先週末の勝ち組は?
みなさんこんにちは。8月も下旬となりましたが、連日の猛暑と止まらぬスゥルタイランプの猛威にお悩みかと思います。気候と違い、メタゲームの変化には人的作用が不可欠となっていますからね。
先週末の結果はどうだったのでしょうか?まずはRed Bull Untapped International Qualifier VIとSCG Tour Online Championship Qualifier #4の大会結果から、勝ち組デッキを確認していきましょう!
2 《ギャレンブリグ城》
2 《総動員地区》
-土地 (25)- 4 《石とぐろの海蛇》
4 《生皮収集家》
4 《樹皮革のトロール》
4 《漁る軟泥》
4 《恋煩いの野獣》
3 《ガラクの先触れ》
4 《探索する獣》
-クリーチャー (27)-
先週末の勝ち組は両大会合わせてトップ8に3名を送り込んだ緑単アグロです。ここではSCG Tour Online Championship Qualifier #4を制したBrendon Hansard選手のデッキをみていきましょう。
前環境ではハイスタッツと速攻を活かしバントランプキラーとして存在感を示していましたが、現在は《取り除き》と《無情な行動》擁するスゥルタイランプの前に苦しい戦いを強いられています。基本的に1ターンに1枚しかクリーチャーをキャストできないため単体除去に弱く、その除去も2マナと軽くテンポを損なってしまいがちです。
例えば4ターン目の《探索する獣》に対して《思考消去》や《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を《無情な行動》と組み合わせてキャストすることで、盤面を処理しながら手札に干渉、もしくはリソースを伸ばすといった動きをされてしまいます。
そこで今回のデッキは黒い単体除去を意識して作られています。“黒からの呪禁”を持つ《ガラクの先触れ》と1マナで「呪禁」を付与する《レインジャーの悪知恵》はスゥルタイランプ戦で活躍してくれるカードたちになります。前者は同デッキの主力除去が効かず、パワーも4と高く、ダメージを与えることでアドバンテージを得ることができます。
後者は除去呪文に対するカウンターであり、序盤から終盤まで活躍してくれます。クロックの高い《恋煩いの野獣》や《探索する獣》を守ることでプレッシャーをかけていきましょう。
また、アグロデッキにしては25枚と土地が多めに採用されています。《探索する獣》のために4マナまでストレートに伸ばしたいところですが、懸念すべきは土地の引き過ぎ(マナフラッド)。このデッキでは《総動員地区》を採用することで、疑似的に有効牌を増やしています。《眷者の居留地》と競合する枠ですが、スゥルタイランプ戦ではクリーチャーが場に残りにくいため、単体で機能するこちらへ軍配が上がったようです。
直接的な解決策もとられています。有り余るマナが無駄なく使えるように、マナコストにXを持つカード2種類(《石とぐろの海蛇》と《原初の力》)が採用されているのです。《原初の力》はクリーチャー戦はもとより、ミッドレンジやコントロール戦ではX火力のように使うこともできますね。
Red Bull Untapped International Qualifier VI
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | Michael Bonde | ラクドスサクリファイス |
準優勝 | Alexander Gordon-Brown | スゥルタイランプ |
トップ4 | Pavel Semenov | アゾリウスコントロール |
トップ4 | Matteo Bruschi | スゥルタイランプ |
トップ8 | Tobo Hayato | スゥルタイランプ |
トップ8 | Rui Barbosa | スゥルタイランプ |
トップ8 | CommonlyColin | スゥルタイランプ |
トップ8 | Szymon Oleksy | 緑単アグロ |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
参加者1050名で開催されたRed Bull Untapped International Qualifier VIはMPLに所属するJavier Dominguez選手がデザインしたラクドスサクリファイスを使用したMichael Bonde選手が優勝となりました。スゥルタイランプがトップ8の半数以上を占めており、同デッキもミラーマッチを意識したものへ変化しつつあります。
SCG Tour Online Championship Qualifier #3の覇者であるAlexander Gordon-Brown選手が持ち込んだのは、除去スロットを打ち消し呪文へと入れかえたミラーマッチに強い構成のものとなっています。《霊気の疾風》が4枚採用され、ミラーマッチはもとより赤単/緑単両アグロがしっかりと意識されているようです。
採用されているプレインズウォーカーもミラーマッチのカギとなる《覆いを割く者、ナーセット》ではなく、《世界を揺るがす者、ニッサ》となっている点も注目です。攻防の起点となるカードであり、タップアウトでキャストしても《ゼイゴスのトライオーム》か《繁殖池》があれば打ち消し呪文を構えられるため、ほとんど隙が生まれません。場に残った際のリターンが大きく、《ハイドロイド混成体》と合わせれば一気にリソースを回復できます。
前回のものとサイドボードを数枚しか変更しておらず、スゥルタイランプ蔓延るメタゲームにおいては1つの完成系といえるでしょう。
CommonlyColin選手が持ち込んだのは頂点に《戦争の犠牲》を据えたオーソドックスなかたちであり、アグロ~ミッドレンジに強いタイプとなっています。打ち消し呪文によるテンポ面でのコントロールではなく、除去呪文とプレインズウォーカーを組み合わせることでリソースに差をつけていきます。消耗戦に強く、アグロデッキでの攻略は困難を極めそうです。
トップ8デッキリストはこちら。
ラクドスサクリファイス
4 《山》
4 《寓話の小道》
4 《血の墓所》
3 《ロークスワイン城》
-土地 (24)- 4 《囁く兵団》
3 《どぶ骨》
1 《鋸刃蠍》
4 《忘れられた神々の僧侶》
2 《ラゾテプの肉裂き》
4 《波乱の悪魔》
4 《悲哀の徘徊者》
1 《真夜中の死神》
2 《悪ふざけの名人、ランクル》
-クリーチャー (25)-
ラクドスサクリファイスといえば《夢の巣のルールス》を「相棒」として《魔王の器》と《死住まいの呼び声》のパッケージに、《死の飢えのタイタン、クロクサ》、《悪魔の職工》、《ぬかるみのトリトン》を添えたものが一般的ですが、このデッキはその一切を排除しています。
代わりに採用されているのは《囁く兵団》です。1枚で2ターン目までのマナカーブを埋めてくれるカードであり(場合によってはそれ以降も)、このデッキにとっては頭数が増えることも重要となっています。最近ではめっきり姿を消していましたが、《波乱の悪魔》と《悲哀の徘徊者》が採用されているため、これらを組み合わせることで相手の場を壊滅状態にすることができます。小粒のアグロデッキやティムールアドベンチャーには有効な戦略ですね。
《囁く兵団》はもちろんですが、生け贄役には《初子さらい》も欠かせません。両者ともに《忘れられた神々の僧侶》や《村の儀式》と相性がよく、地味ながらカードを増やしてくれます。
目を引くのは1枚挿しのカードたちです。《ボーラスの城塞》はジャンドサクリファイスの最終兵器となっていましたが、ラクドスサクリファイスにも採用されています。ライフ回復手段である《大釜の使い魔》+《魔女のかまど》や《金のガチョウ》がないため枚数は1枚と抑えられていますが、キャストすることに成功しようものなら勝利は約束されたも同然。スゥルタイランプのようにライフが減らないマッチアップでは、強力なフィニッシャーとなりますね。
《想起の拠点》はライフのみを攻める《波乱の悪魔》であり、チャンプブロック(相打てない損なブロック)するだけでも有利になっていきます。ドレイン(ライフを相手は失い、自分は得る)であるため、アグロとのマッチアップでは延命につながり、《ボーラスの城塞》へのライフ供給源となってくれるのです。
《苦悶の悔恨》1枚はかなり気になるところですが、このデッキはあくまでも盤面でシナジーを組み、攻めながら制圧するデッキです。ただし、スゥルタイランプのようなデッキには手札へ干渉したい、もしくは《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を追放したい状況もありえます。枚数を増やせば引ける確率は高まるものの、場合によってはサクリファイス戦略を阻害する可能性もあります。
そこで、デッキパワーを落とさずに上振れを狙い、都合よく2ターン目に引けた場合は手札破壊として使えるように1枚だけ採用されています。後半引いた場合は墓地の《自然の怒りのタイタン、ウーロ》対策となるため完全には腐りません。1枚挿しのなかでも特に面白い選択といえますね。
このデッキのオススメ!
カード単体でみればスゥルタイランプには及ばないものの、デッキ全体が織りなすシナジーは単体のカードパワーを凌駕します。カード同士の組み合わせを覚えれば、あとは対戦するのみ!噛めば噛むほど味のするスルメのようなデッキです。アグロデッキに有利に立ち回りたい、ガチャガチャしたシナジー織りなすデッキが好き、何よりも1人回し好きなあなたにオススメ!
ティムールエレメンタル
3 《森》
2 《山》
4 《寓話の小道》
4 《ケトリアのトライオーム》
4 《繁殖池》
4 《蒸気孔》
4 《踏み鳴らされる地》
4 《神秘の神殿》
2 《奔放の神殿》
2 《天啓の神殿》
-土地 (36)- 4 《樹上の草食獣》
4 《枝葉族のドルイド》
3 《ハイドロイド混成体》
4 《発現する浅瀬》
4 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
4 《乱動の座、オムナス》
4 《茨の騎兵》
-クリーチャー (27)-
3 《炎の一掃》
2 《漁る軟泥》
2 《レッドキャップの乱闘》
2 《霊気の疾風》
1 《否認》
1 《嵐の怒り》
1 《空を放浪するもの、ヨーリオン》
-サイドボード (15)-
20枚のランプ呪文でマナを増やし、《発現する浅瀬》と各種エレメンタル・シナジーを駆使してリソースを伸ばしていくデッキであり、ゴールに《発生の根本原理》と《精霊龍、ウギン》が据えられています。
序盤はとにかくマナブーストしていきます。理想的な展開としては《樹上の草食獣》から《耕作》へ繋げ、3ターン目に《茨の騎兵》です。一度盤面で押されてしまうと覆しにくいため、早めにクリーチャーを並べマナを増やしておきたいところです。
マナが増えれば、今度はカードへとリソース変換していきましょう。リソース回収の根幹を支えるのは《発現する浅瀬》と中盤以降の《乱動の座、オムナス》であり、《発生の根本原理》と組み合わせて複数の誘発が絡めば、多大なアドバンテージを得ることができます。ですが、スゥルタイランプのように除去が多いマッチアップでは真価を発揮できる確証はありません。
そこで大量のマナを活かせる《ハイドロイド混成体》を採用することで、一気に手札とライフを補充できるようになっています。特に手札とライフの補充は誘発型能力であるため打ち消されにくいことも、このカードの強みです。
これまでフィニッシャー部分は《峰の恐怖》が採用され、《発生の根本原理》と合わせて一撃必殺も狙えるようになっていました。反面、単体では機能しにくく、除去呪文がないこともあり、数で勝負するアグロデッキには押し切られてしまうこともありました。
新たにフィニッシャーとなった《精霊龍、ウギン》ですが、制圧力に関しては比類なきNo.1といっていいでしょう。[-X]は破壊ではなく、除外するため《鍛冶で鍛えられしアナックス》や《自然の怒りのタイタン、ウーロ》も対処でき、その後の展開にもにらみを利かすボードコントロールに長けた1枚です。
このデッキのオススメ!
ラクドスサクリファイスと同じクリーチャーベースのシナジーデッキですが、こちらは相手に干渉することなく自分のリソースを拡充することに焦点を当てています。《発現する浅瀬》は除去されやすいものの、生き残ればエレメンタルの数だけカードが増えることになります。マナ加速を駆使して有利に立ち回りたい、マナコストの重いパワフルな呪文が好き、《精霊龍、ウギン》が好きなあなたにオススメ!
SCG Tour Online Championship Qualifier #4
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | Brendon Hansard | 緑単アグロ |
準優勝 | Ari Lax | スゥルタイランプ |
トップ4 | Ross Merriam | ラクドスサクリファイス |
トップ4 | Mikami Yoshiro | スゥルタイランプ |
トップ8 | Richard Zhang | スゥルタイランプ |
トップ8 | Kenton Stalder | 緑単アグロ |
トップ8 | Koizumi Yuma | スゥルタイランプ |
トップ8 | Ota Masatoshi | スゥルタイランプ |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
参加者110名で開催されたSCG Tour Online Championship Qualifier #4は緑単アグロを使用したBrendon Hansard選手が制しました。決勝戦ではスゥルタイランプ相手に、《レインジャーの悪知恵》を効果的に使用して序盤にダメージを稼ぎ、《探索する獣》と《変容するケラトプス》によって押し切る理想的な展開となりました。
Ari Lax選手のスゥルタイランプはミラーマッチを意識しつつクリーチャー戦も取りこぼさない構成となっており、《霊気の疾風》があるため特に赤単/緑単には強い構成です。打ち消し呪文こそないものの、《思考消去》を中心に手札破壊を重視しており、2ターン目《思考消去》、3ターン目《覆いを割く者、ナーセット》でマウントをとれるようになっています。
インスタントはあるもののプレインズウォーカーも多く採用されているため、基本的にはタップアウトに近い動きをとります。そのため構える打ち消し呪文よりも先打ちできる手札破壊のほうがデッキには合っています。ミラーマッチにおける《覆いを割く者、ナーセット》も意識され、単体除去は《取り除き》が優先されています。
トップ8デッキリストはこちら。
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メタゲームブレイクダウン
両大会ともにスゥルタイランプが大勢を占めており、特にSCGは半数となっています。Red Bullでは初日こそ2割台でしたが、2日目なるとフィールドにおける占有率は5割近くまで伸びています。安定性の高さとどのデッキにも負けないデッキパワーの高さこそ、スゥルタイランプの魅力であり、長いトーナメントを戦ううえでプレイヤーたちが選択するのも納得といえますね。
2 《沼》
2 《森》
4 《寓話の小道》
4 《ゼイゴスのトライオーム》
4 《繁殖池》
4 《草むした墓》
3 《湿った墓》
1 《ヴァントレス城》
-土地 (28)- 2 《ハイドロイド混成体》
4 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
-クリーチャー (6)-
3 《霊気の疾風》
3 《取り除き》
1 《苦悶の悔恨》
2 《絶滅の契機》
1 《食らいつくし》
1 《戦争の犠牲》
3 《サメ台風》
4 《覆いを割く者、ナーセット》
1 《伝承の収集者、タミヨウ》
3 《世界を揺るがす者、ニッサ》
-呪文 (26)-
手札破壊と単体除去で2マナ域を埋め、《覆いを割く者、ナーセット》か《自然の怒りのタイタン、ウーロ》+《世界を揺るがす者、ニッサ》によるマウントを目指します。現在の構成はどのデッキに対しても満遍なく強いバランスのとれた構成ですが、両大会のトップ16をみても半数以上を占めているため、こうなるとスゥルタイランプのミラーマッチに特化した構築が出てくることになります。
2 《沼》
2 《森》
4 《寓話の小道》
4 《ゼイゴスのトライオーム》
4 《繁殖池》
4 《草むした墓》
2 《湿った墓》
-土地 (27)- 4 《ハイドロイド混成体》
4 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
3 《厚かましい借り手》
-クリーチャー (11)-
除去呪文とプレインズウォーカーを減らし、打ち消し呪文へと寄せた構築になります。基本的に打ち消し呪文によって後の先をとるためテンポを得やすく、重くなりがちなミラーマッチに強くなっています。《厚かましい借り手》は攻め手にもなりますが、《覆いを割く者、ナーセット》などのプレインズウォーカーをバウンスすることもでき、《ハイドロイド混成体》のためにロックを外す役目もあります。
ほかにも打ち消し呪文と除去呪文の両方を採用したりと、睨んだメタゲームに合わせて構築は変幻自在となっています。現在のメタゲームを考えるならば、打ち消し呪文を優先しつつ、《覆いを割く者、ナーセット》やサメトークンを対処できる《取り除き》を採用するといったところでしょうか。前環境のティムール再生ミラーのように、メタゲームの影響下でどのようにデッキが進化していくか見ものですね。
視点を変えて、2日目への進出率をみるとスゥルタイランプよりも高いものがあります。それこそ注目デッキでも取り上げたティムールエレメンタルなのです。残念ながらトップ16に送り込むことはかないませんでしたが、ポテンシャルの高さは十分みせつけてくれたといえるでしょう。今回は不利と思われるデッキは全体の2割程度であり、2日目の進出率からもメタゲームの成功者といっていいでしょう。
苦手とするのは打ち消し呪文や除去や回避能力のあるアグロデッキであり、黒単アグロ、イゼットテンポ、緑単アグロを苦手としています。逆にタフネス3の《樹上の草食獣》や《枝葉族のドルイド》を突破する手段のないアグロデッキやミッドレンジには強いデッキです。
スゥルタイランプに対しては除去こそされるもののクロックが遅くゲームが長引きがちなため、《世界を揺るがす者、ニッサ》+打ち消し呪文によってマウントをとられない限りは、立て直しも可能となっています。
これまで不動の2番手に位置していたティムールアドベンチャーは大きく数を減らしました。直接対決で不利であり、天敵といえるラクドスサクリファイス、自分よりも重く早いティムールエレメンタルの出現により、ミッドレンジの括りとして中途半端な立ち位置となってしまいました。固定パーツが多く、ゲームスピードを変化することは難しいデッキですが、何かしらのテコ入れが必要になりそうです。
まとめ
変わらずにスゥルタイランプは環境の大部分を占めていますが、メタゲームは刻一刻と変化しています。先週末、ラクドスサクリファイスが制したように、スゥルタイランプキラーが誕生しつつあるのですから。
新鋭ティムールエレメンタルをはじめ、アドベンチャーデッキがどのように構成を変えるのかも興味深いポイントです。今週末のスタンダードはどんな結果となっているか、今から楽しみですね。
今週末に各種オンライン大会が控えています。それではまた次回。