《ミシュラのガラクタ》道 ~小さなガラクタの多様な使い方~

Immanuel Gerschenson

Translated by Kohei Kido

原文はこちら
(掲載日 2020/07/27)

はじめに

やあ!友人諸君!

今日はたった一枚のカードについて話そう!私見ではこのカードはとても独自性が高くて正しく使うのが難しいからだ。ついにこのときが来た!この記事では丸々一本《ミシュラのガラクタ》の話をするぞ!

まずはカードが実際にどういうものか見てみよう。

ミシュラのガラクタ

結構シンプルだろ?プレイヤーのデッキトップが見られてその次のアップキープの初めにカードがドローできる。最後まで読んでくれてありがとう!これで記事は終わりだ。

待って!そんなすぐには終わらないよ!誰だってカードは読めるよね。でも解かなくてはいけない疑問がいくつかあって、残念ながら見た目ほどそれを解くのは簡単ではないんだ。

疑問は次の通りだ。

これらの質問は、自分のデッキリスト、知っていれば相手のデッキリスト、環境に対する理解、自分の初手といった要素に依存するから答えるのがとても難しいんだ。俺に言わせれば解くべき疑問はもっとたくさんあって、それは全て操縦しているデッキ次第なんだ。具体的なデッキリストと初手を見ながら《ミシュラのガラクタ》についてもっと語っていこう。特に断りがなければ、先手で7枚の初手をキープしていて相手のデッキリストはわかっていないという設定だ。

具体的な例を通して理解を深めよう

ジャンド果敢

「果敢」から始めよう。《夢の巣のルールス》が俺の相棒だった頃だ。

夢の巣のルールス

まずは相棒について語る。《夢の巣のルールス》の能力はあまりに強かったから《ミシュラのガラクタ》を無料で戻せるカードアドバンテージ源として利用することにした。《ミシュラのガラクタ》が墓地にあれば、3ターン目に《夢の巣のルールス》を出すだけで、墓地から《ミシュラのガラクタ》を再び唱えられてとても近い未来に手札が一枚増えるんだ。

さらに話を進めるとこのデッキで実際に戦ってくれるクリーチャーたちにも役立つ。《ミシュラのガラクタ》は「果敢」を誘発するし《タルモゴイフ》を育てるんだ。

今のところ《ミシュラのガラクタ》を唱えるときの「いつ・誰」については語ってすらいないけど、このカードがデッキに入っていることでどんな役割を果たすのかが見えてくるだろう。いくつか手札のサンプルを見せて、どうすべきか議論していこう。

手札サンプル#1

2ターン目には《炎の印章》を引いた。

血染めのぬかるみ黒割れの崖損魂魔道士僧院の速槍
溶岩の投げ矢舞台照らしミシュラのガラクタ

初めに言っておくと結構強い手札だ。何から使う?1ターン目は《黒割れの崖》《損魂魔道士》で終わりだね。《血染めのぬかるみ》から《僧院の速槍》《ミシュラのガラクタ》だ。この手順でダメージの出力が最大化される。「果敢」の誘発回数が多くなるからで、ここまでの手札だと今カードを1枚引けることはあまり重要ではない。

対戦相手が1ターン目に何をしたのかが、今唱えた《ミシュラのガラクタ》でどうすればいいのかという問いへの答えへと導いてくれる。何個か選択肢があるからね。

ウルザの塔

もし対戦相手が1ターン目にウルザトロンのひとつをプレイしたなら、2ターン目から3ターン目に何か悪いことが起こる前に対戦相手を倒すことが目標になるから《ミシュラのガラクタ》を即座に対戦相手を対象として割る。

対戦相手のデッキトップを見るように割ることで相手が緑トロンかエルドラージトロンか判別する助けになるかもしれない。これらのデッキの違いは大きい。片方は《虚空の杯》を使っていてもう片方は3ターン目のために《ワームとぐろエンジン》を控えている。何を見たか次第ではあるけど、一番やりそうなプレイングはフェッチランドを割って《炎の印章》をプレイして6点の打点を出すことだ。こうすることで次のターンに1マナで《舞台照らし》を唱えられて4ターンキルを準備できそうだ。

溢れかえる岸辺

もし対戦相手がフェッチランドをプレイしたなら、相手が使っている可能性のあるデッキは多岐に及ぶ。この場合はただ4点の打点で殴ってターンを渡す。ターンの終わりに相手はフェッチを割るかもしれないが、それでも《ミシュラのガラクタ》は起動しない。2ターン目には対戦相手は2枚目の土地を置くだろうからその頃にはどういうデッキを使っているのか判別できるようになってくる。対戦相手がターンを渡そうとするまで待って、そこで自分を対象に《ミシュラのガラクタ》を割る。3ターン目のアップキープに、さっき見たカードが必要なかったらフェッチを起動する。自分のアップキープまで待つことで、相手の《稲妻》から自分のクリーチャーを救いたいときに《溶岩の投げ矢》をプレイして「フラッシュバック」するマナが保てる。

貴族の教主

対戦相手は1ターン目に《森》から《貴族の教主》を出して今は俺の2ターン目だ。俺は《僧院の速槍》を出してから《貴族の教主》《溶岩の投げ矢》を放って攻撃するだろう(マナバードはいつだって焼いておけ!)。対戦相手は感染を使っているかもしれないし、何らかの《献身のドルイド》デッキか、あるいはオリジナルデッキかもしれない。今すぐに《ミシュラのガラクタ》を割ることはしない。相手の2ターン目の行動を待つ。

もし相手の2ターン目の行動が本当に《献身のドルイド》なら《ミシュラのガラクタ》はそこに置いておく。ここでそうしておく理由は3ターン目にとる行動はどちらにしろすでに決まっているからだ。《炎の印章》を出して《献身のドルイド》を死亡させたら戦闘後に《舞台照らし》だ。その頃にはこの試合を勝つには何が必要なのか情報が得られたはずだ。火力か土地かあるいはクリーチャー?もしもう一枚フェッチランドをめくったなら自分のデッキトップを見ればいい。たとえば《舞台照らし》でフェッチランドではない土地2枚をめくったときみたいに、もし何も見つけられなかったなら対戦相手を対象に割って何を引くのか見ておけばいい。

手札サンプル#2

2ターン目に引いたのは《稲妻》だ。

血染めのぬかるみ沸騰する小湖樹木茂る山麓
僧院の速槍タルモゴイフ炎の印章ミシュラのガラクタ

ここでの私の行動は《踏み鳴らされる地》を置いてから《僧院の速槍》を唱えて、《ミシュラのガラクタ》を使って攻撃したらターン終了だろう。対戦相手は《聖なる鋳造所》をアンタップインしてターンを終えた。

今回だけでなく多くの場合に《ミシュラのガラクタ》を割って相手のデッキトップを見るだろう。場に出したままにしない理由は、どうせ2ターン目に《タルモゴイフ》を出したいし、あと2ターン待つのでなければ自分のデッキトップを見たところでシャッフルできないからだ。

俺が3ターン目まで待つ少数のケースは、たとえば対戦相手が《塵へのしがみつき》を入れた赤黒「果敢」を使っている場合だ。《ミシュラのガラクタ》《タルモゴイフ》をインスタントスピードで大きくするために場に残しておきたい。《夢の巣のルールス》《ミシュラのガラクタ》を再び唱えられる可能性も少しでも多く残したいしね。

エスパーウルザ

話を進めて別のデッキを見てみよう。

このデッキではこちらの目標はコンボだ。それは《ミシュラのガラクタ》の使い方にどんな影響を与えるだろうか?

湖に潜む者、エムリー

こういったデッキでは《ミシュラのガラクタ》を即座に生け贄にすることは稀だ。その場に置いておくことに一番価値があるからね。《湖に潜む者、エムリー》《発明品の唸り》を唱えるのが軽くなるし、《最高工匠卿、ウルザ》でマナを作れるし、ウルザから出るトークンは大きくなって《飛行機械の鋳造所》で生け贄にすることもできる。《湖に潜む者、エムリー》と合わされば《ミシュラのガラクタ》はここでもまたカードアドバンテージを生む。

飛行機械の鋳造所弱者の剣

このデッキではほとんどの場合に《ミシュラのガラクタ》で自分のデッキトップの情報を得る。目標は《飛行機械の鋳造所》《弱者の剣》《最高工匠卿、ウルザ》の組み合わせを揃えてその場で勝つことだからね。

このデッキで初手の手札のサンプルを見せてもあまり意味はない。1ターン目に《ミシュラのガラクタ》を生け贄にすることはほとんどないからね。代わりにこのデッキで使うときの小技とコツを教えよう。

最高工匠卿、ウルザ発明品の唸り

《最高工匠卿、ウルザ》が場に出ていると《ミシュラのガラクタ》は青マナを生みだすようになる。このマナはウルザの5マナの起動型能力の燃料にできる。マナの状況次第だが、多くの場合で正解となるプレイングは相手のターンの終わりに自分を対象に《ミシュラのガラクタ》を使うプレイングだ。もしデッキトップのカードが満足できるものだったらそのまま引いてしまえばいい。もし要らないなら《ミシュラのガラクタ》のドローがスタックに乗った状態でウルザの5マナの起動型能力を使えばいい。そうすればデッキはシャッフルされて3枚のカードが見られる。デッキトップにあった要らない1枚の代わりにね。ウルザの5マナの起動型能力の代わりに《発明品の唸り》でも同じことができる。

《ミシュラのガラクタ》はアーティファクトなんだ!ウルザの構築物トークンのサイズが上がるってことだ。このトークンはマナを生むためだけにあるわけではなくて、攻撃して勝利に結びつけることができる。たまに珍しい状況に陥ることもあって、墓地の《弱者の剣》を戻すために《飛行機械の鋳造所》《ミシュラのガラクタ》を生け贄にすることもできる。

神秘の聖域

《ミシュラのガラクタ》はとても近い未来にドローを発生させるから、もし必要なら《神秘の聖域》を使って《発明品の唸り》《謎めいた命令》をデッキの一番上に戻して引くこともできる。これはただデッキの一番上を見てフェッチランドでシャッフルするプレイングよりも役に立つことが多いね。

横断シャドウ

僕が大好きなデッキに話を移そう。横断シャドウだ。

またもや《ミシュラのガラクタ》は今まで見てきたデッキとは異なる役割を果たす。情報を得るだけではなく、このデッキではアーティファクトであることが重要だ。《タルモゴイフ》《残忍な剥ぎ取り》を大きくして、《ウルヴェンワルド横断》のためにも役に立つ。《ミシュラのガラクタ》を生け贄にすれば《致命的な一押し》の「紛争」も達成できて、これもとても役に立つ場面がある。

いくつか手札のサンプルを見てそこからどう展開するか考えてみよう。

手札サンプル#1

汚染された三角州新緑の地下墓地タルモゴイフ通りの悪霊致命的な一押し思考囲いミシュラのガラクタ

1ターン目には黒マナの出るショックランドをフェッチしてきて対戦相手に《思考囲い》を使うだろうね。

《ミシュラのガラクタ》を用いた甘美な小技を使う権利を持っているけど、自分なら1ターン待ってからその小技をやるだろうね。フェッチランドを出して《ミシュラのガラクタ》を唱えてデッキトップを見るという小技のことだ。見たカードが必要なもので今すぐ引きたいなら《通りの悪霊》で引くことができる。もしデッキの一番上のカードを気に入らなかったならフェッチランドを切ってから《通りの悪霊》をサイクリングすればいい。そうするとシャッフルしてしまったカードではなくて未知のカードを引けるからね。

この小技をゲーム開始直後にやらない理由は、情報を集めてからやった方が良い判断に結びつくからだ。だからこそ1ターン目に《思考囲い》を使うことでゲームの当面の展開と探しに行くべきカードを判断できるようにするんだ。この《ミシュラのガラクタ》を使った小技を2ターン目に遅らせることで、必要なものがクリーチャー、打ち消し、除去、ハンデスどれだったとしても、それを探しに行くことにチャレンジできるね。

手札サンプル#2

汚染された三角州死の影死の影
致命的な一押し頑固な否認思考囲いミシュラのガラクタ

1ターン目は《湿った墓》を出して《思考囲い》だ。対戦相手はエルドラージトロンであることが判明して、ハンデスできるカードは《虚空の杯》《探検の地図》《現実を砕くもの》《難題の予見者》だ。手札の土地は《エルドラージの寺院》2枚と《魂の洞窟》だった。

魂の洞窟エルドラージの寺院エルドラージの寺院
難題の予見者現実を砕くもの虚空の杯探検の地図

どのカードを手札から取り去って、どうやって《ミシュラのガラクタ》で前進しようか?自分のデッキの内容を考えると《虚空の杯》を取り去ることが多い場面だ。《難題の予見者》を除去する余地はあるけど、《虚空の杯》を打ち消すのは不可能な状況になってしまうかもしれない。

《虚空の杯》を取り去って《ミシュラのガラクタ》を出したらそれをどう使えばいいだろうか?対戦相手は2ターン目に《難題の予見者》を出すだろう。もし《虚空の杯》を相手が引いてそれを叩きつけられたら《頑固な否認》でカバーできる。自分なら《ミシュラのガラクタ》は1ターンその場に置いたままにしておいて、対戦相手の2ターン目に《難題の予見者》《致命的な一押し》で始末するときに生け贄にするね。

対戦相手が《死の影》を1枚追放するのはこちらの動きほど強くはなくて、追加のドローで探したい唯一のカードは2ターン目に《死の影》が出せるようにするためのフェッチランドだ。1ターン目に《ミシュラのガラクタ》を割ったとして、引けたものが《タルモゴイフ》でも《コジレックの審問》でもなんでもいいけどフェッチランドではなかったと想定してみてくれ。これでは対戦相手の《難題の予見者》は倒せないし、そうなると引けるカードも一枚減って《死の影》はさらに遠のいていく。この場面での《ミシュラのガラクタ》の使い方は試合の展開を大きく変えてしまうよ!

グリクシスシャドウ

最後になったけど重要なデッキについて考えよう。グリクシスシャドウだ。

このデッキについては短い説明に留めよう。上で述べたことは全てこのデッキにも当てはまるからね。ただこのデッキにはもう一つ《ミシュラのガラクタ》の使い道がある。カードが引ける《水蓮の花びら》だ。マナを払わずに「探査」コストに当てるためのカードを墓地に入れることができる。

水蓮の花びらグルマグのアンコウ

それに加えて、自分のデッキトップを操作する手段が増えている。フェッチランドに加えて、《思考掃き》もあるからデッキトップが引きたくないものだったら自分の山札を切削して処分してしまえばいい。

まとめ

ここまで《ミシュラのガラクタ》について結構書いたね。少し要点をまとめておこう。

特に最後の点は重要で勝敗を分けることが多い。モダンの環境自体を知ることでも、いつ《ミシュラのガラクタ》を使うべきかの判断の一助になる。

記事を通して、このユニークなMTGのカードについて読者の理解が深まると嬉しいね。もし《ミシュラのガラクタ》について疑問が生まれたときや、何かが足りないもしくは間違っていると思ったときには、遠慮せずに俺に聞いてくれ。

次回また会おう。

イマニュエル・ゲルシェンソン ( Twitter )

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Immanuel Gerschenson イマニュエルは構築戦を得意とするプレイヤーで、グランプリ・マドリード2014 (モダン)、そしてグランプリ・セビリア2015 (スタンダード) という2つの大会で頂点をつかみ取った、オーストリア屈指の実力派。 プロツアー『イクサランの相克』ではサイドに《遅延》を採用した独特のトラバース・シャドウを手に、構築ラウンドを9勝1敗で駆け抜け14位に入賞。さらにオーストリア選手権2018では準優勝に輝き、オーストリア代表の座を手にするとともに、ゴールドレベルを手中におさめた。 Immanuel Gerschensonの記事はこちら