Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2020/02/15)
アリーナオープンにシールドがやってくる!
2月21日、MTGアリーナにてアリーナオープンが開催されます。フォーマットは史上初のシールド。アリーナオープンはゲーム内通貨を現実世界の通貨に変えられる素晴らしい大会です。
私は『カルドハイム』リミテッドを遊び続け、シールドもドラフトもやりこんできました。そこで今回は本環境のシールド講座を開こうと思います。
とその前に、まずはシールドの構築理論を記した素晴らしい記事をご紹介しておきましょう。
- 2019/04/16
- シールドマスターへの道 ~パーフェクトシールドガイド~
- Pascal Vieren
そしてこちらはHareruya Prosのリミテッド巧者たちが『カルドハイム』環境に特化して解説した記事です。
- 2021/02/09
- 『カルドハイム』リミテッド入門書
- Marcio Carvalho
- 2021/01/26
- 『カルドハイム』へようこそ
- Pascal Vieren
BO1かBO3か
アリーナオープンはBO1とBO3の選択式になっています。どちらを選ぶべきでしょうか?
個人的には、マジックはBO3が好きです。特にリミテッドはそうですね。その方が楽しいというのもありますし、相手が使ってきたカードに対抗しようとする過程でサイドボードのカードに思わぬ使い方を見出していくという腕の見せ所でもあるからです。サイドボーディングは最高のボムカード対抗策であり、BO3こそ腕に自信のあるプレイヤーがその実力を発揮できる場だと確信しています。
対してBO1を選ぶべき理由として挙げられるのは、その環境でのプレイ経験が少なく、サイドボーディングで差をつけられたくない場合です。これはもっともな考えだと思います。経験不足を特に懸念するプレイヤーはBO1向きだと言えるでしょう。
どちらの方式を選ぶにしても、それぞれが独自のメタゲームを抱えていることは念頭に置いておくべきでしょう。特にBO1で注意すべきは、BO3に比べてアグロデッキと対峙する確率が高いということです。BO1では土地の数が少ないデッキでも初手補正によって土地事故が軽減されていますし、相手がサイド後にマナカーブを低くして対抗してくるというシールドのアグロにありがちな弱点を突かれないで済みます。
だからといって、BO1で当たるデッキの大半がアグロだということではありません。BO3と比べれば、当たりやすいというだけのことです。BO1もBO3も遅めの多色デッキがメタゲームを定義すると思いますが、BO1のデッキ構築で最後の1枚に悩んだときはアグロに対して有効なカードを優先する可能性を考えてみてください。
遅めの欲張りデッキが基本
『カルドハイム』のドラフトで最強のアーキタイプは多色デッキであり、これまでの経験から考えるとシールドではその強さが一層増します。
こういった状況の背景にあるのは、《多元宇宙の警告》や《サルーフの群友》などのトップコモンに比べ、次点のコモンとの間にはカードパワーに大きな差がみられることです。そのため、デッキパワーの中心にあるのはアンコモンやレアであり、3色以上で構成することでシールドプールにあるすべてのアンコモン・レアを使えるようにするのです。
『カルドハイム』のさらなる特徴として、「予顕」によって序盤のマナを無駄なく使うことができ、多色土地がコモン収録されていることによって多色化しやすいことが挙げられます。
これは一般的なシールド理論と見事に合致します。シールドとはプールにあるボムを余すことなく使いたいものですからね。
そのため、『カルドハイム』シールドでは多色かつロングゲームを目指した構成になることがほとんどのはずです。相手は普段よりもボムが多いと覚悟しておきましょう。
パックを開封して真っ先に確認するのは、ボムと色マナサポートです。多色土地や《煌積の谷間》《輝く霜》が多いといいプールです。色マナサポートが豊富なら強力なカードを全部使えるでしょうからね。
ドラフトとシールドの多色デッキでひとつ大きく異なるのは、氷雪マナの数です。シールドの場合、メインカラーの冠雪土地がパックから出ないことが考えられ、氷雪関連のカードを使えるかどうかに大きく影響してきます。そういった意味で、《輝く霜》はよくある3マナのマナ加速エンチャントに比べて圧倒的に価値が高いカードだと言えます。
プールに冠雪土地が4枚しかなくても、《雪崩呼び》は採用に値するカードです。他方、《北方の先導》などに代表されるマナカーブ通りに展開することが期待されるカードは思うほど機能しません。冠雪土地が少ないときは本当に採用する価値があるのか再検討すべきでしょう。
いくら環境がロングゲームに傾いているとはいえ、マナカーブを完全に無視していいということではありません。ひとつ目の付け所として覚えておくべきは、「予顕」カードが3ターン目に唱えられるかどうかです。もし唱えられるのであれば、それは序盤の呪文としてカウントしていいでしょう。私は3ターン目までの呪文を少なくとも8枚は入れるようにしています。
これは他の環境にも言えることですが、序盤のアクションとなりつつ中盤以降でも役割が持てるカードは貴重です。『カルドハイム』では《地平の探求者》や《タスケーリの火歩き》などが該当し、デッキ構築の指針となってくれるでしょう。
アグロデッキの組み方
シールドプールにボムや強い除去がなかった場合によく採られる手法として、マナカーブの低いアグロを組むというものがあります。しかし、『カルドハイム』ではこれが通用しないと私は考えています。その理由は「予顕」です。低いマナカーブのアグロデッキは序盤の動きが鈍いデッキを狩ろうとするものですが、「予顕」がある環境では3ターン目までにまともなプレイをしなかったり、終盤になって呪文を連打しなかったりということはあまり考えられません。
『カルドハイム』環境でアグロが戦っていくには、シールドプールに特定のカードがあることが求められます。マナカーブ通りに動いていくだけでは勝てないため、強力なコンバットトリック・豊富な除去・装備品のいずれかが必要となります。
《猛り狂い》
非常に重要なコンバットトリックですが、プール内に4/4ぐらいのサイズのクリーチャーが数枚なければなりません。ゲームプランが小型の飛行クリーチャーで殴っていくものであれば、《猛り狂い》はそこまで強くありませんからね。
《ケイヤの猛攻》《ドワーフの鎚》
この2枚のアンコモンはアグロにとって一級品のカードであり、《猛り狂い》との相性も良好です。ここまでに挙げた3種のカードが複数枚あれば、アグロを構築する動機が強くなります。
《アクスガルドの騎兵》
環境には代替となる2マナ域が多くいますが、《臆病な大男》がいることから《アクスガルドの騎兵》はひと際目立つ存在です。
《金脈のつるはし》
+1/+1修正は、3/2のアタッカーをタフネス4のブロッカーに対して攻撃できるようにしてくれます。さらなるメリットとして、宝物トークンのマナを使うことで《戦乙女の剣》や《アクスガルドの武器庫》を筆頭とした終盤戦で効果的なカードを使いやすくなったり、単純に5マナ域を1ターン早く出せたりします。
《金脈のつるはし》は小型/飛行クリーチャーと相性が良いという意味で、《猛り狂い》の逆を行くカードだと捉えられます。とはいえ、小型クリーチャーと大型クリーチャーを共存させることが通常でしょうから、両者を併用することは問題ありません。宝物トークンをマナ加速として運用すれば、小型と大型のクリーチャーの架け橋となってくれることでしょう。
《葬送の長艇》
デッキに“入れたくない”カードの一例です。マナコストが低いアタッカーであり、搭乗コストも軽いため、アグロ戦略に合致しているようにも思えます。ですが、3/3というサイズはこの環境では通用しないというのが現実です。《葬送の長艇》を入れるぐらいならば、3マナ域を増やした方がいいでしょう。
八方ふさがりだったら……?
もしボムもなく、アグロを組むカードもなかったら……どうしましょう?
そういったプールを引いた場合、私ならば定石を外れて大型のクリーチャーを最大限に詰め込み、土地を多めに入れた構成にします。先ほど3ターン目までのアクションは最低8枚だと書きましたが、構成を重めにする代償としてその基準を度外視することになります。
この戦略を採用するのであれば、あらゆる4/4以上のサイズのクリーチャーが重要になります。序盤に猛攻にあわないことを祈り、こちらが突きつける巨獣たちに貴重な除去を使わせていくことで相手のカードを尽きさせるプランです。重要なのは、盤面にインパクトを与えるカードだけでデッキを構成することであり、ブロッカーを前に物怖じするクリーチャーは要りません。
加えて、遅いデッキと戦うためのツールも何枚か用意せねばなりません。そこで出番が回ってくるのが《頭蓋の奇襲》《村の儀式》《軽蔑的な一撃》です。特別強くなくても2:1交換が期待できるものを使い、打ち消し呪文を採用し、基本的に盤面は大型クリーチャーに支えてもらって立ち行かないときだけ除去を使う。これが基本戦略です。
《カーフェルの犬舎主》
本体も大型でありながら、他の大型クリーチャーをダブルブロックで討ち取られないようにしてくれます。ゲームプランに合っているカードですね。
《燃え心臓の巨人》
7マナと重いですが、軽視してはなりません。3:1交換も期待できるほどのクリーチャーです。土地を18~19枚にするのであれば、これぐらいのリスクは背負っていくべきでしょう。
《鴉の翼》
たいていのプールでは平凡なカードですが、弱いカードばかりのときは頼みの綱になります。これ自体がゲームプランになってくれますからね。あらゆるクリーチャーが盤面に影響を与えてほしいというときに、《鴉の翼》はそれを約束してくれる装備品です。
過小評価されているカード
《軽蔑的な一撃》
過去の環境とは違って必ずしもテンポが大きく得られるわけではありませんが、シールドではボムに対抗できるという点で大きな価値があります。
《世界樹への道》
この環境でやりたいことのすべてが詰まっています。色マナサポートであり、ロングゲーム向けの効果を持っているのです。
アンコモン土地サイクル
この環境はマナフラッド受けが不足しているため、起動コストが重いとはいえ、アンコモン土地は貴重です。これらの土地があれば、土地を18枚にしても安心できます。
《巨大雄牛》 + 《巨大な鋤》
《貪欲なリンドワーム》
現実的なマナコストでありながら最大級のサイズ。シールドでは大活躍のクリーチャーですね。
《壊れた翼》
《壊れた翼》と《仮面の蛮人》は必ずメインデッキに入れています。この環境のボムにはアーティファクトであるものが含まれており、そういった相手の切り札を1枚のコモンで対処できれば儲けものです。利点はそれだけでなく、《金への捕縛》《輝く霜》《鴉の翼》といった採用率の高いコモンも対応できる範囲内にあります。ただ、《神聖の発動》は飛行クリーチャーを対処できないため悩ましいところですが、サイドボードに置いておくことが多いですね。
《ハギの群れ》
サイズの大きいクリーチャーはシールドにおいて価値が高く、《猛り狂い》と《アクスガルドの騎兵》を擁する赤においてはその傾向が一層強まります。
《ノットヴォルドのイトグモ》
シールドのメタゲームに合っている1枚で、ドラフト時の印象とは打って変わります。遅いデッキが事故を起こしているときには4点のクロックをかけ、そうでないときは除去を飛行クリーチャーに打たずに温存させてくれます。
《頭蓋の奇襲》
シールドで肝となるのは小さなアドバンテージを積み重ねることです。黒がベースのデッキなら《頭蓋の奇襲》はあるだけ入れます。
《神聖なる計略》
相手の切り札をさばけるため、シールドでは強い除去です。序盤から打たされることはめったにないでしょう。
《ヤスペラの歩哨》
過去の類似カードはプレイアブルではありませんでしたが、《ヤスペラの歩哨》に関しては評価が異なっています。色マナサポートが少なく、自然と2~3マナ域のクリーチャーを多く採用するのであれば、喜んで《ヤスペラの歩哨》を組み込みます。常に一定の評価をするのではなく、自分のデッキに求められているものかどうかを評価してみてください。
過大評価されているカード
《北方の先導》《隆盛するスピリット》
氷雪マナを多く要求したり、マナカーブ通りに氷雪マナを必要とするカードは、みなさんが思うよりもおそらく弱いです。《北方の先導》は序盤のアクションの必要性からプレイアブルになりますが、使う色を決める際にボムだと考えない方がいいでしょう。《氷皮のトロール》も似た論理をたどりますが、終盤になって盤面を支配することがあるので、氷雪マナが少なくてもデッキに入れるだけの価値があります。
《くすねる鷹》
ルーター効果はたいていシールドで重宝しますが、《くすねる鷹》には毎回がっかりさせられます。サイズは物足りませんし、多色デッキを使っているときは土地を捨てていい場面が少ないのです。
《巧みな軍略》
勝敗がライブラリーアウトで決まることもあるため、ライブラリーを切削するとよく自分の首を絞めることになります。また、「予顕」がある環境で唱えるタイミングがないのも減点対象です。
《星界の翼》《傑士の武勇》
《葬送の長艇》と並び、この2枚もアグロでハマってはいけない罠です。あまりにも効果が小さく、有効活用できません。採用しやすい《拷問者の兜》や《金脈のつるはし》が同様の効果を毎ターン得られるにもかかわらず、この2枚は使いまわしのきかないパワー+1修正です。
《ドゥームスカールの神託者》
テキストが多いので何やら強そうに見えますが、セット内に存在するほかの3/2と変わりありません。
《ドワーフの援軍》
2/1というサイズは心もとなく、トークンを並べる効果を詰め込んでも必ずしもいいアグロデッキになるとは限りません。そういった構成を肯定するには、クリーチャーの横並びを活かせるカードが多く求められますが、シールドでは現実的ではありません。《戦場の猛禽》にも同じことが言えます。
まとめ
ルーカス・エスペル・ベルサウド (Twitter)