Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2020/11/24)
『ゼンディカーの夜明け』チャンピオンシップの開催が迫ってきています。残念ながら、私は出場権を獲得できませんでしたので、参加する予定はありません。
しかしだからこそ、何の憂いもなく大会予想やおすすめのデッキをみなさんに共有することができます。ここ一ヵ月はヒストリックに目もくれずにスタンダードをやり込んできましたので、この記事ではスタンダードに特化していこうと思います。
スタンダードの今
今日のスタンダードはめまぐるしく変化しています。MTGアリーナで行われるかつてないほどの試合数。毎日のように開催される注目の大会。類を見ない速度で固まっていくメタゲーム。リーグウィークエンドの情報を追っていれば、マジック・プロリーグやライバルズ・リーグに所属する世界最高峰の選手たちが調整したデッキリストが手に入ります。
また、何らかのデッキやカードが突出したパフォーマンスを見せると、昨今ではすぐに禁止されます。《創造の座、オムナス》は《王冠泥棒、オーコ》に匹敵するパワーではなかったと思いますが、それでもこのプレインズウォーカーよりも短期間で禁止されました。
《創造の座、オムナス》以降、禁止されるカードはなく、支配的なデッキも存在していません。私の知る限りでは、これ以上の禁止が必要のない状況です。これはメタゲームが健全である証だろうと思います。メタゲームは固まっているものの、それでも健全だと言えるでしょう。デッキや勝率の変化がそれを裏付けています。
環境のデッキ
現在のスタンダードを席巻しているアーキタイプは3つあります。グルールアドベンチャー、ディミーアローグ、エスパースタックスです。その他にも取り上げるとすれば、緑単フード、ティムールランプ、ラクドスエスケープでしょう。ここからは、この6つのデッキそれぞれについて私がおすすめするデッキリストをご紹介します。
このデッキはほとんど完成形にたどり着いているでしょう。2種の伝説アーティファクトの枚数には議論の余地があるかもしれませんが、合計6枚が適切だろうと思います。
ディミーアローグはいくつか異なる構成があり、それぞれでゲームプランが少々違います。個人的には僅差で《夢の巣のルールス》を「相棒」に据えた構成が好みですね。
数あるヨーリオンデッキのなかでも、今注目を浴びているのがエスパースタックスです。その他のヨーリオンデッキはグルールアドベンチャーに苦戦しますが、エスパースタックスは有利に戦えます。
その他のヨーリオンデッキには、アゾリウス・セレズニア・マルドゥ・アブザンがあります。そのどれもが狙いとするのは、盤面をコントロールし、《空を放浪するもの、ヨーリオン》や《エルズペス、死に打ち勝つ》によるカードアドバンテージを獲得することです。
一ヵ月前には存在しなかったようなデッキですが、今や急速に数を増やしています。単なる緑単色のビートダウンデッキだと侮ってはいけません。
ここしばらく、ティムールランプはメタゲームシェア率がごくわずかなものになっていました。グルールアドベンチャーとの相性の悪さが足を引っ張っていたのです。ですが、今月のリーグウィークエンドに石村 信太朗が持ち込んだデッキリストは完成度が高いと思います。5ターン目に《精霊龍、ウギン》を出すことを意識した構成ですね。
「脱出」呪文が満載であり、ディミーアローグにとっての天敵となっています。ラクドスエスケープは終盤戦の強さに加えて、《死の飢えのタイタン、クロクサ》で序盤から相手を圧倒していくことができます。
グルールアドベンチャー
4 《山》
4 《寓話の小道》
4 《岩山被りの小道》
1 《奔放の神殿》
-土地 (22)-
4 《エッジウォールの亭主》
4 《山火事の精霊》
3 《漁る軟泥》
4 《砕骨の巨人》
4 《カザンドゥのマンモス》
4 《恋煩いの野獣》
1 《探索する獣》
-クリーチャー (24)-
2 《アゴナスの雄牛》
2 《焦熱の竜火》
2 《萎れ》
2 《アクロス戦争》
2 《解き放たれた者、ガラク》
1 《探索する獣》
1 《怪物の代言者、ビビアン》
-サイドボード (15)-ディミーアローグ
3 《沼》
4 《寓話の小道》
3 《ゼイゴスのトライオーム》
4 《清水の小道》
4 《欺瞞の神殿》
-土地 (22)-
4 《マーフォークの風泥棒》
4 《遺跡ガニ》
4 《盗賊ギルドの処罰者》
4 《空飛ぶ思考盗み》
-クリーチャー (16)-
2 《ヴァントレスのガーゴイル》
2 《強迫》
2 《否認》
2 《死住まいの呼び声》
2 《凪魔道士の威圧》
1 《タッサの介入》
1 《夢の巣のルールス》
-サイドボード (15)-エスパースタックス
3 《島》
3 《沼》
4 《寓話の小道》
4 《陽光昇りの小道》
4 《清水の小道》
4 《啓蒙の神殿》
3 《欺瞞の神殿》
1 《静寂の神殿》
-土地 (30)-
4 《スカイクレイブの亡霊》
3 《空を放浪するもの、ヨーリオン》
1 《夢さらい》
-クリーチャー (8)-
2 《取り除き》
2 《無情な行動》
2 《空の粉砕》
2 《絶滅の契機》
2 《ハグラの噛み殺し》
4 《エメリアの呼び声》
4 《海の神のお告げ》
3 《メレティス誕生》
4 《エルズペスの悪夢》
3 《裏切る恵み》
2 《太陽の神のお告げ》
4 《予言された壊滅》
3 《エルズペス、死に打ち勝つ》
2 《ガラスの棺》
2 《精神迷わせの秘本》
-呪文 (42)-
2 《強迫》
2 《否認》
2 《垣間見た自由》
2 《サメ台風》
1 《悪斬の天使》
1 《エルズペス、死に打ち勝つ》
1 《精神迷わせの秘本》
1 《空を放浪するもの、ヨーリオン》
-サイドボード (15)-緑単フード
4 《ギャレンブリグ城》
3 《眷者の居留地》
-土地 (23)-
4 《金のガチョウ》
4 《絡みつく花面晶体》
1 《漁る軟泥》
4 《カザンドゥのマンモス》
4 《恋煩いの野獣》
2 《打ち壊すブロントドン》
4 《意地悪な狼》
4 《貪るトロールの王》
1 《巨大猿、コグラ》
-クリーチャー (28)-
2 《鎖巣網のアラクニル》
2 《打ち壊すブロントドン》
2 《原初の力》
2 《強行突破》
2 《怪物の代言者、ビビアン》
1 《巨大猿、コグラ》
1 《精霊龍、ウギン》
-サイドボード (15)-ティムールランプ
ラクドスエスケープ
4 《山》
4 《寓話の小道》
4 《悪意の神殿》
1 《ロークスワイン城》
-土地 (19)-
4 《死の飢えのタイタン、クロクサ》
4 《ぬかるみのトリトン》
4 《義賊》
4 《砕骨の巨人》
2 《残忍な騎士》
2 《悪ふざけの名人、ランクル》
2 《アゴナスの雄牛》
-クリーチャー (22)-
2 《強迫》
2 《苦悶の悔恨》
2 《切り裂かれた帆》
2 《エルズペスの悪夢》
1 《アゴナスの雄牛》
1 《塵へのしがみつき》
1 《取り除き》
1 《魂の粉砕》
1 《死者を目覚めさせる者、リリアナ》
-サイドボード (15)-
デッキごとの勝率
デッキリストと勝率は不変ではありません。過去のイベント間における勝率やデッキリストの変化は重大な情報源となります。ここでは、10月(10/24~25)と11月(11/7~8)のリーグウィークエンドのメタゲームと勝率を見てみることにしましょう。
デッキ名 | 使用者数(勝率) 10月 |
使用者数(勝率) 11月 |
---|---|---|
グルールアドベンチャー | 7人(65.0%) | 33人(47.3%) |
ディミーアローグ | 24人(57.8%) | 9人(49.0%) |
ヨーリオンデッキ | 16人(26.8%) | 20人(49.8%) |
ティムールランプ | 4人(48.9%) | 1人(75%) |
ラクドスエスケープ | 4人(60.4%) | 0人 |
緑単フード | 0人 | 4人(65.9%) |
急速に発展する昨今では、2週間しか間が空いていなくともデッキリストが大きく変化します。10月のリーグウィークエンドでは、ヨーリオンデッキといえばアゾリウスカラーが定番でしたが、その勝率は悲惨なものでした。しかしそのたった2週間後、代表的なヨーリオンデッキはエスパースタックスへと代わっています。
10月のリーグウィークエンドで最大の勝ち組だったのがグルールアドベンチャーであったことを踏まえれば、この変化には納得できます。11月のリーグウィークエンドでグルールアドベンチャーを選択したプレイヤーが多かったため、そのマッチアップで有効なプランを持つデッキを選ぶことは賢明な判断だったでしょう。
グルールの勝率は約18%低下しています。この変化が起きた主な理由は、参加者たちがグルールが最大勢力になると確信めいていたからでしょう。誰もがグルールに対する準備をしただけでなく、グルールを使うプレイヤーたちもミラーに強いカードに心惹かれていたのです。《探索する獣》は避け、《アクロス戦争》をメインデッキに入れる構成が見受けられました。これはグルールミラーでは適切な変更かもしれませんが、その他のデッキとの相性を悪化させてしまう変更です。
10月のリーグウィークエンドではディミーアローグの選択者が多く、数名のラクドスエスケープがそれを狩ろうとしていました。その後グルールアドベンチャーの隆盛が予想され、ローグにとっては簡単なマッチアップではないことから、多くのプレイヤーがローグから離脱していきます。11月のリーグウィークエンドではそのローグが減ることも予想の範囲内であり、ラクドスエスケープを登録したプレイヤーは1人もいませんでした。ラクドスが勝ち組になるには、ディミーアローグがメタゲーム上に多くいなければならないのです。
11月のリーグウィークエンドになると、支配力を示す新たなデッキが登場します。緑単フードです。グルールアドベンチャーとヨーリオンデッキの両方に相性が良いことから、このリーグウィークエンドでは素晴らしい選択となりました。来る『ゼンディカーの夜明け』チャンピオンシップでは、緑単フードが大きなメタゲームシェア率を誇るだろうと考えています。
そして最後に、石村 信太朗は11月のリーグウィークエンドで唯一ティムールランプを持ち込んだプレイヤーでした。彼の勝率は非常に高く、このデッキは本物だろうと思います。マナ加速から高速で《精霊龍、ウギン》を展開するプランが緑単に有効だと思われるのも、このデッキを選ぶひとつの理由となっています。
『ゼンディカーの夜明け』チャンピオンシップのメタゲーム予想
最初にひとつお断りしておくと、メタゲーム予想というのは非常に難しく、私も予想を外したことはあります。とはいえ、ここ最近はスタンダードに打ち込んでいますし、大量の大会結果を参照できますから、ひとつ予想してみることにしましょう。
デッキ | 予想メタゲームシェア率 |
---|---|
グルールアドベンチャー | 29% |
ディミーアローグ | 14% |
エスパースタックス | 14% |
ティムールランプ | 7% |
ラクドスエスケープ | 5% |
緑単フード | 13% |
その他 | 18% |
100.0% |
『ゼンディカーの夜明け』チャンピオンシップでもグルールアドベンチャーが最大勢力になると予想します。デッキパワーが高く、無難な選択です。このデッキを選んでおけば、間違えることはないでしょう。相性が最悪なマッチアップだったとしても、テンポ良く《エンバレスの宝剣》を唱える展開に持ち込めれば勝てますからね。
同じく、ディミーアローグも無難な選択です。ただ、グルールアドベンチャーと比べるとデッキパワーはやや見劣りします。《エンバレスの宝剣》のように1枚でゲームを決めるパワーカードで勝つ機会が少ないためです。
デッキ構築に関してアドバイスするとすれば、メインデッキはクリーチャーデッキを想定した構成にしたほうがいいでしょう。特に《凪魔道士の威圧》はグルールや緑単との試合で決定打となるカードです。
実際のエスパースタックスの使用者数は予想よりも少ないかもしれませんが、現環境で最強のコントロールはこのデッキです。どうしてもコントロールが使いたいという気持ちは私にもよくわかります。エスパースタックスを使うのであれば、ディミーアローグと緑単フードに対する戦い方をしっかりと用意しておきましょう。
ティムールランプは環境に残ると予想します。《否認》のような打ち消しに脆いため、環境の主役になることは難しいでしょう。しかし、『ゼンディカーの夜明け』チャンピオンシップでの立ち位置はかなり良いはずです。自分でティムールランプを使うつもりがなくとも、このデッキを相手にしたテストは行っておきましょう。自分で使おうという場合は、サイドボードに《運命の神、クローティス》を《アゴナスの雄牛》を用意しておくこと。ディミーアローグに対する有効なプランが必要です。
おすすめしないデッキがあるとすれば、それはラクドスエスケープです。ディミーアローグを狩ろうにも、その数がおそらく多くありません。それでもラクドスエスケープを持ち込むプレイヤーはいると思うので、彼がどうやってグルールアドベンチャーに立ち向かうのか楽しみにしたいですね。
最後になりますが、緑単フードも忘れてはなりません。むしろ、そのシェア率を私が過小評価している可能性もあります。マナ加速からの大型クリーチャーを連続展開。フードシナジーと《グレートヘンジ》による莫大なアドバンテージ。自分で使わないのであれば、確実に意識しておきたいデッキです。
結論
ここまで読んでくださったみなさんであれば、『ゼンディカーの夜明け』チャンピオンシップではティムールランプが賢明な選択肢になると私が考えているとお気づきでしょう。もし今日デッキ登録をしなくてはならないとすれば、私はティムールランプを選択します。
プレイヤーたちは緑単フードとグルールアドベンチャーに対するプランに意識を向けながらも、サイドボードの枠を使ってディミーアローグやエスパースタックスを警戒せねばなりません。《精霊龍、ウギン》はとんでもないカードであり、今のメタゲームにおいてはこのカードを高速かつ頻繁に展開することに心惹かれますね。
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パスカル・フィーレン (Twitter)