はじめに
みなさんこんにちは。
寒さが身にしみる季節となりましたが、いかがお過ごしでしょうか。この寒気は現実世界だけではなく、アグロデッキの元にも訪れているようです。
今回はCFB Clash Championshipの大会結果を中心に、デッキを紹介していきます。
CFB Clash Championship
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | cftsoc | オボシュランプ |
準優勝 | Slater Claudel | 緑単フード |
トップ4 | piroki | 緑単フード |
トップ4 | Maurycy Flisykowski | オボシュランプ |
トップ8 | Zach Ashton | エスパースタックス |
トップ8 | 石橋 広太郎 | ディミーアローグ |
トップ8 | Marius Badea | ディミーアコントロール |
トップ8 | Noah Ma | 緑単フード |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
予選大会を突破したプレイヤーのみが参加できるCFB Clash Championship。本戦では63名が火花を散らし、オボシュランプを使用したcftsoc選手の優勝となりました。トップ8には緑単フードが3名残る反面グルールアドベンチャーの姿はなく、速度よりもリソースを巡る戦いに焦点が置かれました。
石橋 広太郎選手が使用したのは、ディミーアローグのなかでも重いデッキに強いチェコローグと呼ばれる《トリックスター、ザレス・サン》入りのもの。メタゲームがスタックス系やフード、ランプなど中盤以降にパーマネントで攻めてくるデッキへと傾倒しつつある今、《トリックスター、ザレス・サン》は最高のフィニッシャーであり、伝説のクリーチャーでありながら3枚と比較的多めに採用されています。
打ち消し呪文にも変化がみられます。環境に存在する脅威はパーマネント中心であるもののクリーチャーに限らないため、《本質の散乱》ではなく《ジュワー島の撹乱》が採用されています。ただの1マナ要求と侮るなかれ。重いカードに対しては追加の1マナでも十分に効果があり、ケアするために1ターン遅らせようものなら、ライフを削りきるには十分すぎる時間を与えてしまいます。相手視点に立てば、打ち消し呪文以外にも2マナ域の選択肢が多いため、《ジュワー島の撹乱》を回避することはほとんど不可能です。
メタゲーム
デッキタイプ | 使用者数 |
---|---|
緑単フード | 16 |
ティムールランプ | 9 |
グルールアドベンチャー | 8 |
ディミーアコントロール | 7 |
ディミーアローグ | 7 |
エスパースタックス | 6 |
その他 | 10 |
合計 | 63 |
アグロ~コントロールまで、幅広く対応できる緑単フードが使用者数最多となりました。クリーチャーの質が高く、特にメタらなくてもアグロデッキを取りこぼしにくいのが強みでしょう。スタックス系相手は厳しいものの、《グレートヘンジ》《パンくずの道標》という2種類のアドバンテージ獲得手段があるため、一方的なゲームにはなりにくくなっています。
次点は緑単フード、スタックス系を睨んだティムールランプ。《精霊龍、ウギン》によるボードコントロールばかりでなく、奇数カードのみを使用したオボシュランプには《峰の恐怖》+《発生の根本原理》の一撃必殺が内蔵されています。どちらもボードで攻めてくる中速デッキに効果的な構築となっています。
2種類のディミーア系デッキにも注目すべきでしょう。ランプとスタックス系に強い選択ですが、なかでもディミーアコントロールはクリーチャーを最小限にして打ち消し/除去呪文を増やした特化アーキタイプとなっているのです。
トップ8デッキリストはこちら。
オボシュランプ
3 《森》
2 《山》
4 《寓話の小道》
4 《ケトリアのトライオーム》
2 《河川滑りの小道》
4 《岩山被りの小道》
-土地 (23)- 4 《エッジウォールの亭主》
4 《砕骨の巨人》
4 《厚かましい借り手》
4 《カザンドゥのマンモス》
4 《恋煩いの野獣》
4 《峰の恐怖》
4 《豆の木の巨人》
-クリーチャー (28)-
2 《鎖巣網のアラクニル》
2 《運命の神、クローティス》
2 《打ち壊すブロントドン》
2 《厳格な放逐》
1 《アゴナスの雄牛》
1 《怪物の代言者、ビビアン》
1 《獲物貫き、オボシュ》
-サイドボード (15)-
ランプと「出来事」クリーチャー中心のミッドレンジデッキをハイブリッドし、さらに《獲物貫き、オボシュ》を「相棒」に据えた欲張りなアーキタイプ。ランプにありがちな土地の引き過ぎ(以下、マナフラッド)緩和とボードコントロールに「出来事」クリーチャーが一役買っています。
通常のミッドレンジデッキでは盤面が膠着した場合やコントロールに重きを置いた相手とのマッチアップでは苦戦を強いられますが、《発生の根本原理》と《獲物貫き、オボシュ》という打開手段を採用しています。色の合っているデッキ同士の単純なハイブリッドではなく、お互いの持つ欠点を補うカードを採用することで、弱点を克服しているのです。
《峰の恐怖》は圧倒的なクロックと制圧力をもたらし、土地がアンタップしさえすれば勝利は約束されたようなもの。《発生の根本原理》とも相性がよく、決勝戦ではこの2枚による逆転勝利となりました。
Genesis Ultimatum finds Terror of the Peaks, double Beanstalk Giant, and $10,000! Congratulations to @cftsoc3 on winning the #CFBClash Championship with Temur Ramp! pic.twitter.com/pF25PrQ4DI
— ChannelFireball (@ChannelFireball) November 23, 2020
《恋煩いの野獣》のように盤面を支えるクリーチャーは軽いながらもパワーが高いため、中盤以降は火力役となってくれる相性がいいカードです。《恋煩いの野獣》から始まるビートダウンの後詰めとして、もしくは《峰の恐怖》からクリーチャーを連打することで盤面制圧を狙うなど、いつ引いても活躍してくれるクリーチャーです。
ディミーアローグに対しては、「出来事」クリーチャーの存在により通常のランプに比べると相性がいいものの、苦手なアーキタイプです。そのためサイドボードには墓地を活用するクリーチャーが5枚採用されています。「脱出」コンビは単色なこともあり、さまざまなデッキに採用されているので、ここでは《運命の神、クローティス》へと注目してみましょう。
いずれかの墓地にあるカードを追放する墓地対策カードの一種ですが、同時にダメージソースとなります。特に対ディミーアローグ戦では、サイド後は「出来事」を活かしたミッドレンジデッキとなるので、早めに着地させたいところ。墓地のカードを減らしつつダメージレースをサポートしてくれるので、一方的に押し切られにくくなり粘り強く戦えるようになります。
これまでのオボシュランプはアグロデッキ用のサイドボードとして、《焦熱の竜火》と《アクロス戦争》を採用していました。サイド後は「相棒」を使わずに、ボードコントロール力を高めていたのです。
しかし、このデッキではサイドボードも奇数に統一することで、《獲物貫き、オボシュ》を使い続けられるようにデザインされています。同サイズのクリーチャーを採用することでグルールアドベンチャーに当たり負けしないと考え、対策を《エンバレスの宝剣》に絞っているのです。
《厳格な放逐》は珍しい1枚であり、相手の思考の外にあるカードといえるでしょう。《厚かましい借り手》《砕骨の巨人》と違い1マナのため読まれにくく、盤面が構築できていれば《エンバレスの宝剣》に対する最高のカウンターとなります。ただし、対象にとれるのは相手のコントロールしているカードのみとなるため、注意が必要です。
ディミーアヨーリオン
6 《沼》
4 《寓話の小道》
2 《ゼイゴスのトライオーム》
4 《清水の小道》
4 《欺瞞の神殿》
4 《這い回るやせ地》
-土地 (31)- 4 《真面目な身代わり》
3 《半真実の神託者、アトリス》
-クリーチャー (7)-
2 《塵へのしがみつき》
4 《無情な行動》
4 《ジュワー島の撹乱》
2 《本質の散乱》
2 《否認》
4 《中和》
4 《絶滅の契機》
4 《海の神のお告げ》
3 《エルズペスの悪夢》
1 《サメ台風》
4 《精神迷わせの秘本》
2 《悪夢の詩神、アショク》
4 《精霊龍、ウギン》
-呪文 (42)-
3 《サメ台風》
2 《影の評決》
1 《強迫》
1 《エレボスの介入》
1 《取り除き》
1 《本質の散乱》
1 《否認》
1 《エルズペスの悪夢》
1 《空を放浪するもの、ヨーリオン》
-サイドボード (15)-
《空を放浪するもの、ヨーリオン》といえばかつてはアゾリウスコントロールでよく見た「相棒」でしたが、最近では白黒を基調としたスタックス系や《エルズペス、死に打ち勝つ》を使い回すブリンク系のお供となっています。
Marius Badea選手は《空を放浪するもの、ヨーリオン》をディミーアコントロールへと組み込み、タップアウトに近いコントロールデッキを構築しました。1対1交換を取り続け、《空を放浪するもの、ヨーリオン》によるアドバンテージか《精霊龍、ウギン》が勝負を決めます。
《空を放浪するもの、ヨーリオン》の能力を最大限に活かすべく、ドローソースにもパーマネントが採用されています。《半真実の神託者、アトリス》は駆け引きのあるクリーチャーですが、複数のカードが手に入る可能性があります。墓地へ落ちたカードも《塵へのしがみつき》の「脱出」コストとなるため、無駄がありません。
《悪夢の詩神、アショク》は防御的なプレインズウォーカーであり、盤面への干渉手段にもなります。アグロデッキ相手には使いにくいものの、《グレートヘンジ》に触れる貴重なカードです。
ですが、コントロールマッチでは一転してフィニッシャーへと早変わりします。相手のデッキを追放していくため放置しにくく、早急な対処が求められるのです。打ち消し呪文を除くと対処できるカードが少ないのも利点でしょう。
ピックアップデッキ
アゾリウスアーティファクト
『The Mythic Society Weekly Standard』でRobert Taylor選手が使用したのは、《見捨てられた碑》を中核に据えた準白単のアーティファクトデッキ。《見捨てられた碑》の設置後、キャントリップのアーティファクトを連打してドローを進めつつライフを稼いでいきます。
《空の粉砕》によるボードコントロールと無色マナによるブーストを経て、フィニッシャー《精霊龍、ウギン》への到達を目指していきます。
3つの能力を有する伝説のアーティファクト、《見捨てられた碑》はこのデッキのキーカードです。デッキ内の4割のカードにライフゲインを付与し、《光輝の泉》など組み合わせれば6ターン目に《精霊龍、ウギン》の着地を可能にしてくれるのです。
普段は頼りないチャンプブロッカーの《真面目な身代わり》ですが、《見捨てられた碑》があれば4/4のたくましいボディへと早変わり。《精霊龍、ウギン》で戦場を一掃しても追放されないため、速やかにゲームを終わらせるフィニッシャーとなってくれます。
現代へと蘇りし《イス卿の迷路》こと《スコフォスの迷宮》。能力は大幅に弱体化してしまいましたが、《見捨てられた碑》によるマナ増幅のおかげで使いやすくなっています。
《エンバレスの宝剣》による単騎突破、《貪るトロールの王》のように比較的遅いクロックに対して有効な防御手段であり、このカードを乗り越えるために横に戦線を広げてくれればしめたもの。《精霊龍、ウギン》や《空の粉砕》で大きくアドバンテージを稼ぐことができるでしょう。
ボードコントロールとライフゲインによりアグロデッキに強い一方で、瞬速クリーチャーとインスタントが主体のディミーアローグを非常に苦手としています。《スカイクレイブの亡霊》が不採用のため軽量除去呪文が少なく、《遺跡ガニ》を出されようものならライブラリーアウトまで一直線となってしまうことも。
サイドボードに用意された《真夜中の時計》は時間こそかかるものの、ディミーアローグの戦略への対抗手段となります。マナアーティファクトとして《見捨てられた碑》や《精霊龍、ウギン》の着地を早め、「切削」されたデッキを修復して、そのうえでカードも引けるのです。《神秘の論争》の対象になってしまうのはネックですが、着地させればしめたもの。《否認》と組み合わせるか、相手のマナをみて通していきたいカードです。
直近の大会結果
11月16日から11月22日までの大会結果(最低参加人数16人以上)になります。長らくグルールアドベンチャーがけん引してきたメタゲームも、終焉となりそうです。Standard Challenge時点ではトップ16に6名いたグルールアドベンチャーですが、日が経つにつれ存在感は薄れていき、CFB Clash Championshipではトップ16にわずか1名のみとなりました。それに合わせるようにスタックス系も数を減らしています。
代わりに緑単フードとランプは毎回のように複数名が入賞しており、メタゲームに対して安定した勝率が見込めるデッキとなっています。緑単フードとスタックス系はクリーチャーデッキに強い立ち位置でしたが、どこで差が生まれたのでしょうか?
速度に多少の差こそあれ、どちらもパーマネントに依存しているため《精霊龍、ウギン》を苦手としています。スタックス系はサイドボードから《強迫》や《否認》などの《精霊龍、ウギン》の着地を未然に防ぎ、万一出された場合も《予言された壊滅》や《エルズペス、死に打ち勝つ》といった干渉手段を有しています。
一見すると緑単フードよりも相性がいいように思えますが、相手の脅威をさばくことに主眼をおいた重コントロールであるがゆえに、攻めきることができません。《発生の根本原理》と合わせて8枚のフィニッシャーを対処できればいいものの、万が一打ち消しもらせば戦略が瓦解してしまいます。
対して、緑単フードはダメージソースとなるクリーチャーが主体のデッキであり、ライフを詰めることが可能です。《恋煩いの野獣》《カザンドゥのマンモス》は4ターン目から5点を刻み始めます。このダメージと合わせ《グレートヘンジ》を着地させることがキーとなります。
《グレートヘンジ》は《精霊龍、ウギン》がない場合には攻めきるに十分な戦力を展開し、仮に出されたとしても自身は流されにくく、さらにリセット後のリカバリーに一役買ってくれます。ライフを詰めつつ、《グレートヘンジ》を早期に着地させるという明確な攻めるプランがあるのです。
また、クリーチャー主体のデッキということも利点となっています。《グレートヘンジ》や《パンくずの道標》など一部のカードのみが非クリーチャーパーマネントであるため、対象の少ない《否認》がサイドインしにくくなっているのです。
おわりに
安定した成績を残す緑単フードとランプですが、この状況が続けば《トリックスター、ザレス・サン》有するディミーア系のデッキにチャンスが生まれそうです。瞬速を持つため、ローグに限らずコントロールのフィニッシャーとして活躍できるかもしれません。
今週末には『カルドハイム』チャンピオンシップの予選を兼ねた$5K Kaldheim Championship Qualifierが控えていますね。次回はそれらの情報をお届けしたいと思います。