はじめに
みなさんこんにちは。
7月13日に続き、8月3日にも禁止制限告知がありました。
パイオニアでは上記の4枚が禁止となり、これにより環境のメジャーなコンボデッキが軒並み消滅したため、ほぼ別のフォーマットといっていいほど変化しました。
さて、今回の連載では禁止改定後に開催されたPioneer Showcase ChallengeとPioneer Challengeの結果を見ていきたいと思います。
Pioneer Showcase Challenge #12192347
コンボの衰退
2020年8月9日
- 1位 Mono Green Devotion
- 2位 5C Niv
- 3位 Simic Spirits
- 4位 Sultai Midrange
- 5位 Azorius Spirits
- 6位 Azorius Spirits
- 7位 Mono Black
- 8位 Azorius Control
トップ8のデッキリストはこちら
禁止カードの影響により環境を支配していたDimir InverterやLotus Breachは姿を消し、代わって5C NivやAzorius Control、Spiritsなどが新環境の中心となりました。
今大会で優勝したMono Green Devotionですが、《ニッサの誓い》の解禁によりデッキパワーが上がり、8月3日の禁止改定でも影響を受けなかったため妥当な結果といえるでしょう。
デッキ紹介
5C Niv
1 《島》
1 《沼》
1 《山》
1 《森》
4 《寓話の小道》
4 《インダサのトライオーム》
2 《ケトリアのトライオーム》
1 《ラウグリンのトライオーム》
1 《サヴァイのトライオーム》
1 《ゼイゴスのトライオーム》
3 《草むした墓》
2 《繁殖池》
2 《神聖なる泉》
2 《蒸気孔》
2 《踏み鳴らされる地》
1 《寺院の庭》
1 《マナの合流点》
3 《水没した地下墓地》
2 《陽花弁の木立ち》
-土地 (36)- 3 《死儀礼のシャーマン》
4 《森の女人像》
4 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
4 《ニヴ=ミゼット再誕》
1 《狼の友、トルシミール》
-クリーチャー (16)-
4 《戦慄掘り》
2 《突然の衰微》
1 《ラクドスの復活》
1 《絶滅の契機》
1 《陽光の輝き》
1 《完全なる終わり》
4 《白日の下に》
4 《ニッサの誓い》
2 《ケイヤの誓い》
4 《時を解す者、テフェリー》
2 《先駆ける者、ナヒリ》
-呪文 (28)-
3 《イゼットの静電術師》
1 《スカラベの神》
1 《思考囲い》
1 《思考消去》
1 《ラクドスの復活》
1 《殺戮遊戯》
1 《破滅の刻》
1 《戦争の犠牲》
1 《空を放浪するもの、ヨーリオン》
-サイドボード (15)-
5C Nivは《白日の下に》からアドバンテージ源である《ニヴ=ミゼット再誕》や状況に応じたスペルをサーチする5色のミッドレンジで、『テーロス還魂記』リリース直前に上位でよくみられたデッキでした。
除去とカードアドバンテージを獲得する手段が豊富なためアグロに強いデッキでしたが、クロックが遅いのでLotus Breachをはじめとしたコンボに相性が悪く、『テーロス還魂記』リリース後の環境では数を減らしてしまいます。
しかし、《ニッサの誓い》の禁止が解除されてクリーチャーベースのデッキが増え、さらに環境からコンボデッキが退場したことで相対的に強化されました。
☆注目ポイント
デッキの大半がソーサリータイミングでしかプレイできないため、《時を解す者、テフェリー》は相手のターン中に《白日の下に》などのキャストを可能にしてくれる重要なカードとなります。
多くのミッドレンジで活躍している《自然の怒りのタイタン、ウーロ》はこのデッキスタートラインである5マナへの到達を助け、攻防における主力クリーチャーとなっています。トライオームの加入によってマナ基盤が強化されただけではなく、余剰分を「サイクリング」できるため「脱出」しやすくなっています。
《ニッサの誓い》はデッキの安定性を上げるだけではなく、「相棒」の《空を放浪するもの、ヨーリオン》とシナジーがあるのも見逃せないポイントです。
サイドボードに採用されている《復活の声》は、Spiritsやカウンターを多用するコントロール以外でも、Mono BlackやBoros Burnといったアグロデッキに対しての時間稼ぎにも使えます。
Simic Spirits
4 《繁殖池》
4 《植物の聖域》
4 《ヤヴィマヤの沿岸》
1 《ハシェプのオアシス》
2 《変わり谷》
-土地 (20)- 4 《霊廟の放浪者》
4 《幽体の船乗り》
2 《セイレーンの嵐鎮め》
4 《鎖鳴らし》
4 《至高の幻影》
4 《厚かましい借り手》
4 《ネベルガストの伝令》
-クリーチャー (26)-
今大会で結果を残したMono Green Devotionや5C Niv、Azorius Controlと同様に、Spiritsも台頭してきています。Spiritsは優勝こそ逃したものの、Azorius Spiritsも含めるとプレイオフに3名を送り込む安定した成績を残しました。
コンボデッキに対して相性が良いだけではなく、クロックパーミッション戦略は5C NivやAzorius Controlに対しても有効です。
タフネスの低いクリーチャーが多いため《歩行バリスタ》を苦手としていましたが、同カードが禁止になったことはこのデッキにとっては追い風となっています。
☆注目ポイント
BantやAzoriusバージョンと異なり、Simicはクリーチャーに《執着的探訪》や《第六感》をエンチャントしつつ、《顕在的防御》や《セイレーンの嵐鎮め》でクロックを守るアグロ寄りの戦略にフォーカスしています。緑を絡めたSpiritsでは《集合した中隊》を採用したBant Spiritsが有名ですが、このデッキは《執着的探訪》をはじめとした非クリーチャースペルが多いため、採用が見送られています。
オーラのついたクリーチャーなどを守る《顕在的防御》は1マナと軽く、コントロールやミッドレンジに対しても有利に立ち回れます。過去のスタンダードで活躍したMono Blue Tempoを彷彿とさせますね。
《鎖鳴らし》は《顕在的防御》と同様に、単体除去に対するカウンターのように機能します。『基本セット2021』から登場した《高尚な否定》は、Spiritsにとって強化版《マナ漏出》となりますね。
サイドボードの《英雄的介入》は単体除去だけでなく《至高の評決》のようなスイーパーからもクリーチャーを守れるため、Azorius Controlや5C Nivとのマッチアップで重宝します。
Azorius Spirits
Azorius Spiritsも結果を残しましたが、従来の構成とほぼ変わりません。しかし、『基本セット2021』からの新戦力によって強化されています。
Simic Spiritsとの違いは干渉手段である《呪文捕らえ》と追加ロードの《天穹の鷲》、そして新戦力の《天球の見張り》になります。
《執着的探訪》や《第六感》によるカードアドバンテージによって、Simicは特にコントロールに対して強いデッキです。一方、Azoriusは相手に干渉できるカードが多く、ロードの種類が増え打点も高いため、環境にあるデッキの大半に対して安定した勝率が期待できます。
☆注目ポイント
Simic Spiritsと同じく、メインボードの《高尚な否定》は中盤以降までほぼ確定カウンターとして機能します。
《鎖霊》は《ネベルガストの伝令》と同様に相手のクリーチャーの攻撃を抑止しますが、ひとたび頭数を揃えれば継続的にスピリットを出し続ける必要がないため、プランを練りやすく信頼性の高いカードになります。
《天球の見張り》はスピリットではないものの、飛行クリーチャーのマナコストを軽減できるため、このデッキに適したカードとなります。このクリーチャーを追加したことで2ターン目に青白両マナが必要となり、半固定化されていた《変わり谷》が《マナの合流点》に変更されています。
Azorius Control
2 《平地》
2 《寓話の小道》
4 《神聖なる泉》
2 《灌漑農地》
4 《氷河の城砦》
2 《アーデンベイル城》
1 《ヴァントレス城》
2 《廃墟の地》
-土地 (25)- 1 《厚かましい借り手》
-クリーチャー (1)-
4 《アゾリウスの魔除け》
3 《検閲》
1 《ドビンの拒否権》
4 《吸収》
1 《中和》
4 《至高の評決》
3 《時を越えた探索》
2 《エルズペス、死に打ち勝つ》
2 《サメ台風》
3 《時を解す者、テフェリー》
3 《ドミナリアの英雄、テフェリー》
-呪文 (34)-
2 《霊気の疾風》
2 《ドビンの拒否権》
2 《神秘の論争》
2 《残骸の漂着》
2 《魂標ランタン》
1 《旋風のごとき否定》
1 《封じ込め》
1 《覆いを割く者、ナーセット》
-サイドボード (15)-
各種カウンターと《至高の評決》で相手の脅威をさばき、プレインズウォーカーや《時を越えた探索》でカードアドバンテージを稼いでいきます。最終的に《ドミナリアの英雄、テフェリー》の[-8]能力で相手をロックしたり、《サメ台風》や《アーデンベイル城》でゲームを終わらせる古典的なコントロールといえます。
コンボデッキが衰退しアグロやミッドレンジが台頭してきたため、Azorius Controlはいい立ち位置にいます。
☆注目ポイント
カウンターの選択肢はいくつもありますが、《吸収》は源環境に適した1枚といえます。色拘束こそきついものの、アグロが多い環境では貴重なライフをもたらしてくれるのです。《至高の評決》はSpiritsとのマッチアップこそ《呪文捕らえ》で捕らえられてしまいますが、カウンターされない優秀なスイーパーなのでメインボードに4枚確定です。
パイオニアというフォーマットが制定されて以来、Azorius Controlは定番のアーキタイプの1つとなっていますが、今年リリースされたセットからも新戦力が加入し強化され続けています。
《エルズペス、死に打ち勝つ》は5マナと重いのでアグロ相手には悠長ですが、プレインズウォーカーや《自然の怒りのタイタン、ウーロ》などを使用するミッドレンジ~コントロール戦では大活躍します。墓地に落ちた自分のプレインズウォーカーを場に戻せるので、追加の勝ち手段にもなりますね。
《サメ台風》は相手の場に《時を解す者、テフェリー》がいてもインスタントタイミングでクリーチャー・トークンを生成でき、カウンターする手段も限られるため、相性が悪かったSpiritsとのマッチアップも改善されています。
Pioneer Challenge #12195647
パイオニアでも活躍する再生
2020年8月15日
- 1位 Temur Reclamation
- 2位 Mono Green Devotion
- 3位 Mono Black
- 4位 Esper Control
- 5位 Mono Green Devotion
- 6位 Boros Burn
- 7位 Jund Citadel
- 8位 Esper Control
トップ8のデッキリストはこちら
先週末に開催されたPioneer Challengeで見事優勝したのは、スタンダードを支配していたTemur Reclamationでした。
デッキ紹介
Temur Reclamation
スタンダードを去ったTemur Reclamationですが、パイオニアでも通用する強さでした。カードプールは広がったもののフェッチランドが禁止されているため、M10ランドが使えることと一部スペルがアップデートされている以外はあまり大きな変化はみられません。
☆注目ポイント
《成長のらせん》に加えて《検閲》が採用されているので、序盤からマナ加速/カウンター/「サイクリング」と相手に応じて動けるようになっています。
《荒野の再生》さえ置ければ、いくらメインフェイズにマナを使おうとも自分の終了ステップに土地がアンタップするので隙が少なくなります。単純にマナが倍になるため、《サメ台風》や《発展/発破》によって速やかにゲームを終わらせることができます。
現環境にはAzorius Controlや5C Niv、Spiritsなど青ベースのデッキが多く、メインボードから《神秘の論争》がフル搭載されています。
スタンダードとの明確な違いはスイーパーの《神々の憤怒》と、サイドボードに採用されている《イゼットの静電術師》です。《神々の憤怒》はクリーチャーを追放できるためMono Blackに効果的なカードであり、《イゼットの静電術師》はマナクリーチャーを多用する緑デッキ、タフネス1の多いSpiritsとのマッチアップで活躍します。
総括
禁止カードの影響により有力なコンボデッキは姿を消し、大会で結果を残しているのは《ニッサの誓い》の禁止が解除されたMono Green Devotionや5C Niv、新カードに恵まれたSpiritsでした。
ほとんど別フォーマットといってもいいまでに変化したパイオニアですが、Temur ReclamationやJeskai Firesといった最近のスタンダードデッキもトーナメントレベルで活躍しています。パイオニアへの参入障壁はかなり低くなっていますね。
USA Pioneer Express vol.9は以上となります。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいパイオニアライフを!