はじめに
みなさんはじめまして。Hareruya Prosの藤江 竜三です。もしかするとMTGアリーナ上の名前である“Ryuzo”のほうが、みなさんには馴染みがあるかもしれませんね。
国立市議会にも所属しながら3人の子供を育てているお父さんプレイヤーでもあります。記事でお会いするのは初めてとなりますが、よろしくお願いします。
今回は『ゼンディカーの夜明け』リーグ・ウィークエンド(11月)で使用して7勝をあげた緑単フードについて解説していきたいと思います。グルールアドベンチャーあふれる環境では、有力なデッキとなるはずです。
リーグ・ウィークエンドまでのメタゲーム
遡って話しますと、初回となる『ゼンディカーの夜明け』リーグ・ウィークエンド(10月)を前に、スタンダード環境は激変しました。《自然の怒りのタイタン、ウーロ》が禁止カードとなり、後を追うように《創造の座、オムナス》までも逝ってしまったのです。
《創造の座、オムナス》禁止後に現れたのはこれに次ぐパワーを持ったデッキたち、ラクドスエスケープと緑単アグロ、そしてディミーアローグです。能力的に《自然の怒りのタイタン、ウーロ》と双璧を成すといえる《死の飢えのタイタン、クロクサ》を中心とするラクドスエスケープは禁止改定後、メタゲームの中心デッキとなりました。また、圧倒的な筋肉とそれをサポートする巨木《グレートヘンジ》を持つ緑単アグロも強力なデッキでした。
それに対してディミーアローグはデッキの完成度は高かったものの、環境的に厳しい立ち位置となりました。《死の飢えのタイタン、クロクサ》や《アゴナスの雄牛》などの「脱出」クリーチャー、メインボードから採用されている《漁る軟泥》にあまりに弱く、大苦戦を強いられる状況になってしまったのです。
そしてラクドスエスケープと緑単アグロの両方に勝てて、さらにディミーアローグを取りこぼさないデッキが現れました。それがアゾリウスブリンクです。これこそ環境の正解に違いないと思い、10月のリーグ・ウィークエンドへ持ち込むことを決めました。
ところがどっこい現実は甘くありません。ライバルズ・リーグではアゾリウスブリンクを使って1勝11敗と、手痛い敗北を喫してしまいました。有利と想定していたローグにはまったく勝てず、ミラーマッチもカウンターを積まれてしまい、なす術もありません。調査不足、実力不足、練習不足の結果でした。
緑単フードとカード選択
さて、2回目となる11月のリーグ・ウィークエンドですが、前回戦績の良かったグルールアドベンチャーとディミーアローグには勝てるデッキでなければなりません。そうなると選択肢は3つに絞られました。
グルールアドベンチャーをMTGアリーナのラダーで試しましたが、相当メタられておりあまり芳しい結果ではありませんでした。ラクドスエスケープも使用しましたが、グルールアドベンチャーをメタったとしてもあまり良い成果は得られず。早くも2つの選択肢が消え、残る「新たなデッキを探す」ことになりました。
「新たなデッキを探す」なかで出会ったのが緑単フードです。一緒に調整をしているmtgreew氏がリーグ・ウィークエンドで使用した緑単フードの原型を提案してくれました。一見するとあまり強そうではありませんが、使えばすぐに圧倒的なデッキパワーに気づきます。ラダーでは最高#9まで行くことができました。
4 《ギャレンブリグ城》
2 《眷者の居留地》
1 《這い回るやせ地》
-土地 (23)- 4 《金のガチョウ》
4 《絡みつく花面晶体》
1 《漁る軟泥》
4 《カザンドゥのマンモス》
4 《恋煩いの野獣》
4 《意地悪な狼》
3 《貪るトロールの王》
2 《巨大猿、コグラ》
-クリーチャー (26)-
2 《鎖巣網のアラクニル》
2 《漁る軟泥》
2 《打ち壊すブロントドン》
2 《トーモッドの墓所》
2 《怪物の代言者、ビビアン》
1 《強行突破》
1 《魔女のかまど》
-サイドボード (15)-
このデッキの肝はパワー5のクリーチャーを用意して、4ターン目に《グレートヘンジ》を置くことです。まずはその動きを目指してください。次に《貪るトロールの王》《意地悪な狼》《パンくずの道標》《金のガチョウ》のフードセットも大切なキーカードたちです。マナを多く必要とするデッキですが、呪文/土地の両面カード(以下、スペルランド)を含めた37枚のマナソースを有しているため、安定して使用できることが強みです。
フードセットと《グレートヘンジ》があるため、消耗戦に強いデッキです。ラクドスエスケープに対しては何度《死の飢えのタイタン、クロクサ》を「脱出」されようとも、《パンくずの道標》のおかげで手札が尽きることはりません。エスパーヨーリオンにさえ物量で勝つことができます。
《意地悪な狼》や《貪るトロールの王》でクリーチャーの攻撃を止めることができるため、グルールアドベンチャーにはそこそこ相性がいいデッキとなります。ディミーアローグに対しては食物・トークンを上手く使うことで、除去されようとも墓地から《貪るトロールの王》を戦場へと戻し続けて対抗しましょう。サイド後は《漁る軟泥》と《トーモッドの墓所》に加え、《鎖巣網のアラクニル》を「脱出」させることで上手く戦うことができますね。
総じて、環境にいるどのデッキに対しても有利に戦える感触が十分に得られたので、選択することを決め、今回の結果へとつながりました。
使い方については開発者であるmtgreew氏のnoteも是非ご覧ください。
メインボード
それでは個別のカードについて解説していきたいと思います。
《巨大猿、コグラ》
このカードは除去役であり、上手く膠着状態を作れたときはグルールアドベンチャーの《グレートヘンジ》や《エンバレスの宝剣》、エスパーヨーリオンの細々とした置物を割るために入っています。《恋煩いの野獣》の人間・トークンで破壊不能を得られることも忘れてはなりません。
《漁る軟泥》
ディミーアローグやエスパーヨーリオンに加えて、めったに当たりませんが緑単フード同型にも有効です。ただし、重ね引きしたくないことが多いのでメインボードでは1枚にしています。今回のリーグでは対戦しませんでしたが、一応ラクドスエスケープも警戒していました。
《魔女のかまど》
《アクロス戦争》や《砕骨の巨人》をはじめとした、すべての除去に対して有効です。また、《グレートヘンジ》が出ているときに《貪るトロールの王》をキャストすれば、ワンドローしつつ食物・トークンを5個まで用意することができます。何度も《貪るトロールの王》を戻すことができるようになる強力なカードです。
2枚引くと弱いと思っていたため今回はメインボードに1枚しか入れませんでしたが、MPLの行弘 賢氏のデッキをみると3枚採用されています。リーグ・ウィークエンドが終わってみれば、1枚はとても少なかったと思います。
《強行突破》
あまりに少ないので追加の除去が入れましたが、パンプアップできる《原初の力》のほうが良かったかもしれません。
《狼柳の安息所》
クリーチャーでないので除去されにくく、安定してマナを伸ばせるため採用しました。エスパーヨーリオンの全体除去を避けつつ《予言された壊滅》で生け贄に捧げられますが、議論の余地があるカードかと思います。
サイドボード
《トーモッドの墓所》
エスパーヨーリオンとディミーアローグ対策に入れました。エスパーヨーリオンに対して墓地を追放するバリューは低いですが、《屋敷の踊り》を無効化し、《予言された壊滅》の生け贄要員として活躍します。
ディミーアローグに対しては《漁る軟泥》と《鎖巣網のアラクニル》だけでは有利を取れませんでした。この2種類と《トーモッドの墓所》まで入れることで、有利に試合を進めることができます。ちなみにラクドスエスケープには入れる必要はありません。
《魔女のかまど》
「これはサイドじゃない!メインに入れるんだ!!」リーグ・ウィークエンド前に戻って自分を説得したいところです。
《打ち壊すブロントドン》
強いです。ただ、強いカードです。《萎れ》にしないのは《パンくずの道標》で探すことや、《怪物の代言者、ビビアン》でサーチすることができるからです。これもメインボードに入る余地がありますが、ディミーアローグなど腐ることが多いので採用しませんでした。
《怪物の代言者、ビビアン》
グルールアドベンチャーやミラーマッチでお世話になります。また、ヨーリオン系やラクドスエスケープ、ディミーアローグに入ります。サイドインする相手が多かったのでメインボードに1枚入れたほうが良かったのかもしれません。
《精霊龍、ウギン》
グルールアドベンチャーが隆盛することで、エスパーやアゾリウスのヨーリオン系が流行ることを予想しました。特にセレズニアヨーリオンは苦手な相手となりますが、《精霊龍、ウギン》を3枚入れれば勝機はあります。スペルランドを土地とすることを意識して、8マナまで伸ばしましょう。その際、《エルズペス、死に打ち勝つ》には十分注意してください。後出しならば[-5]で対処できますが、除去されてしまうと負けにつながります。
サイドボードガイド
グルールアドベンチャー
対 グルールアドベンチャー
《パンくずの道標》はグルールのスピードに間に合わないことが多いので減らします。《魔女のかまど》は除去や《アクロス戦争》をかわしつつ、《貪るトロールの王》を繰り返し使うための食物・トークンを揃えます。できるだけ長いゲームになるようにプレイしたほうが良いと思いますが、4ターン目に《グレートヘンジ》を置ければ勝利は目前です。
エスパーヨーリオン(ほかのヨーリオン含む)
対 エスパーヨーリオン
《屋敷の踊り》がない場合は《トーモッドの墓所》はいりません。とにかく《精霊龍、ウギン》まで粘っていきましょう。序盤から《パンくずの道標》でカードアドバンテージを稼げれば良い展開になります。しっかりマナを伸ばすためにも、スペルランドをクリーチャーとして出し過ぎないようにしましょう。
ディミーアローグ
対 ディミーアローグ
対策カードをふんだんに入れ、さらにデッキ総数を増やします。《貪るトロールの王》が墓地に落ちることも意識して食物・トークンを貯めましょう。《打ち壊すブロントドン》は《サメ台風》入りでなければ必要ありません。
《物語への没入》をキャストしにくくするためにも、墓地が7枚以上にならないよう注意しながら戦ってください。私の対戦動画が参考になるかもしれません。
ミラーマッチ
対 ミラーマッチ
ハッキリいってミラーマッチを想定していなかったので、研究はしていません。試合が長引くため、おそらくはこんな感じが良いでしょう。マナソースを引き過ぎないように《森》をサイドアウトしていますが、土地を抜くのは後手のときだけが良いかもしれません。
ラクドスエスケープ
対 ラクドスエスケープ
かなり有利なマッチアップです。《漁る軟泥》を使って、効率よく相手の墓地を食べましょう。早い展開で負けることがあるので、長引かせるプレイを意識してください。
ティムールランプ
対 ティムールランプ
かなりきつい相手です。長引いたら終わりなので、そうなった場合は《発生の根本原理》がスカることを祈りましょう。
リーグ・ウィークエンドを終えて
改良版デッキリスト
『ゼンディカーの夜明け』リーグ・ウィークエンドの結果を踏まえてデッキを改善するならば、このような構築になります。
4 《ギャレンブリグ城》
2 《眷者の居留地》
1 《這い回るやせ地》
-土地 (23)- 4 《金のガチョウ》
4 《絡みつく花面晶体》
1 《漁る軟泥》
4 《カザンドゥのマンモス》
4 《恋煩いの野獣》
1 《打ち壊すブロントドン》
4 《意地悪な狼》
3 《貪るトロールの王》
2 《巨大猿、コグラ》
-クリーチャー (27)-
2 《漁る軟泥》
2 《打ち壊すブロントドン》
2 《原初の力》
2 《トーモッドの墓所》
2 《精霊龍、ウギン》
1 《長老ガーガロス》
1 《魔女のかまど》
1 《怪物の代言者、ビビアン》
-サイドボード (15)-
リーグ・ウィークエンドを通じて、《アクロス戦争》によって一瞬で盤面が崩されることがはっきりしました。被害を最小限にとどめるためにも《魔女のかまど》は増やすべきと感じました。
また、《怪物の代言者、ビビアン》はどのマッチアップでもサイドインすることから、メインボードに1枚入れることに。それにともない《怪物の代言者、ビビアン》からサーチする選択肢を増やすために、《打ち壊すブロントドン》も1枚移しました。サイドボードの《長老ガーガロス》も同じ狙いです。
《原初の力》は《強行突破》よりも融通が利き、マナを有効活用して活躍しそうなので変更しました。《精霊龍、ウギン》は非常に強力ですが、《パンくずの道標》で探すこともできるため2枚に減らしています。
ライバルズ・リーグで戦い続けるために
リーグ・ウィークエンドからライバルズ・リーグの戦いが始まり、世界の強豪たちと初めて連戦することになりました。戦った実感は、「恐ろしい」の一言です。戦ってみるまでは、『合気道はインチキ。そんなに簡単に人は投げれない』と思っていましたが、実際には『渋川先生にあっさりやられた』といった感じでしょうか。
ルイス・スコット=ヴァーガス/Luis Scott-Vargas選手と対戦しているときは、相手の初期手札が10枚ある気さえしました。そんなこともあり、初回のアゾリウスヨーリオンではボッコボコのボコにされてしまったのです。
緑単フードを持ち込んだ今回のリーグ・ウィークエンドでは、デッキ選択がかなり良かったと自負していますが、それでもやっと勝ち越せる程度でした。まったく恐ろしい強敵たちです。同時に、強者と戦えることはとてもワクワクすることでもあります。次回はより勝率を上げられるようにしたいところですね。
そのためには今まで以上に練習効率を上げていかなくてはなりません。仕事、子育てがあるなかで練習をする時間は限られています。朝夜やお昼休みを活用したり、さらに対戦動画も役立つので倍速再生で見たりしています。これまで以上にできること一つひとつを効率化して、スピードアップしていく必要があります。
おわりに
このデッキを作り、めぐり合わせてくれたmtgreewに感謝します。また、mtgreew率いる調整メンバーにも大変お世話になりました。ライバルズリーグで7-5という成績を残せたのはこのメンバーのおかげです。
次回も勝ち越せるよう頑張っていきます!それでは、また次回!