コンボの支度
《タッサの神託者》というカードがある。『テーロス還魂記』を象徴とする信心クリーチャーであり、その能力は自身のドローを向上させるものだ。しかし、パイオニアにて開催されたプレイヤーズツアー・名古屋2020にて、このクリーチャーは想像以上の活躍をみせる。ディミーアインバーターである。
ライブラリーと墓地を入れかえる《真実を覆すもの》の能力は、《タッサの神託者》と組み合わせることで至高のコンボとなった。仮に墓地が0枚であるなら、《タッサの神託者》が着地した時点で勝利が確定するのだ。
その後、《タッサの神託者》はパイオニアだけにとどまらず、レガシーやヴィンテージでも《最後の審判》とのコンボデッキが誕生している。もっとも、色マナ拘束が非常に厳しいため、《不毛の大地》が蔓延するレガシーではトップメタとまではいかなかったが。
これは仮定の話になってしまうが、このマナ拘束を緩和でき《不毛の大地》に強い構成があるとすれば、それはレガシー界の勢力図を塗り替えてパイオニアのディミーアインバーターのようにトップメタデッキとなるのではないだろうか。
そして、今日。Eternal Party 2020 東京に限りなく青単に近い《タッサの神託者》コンボが持ち込まれた。
3 《Tropical Island》
3 《汚染された三角州》
2 《溢れかえる岸辺》
2 《沸騰する小湖》
3 《冠水樹林帯》
1 《殻船着の島》
2 《古えの墳墓》
-土地 (20)- 4 《タッサの神託者》
2 《船殻破り》
-クリーチャー (6)-
4 《思案》
4 《夏の帳》
2 《定業》
4 《パラダイム・シフト》
4 《意志の力》
1 《森の知恵》
4 《Thought Lash》
4 《水蓮の花びら》
1 《大祖始の遺産》
2 《神秘を操る者、ジェイス》
-呪文 (34)-
コンボは青いカードのみで完結しており、基本地形も4枚と多めに採用されている。仮に《不毛の大地》で土地が割り切られてしまったとしても、コンボが完成するだけの枚数が用意されている。
レガシーに現れた新たなコンボデッキについて、使用者のミタニ ケントに聞いてみよう!
デッキとの出会いは突然に
――今回の《タッサの神託者》コンボについて教えてください。
ミタニ「《真実を覆すもの》の呪文版である《パラダイム・シフト》をキャストしてライブラリーの枚数を極力減らします。その後マナに余裕があれば《タッサの神託者》を、ライブラリーがあるなら次のターンに《神秘を操る者、ジェイス》をキャストできればライブラリーを引ききって勝利となります」
――《タッサの神託者》の相方といえば《最後の審判》が思い浮かびますが、青単は珍しいですね。
ミタニ「着想はTwitterで流れてきたMOの5-0リストからです。元々《Thought Lash》のイラストが好きだったこともあり、(オラクル変化など)カード自体に着目していました。ちょうど採用されていたこともあり、このデッキを使ってみようかなと」
ミタニ「ほかのデッキでいえばデルバーなどを使っていた時期もありましたが、環境にはいくつかネックとなるカードがあります。相手の《虚空の杯》や《王冠泥棒、オーコ》を無視したいこともあってこのデッキを選択しました」
レガシー vs. 《タッサの神託者》
――レガシーのコンボといえばエルフや《実物提示教育》、ANTのようにマナ加速を持ち合わせたものが多いですよね?速度面はどうでしょうか?
ミタニ「このデッキにも《古えの墳墓》や《水蓮の花びら》があるため、最速3~4ターン目にコンボを決めることができます。《パラダイム・シフト》+《タッサの神託者》はちょうど4マナですからね」
――コンボパーツが軽いこともあり、意外と早いんですね。トップメタなどとのデッキ相性はいかがですか?
ミタニ「《夏の帳》や打ち消し呪文があるため、スノーオーコなどの遅いデッキには強いです。逆にデルバーのような軽く早いクロックがあるデッキはキツイです。特にサイド後は《夏の帳》の効かない《紅蓮破》が入ってくるので。エルフはそれほど苦しい相手ではありません。打点が細いのとこちらもスピード勝負にはある程度ついていけるので」
――ほかのデッキとの相性はいかがでしょうか?
ミタニ「サルベージャーや感染なんかは厳しいですね。前者はこちらより早いコンボ、後者は軽いクロックを強化して最速2ターンで削られてしまいますから。ほかのアグロデッキに限っていえば4マナと少し重いですが、《Thought Lash》さえ通ればかなり時間を稼げます」
――《Thought Lash》?見慣れないカードですね。
ミタニ「ライブラリーを削ることでダメージを軽減できるエンチャントです。かなり耐えることができますよ。何よりもライブラリーを削るためコンボパーツにもなっているんです」
サイドボードの使い道
――メインの勝ち手段はコンボですが、サイドには《王冠泥棒、オーコ》がいますね。サイドから勝ち手段を増やす感じですか?
ミタニ「サイドボードの《王冠泥棒、オーコ》は主に《夏の帳》の効かない《紅蓮破》対策ですね。脊髄反射で打ち消し呪文をキャストしてくれる場合もあるので、本命のコンボを通すための囮になっています。厄介なクリーチャーやアーティファクトも止めることができますが、あくまでも勝ち手段は《タッサの神託者》コンボなので、補助的なカードの立ち位置です」
――ほかのカードについても教えてください。
ミタニ「デルバー相手には《紅蓮破》をはじめとした打ち消し呪文が厄介なのでこちらも《防御の光網》で対策しています。《花の絨毯》は初速を早め、《目くらまし》などのソフトカウンターを無効化してくれる対青に特化した対策カードです」
ミタニ「メインボードにも入っている《大祖始の遺産》は墓地を使った《甦る死滅都市、ホガーク》を対策していますが、ほかにも理由がありまして」
――どんな理由でしょうか?
ミタニ「ゲームが長引くとどうしても墓地が溜まってしまい、《パラダイム・シフト》が通ってもすぐに勝ちきれないことがあるんです。そこで《大祖始の遺産》であらかじめ追放しておくことで、すぐにコンボを決めることができるようになります」
擬態化
――実際このコンボ、どこまで知られているのでしょうか?
ミタニ「真新しいデッキなので、全然知られてませんよ。いわゆるわからん殺しが狙えます。《Thought Lash》が張っている状況で《タッサの神託者》がうっかり解決されてしまうなんてこともありました」
――それこそキーカードの《パラダイム・シフト》や《Thought Lash》自体が知られていないカードということですね。
ミタニ「能力を確認しても何が起きるかわからないことがあります。プレイ中も土地をみただけではデッキがバレにくく、オムニテルに偽装しながらプレイしていきます。だからこそ、《Thought Lash》に面食らうわけですね」
――新カードの《船殻破り》が採用されていますが、使い勝手はどうですか?
ミタニ「お試し枠で採用しましたが、活躍してくれています。《タッサの神託者》のために信心を増やしたいですし、ブロッカーとして時間も稼いでくれます。当然、《渦まく知識》に合わせてキャストできれば最高ですからね」
――ありがとうございました。
1枚のカードによって生まれたコンボは水面へと走る波紋のように、さまざまなフォーマットへと波及していく。カードプールが広がることが可能性は増え、これまで気にもとめられていなかったカードたちがスポットライトの下へと現れてくる。この《タッサの神託者》コンボも、その1つにすぎない。ほかのカードたちも活躍する瞬間を今かいまかと待ち構えているはずだ。
次の《パラダイム・シフト》を探して、改めて広大なカードプールを眺めてみるとしよう。