攻めて攻めて攻めまくれ! ~『アモンケットリマスター』ドラフト~

Jason Chung

Translated by Nobukazu Kato

原文はこちら
(掲載日 2020/08/24)

『アモンケットリマスター』とは?

神の怒り思考囲い集合した中隊スフィンクスの啓示

『アモンケットリマスター』は主に『アモンケット』のカードを再録したMTGアリーナ専用のセットで、『破滅の刻』や新規のカードも収録されています。

以前までのアリーナドラフトとは変わり、今では対人でのドラフトが実装されており、カードを卓一周させる、シグナルを読むといった戦略が可能となっています。

どんなキーワード能力・アーキタイプがあるの?

信義の砂漠魂刺し
エイヴンの修練者陽光鞭の勇者捲土+重来

『アモンケットリマスター』では、懐かしの『アモンケット』ブロックのメカニズムが余すことなく復刻されています。当時遊んでいなかった方のために説明しますと、このセットには「サイクリング」、-1/-1カウンター、「不朽」「永遠」という墓地からクリーチャーを蘇らせる能力、「余波」、「督励」、「加虐」といったメカニズムが含まれています。

突風歩き呪文織りの永遠衆

最後にご紹介した2つの能力、「督励」と「加虐」はどちらも攻撃的かつ能動的な戦略に適したものです。攻撃してはじめて使用できるものであり、これこそ私が超攻撃的な戦略を『アモンケットリマスター』で好んでいる大きな理由となっています。

環境の主なアーキタイプ

    スカラベの神オベリスクの蜘蛛風案内のエイヴン
    無慈悲な投槍手奇怪なドレイク激情のカルトーシュ

前のめりな戦略

『アモンケット』は能動的であることが理想とされるセットでしたが、これは『アモンケットリマスター』にも引き継がれています。能動的かつ攻撃的であることが良しとされる数多くの理由を挙げてみましょう。

オケチラの報復者

まず、一般的なリミテッド環境とは異なり、軽量の除去の枚数が少ないです。2~3マナの除去が不足しており、盤面にクリーチャーを維持することが通常よりもはるかに容易となっています。また、「督励」持ちのクリーチャーやクリーチャーを強化するカルトーシュの存在がこのアーキタイプを強く推奨する要因となっているのです。

『アモンケットリマスター』はBO1で行われるため、サイドボーディングができず、超攻撃的な戦略の立場を一層強くしています。「マナコストが重いけど、高速デッキと当たったときはサイドアウトすればいいだろう」という甘い発想は許されないのです。

また、能動的な戦略を方針としてピックすると、自然と土地15枚が望ましいデッキになっていきます。MTGアリーナのBO1には特有の手札補正があり、こういったデッキは土地と呪文が適正な比率である初手が来やすくなるという恩恵に大いにあずかれるのです。

平地島山

では、どのように攻撃的なデッキをピックしていけばいいのでしょうか?まず、白・青・赤の3色からデッキを組み上げるのが理想的です。黒や緑にする理由となるカードが流れてくればこの3色から逸れることもありますが、私の成功の大部分はこの3色から成っています。

何よりも大切なのは、クリーチャーと呪文の比率を整えつつ、優れたマナカーブを描くことです。私なりのひな型を提示してみましょう。

知識のカルトーシュ結束のカルトーシュ激情のカルトーシュ

上記の通りにクリーチャーをピックすると、残る10枚の枠は呪文に使うことになります。なかでも重要なのはカルトーシュです。《知識のカルトーシュ》は回避能力を与え、ダメージの押し込みに使えます。《結束のカルトーシュ》も、先制攻撃が最序盤のターンでブロックされづらいことから序盤戦の疑似回避能力に。《激情のカルトーシュ》はゲームのレンジを選ばずにダメージをたたき込めるようにします。ただし、これらのエンチャントは単なる序盤のアクションとしてプレイしないようにしてください。カルトーシュは2ターン目であろうと、7ターン目であろうと強力です。

結束の試練激情の試練

《結束の試練》《激情の試練》はこの戦略をとるうえで極上のファーストピックです。カルトーシュと組み合わせることで、ゲームを通して莫大なアドバンテージを発生させます。

デッキの残る枠には、質の高い除去を取り入れるようにしましょう。

でもマナカーブとカードパワーの両立は難しくない?

この戦略の最大の利点は、終盤まで卓に流れるカードを活用できることです。このセットをアリーナでドラフトした経験から言うと、あらゆる1マナ域、大半の2マナ域がかなり遅めの順手まで残っています。ですから、序盤のピックは軽量の除去やカルトーシュに充て、その後から軽いクリーチャーたちを取って枠を埋めていきましょう。

覚えておいて欲しいのですが、クリーチャーの質はマナコストほど重要ではありません。できるだけ上記のひな型を守ることで、毎ターンクリーチャーを展開できるようになり、クリーチャー + カルトーシュという動きをいち早くとれるようになります。

各色のベストカード

ここからは、各マナ域のベストクリーチャーとベスト呪文をご紹介しましょう。コモン・アンコモンのみを選考対象にいしています。

最良の1マナ域

這い寄る刃

最良の2マナ域

呪文織りの永遠衆

最良の3マナ域

厳しい事実の永遠衆

最良の呪文

知識のカルトーシュ叱責の風

最良の1マナ域

扇持ち

最良の2マナ域

突風歩き

最良の3マナ域

白の3マナ域は冴えないものが多く、できるだけ避けるようにしています。『アモンケット』で強かった白の3マナ域は『アモンケットリマスター』で収録されていないんですよね。

最良の呪文

結束のカルトーシュ結束の試練

最良の1マナ域

血に飢えた振起者

最良の2マナ域

ネフ一門の鉄球戦士

最良の3マナ域

アン一門の壊し屋

コモン・アンコモンのなかでは、初手でこれ以上に優先するものはありません。

最良の呪文

激情のカルトーシュ激情の試練

能動的な戦略のメリット・デメリット

『アモンケットリマスター』はMTGアリーナにしかないセットであるため、現実世界のドラフトとは少し事情が変わります。この戦略の主な強みは、個人的に勝率が高いというのもありますが、ゲームがあっという間に終わることです。短い時間でも、より多くのゲームを遊べるということですね。また、先ほどもお伝えしたとおり、サイドボーディングがないのでサイド後に対策されるということがありません。

対してこの戦略の弱点は、同卓のプレイヤーと対戦するとは限らないことから、卓に存在する除去を把握することができず、相手のデッキ内に存在する軽量の除去の枚数を絞りづらくなっていることです。また、コモンとアンコモンに特化した戦略ですから、コレクションにレアや神話レアがなかなか増えないのも残念な点ですね。

おわりに

這い寄る刃

ぜひみなさんも『アモンケットリマスター』で超アグロデッキをドラフトしてみてください。

個人的な話になりますが、『アモンケット』は特に好きなドラフト環境でした。特に《這い寄る刃》が”壊れ”だと誰も気づいていなかった時代は最高でしたね。アリーナにこのセットが帰ってきてくれて嬉しく思います。みなさんも《這い寄る刃》をピックすることをお忘れなく。

ジェイソン・チャン (Twitter)

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Jason Chung ジェイソン・チャンはニュージーランドのトッププレイヤー。ニュージーランドのプレイヤーとして、歴史上唯一プロツアーで決勝ラウンドに進出した経歴を持つ。 彼はコンボデッキを得意とするプレイヤーで、モダンの青赤ストームや旧スタンダードの《先祖の結集》デッキなんかはお手の物。コンボデッキ以外では、モダンのバーンデッキのようなアグレッシブなデッキや、レガシーの《血染めの月》を使ったプリズン系のデッキを好む。 Jason Chungの記事はこちら