はじめに
みなさんこんにちは。
社会情勢の変化に伴って、The Last Sun 2020を含めた年内に開催予定だった日本国内のテーブルトップイベントすべてが延期となりました。しかし、Eternal Party 2020 東京は予定通り開催され、大盛況のうちに幕を閉じています。
今回はEternal Party 2020 東京とLegacy Show Case Challengeの入賞デッキを見ていきたいと思います。
Eternal Party 2020 東京
Elvesが相性の悪いANTに勝利して優勝
2020年12月6日
- 1位 Elves
- 2位 ANT
- 3位 Worldgorger Dragon
- 4位 Death and Taxes
- 5位 Maverick
- 6位 Death’s Shadow
- 7位 Hogaak
- 8位 Hogaak
島田 裕幸
トップ8のデッキリストはこちら
参加者213名と大規模なイベントになったEternal Party 2020 東京。現環境のトップメタであるTemur DelverとSnowkoがプレイオフに不在だったことが印象に強く残りました。
優勝は《アロサウルス飼い》を獲得して以来安定した成績を残し続けているElvesでした。決勝戦では相性の悪いANTに勝利しています。
HogaakやDeath and Taxes、Maverickなど青くないデッキが多数勝ち残っており、レガシーを代表する《渦まく知識》と《意志の力》を使わずともチャンスがあることの証明となりました。さまざまなアーキタイプが活躍している近年のレガシーを象徴する結果といえるでしょう。
デッキ紹介
Elves
2 《Bayou》
2 《ドライアドの東屋》
3 《樹木茂る山麓》
2 《新緑の地下墓地》
1 《霧深い雨林》
1 《吹きさらしの荒野》
4 《ガイアの揺籃の地》
1 《育成泥炭地》
-土地 (19)- 4 《アロサウルス飼い》
4 《遺産のドルイド》
4 《イラクサの歩哨》
4 《クウィリーオン・レインジャー》
4 《ワイアウッドの共生虫》
1 《樺の知識のレインジャー》
4 《エルフの幻想家》
1 《漁る軟泥》
1 《威厳の魔力》
1 《孔蹄のビヒモス》
-クリーチャー (28)-
3 《突然の衰微》
2 《外科的摘出》
2 《精神壊しの罠》
1 《溜め込み屋のアウフ》
1 《フェアリーの忌み者》
1 《大祖始》
1 《陰謀団式療法》
1 《暗殺者の戦利品》
-サイドボード (15)-
Eternal Weekend 2020を優勝するなどコンスタントに結果を残していたElves。
《遺産のドルイド》など低コストのマナ・クリーチャーを並べて使えるマナの絶対量を増やしていきます。《ガイアの揺籃の地》でさらにマナを増やし、増えたマナを《垣間見る自然》でカードアドバンテージに変換、その後《自然の秩序》から《孔蹄のビヒモス》をサーチして殴り倒す部族ベースのコンボデッキとなっています。
このデッキの優れた点は《ガイアの揺籃の地》や《垣間見る自然》といったキーカードがない場合、《エルフの幻想家》+《ワイアウッドの共生虫》で細かくカードアドバンテージを稼ぎつつビートダウンを目指すアグロプランが存在することです。コンボ一辺倒ではなく状況に応じて柔軟に動けるデッキといえます。
今後は《疫病を仕組むもの》《猛火の斉射》《乱暴/転落》《終末》などのスイーパーが増量する可能性があります。対策されるなかでこのデッキがどのように立ち回っていくのか、要注目です。
☆注目ポイント
《アロサウルス飼い》は環境を歪めるほど強力なカードではなく、特定のアーキタイプのみを強化するバランスのいい新カードでした。このクリーチャーのおかげで《垣間見る自然》や《自然の秩序》といったキースペルを通しやすくなり、Delver系などの青ベースのデッキ全般に耐性ができたことで復権を果たしました。
《アロサウルス飼い》によって青いデッキに対して有利となりましたが、同時に《虚空の杯》の対策にもなっています。
モダンやパイオニアではすでに禁止カードに指定されている《むかしむかし》は、このデッキでは必須カードとして定着しています。《アロサウルス飼い》や《遺産のドルイド》、《ガイアの揺籃の地》などを手札に加えることができるので、安定性の向上に貢献しているのです。
《漁る軟泥》はHogaakやReanimatorなどの墓地を中心とした戦略だけではなく、《戦慄衆の秘儀術師》や《自然の怒りのタイタン、ウーロ》も対策できるためメイン採用も頷けます。
サイドボードの《大祖始》は除去耐性があるので、Delver系やSnowko相手に《自然の秩序》経由で場に出すことでゲームを短時間で終わらせてくれます。ここでも《アロサウルス飼い》のおかげで《自然の秩序》を安全にキャストできるようになっています。《精神壊しの罠》はElvesにとって厳しい対高速コンボ用の妨害スペルであり、特にANTやSpy Comboとのマッチアップで使えます。
緑単色でも十分に戦えるデッキですが、《思考囲い》と《突然の衰微》は黒をタッチする理由になります。《思考囲い》はコンボデッキやコントロールとのマッチアップで有効な妨害スペルであり、決勝戦でも相手の勝ち手段を落とすなどして勝利に貢献していました。《突然の衰微》は《戦慄衆の秘儀術師》などの厄介なパーマネントに対する打ち消されない解答となります。
Hogaak
3 《Bayou》
3 《Underground Sea》
4 《湿地の干潟》
4 《汚染された三角州》
4 《新緑の地下墓地》
-土地 (19)- 4 《面晶体のカニ》
4 《墓所這い》
4 《縫い師への供給者》
4 《恐血鬼》
4 《サテュロスの道探し》
4 《復讐蔦》
4 《甦る死滅都市、ホガーク》
-クリーチャー (28)-
《甦る死滅都市、ホガーク》は登場から間もなくモダン環境を支配し、禁止カード入りとなりました。その後は主戦場をレガシーへと移しましたが、上位入賞を続けています。
墓地から復活してくるクリーチャーを利用して、最速2ターン目から圧倒的な場を築くコンボデッキ。《縫い師への供給者》や《面晶体のカニ》などで墓地を肥やしていき、《墓所這い》や《恐血鬼》といった墓地から復活してくるクリーチャーを探しだします。それらのクリーチャーを「召集」コストにあてれば《甦る死滅都市、ホガーク》を高速展開することができ、さらに《狂気の祭壇》が場にあれば戦闘せずに勝利することができます。
爆発力のあるコンボデッキですが、墓地から復活してくるクリーチャーが多いので相手の除去が機能しにくく、ロングゲームも戦える粘り強さを持ち合わせています。
☆注目ポイント
Hogaakは墓地デッキではなく墓地コンボと言われる理由の1つに《狂気の祭壇》があげられます。「召集」コストとして使用済みや除去の対象になったクリーチャーを生け贄することで、自然と《甦る死滅都市、ホガーク》の「探査」コストが墓地にたまっていきます。
《甦る死滅都市、ホガーク》自身を生け贄に捧げれば8枚ものカードを「切削」でき、その過程で《黄泉からの橋》が2枚落ちていれば自分のライブラリーが空になるまで掘り進めることができます。その後に「切削」対象を対戦相手に切り替えれば、ライブラリーアウトで勝利できるのです。
モダンのHogaakとの違いは《陰謀団式療法》です。《陰謀団式療法》は相手のゲームプランを妨害するだけではなく《縫い師への供給者》を生け贄に捧げる手段にもなります。対象を自分にすることで手札にきた《黄泉からの橋》を墓地へ落とすこともできますね。
サイド後は墓地対策となる置物(エンチャント/アーティファクト)を対策する必要があります。《虚空の力線》に触れる《暗殺者の戦利品》を採用したリストをよく見かけますが、今回は《突然の衰微》が優先されています。《虚空の力線》は《活性の力》で処理できるので、Delver系のクロック対策としても使える《突然の衰微》を優先したようです。
Elvesの流行が予想されるので、《疫病を仕組むもの》は必須カードとなります。
Legacy Challenge #12235619
青デッキ多数、優勝はSnowko
2020年12月6日
- 1位 Snowko
- 2位 Salvagers combo
- 3位 Izzet Delver
- 4位 Snowko
- 5位 Doomsday
- 6位 Mono Green Post
- 7位 Temur Delver
- 8位 Izzet Delver
トップ8のデッキリストはこちら
MOで毎月開催されるLegacy Show Case Challengeの結果はEternal Party 2020 東京と大きく異なり、SnowkoやDelver系といった青ベースのデッキが多数勝ち残りました。
4位入賞を果たしたSnowkoは《狡猾の宮廷》を、トップ16に入賞していたTemur Delverは《船殻破り》を採用しており、わずかながら『統率者レジェンズ』が環境に影響を与えているようです。
今大会でプレイオフに進出していたDelver系は《スプライトのドラゴン》と火力を多めに採用したIzzet型であり(7位のリストのみ《王冠泥棒、オーコ》と《運命の神、クローティス》のために緑をタッチ)、Elvesなどのコンボデッキを意識した速度特化の構成でした。
デッキ紹介
Doomsday
1 《冠雪の沼》
3 《Underground Sea》
1 《Badlands》
1 《Volcanic Island》
4 《汚染された三角州》
3 《沸騰する小湖》
1 《血染めのぬかるみ》
1 《魂の洞窟》
-土地 (17)- 4 《悪意の大梟》
1 《タッサの神託者》
1 《通りの悪霊》
-クリーチャー (6)-
《タッサの神託者》によってプロセスが簡易化され、今年に入ってから見かける機会が増えた《最後の審判》をキーとしたコンボデッキ。《時を解す者、テフェリー》と《剣を鍬に》が使えるEsperが主流でしたが、今大会で入賞したMaxtortionのリストは《戦慄衆の秘儀術師》をサイドに仕込んだGrixiになっています。
デッキの基本的な動きは《最後の審判》をプレイして《タッサの神託者》、《留まらぬ発想》や《秋の際》などのドロー、《ライオンの瞳のダイアモンド》や《水蓮の花びら》といったマナアーティファクトを積み込みます。5枚の束を掘り進め、最終的に《タッサの神託者》による特殊勝利を目指すのです。
事実上、Doomsdayは《最後の審判》による1枚コンボでありますが、色拘束とコンボスピード両方を助ける《暗黒の儀式》が採用されています。
☆注目ポイント
Maxtortionのリストでもっとも印象的だったのは、何といってもサイドボードの《戦慄衆の秘儀術師》と《稲妻》です。メインボードはコンボであるため、相手はサイド後に不要牌となる除去を減らしてきます。そこに刺さるのが《戦慄衆の秘儀術師》であり、Delver系やTemur Snowkoと同様に1マナのキャントリップや《稲妻》を再利用することでアドバンテージを稼ぐことができるのです。サイド後にクリーチャーが入ること自体予想しにくく、生き残りやすかったと思われます。
Maxtortionのリストはメインボードから《紅蓮破》が採用されています。これはトップメタのTemur DelverとSnowkoを意識した結果であり、今大会でプレイオフでは半数以上がそれらだったことからも妥当な選択といえるでしょう。
赤を足すメリットとして《虚空の杯》や《霊気の薬瓶》などのアーティファクトとクリーチャー除去の二役をこなす《削剥》があります。対応力が上がる半面色事故の危険性も増えるため、このGrixis Doomsdayが主流となるのか要注目です。
Snow Miracles
1 《冠雪の平地》
1 《冠雪の森》
2 《Tropical Island》
1 《Tundra》
2 《神秘の聖域》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《霧深い雨林》
1 《汚染された三角州》
-土地 (19)- 3 《氷牙のコアトル》
2 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
-クリーチャー (5)-
4 《思案》
4 《剣を鍬に》
4 《否定の力》
1 《大魔導師の魔除け》
4 《意志の力》
2 《終末》
1 《花の絨毯》
1 《森の知恵》
1 《狡猾の宮廷》
1 《サメ台風》
4 《アーカムの天測儀》
3 《王冠泥棒、オーコ》
2 《精神を刻む者、ジェイス》
-呪文 (36)-
2 《赤霊破》
2 《萎れ》
2 《花の絨毯》
2 《安らかなる眠り》
1 《Volcanic Island》
1 《エーテル宣誓会の法学者》
1 《イゼットの静電術師》
1 《外科的摘出》
1 《夏の帳》
-サイドボード (15)-
デッキの基本的な動きはMiraclesと同様であり、除去とカウンターで時間を稼いでいき、プレインズウォーカーの安全な着地を目指していくものです。
Miraclesにカテゴリー分けしていますが「奇跡」スペルは《終末》が2枚採用されているだけであり、フィニッシャーを務めていた《天使への願い》は不採用になっています。《自然の怒りのタイタン、ウーロ》や《王冠泥棒、オーコ》、《サメ台風》などの使い勝手のいいカードが増えたことで、序盤引くと腐りやすい《天使への願い》の必要性は薄れつつあります。
《突然の衰微》や《暗殺者の戦利品》といったパーマネント対策や部族デッキに効く《疫病を仕組むもの》、メインボードから無理なく採用できる墓地対策《塵へのしがみつき》など黒を含めた4色Snowkoは柔軟性の高いデッキといえます。しかし、Bant Miraclesのほうがマナ基盤に負担がかからず、《アーカムの天測儀》への依存度も低くなっています。
☆注目ポイント
現環境のトップメタがDelver系とSnowkoなので、最近はメインから《花の絨毯》を採用しているリストが散見されます。《花の絨毯》は青いデッキとのマッチアップでマナアドバンテージを得る手段となり、特にDelver系相手では《目くらまし》や《呪文貫き》といったソフトカウンターを無効化できるため重宝します。
『統率者レジェンズ』の新カードである《狡猾の宮廷》が早速採用されています。出した時点で統治者になれるのでカードドローが約束されており、次の自分のターンまで統治権を守りきれば《自然の怒りのタイタン、ウーロ》の「脱出」コストを稼ぐことができます。統治者を維持するだけで毎ターン10枚「切削」できるため、《空を放浪するもの、ヨーリオン》を「相棒」にしたデッキでもない限りこのカード自体がフィニッシャーになり得ます。
モダンのコントロールデッキで使われている《神秘の聖域》は、レガシーでも優れたカードです。除去や打ち消しを拾えることはもちろん、《終末》をライブラリートップに戻して「奇跡」を仕込めるため、デッキにフィットした土地となります。
《神秘の聖域》や《自然の怒りのタイタン、ウーロ》と相性が悪い点は気になりますが、墓地を追放する《安らかなる眠り》が採用されています。これ1枚でDelver系の《戦慄衆の秘儀術師》と《運命の神、クローティス》を同時に対策することができるのです。
総括
今年はレガシーにとってもっとも変化が多い年となりました。
『テーロス還魂記』から登場した強力なコンボデッキのキーカード《死の国からの脱出》。『イコリア:巨獣の棲処』では歴代屈指の壊れたメカニズム「相棒」が生まれ、《夢の巣のルールス》と《黎明起こし、ザーダ》が環境を席巻した結果、禁止カードの最速記録を更新することになりました。禁止改定後も《空を放浪するもの、ヨーリオン》と《深海の破滅、ジャイルーダ》を使ったデッキが環境を支配し、それは「相棒」のルール自体が変更されるまで続きました。
「相棒」のルール変更後はようやく健全さを取り戻したものの、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》と《王冠泥棒、オーコ》の2枚が支配する青の強い環境へと変化することに。しかし、『Jumpstart』から《アロサウルス飼い》、『ゼンディカーの夜明け』から《スカイクレイブの亡霊》が登場したことでElvesやDeath and Taxesといった青以外のフェアデッキが強化され、最近のレガシーは全体的にバランスが取れた環境になった印象です。近年のトレンドとして強力なカードが次々と登場する傾向にあるので、来年以降も楽しみです。
USA Legacy Express vol.175は以上になります。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!