モダンでコントロールの灯は消えていない

Immanuel Gerschenson

Translated by Kohei Kido

原文はこちら
(掲載日 2020/03/09)

はじめに

やぁみんな!

最近モダンにすごいことが起きたね。知らない人がいたらいけないから一応説明しておこう。《猿人の指導霊》《自然の怒りのタイタン、ウーロ》《ティボルトの計略》《神秘の聖域》《死者の原野》、これらのカードが全て禁止された。「続唱」もキーワードの文面が改訂されて「続唱」を持つ呪文以上のマナコストの呪文は唱えられなくなった。

禁止後のモダンについていろいろ語ろうかとも思ったけど、マッティ・クイスマ/Matti Kuismaが既にいい記事を書いてくれてるね。

自然の怒りのタイタン、ウーロ神秘の聖域死者の原野

直近の禁止カードを見ると《自然の怒りのタイタン、ウーロ》《神秘の聖域》《死者の原野》の3人衆がいることに気付くと思う。3人そろってコントロールデッキで使われていた連中で支配的なデッキだった。あまりに強くて、この型のデッキのバリエーションの中から好きなデッキを選ぶか、そうでなければウーロコントロールを倒せると思ったデッキを使って、結果的に撃破に失敗するか、この2つしか選択肢はなかった。

新生モダンのコントロールデッキを求めて

ついに連中がいなくなってモダンはコントロールの支配から解放された。かみ砕いて言えば、もっといろんなデッキを使うことが許されるようになった。それでもコントロールデッキはモダンの一角にはまだ存在しているし、禁止で消滅したわけではない。

メタゲームが固まったときにこそ、コントロールデッキは最高の力を発揮できる。コントロールデッキを構築するときには、通常なら特定のメタゲームに対して解答を用意するが、メタ外に関しては対処しにくいものだからだ。極端な例で考えてみると、トロン25%タップアウトコントロール25%ドレッジ25%ジャンド25%の環境について考えてみよう。《流刑への道》はメインデッキに4枚必要かい?メインデッキに《安らかなる眠り》を入れてタップアウトコントロール型にするか、それとも《安らかなる眠り》は少しだけにしておいて《血染めの月》をタッチしつつ打ち消し呪文を大量に入れてみようか?

ゴブリンの先達ワームとぐろエンジン瞬唱の魔道士太陽冠のヘリオッド
臭い草のインプ原始のタイタン巨像の鎚エルドラージの寺院

この例では4つしかデッキが存在していなかったけど、デッキ構築について考えられることはたくさんある。ではデッキが20以上あるメタゲームはどうだろう?今のモダンはそれだ。

数行上でコントロールデッキはメタゲームが固まっているときに最大の力を発揮すると言ったね。現状はそれとは程遠い。さまざまな方向性のデッキに対処できるようにコントロールデッキを構築することはできるだろうか?僕の答えは「できるかもしれない」というものだ。

僕が最近使っていたデッキのひとつを見れば、なぜさっきの答えが「はい」でも「いいえ」でもなかったのかがわかるだろう。

ジェスカイコントロール

クリックして拡大

見てわかるように、このデッキはアゾリウスコントロールに赤をタッチして追加の除去とサイドボードに《血染めの月》を採用したものだ。ヘリオッドを使うデッキやジャンド、石鍛冶デッキには共通の要素がある。除去で対処できるんだ。相手の1~2マナクリーチャーに《流刑への道》を使わざるを得なくなるのはあまり気分がいいものではないし、どうせ除去はたくさん欲しいんだから古き良き《稲妻》を採用することにした。黒をタッチして《致命的な一押し》にすることもできたけど、《稲妻》の方が柔軟性に富む。プレインズウォーカーに使用したり、《瞬唱の魔道士》と絡めてプレイヤーに使って少し積極的に攻めることもできるしね。

多元宇宙の警告大魔導師の魔除け

少なくとも理論としてはそういうデッキを組んだ。《多元宇宙の警告》も新たなカードアドバンテージ源として試したけど、結果的には《大魔導師の魔除け》よりも弱いだけだった。《多元宇宙の警告》はデッキから抜いて4枚目の《稲妻》と追加の《大魔導師の魔除け》にして、さらにプレイを重ねた。

血染めの月安らかなる眠りレンと六番

デッキと共にModern PreliminaryやModern Leagueを何回か走ってみたけど、結果的には理論上でしか機能しないデッキだった。このデッキの問題は、ソリティアをしているかのようにこちらを無視して自分のゲームプランを遂行しようとするタイプのデッキには勝てないことだった。《血染めの月》《安らかなる眠り》が使えても、それでもトロンやドレッジに捕食されてしまう。クリーチャー中心のデッキに対しては分がいい。でもプレイミス1個でかなり劣勢になるし、《レンと六番》やカード間のシナジーを活かして相手が動くと追いつけなくなる。

ティムールスケープシフト

僕はあきらめるつもりはなかった。コントロールデッキへの僕の愛を歌い続けるつもりだったから、他のアプローチを試すことにした。トロンやドレッジに対して勝利するには何か早い勝利手段が必要だ。長引けば負けるからね。突然相手に敗北を突きつけられるようなコントロールデッキはあるだろうか?

風景の変容

モダンには唱えた瞬間勝利が確定するようなカードが存在している。勝利できる状態になるまで時間が少しばかりかかるだけだ。モダンのカードプールを見渡してみると、《風景の変容》はコントロールデッキの中核に組むカードとして魅力的に見えたね。

溶鉄の尖峰、ヴァラクート 山ケトリアのトライオームケトリアのトライオーム
蒸気孔蒸気孔踏み鳴らされる地

《風景の変容》コンボ(スケープシフトコンボ)がどういうものか知らない人のために一応説明しておこう。相手のライフが18以下なら土地は7枚場に出ている必要がある。《風景の変容》を唱えて、《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》1枚と山の基本土地タイプを持つ土地を6枚持ってくる。そうすると《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》がが6回誘発するね。相手のライフが18よりも多ければ土地は8枚以上必要になるけど、《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》と山の基本土地タイプを持つ土地を増やして同じことをするだけだ。

実際に試してみた。これが調整初期の僕の《風景の変容》デッキだ。

クリックして拡大

マナ漏出差し戻しレンと六番

このデッキリストは《マナ漏出》の代わりに《差し戻し》を採用している。自らのコンボパーツかもう1ターン稼げる打ち消しを引いてくればいいだけだからね。《レンと六番》はたまに単独で勝利につながるカードだからデッキに入れている。土地を供給してくれるし、《ケトリアのトライオーム》を手札に戻してカードも引ける。1つめの忠誠度能力だけでそれができて、2つめはクリーチャー中心のデッキに対して助けになる。最後の奥義と呼ばれることもある忠誠度能力はその場で勝ったも同然だ。呪文が尽きなくなるからね。

厚かましい借り手瞬唱の魔道士謎めいた命令

想定していないデッキに対処するために《厚かましい借り手》を採用している。時間稼ぎもしてくれるし、クロックとして勝利手段にすることもできる。《稲妻》を相手プレイヤー対象に唱えて、《瞬唱の魔道士》でもう1回《稲妻》を相手プレイヤー対象に唱えて、《厚かましい借り手》を出してクリーチャーで攻撃するというビートダウンで勝利することもたまにある。このデッキの《謎めいた命令》は最高だね。コンボとも合っているし、ビートダウンとも合っている。フェッチランドで山を場に出してデッキ内の山の枚数を減らすことも恐れる必要はない。土地を出し続けるだけで勝つかもしれないからね。

もっとデッキを回した結果、単体除去がもっと必要で、ドローソースを増やしても役に立つことがあるだろうという結論を得た。(カードを引くのが嫌いな人なんていないだろう?)

これが僕の最新《風景の変容》デッキだ。

クリックして拡大

噴出の稲妻四肢切断

悲しいことに、ティムールカラーで使える《稲妻》の次に強い単体除去は《噴出の稲妻》だ。《四肢切断》も考えたけど、ライフを支払うのが痛すぎる。1マナの《ショック》系カードはどれもドングリの背比べだ。

このデッキは使っていて楽しいし、まだ発展途上だからなにかいい案を思いついたら教えてくれ!まだこのデッキの調整を続けるつもりだ。《謎めいた命令》を使い足りない気分だからね。

おわりに

無限への突入

モダンはすっかり新しいフォーマットになったかのようで、無限の可能性を感じる。最近告知されたカードの禁止に感謝だね。いいコントロールデッキを組むために試すことができるけどまだ試してもいない選択肢はまだまだあると思うよ。とにかくいろいろ試す時期だ。

今日はここまで、また次回会おう!

イマニュエル・ゲルシェンソン(Twitter)

この記事内で掲載されたカード

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

Immanuel Gerschenson イマニュエルは構築戦を得意とするプレイヤーで、グランプリ・マドリード2014 (モダン)、そしてグランプリ・セビリア2015 (スタンダード) という2つの大会で頂点をつかみ取った、オーストリア屈指の実力派。 プロツアー『イクサランの相克』ではサイドに《遅延》を採用した独特のトラバース・シャドウを手に、構築ラウンドを9勝1敗で駆け抜け14位に入賞。さらにオーストリア選手権2018では準優勝に輝き、オーストリア代表の座を手にするとともに、ゴールドレベルを手中におさめた。 Immanuel Gerschensonの記事はこちら