというセットデザインの戦略についてです。現環境には非常にカードパワーの高いカードが多く揃っていますが、その多くはすでに禁止されています。
禁止という措置は、一次的には環境を揺るがし、新鮮でワクワクする体験をもたらします。しかし、禁止を出したとしても環境にはまだ強力なカードが残っているという問題がつきまといます。そういったカードが”環境の王者”となり、プレイヤー層にとって次の不満の対象となってしまう可能性があるのです。今の環境でこの立場に該当すると思われるのは、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》《世界を揺るがす者、ニッサ》《軍団のまとめ役、ウィノータ》《エンバレスの宝剣》です。
これらすべて、あるいはいずれか1枚は環境を支配するカードの座につき、バランスを欠いたメタゲームが生まれ、再び禁止を求める声があがるかもしれません。
解決の糸口は、セットデザインにあると考えています。この1~2年に渡り、カードパワーの上昇が全体的なトレンドとなってきました。新しい試みをすることに反対はしません。ウィザーズのデザインチームはもっともな理由をもってして、こういったデザインアプローチを採っているのだと信じています。
私見ですが、デザインチームはここ12か月に行われた多くの禁止から教訓を得て、将来のセットのカードパワーを抑えることを検討すべきだと考えます。デザインという仕事は極めて複雑かつ困難なものであり、それを行うデザインチームには最大限の敬意を払っています。僕はただ、自分が問題だと思っている点を挙げ、その問題を解決すれば定期的に禁止カードが出るような未来は避けられるのではないか、ということを提案したいのです。
Tier 1 デッキ
禁止とデザインに関する話はここまでにしましょう。ここ数日、僕はこもって幅広いデッキを試しました。ここからはそれらのデッキをチェックしていき、僕なりの感想を述べていきましょう。各デッキのTierやメタゲームでの現状の立ち位置を把握することで、みなさんの時間を節約できればいいなと思っています。
スゥルタイランプ
まずは現在のメタゲームとTier 1デッキを定義していきましょう。先週末、支配的なパフォーマンスを見せたのはスゥルタイランプでした。Red Bull Untapped IQ IV、SCG Tour Online Championship Qualifier、Magic OnlineのStandard Challengeの3大会で優勝したのです。ブラッド・ネルソン/Brad Nelsonが先週にこのアーキタイプをおすすめしており、彼のリストが3大会の1つを制覇したのは誰の目にも納得の出来事でした。
2 《島》
2 《沼》
4 《寓話の小道》
4 《ゼイゴスのトライオーム》
4 《繁殖池》
4 《草むした墓》
4 《湿った墓》
1 《神秘の神殿》
-土地 (28)- 4 《ハイドロイド混成体》
4 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
-クリーチャー (8)-
3 《思考消去》
2 《霊気の疾風》
2 《苦悶の悔恨》
2 《取り除き》
1 《耕作》
3 《絶滅の契機》
2 《戦争の犠牲》
2 《時の支配者、テフェリー》
4 《世界を揺るがす者、ニッサ》
-呪文 (24)-
スゥルタイランプは明確な”環境の王者”です。使用者数が最大でありながら、目を見張る結果を残しているのは、デッキの強さと安定性を物語っています。結果から見る限りでは、そのほかに突出してパフォーマンスが高かったのは、ティムールアドベンチャーとラクドスサクリファイスのようです。
ティムールアドベンチャー
4 《島》
2 《山》
4 《ケトリアのトライオーム》
4 《繁殖池》
4 《踏み鳴らされる地》
1 《蒸気孔》
1 《天啓の神殿》
-土地 (27)- 4 《エッジウォールの亭主》
4 《願いのフェイ》
4 《砕骨の巨人》
4 《厚かましい借り手》
4 《恋煩いの野獣》
4 《豆の木の巨人》
-クリーチャー (24)-
ティムールアドベンチャーは明らかに強力な戦略であったものの、禁止前はティムール再生によって抑えつけられていました。ティムールアドベンチャーは多くのフェアなミッドレンジやクリーチャーデッキに強い反面、自分より強いアクションをとってくる戦略に苦戦します。現在でいえば、スゥルタイランプやティムールエレメンタルが該当しますね。
新型のラクドスサクリファイスとの相性はまだ詳しくわかりませんが、《砕骨の巨人》が非常に有効なカードとなるはずです。ただ、それでもラクドスサクリファイス側に分があるように思います。
ラクドスサクリファイス
5 《山》
4 《寓話の小道》
4 《血の墓所》
1 《悪意の神殿》
2 《ロークスワイン城》
-土地 (23)- 4 《魔王の器》
3 《どぶ骨》
1 《鋸刃蠍》
4 《戦慄衆の解体者》
4 《ぬかるみのトリトン》
4 《忘れられた神々の僧侶》
3 《死の飢えのタイタン、クロクサ》
2 《悪魔の職工》
-クリーチャー (25)-
3 《強迫》
2 《無情な行動》
2 《害悪な掌握》
1 《苦悶の悔恨》
1 《レッドキャップの乱闘》
1 《壮大な破滅》
1 《死の重み》
1 《夢の巣のルールス》
-サイドボード (15)-
ラクドスサクリファイスは前環境から新たに姿を変えています。《夢の巣のルールス》を軸にした構築であり、適切なアプローチであると思います。村栄 龍司のリストは非常にいいですね。《魔王の器》と《夢の巣のルールス》のコンボは強力です。
スゥルタイランプとの相性はまだ不透明です。これまでの知識から判断するに、スゥルタイがやや有利かという印象を持っています。ただ、いろいろなデッキを試しているものの、まだラクドスサクリファイスまで手を伸ばせていないのが現状なので、ラクドスサクリファイスは僕にとって未知の領域です。
宝石を探して
ここまでの3つがTier 1デッキです。以降では、僕自身が試したデッキや僕なりに評価を下したデッキを見ていくことにしましょう。環境初期では、さまざまなデッキに触れ、それぞれの手ごたえを確かめるのが一般的にいい方法だと思います。その過程では、ちょっと調整してやれば環境で争っていけるような宝石が見つかることもあるのです。
では私が得た知見をご紹介することにしましょう。まずはボロスサイクリングからです。
ボロスサイクリング
ボロスサイクリングは確かなTier 2デッキです。ティムールアドベンチャーには有利、スゥルタイには苦戦します。序盤のビートダウンクリーチャーに対する2マナの除去、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》、《永遠神の投入》、さらには《天頂の閃光》に対する《否認》/《霊気の疾風》があるため、簡単には勝てません。ボロスサイクリングはいいデッキですがスゥルタイに偏重したメタゲームでは厳しいでしょう。対アグロには有利だと感じましたが、マルドゥウィノータとの相性は拮抗しています。
イゼットテンポ
6 《山》
4 《蒸気孔》
4 《天啓の神殿》
-土地 (20)- 4 《戦慄衆の秘儀術師》
4 《スプライトのドラゴン》
2 《砕骨の巨人》
2 《厚かましい借り手》
4 《嵐翼の精体》
-クリーチャー (16)-
2 《唱え損ね》
2 《溶岩コイル》
2 《否認》
2 《炎の一掃》
2 《覆いを割く者、ナーセット》
1 《無謀な空襲》
1 《王家の跡継ぎ》
-サイドボード (15)-
このデッキを見たとき、相性のよいカード選択に好印象を抱きました。しかし実際に使用してみると、その第一印象は消え去りました。さらにいいリストがあれば、印象は覆るのかもしれません。
このリストはドロー呪文が不足しており、ちぐはぐな手札になってしまうことが多々あります。たとえば、唯一の脅威をさばかれると、手札には有り余る《送還》や《ショック》があるのです。ボロスサイクリングと同様に、ダメージ源を序盤のクリーチャーに委ねていますが、それらが除去されてしまうとゲームを立て直すのに苦労します。このデッキはTier 3以下ではないでしょうか。
イゼットカラーのデッキを使用し、僕の脳内にある疑問が思い浮かびました。今の環境で《弧光のフェニックス》はどうなのだろうかと。
《弧光のフェニックス》自体は強いものの、それを運用する周囲のカードに不安が残ります。《信仰無き物あさり》のようなカードがなければ、あの爆発力は生まれません。環境が速いため、大量にドローしている暇などなく、ライブラリーの上14枚に《弧光のフェニックス》が2枚あることを願うしかないのです。
スゥルタイには《絶滅の契機》があり、サイドボードには《肉儀場の叫び》があることも少なくありません。3/2の飛行クリーチャーにとってさらなる向かい風です。《弧光のフェニックス》は理論上魅力的に思えることも多いものの、実際には速度で追い付けないことがしばしばあります。ですから今回もわざわざ試そうとは思えませんでした。
オルゾフヨーリオン
5 《平地》
4 《寓話の小道》
3 《サヴァイのトライオーム》
4 《神無き祭殿》
4 《静寂の神殿》
4 《ロークスワイン城》
3 《アーデンベイル城》
-土地 (35)- 4 《泥棒ネズミ》
4 《魅力的な王子》
4 《ヤロクの沼潜み》
4 《聖堂の鐘憑き》
3 《空を放浪するもの、ヨーリオン》
-クリーチャー (19)-
4 《無情な行動》
1 《取り除き》
4 《ケイヤの誓い》
4 《裏切る恵み》
4 《予言された壊滅》
4 《エルズペス、死に打ち勝つ》
1 《オルゾフの簒奪者、ケイヤ》
-呪文 (26)-
続いてはオルゾフヨーリオン。強力なデッキです。アグロ戦略に対してめっぽう強く、ミッドレンジ対決でも非常に有効なデッキになります。
問題はその安定性にあります。デッキが80枚であるうえ、手札を整えるものが《裏切る恵み》しかなく、適切なタイミングで適切なカードを握れていないことが少なくありません。スゥルタイに対して優勢だという印象ですが、自分自身のデッキに負けてしまうことがたまにあります。スゥルタイのほうが安定しているのです。
そして手札破壊デッキにとって致命的なマッチアップになるのが、ティムールアドベンチャーです。オルゾフヨーリオンはTier 2に入れるデッキであり、ティムールアドベンチャーがさらに環境から追いやられるようになれば、合理的な選択肢となるかもしれません。
赤単
4 《エンバレス城》
-土地 (21)- 4 《熱烈な勇者》
4 《焦がし吐き》
2 《ブリキ通りの身かわし》
4 《義賊》
4 《遁走する蒸気族》
4 《鍛冶で鍛えられしアナックス》
4 《砕骨の巨人》
2 《朱地洞の族長、トーブラン》
-クリーチャー (28)-
赤単。確かなTier 2。高い安定性があるものの、対策されてしまっています。《霊気の疾風》や軽量の除去が環境にあふれているのです。僕の経験上では、スゥルタイやティムールアドベンチャーは難しいマッチアップでした。
しかし、大きな相性差があるわけではありません。赤単は相性の差を埋めるデッキパワーと安定性があります。僕が試したアグロデッキなかでもっとも評価が高かったのは赤単です。ただ、マナコストの軽い「出来事」クリーチャーや《自然の怒りのタイタン、ウーロ》がいる環境では、基本的にアグロデッキは非常に苦しいと思われます。
ボロスウィノータ
8 《山》
4 《聖なる鋳造所》
2 《凱旋の神殿》
2 《エンバレス城》
-土地 (24)- 4 《石とぐろの海蛇》
4 《無私の救助犬》
2 《ジンジャーブルート》
4 《徴税人》
2 《歴戦の神聖刃》
4 《軍勢の戦親分》
3 《軍勢の切先、タージク》
4 《軍団のまとめ役、ウィノータ》
2 《バスリの副官》
-クリーチャー (29)-
3 《静寂をもたらすもの》
2 《巨人落とし》
2 《エンバレスの盾割り》
2 《レッドキャップの乱闘》
1 《外交官、マンガラ》
1 《荒くれたちの笑い声》
-サイドボード (15)-
サイモン・ニールセン/Simon Nielsenのボロスウィノータも試しましたが、これもまた納得のいくものではありませんでした。マルドゥカラーに比べて人間クリーチャーが増えているうえに、それらの質も低くなっており、《軍団のまとめ役、ウィノータ》が大幅に弱体化してしまっています。健全なマナベースと《エンバレスの宝剣》の代償にデッキパワーが低下しているのです。その《エンバレスの宝剣》もこのデッキではさほど強くありません。《エンバレスの宝剣》も《軍団のまとめ役、ウィノータ》も軽量の妨害にやや脆いという共通点があります。
《軍団のまとめ役、ウィノータ》を使うならばマルドゥカラーのほうが強いと感じます。あちらの構成であれば《軍団のまとめ役、ウィノータ》は”能力を誘発できれば勝ち”になりやすいのです。
ありがたいことに、このデッキを使っているときに《肉儀場の叫び》を何度も食らいました。スゥルタイがサイドに《肉儀場の叫び》を採用するようであれば、このデッキはメタゲームから追放されてしまうことでしょう。
Tier 1 デッキの対抗馬
自分らしい色で戦う
プレイすればするほど、総合的に最強のデッキがスゥルタイであるという確信が強まっていきました。今週末の結果はわかりませんが、ティムールフラッシュやシミックフラッシュといった打倒スゥルタイを狙うデッキを選ぶに際して問題となるのは、ティムールアドベンチャーがそういったデッキを食い物にできるということ。これはオルゾフヨーリオンにも言えることです。つまり、ここで問いかけるべきは、「スゥルタイに有利でなおかつティムールアドベンチャーも倒せるデッキは何なのか?」でしょう。
僕のことを知っている方ならば、ある色の組み合わせとそれを含む3色を好んでいることをご存知かと思います。僕はディミーア、グリクシス、スゥルタイ、エスパーに目がないのです。
エスパーカラーのベストデッキは《空を放浪するもの、ヨーリオン》を「相棒」に据えたエスパーダンスでしょう。このデッキには確かなポテンシャルを感じますが、オルゾフヨーリオンと同様の問題点があるため選択肢から外れました。ただ、オルゾフに比べて《黄金の卵》や《海の神のお告げ》で手札を整えやすいのは特筆すべき点です。もしかしたらエスパーダンスにも調整が徹底された強力な構成があるかもしれませんね。
ディミーアコントロールも悪くないように思えますが、デッキパワーが不足していることでしょう。それにディミーアでは《幸運のクローバー》を除去する手段がありません。そこで僕が目をつけたのはグリクシスカラーでした。この色ならば、消耗戦となるミッドレンジミラーでこのうえなく強力な《龍神、ニコル・ボーラス》を使えます。
2 《島》
1 《山》
4 《寓話の小道》
2 《ゼイゴスのトライオーム》
4 《血の墓所》
4 《湿った墓》
3 《蒸気孔》
4 《欺瞞の神殿》
-土地 (27)- -クリーチャー (0)-
2 《無情な行動》
2 《古呪》
1 《取り除き》
3 《魔性》
1 《肉儀場の叫び》
3 《絶滅の契機》
1 《永遠神の投入》
3 《発見/発散》
1 《魂標ランタン》
4 《覆いを割く者、ナーセット》
3 《時の支配者、テフェリー》
4 《龍神、ニコル・ボーラス》
1 《戦慄衆の将軍、リリアナ》
-呪文 (33)-
《古呪》は、ゲームを決定づける奥義を持っている《龍神、ニコル・ボーラス》や《戦慄衆の将軍、リリアナ》と組み合わせることで、不意打ちのごとく勝てることがあります。もし腐るようであっても、3枚採用された《時を解す者、テフェリー》で捨てればいいでしょう。
理論上は魅力的に思えますが、このデッキは安定性に難があります。《龍神、ニコル・ボーラス》はこのカラーを選ぶ理由ですが、スゥルタイと比較したときに《自然の怒りのタイタン、ウーロ》《ハイドロイド混成体》《世界を揺るがす者、ニッサ》に見劣りするのは明らかに厳しいハードルになっています。
グリクシスでアグロと戦ってみると、いかに《自然の怒りのタイタン、ウーロ》が強く、デッキに欲しいカードなのかを痛感します。あのカードの異常な強さが改めてわかるはずです。ライフ回復能力と盤面を安定させる能力がランプ呪文1枚に詰まっているのは、ミッドレンジ戦略にとって現実とは思えないほどのものでしょう。
グリクシスが最高のドローをすればスゥルタイの最高のドローに勝てるかもしれませんが、スゥルタイのほうが安定性が高く、幅広いデッキに対して適切に対応できます。残念ながら龍神はスゥルタイには勝てませんでした。ストーリーでも実際のゲームでも彼は最近負け続きですね。
ティムールフラッシュ
フラッシュデッキには先ほど軽く言及しましたが、オンラインで見つけたリストをもとに調整したリストをご紹介しておきましょう。
2 《森》
1 《山》
3 《寓話の小道》
4 《ケトリアのトライオーム》
4 《繁殖池》
4 《蒸気孔》
4 《踏み鳴らされる地》
2 《神秘の神殿》
-土地 (26)- 1 《幽体の船乗り》
3 《砕骨の巨人》
3 《厚かましい借り手》
4 《夜群れの伏兵》
2 《エリマキ神秘家》
-クリーチャー (13)-
2 《ハイドロイド混成体》
2 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
2 《レッドキャップの乱闘》
2 《否認》
2 《神秘の論争》
1 《霊気の疾風》
1 《炎の一掃》
-サイドボード (15)-
このアーキタイプを使用した経験から言えば、ティムールフラッシュはスゥルタイに有利です。ただ、圧倒的にというわけではなく、そこそこ有利という感じですね。スゥルタイ側のプレイヤーが上手いほど相性差は埋まるでしょう。そのティムールフラッシュにとって難しいマッチアップのひとつが、再びのティムールアドベンチャーです。きっと驚かれたことでしょう。
現状はティムールアドベンチャーがスゥルタイの敵に目を光らせていますが、これはつまりティムールアドベンチャーのメタゲーム占有率が下がったときに、オルゾフヨーリオン/エスパーダンスやフラッシュ系のデッキがスゥルタイの一強にならないように頭角を現すことを意味しています。現時点でティムールフラッシュは合理的な選択だと思いますが、当然アグロ戦も苦しむでしょう。勝ち目がないという意味ではなく、たとえばスゥルタイと比較したときにアグロとの相性が悪いだろうということですね。
ティムールエレメンタル
最後に取り上げたいのはティムールエレメンタル。Red Bull Untapped予選の結果を見る限りでは、スゥルタイに対して有利に戦えているデッキのひとつに挙げられそうなデッキです。反面、SCG Championship Qualifierの結果はティムールエレメンタルがスゥルタイに対して酷い相性だったことを示しています。ここで我々が意識すべきなのは、Red Bull予選のサンプルサイズがSCG予選のそれよりもはるかに大きいということでしょう。つまり、ティムールエレメンタルには希望があるということです。
しかしそうだとしても、ティムールエレメンタルはスゥルタイ以外のデッキに対してどのような相性なのでしょうか?
3 《森》
2 《山》
4 《寓話の小道》
4 《ケトリアのトライオーム》
4 《繁殖池》
4 《蒸気孔》
4 《踏み鳴らされる地》
-土地 (28)- 2 《樹上の草食獣》
4 《枝葉族のドルイド》
2 《楽園のドルイド》
4 《発現する浅瀬》
4 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
4 《乱動の座、オムナス》
4 《茨の騎兵》
4 《峰の恐怖》
-クリーチャー (28)-
このリストは、Magic Onlineのグラインダーであり、熟練のデッキビルダー/プレイヤーである_Batutinha_がStandard Challengeで使用したものです。非常に素直な構築であり、《峰の恐怖》と《発生の根本原理》を最大枚数まで採用しています。
しかし素直だということは対策されやすいということでもあります。《霊気の疾風》はこの構築アプローチに対して痛烈に刺さるでしょう。ティムールエレメンタルには妨害手段が少ないため、赤単やマルドゥウィノータといったアグロ戦略にあっさり負けかねません。
スゥルタイを使った身から言いますと、このマッチアップは第一印象よりも拮抗しています。ティムールエレメンタルは適切な順序でカードを引きこまなければなりません。序盤にはランプ呪文、終盤にはフィニッシャー、そして手札を円滑にしてくれる《ハイドロイド混成体》などのカードが求められるのです。
ときには脅威がすべて対処されてマナフラッドすることもあります。《絶滅の契機》は致命的なカードであり、たいていは奇数を宣言され、《峰の恐怖》《茨の騎兵》《自然の怒りのタイタン、ウーロ》《発現する浅瀬》を追放されます。ティムールエレメンタルのほうが有利であるものの、相性に大差はありません。ティムールには《霊気の疾風》や《神秘の論争》のどちらも刺さってしまいます。
今おすすめのデッキ!
僕がチェックしたデッキをすべてご紹介してきました。ラクドスサクリファイスを試す時間はありませんでしたが、ポテンシャルが高いのは間違いありません。将来的にエスパーダンスとともに使ってみようと思います。
さて、ここで記事のまとめをしておきましょう。これから数日間とその間にある大会では、ティムールフラッシュとスゥルタイランプがベストな選択肢になると思います。ラクドスサクリファイスもそこに含まれるかもしれません。ティムールアドベンチャーとティムールエレメンタルも手堅い選択ですが、それぞれが固有の問題を抱えています。
打倒スゥルタイを目指す人におすすめするのは、ティムールフラッシュかミラー用に調整したスゥルタイです。ここではミラー用のスゥルタイのリストは提示しません。調べればいくらでも出てくるでしょうし、僕よりもこのアーキタイプに精通したプレイヤーが記事を書くでしょうしね。それを読めば、みなさんが欲しい情報がすべて載っているはずです。
この記事はみなさんに環境の全体像と、現状のさまざまな選択肢をお見せするためのものです。多くのデッキを試したのは、隠された宝石を見つけるためであり(その願いは叶いませんでしたが)、その過程で得られた知識をみなさんに共有するためでした。この記事から何かを発見していただけたら幸いです。この新環境を研究すれば、みなさんももっと楽しい発見ができると思いますよ。
では、幸せなランクマッチを!