はじめに
みなさんこんにちは。
『ゼンディカーの夜明け』がリリースされて数週間が経ちますが、同セットはモダンレベルのカードも多数ある強力なエキスパンションだったようです。
さて、今回の連載ではModern Show Case ChallengeとModern Challengeの入賞デッキをみていきたいと思います。
Modern Show Case Challenge #12213685
新戦力を獲得した死の影
2020年10月3日
- 1位 Death’s Shadow
- 2位 GW Fields
- 3位 4C Uro
- 4位 Death’s Shadow
- 5位 Death’s Shadow
- 6位 Izzet Prowess
- 7位 4C Uro
- 8位 Death and Taxes
トップ8のデッキリストはこちら
MO上の勝利点、QPを40獲得したプレイヤーのみが参戦できる大規模なイベント、Show Case Challenge。各フォーマットのLeagueやChallengeで結果を残してQPを稼ぐ必要があるため、参加者は自然と強豪プレイヤーが多くなり、普段のChallengeよりもレベルが高くなる傾向にあります。
『ゼンディカーの夜明け』が環境に与えた影響は大きく、特に《スカイクレイブの災い魔》を得たDeath’s Shadowは優勝という快挙を成し遂げました。
デッキ紹介
Death’s Shadow
1 《冠雪の山》
3 《血の墓所》
1 《神無き祭殿》
1 《聖なる鋳造所》
4 《血染めのぬかるみ》
3 《乾燥台地》
3 《湿地の干潟》
1 《灼陽大峡谷》
-土地 (18)- 4 《ボーマットの急使》
4 《死の影》
4 《僧院の速槍》
4 《スカイクレイブの災い魔》
-クリーチャー (16)-
4 《思考囲い》
3 《変異原性の成長》
2 《致命的な一押し》
1 《発掘》
1 《塵へのしがみつき》
2 《ティムールの激闘》
2 《四肢切断》
1 《アガディームの覚醒》
2 《炎の印章》
4 《ミシュラのガラクタ》
-呪文 (26)-
ショックランドやフェッチランド、《思考囲い》など能動的にライフを減らす手段が豊富なこのデッキにおいて、《死の影》は環境最高サイズの1マナクリーチャーになります。今大会で結果を残したRakdosバージョンは果敢や速攻を持つクリーチャーが加わっているため、GrixisやJundと比べてより攻撃的な構成に仕上がっています。
元々2マナ以下のスペルが中心のデッキだったため、無理なく《夢の巣のルールス》を「相棒」にできます。アグロ戦略だけではなく、《ミシュラのガラクタ》や《炎の印章》を繰り返し使ってアドバンテージを稼ぐ、ミッドレンジデッキのように振舞うこともできます。
☆注目ポイント
Death’s Shadowは『ゼンディカーの夜明け』によって強化されたアーキタイプの1つであり、特に新たな2マナクリーチャーである《スカイクレイブの災い魔》は、追加の《死の影》としてプレビュー段階から話題になっていました。《死の影》と異なり、自分のライフを減らすことなくサイズアップできるのがこのクリーチャーの特徴です。
現環境のモダンにはフェッチランド+ショックランドによってマナベースを構築しているデッキが多く、序盤からライフが15点以下となることも珍しくありません。このデッキは《僧院の速槍》や火力など序盤からライフを攻める手段が豊富にあり、《スカイクレイブの災い魔》はすぐにフィニッシャークラスのサイズへと成長します。このクリーチャーの登場により《タルモゴイフ》の必要性が薄れたことも、JundからRakdosへとシフトした理由の1つだと思われます。
《思考囲い》で相手の除去や妨害スペルを落とし、《ティムールの激闘》を使ったの瞬殺プランもあります。コンボデッキのように最速3ターン目にゲームを終わらせることができる一方で、《夢の巣のルールス》が提供するカードアドバンテージによってロングゲームでも渡り合うこともでき、アグロデッキながら広いゲームレンジに対応しています。
サイドに4枚採用されている土地破壊スペルである《浄化の野火》は、Tron/Amulet Titanといった土地コンボや、《死者の原野》を採用したコントロールデッキ用となっています。ほかにも《血染めの月》を置かれた際には自分の土地を破壊することで基本地形をサーチして、ロック状態から抜け出せたりと小回りが利く優秀なスペルです。
Modern Challenge #1221604
モダン版のDeath and Taxesが優勝
2020年10月10日
- 1位 Death and Taxes
- 2位 Jund
- 3位 Death’s Shadow
- 4位 Burn
- 5位 Humans
- 6位 Sultai Uro
- 7位 Mono Blue Tron
- 8位 Bant Spirits
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Show Case Challengeで猛威を振るっていたDeath’s Shadowや定番デッキが入賞するなか、優勝となったのは白単《霊気の薬瓶》デッキ、Death and Taxesでした。
デッキ紹介
Death and Taxes
2 《地平線の梢》
1 《無声開拓地》
1 《灼陽大峡谷》
1 《永岩城》
4 《廃墟の地》
4 《幽霊街》
-土地 (23)- 4 《ルーンの与え手》
4 《レオニンの裁き人》
4 《石鍛冶の神秘家》
4 《スレイベンの守護者、サリア》
4 《ちらつき鬼火》
4 《スカイクレイブの亡霊》
2 《エメリアのアルコン》
-クリーチャー (26)-
3 《安らかなる眠り》
2 《ファイレクシアの破棄者》
2 《エイヴンの思考検閲者》
2 《ミラディンの十字軍》
2 《遺棄の風》
1 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》
-サイドボード (15)-
ヘイトベアーと呼称される《スレイベンの守護者、サリア》などで相手の行動を縛りつつ、ライフを削っていくアグロコントロールデッキ、Death and Taxesのモダン版です。このデッキには《レオニンの裁き人》が採用されており、《幽霊街》や《廃墟の地》と組み合わせることで、レガシーの《不毛の大地》がごとく相手のマナを縛り、相手が身動きとれないうちに装備品で強化されたクリーチャーを使ってビートダウンしていく戦略です。
『ゼンディカーの夜明け』リリース前は比較的マイナーな立ち位置でしたが、新戦力の《スカイクレイブの亡霊》を獲得したことでModern Challengeを制するまでになりました。
☆注目ポイント
一見地味ながら、ライブラリーからのサーチを封じる《レオニンの裁き人》の持つ妨害能力の影響は大きく、《霊気の薬瓶》からインスタントスピードで出すことで奇襲性も高くなります。モダンでは、フェッチランドや《原始のタイタン》、《探検の地図》など、多くのデッキは何かしらのサーチ手段を戦略に組み込んでいるためです。このデッキを相手にする際は《霊気の薬瓶》に乗っているカウンターの数に注意していきたいところです。
《レオニンの裁き人》が戦場にいる状態では、《流刑への道》のデメリットも打ち消されます。2マナを支払うことで能力は無視できますが、脅威に対処しつつ余分なマナを用意することは簡単ではありません。
《スカイクレイブの亡霊》は軽いマナ域が主力のモダンでは、強力な除去として機能します。このカードのポイントは《スカイクレイブの亡霊》自身が戦場から離れても追放したカードが戻らない点にあります。このカードが加わったおかげで、デッキ内のクリーチャー数を減らさずに除去を確保できるようになり、これまで以上に対応力が高いデッキになりました。
《スカイクレイブの大鎚》は《石鍛冶の神秘家》の新たなサーチ先となり、飛行を付与できるため攻撃が通しやすくなっています。《エメリアのアルコン》はストームなどのコンボデッキや特殊地形を多用する多色コントロールとのマッチアップで真価を発揮するクリーチャーです。
Bant Spirits
1 《島》
1 《森》
1 《繁殖池》
1 《神聖なる泉》
1 《寺院の庭》
3 《溢れかえる岸辺》
2 《吹きさらしの荒野》
1 《霧深い雨林》
2 《魂の洞窟》
2 《植物の聖域》
2 《地平線の梢》
1 《金属海の沿岸》
1 《冠水樹林帯》
1 《ムーアランドの憑依地》
-土地 (21)- 4 《霊廟の放浪者》
4 《貴族の教主》
4 《鎖鳴らし》
4 《至高の幻影》
2 《無私の霊魂》
4 《ドラグスコルの隊長》
4 《スカイクレイブの亡霊》
4 《呪文捕らえ》
2 《玻璃池のミミック》
-クリーチャー (32)-
前回の連載ではAzorius Spiritsを紹介しましたが、今回はBant Spiritsになります。基本的にAzoriusバージョンと同様に、スピリットをロードで強化してビートダウンしつつ、《呪文捕らえ》でバックアップしていきます。
Bant Spiritsの強みは何といっても強力なスペルである《集合した中隊》が使えることです。3色になったことでマナ基盤の安定性は若干下がりましたが、《貴族の教主》によってカバーしています。
☆注目ポイント
《集合した中隊》を使うことで、《ドラグスコルの隊長》のような瞬速を持たないクリーチャーがインスタントタイミングで戦場へ出てくる可能性があるため、4マナ立っているだけで相手は不用意に動けなくなります。ロングゲームにも強くなり、特に《スカイクレイブの亡霊》や《呪文捕らえ》が捲れたときは追加でアドバンテージが取れます。
何度もお話ししていますが、《スカイクレイブの亡霊》は土地/トークンでないパーマネントを除去できる優秀なクリーチャーです。スピリットであるため、《鎖鳴らし》や《ドラグスコルの隊長》の部族シナジーの恩恵を受けることになります。
Bant Spiritsは除去スペルを入れすぎるとデッキ内のクリーチャーが減ってしまい、《集合した中隊》が空振りする確率が上がってしまうという問題を抱えていましたが、《スカイクレイブの亡霊》の加入によりクリーチャー数を減らすことなく除去を採用することに成功したのです。
《玻璃池のミミック》は《幻影の像》よりも1マナ重くなりますがデメリットがなく、マナが足りないときは土地としても使えるフレキシブルな1枚。一緒に採用しているロードや《スカイクレイブの亡霊》をコピーしたいところです。
Modern Challenge #12216053
現代に蘇った双子コンボ
2020年10月11日
- 1位 Saheeli Combo
- 2位 4C Uro
- 3位 4C Uro
- 4位 Heliod Combo
- 5位 UW Control
- 6位 Humans
- 7位 Belcher
- 8位 4C Uro
トップ8のデッキリストはこちら
優勝はHareruya Prosに所属する人気配信者、kanisterことPiotr Głogowski選手の多色Saheeli Comboでした(彼の配信の様子はこちらから)。その強さから、スタンダードやパイオニアでは禁止になった《守護フェリダー》+《サヒーリ・ライ》のコンボは、キーパーツが少なく、かつてモダンを支配した双子コンボを彷彿とさせます。
今大会はプレイオフにUro Pilesが多く、Prowessなどのアグロデッキは上位にみられませんでした。
スペルランドBelcherコンボも入賞しており、『ゼンディカーの夜明け』が環境に与えた影響の大きさが伺えます。
デッキ紹介
「Saheeli Combo」
Saheeli Combo
1 《島》
1 《山》
1 《森》
1 《虹色の眺望》
1 《ケトリアのトライオーム》
1 《ラウグリンのトライオーム》
1 《繁殖池》
1 《神聖なる泉》
1 《踏み鳴らされる地》
1 《寺院の庭》
4 《霧深い雨林》
4 《吹きさらしの荒野》
4 《樹木茂る山麓》
1 《地平線の梢》
-土地 (24)- 2 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
4 《守護フェリダー》
3 《創造の座、オムナス》
-クリーチャー (9)-
《守護フェリダー》+《サヒーリ・ライ》の2枚で、速攻を持つクリーチャー・トークンを無限生成して勝利を狙うコンボです。《楽園の拡散》を採用しているので、最速で3ターン目にコンボが決まります。
《創造の座、オムナス》や《自然の怒りのタイタン、ウーロ》といったミッドレンジクリーチャーが採用され、各種除去やプレインズウォーカーもあるため、コンボに頼らずに多色コントロールとしてもプレイできます。
☆注目ポイント
《ニッサの誓い》は土地とコンボパーツの2種類を持ってこれる優秀なスペルです。常在型能力もデッキにかみ合っており、《時を解す者、テフェリー》や《レンと六番》といった異なる色の組み合わせのプレインズウォーカーがキャストしやすくなり、デッキの安定性を支えています。
相手にソーサリースピードのアクションを強いる《時を解す者、テフェリー》のおかげで安全にコンボを決めることができます。対戦相手は先に《テフェリー》に対応する必要があるため後手に回らざるを得ず、戦場にいるだけでゲームが有利に進みます。
サイド後はコンボを妨害するために、相手は打ち消し/ハンデス/除去とさまざまな干渉手段を用意してきます。そこでコンボのお供、《夏の帳》の出番です。最近活躍しているRakdos Death’s shadowとのマッチアップで、特に有効な保護スペルとして機能します。
クリーチャー対策の《焦熱の裁き》は面白いアプローチです。「対戦相手は5点のライフを得る」という一文は本来ならペナルティーとなりますが、対Death’s shadowではメリットとなります。
総括
『ゼンディカーの夜明け』はモダンレベルのカードが多数収録された強力なエキスパンションとなりました。特に歩く《忘却の輪》こと《スカイクレイブの亡霊》と、Death’s Shadowの新たな主力クリーチャー《スカイクレイブの災い魔》、その強さ故にスタンダードでは記録的な速さで禁止カードに指定された《創造の座、オムナス》の影響は大きかったと思います。
さまざまなデッキが活躍するモダンらしく、前回のRakdos Death’s shadowとはうってかわり、今回はDeath and TaxesやSaheeli Comboが結果を残しました。メタゲームは目まぐるしく変化しているようです。
USA Modern Express vol.47は以上となります。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!