Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2021/03/05)
はじめに
みなさん、こんにちは。リー・シー・ティエン/Lee Shi Tianです。
先週末のリーグ・ウィークエンドでは8勝3敗を達成しました。今回はそのときに使用した4色サイクリングについてお話しようと思います。『イコリア:巨獣の棲処』の発売から存在していたデッキですから、デッキ自体はご存じの方も多いことでしょう。
しかし、なぜ今になって4色サイクリングに回帰し、リーグ・ウィークエンドに持ち込んだのでしょうか?
シンプルなデッキ
先週末のリーグ・ウィークエンドで最多勝のプレイヤーにはなれませんでしたが、ここまで良い結果で終われたのは初めてのことでした。
今シーズン、私の頭を悩ませてきたのはデッキ選択ではなく、体調管理でした。時差の関係で深夜から対戦が始まるのですが、これが困難を極めたのです。なんと午前3時以降の勝率は3割未満。信じられないようなプレイを繰り返し、何度も時間切れになりました。
前回のリーグ・ウィークエンドではディミーアローグを持ち込みましたが、プレイングが難しく、深夜の私にとっては選択肢が多すぎるデッキでした。真夜中に世界の強豪相手に最適な判断を下すことは当時の私の体調には明らかに無理なことだったのです。
また、マッチの終了までに時間をかけてしまうと、次のマッチが瞬く間に始まってしまい、休む暇もあまりありません。泣きっ面に蜂状態でした。
その点、サイクリングデッキは比較的わかりやすいデッキです。悩ましい判断といえば、マリガンをするべきか、どの脅威を展開するのか、ぐらいなものです。それ以外は全てのマナを使って「サイクリング」して、《天頂の閃光》を放つだけです。
『カルドハイム』で何が変わったのか
まずは私のデッキリストをご覧いただきましょう。
『カルドハイム』からの新カードが何枚入っているか数えてみてください。
《連門の小道》4枚と《荒廃踏みの小道》1枚しかありません。たったの5枚です。ほとんど変わってないじゃないかと思うかもしれませんが、その影響を見くびってはいけません。《連門の小道》は、《型破りな協力》を運用できるマナ基盤を構築し、新たな勝ち筋を生み出しました。
《繁栄の狐》を4枚採用する以上、どれだけ低く見積もっても1ターン目にアンタップインする白マナ土地は10枚必要です。以前は《平地》を多く採用していたため、イゼットカラーのカードを2~3ターン目に安定して唱えることは困難でした。《連門の小道》は白と青の2つの側面を持つ色マナ源であり、《型破りな協力》を唱えられるマナベースを実現したのです。
4色サイクリングにとって悩みの種だったのは、クリーチャー除去満載の相手でした。そこに別軸の攻め方を加えたのが《型破りな協力》です。このエンチャントは単体除去をものともしません。今の4色サイクリングは《繁栄の狐》だけでなく《型破りな協力》からもスタートできます。相手からすれば、こちらの脅威に適した解答を用意することが困難になったのです。
メインデッキには《切り裂かれた帆》を2枚投入しています。これは採用率の高い《エンバレスの宝剣》《グレートヘンジ》《スカイクレイブの大鎚》《エシカの戦車》《黄金架のドラゴン》といったカードに対処する狙いです。我ながら悪い選択ではないと思いますね。
ゲームプラン
先ほどお伝えしたように、このデッキは扱いやすいです。唱えるべき呪文は多くありません。唱えたいのは《繁栄の狐》《ドラニスの刺突者》《雄々しい救出者》《型破りな協力》です。
「サイクリング」呪文が多いので、いずれ相手の除去が枯渇し、こちらの脅威が1~2つ残るのが普通です。そして「サイクリング」してアドバンテージを発生させながら、隙を狙って相手のライフを多少削っておき、《天頂の閃光》で幕を引きます。
サイドボードプラン
サイドボードプランも比較的簡単です。基本的に「サイクリング」呪文を何枚か抜いて、インパクトの大きいカードをサイドインします。
ただし、「サイクリング」を持たないカードは12枚以下にするようにしましょう。勝ち筋となるカードは「サイクリング」というメカニズムなしでは機能しないため、サイド後も不純物が混ざりすぎないようにするのです。
どの「サイクリング」呪文をサイドアウトするのか迷ったときは、実際に唱える可能性が低いカードはどれか?と考えてみてください。たとえば対アグロだったら《記憶漏出》をでしょうし、コントロール相手には《踏み穴のクレーター》や《ドラニスの癒し手》をサイドアウトするでしょう。
土地1枚の初手
このデッキを使うにあたって知っておいてもらいたいのは、土地が1枚しかない初手もキープし得るということです。土地が少なく、軽いコストで「サイクリング」できる呪文が多いデッキですから、土地1枚でもキープすることは少なくありません。今回のリーグ・ウィークエンド全体を通して5回以上はそういった手札をキープしたはずです。もちろん狙い通りに上手くいくこともあれば、そうでないこともあります。
リーグ・ウィークエンドからいくつか実例を見てみましょう。
2回戦
これはシャハール・シェンハー/Shahar Shenharとの一戦です。ナヤアドベンチャーに対して、私はこの初手をキープしました。サイドボードにピン挿ししてあった《空の粉砕》があったからです。
このカードはゲームプランを立てられるカードでした。また、《切り裂かれた帆》も2枚あったため、カードアドバンテージ源である《グレートヘンジ》にも介入できる可能性があったのです。
そしてどうなったか。相手のターンに《グレートヘンジ》を破壊し、返しのターンで画像のように盤面を一掃しました。描いていたプランが見事にハマったのです。
4回戦
こちらはアブザンコントロールを持ち込んだガブリエル・ナシフ/Gabriel Nassifとのマッチ。この手札もキープしましたが、その理由は《型破りな協力》にありました。除去に偏重したデッキに対して最高の勝ち筋です。
結局《古き神々への拘束》で破壊されてしまったので、今回は狙い通りには行きませんでしたけどね。
これは3ゲーム目の初手です。今回キープした理由は、先手で《繁栄の狐》が2枚あったからです。土地をあと1枚引ければ、4ターン目に勝てる可能性があります。
残念ながら2枚目の土地を引いたときは”時すでに遅し”で、マッチを落とす結果になりました。
計算上では、ドローするたびに土地がヒットする確率は約35%です。2枚ドローだったら土地が1枚引ける確率は55%以上、3枚ドローならば70%以上です。
この記事でみなさんに一番伝えたいことは、リスクある初手をキープしたときにその結末だけを見ないようにして欲しいということです。これは土地が19枚しかなく、1マナの「サイクリング」呪文が28枚含まれている4色サイクリングに特に言えることです。上記のような土地1枚の初手が来ることは頻繁にあります。このデッキを使うのであれば、こういったリスクを踏まえた判断に立ち向かわなくてはなりません。ライブラリーの上から3~5枚に土地がどれだけあるかを知る術はないのです。
もちろんその賭けに負ければ気分が落ち込んだり、ツイてないなと思ったりするでしょう。ですが、自分なりに理由を持てるのであれば、リスクがあったとしても可能性を秘めている手札をキープしていきましょう。
おわりに
今回お伝えしたかったことは以上になります。もっと上手くプレイできたシーンは間違いなくあったでしょうし、そうしていればリーグ内の順位をさらに上げられたかもしれません。とはいえ、自分なりに考えて行ったデッキ選択や、リーグ・ウィークエンド全体を通してのプレイングには満足しています。
今シーズンは前途多難です。今回平均以上の戦績をあげたにもかかわらず、ライバルズリーグ降格ゾーンから抜け出すあと一歩のところにいます。人生とは、知恵をつけ、困難を超えていく旅路であり、私は今それをやろうとしている道半ばにいます。
今回の記事でお伝えしたことがみなさんにとって何か発見になれば幸いです。ではまた次回お会いしましょう!