ミシックインビテーショナルの勝ち組は?
ヒストリックでの本格的な大会となった2020ミシックインビテーショナル(以下MI)。トップ8へと勝ち進んだプレイヤーはマジック・プロリーグ(以下MPL)やライバルズ・リーグ所属選手、ほかのDCGの競技プレイヤーとまさに最強を決めるに相応しい猛者ばかりでした。
今回は同大会の結果を振り返っていきます。
2020ミシックインビテーショナル
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | Seth Manfield | スゥルタイミッドレンジ |
準優勝 | Gabriel Nassif | ジャンドサクリファイス |
トップ4 | Luis Salvatto | ラクドスミッドレンジ |
トップ4 | Grzegorz Kowalski | ジャンド城塞 |
トップ8 | David Steinberg | ジャンドサクリファイス |
トップ8 | Luis Scott-Vargas | ジャンドサクリファイス |
トップ8 | 行弘 賢 | ゴブリン |
トップ8 | Matthew Nass | 黒単王神 |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
参加者160名で開催された2020ミシックインビテーショナルはLower側から5連勝で、セス・マンフィールド/Seth Manfield選手の逆転優勝となりました!唯一のスゥルタイミッドレンジがジャンドサクリファイスをはじめ、ゴブリンやラクドスミッドレンジを倒し、最強デッキであることを証明したのです!
トップ8デッキリストはこちら。
スゥルタイミッドレンジ
2 《沼》
2 《森》
4 《寓話の小道》
4 《ゼイゴスのトライオーム》
4 《繁殖池》
4 《草むした墓》
2 《異臭の池》
2 《水没した地下墓地》
1 《内陸の湾港》
1 《ロークスワイン城》
-土地 (28)- 3 《ハイドロイド混成体》
4 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
-クリーチャー (7)-
ありとあらゆるフォーマットにおいて存在感を示す《自然の怒りのタイタン、ウーロ》ですが、ヒストリックも例外ではありませんでした。MIを優勝したスゥルタイミッドレンジはスタンダードのアップデート版であり、ランプスペル兼フィニッシャーの《ウーロ》が中核に据えられていました。
ひと昔前のスタンダードのスゥルタイランプに近く、《成長のらせん》と《自然の怒りのタイタン、ウーロ》のマナ加速、《霊気の疾風》と《取り除き》といった干渉手段を持ち合わせています。自分のゲームスピードを1ターン進めるか相手の初動を止めることで自分優位の場を築き、《世界を揺るがす者、ニッサ》や《ハイドロイド混成体》の着地を狙いにいきます。
《思考囲い》はヒストリックにもたらされた最上級スペルの1枚であり、対コントロールに限らずどのデッキに対しても効果的です。《成長のらせん》などのマナ加速と併せてキャストでき、自分の動きと相手への妨害を同ターンに実現するマナコストの軽さこそがこのカードの強さとなります。
興味深い点としては、《霊気の疾風》の追加の打ち消し呪文として《軽蔑的な一撃》と《本質の散乱》が選択されている点です。メインボードはゴブリンを強く意識しており、打ち消し呪文も《上流階級のゴブリン、マクサス》を対象にとれることを最低条件としているようです。
クリーチャー過多の環境であるため《本質の散乱》は万能呪文となりますが、《軽蔑的な一撃》はそれにはない強みがあります。《上流階級のゴブリン、マクサス》へのガードを下げずに、《集合した中隊》や《ボーラスの城塞》、《世界を揺るがす者、ニッサ》といったほかの上位陣が使用するデッキへも効果を発揮するカードなのです。
ジャンドサクリファイス
4 《血の墓所》
4 《草むした墓》
4 《踏み鳴らされる地》
2 《隠れた茂み》
4 《竜髑髏の山頂》
2 《森林の墓地》
1 《ファイレクシアの塔》
-土地 (23)- 4 《大釜の使い魔》
4 《戦慄衆の解体者》
4 《忘れられた神々の僧侶》
4 《波乱の悪魔》
4 《悲哀の徘徊者》
3 《真夜中の死神》
1 《砕骨の巨人》
1 《恋煩いの野獣》
-クリーチャー (25)-
2 《再利用の賢者》
2 《フェイに呪われた王、コルヴォルド》
2 《反逆の行動》
2 《虚空の力線》
1 《漁る軟泥》
1 《ゴルガリの女王、ヴラスカ》
1 《湧き出る源、ジェガンサ》
-サイドボード (15)-
ガブリエル・ナシフ/Gabriel Nassifとルイス・スコット=ヴァーガス/Luis Scott-Vargas、2人の殿堂プレイヤーが選択したのはジャンドサクリファイスでしたが、『ラクドスサクリファイスに《集合した中隊》をタッチした』という言い方が適切でしょう。《魔女のかまど》+《大釜の使い魔》+《波乱の悪魔》を軸に、生け贄カードとそれらを揃える《集合した中隊》によって構成されています。
興味深いのはマナベースです。スタンダードでは《波乱の悪魔》とのシナジーにより確定枠であった《寓話の小道》は抜かれ、チェックランドへと変更されています。ショックランドと相性の良いチェックランドを採用することで、序盤にもたつく可能性を排除し、盤面の構築へと着手します。
3マナに強力なクリーチャーが集中しているこのデッキにとって《集合した中隊》はまさに求めていたカードであり、足りないシステムクリーチャーを引き込むことやリセット後に立て直しを図るために使用したりと、無駄になることがありません。
一口にジャンドサクリファイスといってもグジェゴジュ・コヴァルスキ/Grzegorz Kowalskiのようにマナクリーチャーと《血の芸術家》、《ボーラスの城塞》を軸に据えたジャンド城塞、《魔女のかまど》《大釜の使い魔》システムに《パンくずの道標》まで加えたデイヴィッド・スタインバーグ/David Steinbergの構築までさまざまなパターンが存在しています。
ラクドスミッドレンジ
3 《山》
3 《寓話の小道》
4 《血の墓所》
4 《竜髑髏の山頂》
1 《ロークスワイン城》
-土地 (23)- 4 《縫い師への供給者》
1 《魔王の器》
4 《戦慄衆の秘儀術師》
4 《死の飢えのタイタン、クロクサ》
4 《若き紅蓮術士》
1 《忘れられた神々の僧侶》
-クリーチャー (18)-
3 《強迫》
3 《魔女の復讐》
2 《削剥》
1 《マグマのしぶき》
1 《レッドキャップの乱闘》
1 《アングラスの暴力》
1 《夢の巣のルールス》
-サイドボード (15)-
モダンのマルドゥパイロマンサーのような動きをするのがラクドスミッドレンジ。サクリファイスエンジンは最小限に抑え、《戦慄衆の秘儀術師》と《若き紅蓮術士》を中心に、低コストスペルを使い回すことでアドバンテージを生み出すデッキになります。速度こそありませんが、さまざまな干渉手段を持ち、リソース不足に陥りにくい構造になっています。
《戦慄衆の秘儀術師》と《若き紅蓮術士》の2種類の内いずれかを着地させるところからゲームは始まります。そのために《思考囲い》で安全確認し、《初子さらい》+《村の儀式》によって相手の《忘れられた神々の僧侶》や《波乱の悪魔》を対処し、場合によっては一度除去させてから《立身/出世》でリアニメイトすることを念頭に入れます。
場に残ってしまえばこちらのもの。手札や墓地から呪文を使うことで、相手に干渉しながら自分のリソース伸ばしていきます。特に手札と《戦慄衆の秘儀術師》で2度《思考囲い》を唱えることができれば、相手が立て直すことは困難でしょう。
この手のデッキは引きムラやリソース不足に悩みがちですが、先ほどの2種類のクリーチャー以外にもリソースを増やす手段を持ち合わせています。このデッキは墓地を手札のように有効活用できるため、《縫い師への供給者》は1マナで6枚のリソースを稼いでくれることになります。
たとえ《戦慄衆の秘儀術師》用のインスタントやソーサリーがなくとも、墓地のカードは《死の飢えのタイタン、クロクサ》の「脱出」コストにも使えるため無駄にはなりません。クリーチャーならば《立身/出世》や《夢の巣のルールス》で場に出すことができるので、手札に限らず墓地からでもクロックを生み出せるのです。
クリーチャー以外の呪文のなかでは《魔性》は特に注目すべき1枚でしょう。《戦慄衆の秘儀術師》では使いにくいものの、メタゲームでジャンドサクリファイスの流行を睨んだ選択となっています。メインボードから《魔女のかまど》を対処できる貴重なカードとなりますね。
メタゲームブレイクダウン
デッキタイプ | 1日日 | 2日目 |
---|---|---|
ゴブリン | 54 | 26 |
スゥルタイミッドレンジ | 27 | 18 |
ジャンドサクリファイス | 22 | 12 |
バントコントロール | 9 | 1 |
黒単王神 | 6 | 5 |
ラクドスミッドレンジ | 5 | 3 |
その他 | 37 | 16 |
合計 | 160 | 81 |
今大会のBIG3であるゴブリン、スゥルタイミッドレンジ、ジャンドサクリファイスは崩れることなく2日目を迎えましたが、4番手につけていたバントコントロールは大失速となりました。スゥルタイミッドレンジと近しいデッキであり、むしろリセット呪文の質をみれば《神の怒り》《残骸の漂着》の2枚を持つ、バントコントロールに軍配があがりそうです。違いはどこにあったのでしょうか?
どっしりと構え、リセット呪文と打ち消し呪文で相手のカードをさばき、プレインズウォーカーでアドバンテージを得続ける、そんな横綱相撲を目指すバントコントロール。万能デッキですが、環境に対してコントロールスペルが重めです。打ち漏らしは許されないプレイスキルを求められるデッキとなります。
また、最強プレインズウォーカーの一角である《ドミナリアの英雄、テフェリー》はあるものの、同じコントロールカテゴリーに位置するスゥルタイミッドレンジ戦では《世界を揺るがす者、ニッサ》というプレインズウォーカーキラー、打ち消し呪文に強い《ハイドロイド混成体》が存在しています。メタゲームを見極めた構築を成すことが前提のコントロールデッキにおいて、ヒストリック環境は少し広すぎたのかもしれません。
では、スゥルタイミッドレンジどうでしょうか?最大の違いは自分自身が《思考囲い》を使えることにあります。これにより相手がアグロだろうとコントロールだろうと、再序盤から干渉手段をもち、相手のゲームプランを把握することも可能になります。《思考囲い》によって《上流階級のゴブリン、マクサス》を抜き去れば、あとは適宜除去でゲームをコントロールしていき反撃の芽を摘み、リセットをかけるだけですね。
黒単王神とラクドスミッドレンジという2つの墓地利用デッキも注目せねばなりません。《虚空の力線》は採用カードトップ25に名を連ねていましたが、1デッキあたり2~3枚と、そこまで墓地は意識されていませんでした。だからこそ、これらのデッキは素晴らしい成績を残したのです。今後は墓地をメタる必要がありそうです。
今週末はいよいよ!?
今週末には『ゼンディカーの夜明け』プレリリースが控えています。みなさんの注目カードはどちらでしょうか?
週末が待ち遠しいですね。それではまた次回の情報局で!