Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2021/04/12)
入学準備
やぁみんな!
『ストリクスヘイヴン:魔法学院』がもうそろそろ発売されるね!今日は一足先に新カードの第一印象を伝えよう。実際に使ってみる前にカードを評価するのはいつだって難しいことだけど、同時にワクワクすることでもあるね。
セット全体の印象
今のスタンダードにある一部のセットに比べると『ストリクスヘイヴン:魔法学院』は比較的抑えめのカードパワーになっていそうだ。別に批判しているわけじゃなくて、これは喜ばしいことだと思う。だって『エルドレインの王権』の再来をみんな望んでないだろう?
ただ、抑えめのカードパワーだけに構築向けのカードを見分けるのは難しい。《王冠泥棒、オーコ》とか《創造の座、オムナス》みたいな強すぎるカードが見当たらないからね。
同時にこれは『ストリクスヘイヴン』の与える影響が限定的になることを示唆している。《エンバレスの宝剣》デッキが突然スタンダードからいなくなるなんてことは考えづらいしね。だけど新興勢力となるアーキタイプが少しも出てこないと思っているわけじゃない。
「講義」は構築向けじゃないだろう。サイドボードの枠は余裕がないことが普通だし、メカニズム自体も苦労して平凡な効果を得るだけに見える。リミテッドでは最高のメカニズムだろうけどね。
ミスティカルアーカイブについても言及しておこう。ミスティカルアーカイブは歴代のインスタント・ソーサリーを特別イラストで収録したもので、『ストリクスヘイヴン』のパックから出現する。これらのカードはもともと使用が許されていたフォーマットでしか使えない。ただ、唯一例外なのがヒストリックだ。
ミスティカルアーカイブによってヒストリックは全く新しいフォーマットだと思えるほど劇的に変化するだろうと確信している。それだけのカードパワーが《渦まく知識》や《信仰無き物あさり》にはあるんだ。
カードの個別評価
じゃあミスティカルアーカイブ以外はどうだろうか。個人的に将来性がありそうだと思うカードを見ていくことにしよう!
白
《賢い光術師》
『ストリクスヘイヴン』のほとんどのカードはスタンダードだけで使われるものだろうけど、《賢い光術師》は下のフォーマットに飛び級できるパワーを持っている。《煙霧の連鎖》と組み合わせれば2ターンキルができるし、そうでなくても軽い呪文や《変異原性の成長》みたいなファイレクシア呪文ととても相性が良い。
《煙霧の連鎖》の対象を自分にとることで無限にコピーし、「魔技」を無限に誘発させる
《賢い光術師》の最大の弱点は、白が青や赤ほど軽い呪文に恵まれていないことだ。これが災いして《損魂魔道士》や《僧院の速槍》ほど活躍できない可能性は考えられるね。
《レオニンの光写し》
《レオニンの光写し》はカードパワーが高いし、《クラリオンのスピリット》や《スカルドの決戦》を使うスタンダードのナヤ/ボロスと相性が良さそうだ。《恋煩いの野獣》や《砕骨の巨人》といった「出来事」カードとも良いコンビになれそうだから、攻めっ気を強くする構成なら《フェリダーの撤退》よりも良いかもしれないね。
《精鋭呪文縛り》
パウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ/Paulo Vitor damo da Rosaが描かれたカードがとうとう収録された。これはかなりいいデザインだね!その効果は類を見ないものだけど、《ヴェンディリオン三人衆》っぽい感じがするからそれだけでも強そうな気がするよ。
《精鋭呪文縛り》の一番の強みは大きな損をしづらい点だ。仮に1マナの呪文で除去されたとしても、マナの面でもカードアドバンテージの面でも等価交換になり、それ以上悪い結果に転ぶことはない。白のクリーチャーを運用するスタンダードのデッキであれば、たいてい《精鋭呪文縛り》と《スカイクレイブの亡霊》を一緒に使うんじゃないかな。
《精鋭呪文縛り》は《霊気の薬瓶》のある下環境でも使われるかもしれない。良いスタッツを持った人間クリーチャーだから、《スレイベンの守護者、サリア》の後続としてピッタリだ。
《壊滅の熟達》
《次元の浄化》系のカードは過去にもいくつかあったけど、《壊滅の熟達》は状況に応じてモードを使い分けられるのが利点だ。この系統の呪文はマナコストの要求が厳しいだけでなく、《ガラスの棺》のように戦場に残ってしまう白の除去とかみ合わせが悪いのが大きな弱点になっている。白マナを4つ払って唱えられるのかも疑問だ。
ただ、上手くいけば《出現の根本原理》で唱えられた2枚をリセットすることができる。《古き神々への拘束》デッキでも使われるほどの力があるのかは興味あるね。
青
《複数の選択》
《複数の選択》はかなり柔軟性があるね。どのモードも最強の効果とは言えないが、どんな相手に対しても腐らないことが約束されている。選択肢の多さはカードの強さであり、テンポが重要でバウンスモードも上手く使えるデッキで使われると思う。たとえばディミーアローグなんかどうだろう。
あるいはスゥルタイ根本原理でもマナカーブを埋める役割を期待して使われるかもしれない。バウンスモードで盤面に触れるし、《出現の根本原理》を探すこともできる。もう一声欲しいカードであるとは思うけど、デザインは素晴らしいし、リリースされたらすぐに試したいね!
黒
《悪意の打ちつけ》
《悪意の打ちつけ》は必ずしも《見栄え損ない》の上位互換とは言えないけど、《夢の巣のルールス》で回収しない前提なら《死の重み》よりも使い勝手がいい。展開を見届けたうえでマナの使い道を考えられるから、インスタントスピードであるのは極めて重要なんだ。スゥルタイ根本原理みたいにアグロに対して《無情な行動》や《取り除き》をサイドインしていたデッキは、マナカーブを低くするために《悪意の打ちつけ》をその枠に入れるかもしれないね。
《セッジムーアの魔女》
《セッジムーアの魔女》はマナコストに対して強い能力を持っている。メタゲーム次第で使用率は変わりそうだけど、合うデッキが見つかれば多めの枚数で採用されるタイプだろう。《セッジムーアの魔女》には全く新しいアーキタイプを生み出すほどのパワーはないと思うが、相手のライフを狙うデッキならば3マナ以上の価値を与えてくれるはずだ。
《無神経な血魔道士》
《ファイレクシアの憤怒鬼》は壊れカードではない。だけど《空を放浪するもの、ヨーリオン》の「明滅」で再利用できたり、ディミーアローグの弱点である墓地追放できたりするから、《無神経な血魔道士》はさまざまデッキでみることになりそうだ。
《悪意の熟達》
《悪意の熟達》は柔軟性に富んでいて、新環境の《ヴラスカの侮辱》になると予想している。同じぐらいのカードパワーだからね。除去という点で考えればライフの2点回復が重要だけど、《悪意の熟達》はマナコストの面で優れている。プレインズウォーカーを唱えた返しのターンに《エンバレスの宝剣》を装備したクリーチャーを除去できる可能性があるのはかなり頼もしい。デフォルトのモードである4マナ単体除去が通用する環境であれば《悪意の熟達》はとても良い選択肢だろう。
赤
《炎巻物の祝賀者》
《炎巻物の祝賀者》は《スカルドの決戦》入りのアグロでかなり強いんじゃないだろうか。2ターン目に出しても良いし、終盤になってもその起動型能力でパワーを引き上げたり《静寂の享楽》のモードで使ったりと使い道がある。
これまでボロスカラーのアグロデッキは盤面を作るのが上手くても全体除去や《出現の根本原理》への対応が苦手だった。《静寂の享楽》は《影の評決》などをキャストさせない手段でありながら、《炎巻物の祝賀者》のモードによって腐ることはないカードだ。ボロス(+タッチ1色)のデッキの立ち位置を変え得る1枚だろう。
緑
《龍護りの精鋭》
スタンダードで頻繁に見かけることはないだろうけど、モダンやヒストリックで多少使われるかもしれない。キャントリップととても相性が良いんだ。めったに使うことはないかもしれないが、6マナの能力も侮れない。この手のカードは終盤の終盤に引いたときに弱いという問題点があったけど、マナさえあれば《龍護りの精鋭》は無価値なカードにならないんだ。
多色
《シルバークイルの口封じ》
《シルバークイルの口封じ》は《翻弄する魔道士》ほどではないけど、人間デッキで併用されるんじゃないかと思うよ。2マナでパワー3を持っているという点に興味を惹かれるデッキだろうからね。
《消失の詩句》
《消失の詩句》はかなり強い除去だろう。最大の弱点は多色であることだけど、それが強さを物語っているとも言える。《エンバレスの宝剣》や《グレートヘンジ》といったスタンダードの高マナ域のカードをまとめて対応できるね。これ1枚だけでもタッチを肯定できるほどだろう。
しかしその強さゆえに自分の首を絞めてしまうかもしれない。《消失の詩句》がスタンダードにおける標準の除去になれば、《星界の大蛇、コーマ》などの多色カードが名乗りを上げるだろうからね。
《侮辱》
《侮辱》は《思考消去》よりも少し弱いぐらいかな。逆に言えば、この色拘束をクリアできて一定数のクリーチャーがいるデッキなら《苦悶の悔恨》よりも明確に強く使えると言える。《侮辱》は《消失の詩句》とコンビを組んでスタンダード界の強力な妨害パッケージになるかもね。
《断固たる否定》
これもまたモードを持つ器用なカードだね。超強いとは言えないけど、ほとんどのマッチアップで確かな活躍が期待できる。除去でありながらスタック上の呪文に介入できるから、ティムールアドベンチャーに上手くフィットするんじゃないかな。1枚のカードで《エッジウォールの亭主》の除去も《出現の根本原理》のカウンターもできるんだから良さそうに思えるね!
《表現の反復》
《表現の反復》は《予期》や《予言》の強化版であり、呪文ベースのデッキを実現させてくれるかもしれないね。こういうカードがあるかないかでデッキとして成り立つかどうかが決まることも多いんだ。カードパワーは高いけど、必ずしも《物語への没入》より強いとは言えないだろうね。
土地
多色土地
最後になったけど、これを忘れちゃいけない。『イニストラードを覆う影』の多色土地がとうとう全色揃った!
《河川滑りの小道》などの「小道」サイクルと比べると、基本的に『ストリクスヘイヴン』の多色土地のほうが弱いだろうけど、ある程度は使われると思うよ。具体的に言うと、今回の多色土地を使える2色デッキを組む理由ができた。これまでは3色よりも2色のマナベースが組みやすいとは言えない状況にあったからね。イゼットなんかは《表現の反復》がキャストしやすくなるから《凍沸の交錯》の加入を喜ぶかもしれない。
というわけで、個人的に注目している『ストリクスヘイヴン:魔法学院』のカードを紹介してきた。早く新しいカード使って遊びたいね!今回も読んでくれてありがとう!