Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2021/04/20)
はじめに
オンライン上では『ストリクスヘイヴン:魔法学院』が数日前に実装されました。ここ2年の異常なセットと比べればかなりカードパワーは低いと感じますが、それでもモダンで散見されることになりそうな面白いカードはいくつかあります。
この記事では、私が特に魅力的だと感じるカードを詳しく見ていくことにしましょう。
モダン期待のカード:前編
《シルバークイルの口封じ》
人間デッキの新しい選択肢。人間デッキのメタゲーム占有率はどんどん低下しています。このデッキはクロックをかけると同時にコンボを妨害することを得意としてきましたが、全てのコンボデッキが禁止されている今となっては人間デッキが捕食するデッキはほとんど残っていません。加えて《溶岩の投げ矢》やヘリオッドカンパニー、ビッグマナ戦略との相性も難があります。
《シルバークイルの口封じ》の効果は《翻弄する魔道士》よりも明確に弱いものになっていますが、その代わり打点が1高くなっています。コンボがいない現状ですから、ソフトなロック効果でも許されやすいでしょう。指定した除去が飛んでくればちょっとしたアドバンテージを得られるのも悪くないですしね。勝利に直結するカードを唱える相手にはこの限りではありませんが。
総評すると、《シルバークイルの口封じ》が使用率の激減したアーキタイプを復活させる可能性は低いと思いますが、人間デッキが取り入れ得る2マナ域が登場したのは非常に喜ばしいことです。この部族でポテンシャルのある3マナ域が刷られることは多いですが、必要なスペックを持つ2マナ域はかなりの希少種であり、もっと注目されて然るべきだと思います。
《精鋭呪文縛り》
プレイアブルな3マナ域の人間クリーチャーといえば、《精鋭呪文縛り》もそのひとつかもしれません。タフネス1が大きな足枷になるのは相変わらずですが、《霊気の薬瓶》デッキで仕事を任せられる可能性があります。先ほど言ったように、人間デッキでは3マナ域が過剰という問題があり、妨害が新しい攻めの角度ではありませんでした。
他方、白単デス&タックスなどにとってはこれまでに少なかったタイプのカードになります。呪文にマナ課税をする能力は《スレイベンの守護者、サリア》や《レオニンの裁き人》と相性抜群。ほかにも特筆すべき点として、《精鋭呪文縛り》の効果はクリーチャーの生存と無関係であるため、《ちらつき鬼火》や《儚い存在》のような「明滅」効果とも噛み合っています。
《身震いする発見》
《身震いする発見》はまさに”身震いする”収録です。実質的に追加の《安堵の再会》であり、モダンのドレッジはこの効果のためにタッチすることを真剣に検討するでしょう。事実、ドレッジマスターであるSodeqは《身震いする発見》をタッチした構成でMagic Onlineのリーグを5-0しています。
注目のデッキ:4色ドレッジ
物足りないカードパワーだった《谷の商人》を《身震いする発見》に変更してあり、ドレッジは《信仰無き物あさり》の禁止で失われた安定性を取り戻した印象を受けます。
マナベースを4色まで広げたことや、1マナのルーティング呪文が減ったことは少々不安ではありますが、《安堵の再会》効果を求めてマリガンしやすくなったのは大きな強化でしょう。これらの呪文は12枚ほどの墓地肥やしをほぼ確約してくれますからね。ドレッジを使うなら1ゲーム目を先取することが何よりも大切ですが、《身震いする発見》はそれを実現するうえで大いに役立つでしょう。
《表現の反復》
少し工夫をしてやれば、《表現の反復》を2マナ2ドローとして運用するのは簡単でしょう。相性が良いのは打ち消し呪文や用途の狭い妨害呪文ではなく、状況を選ばずにプレイできる能動的なカード。《ミシュラのガラクタ》、火力呪文、軽い脅威、手札破壊呪文はもちろん、土地を追放するだけでもマナを伸ばしながら実質2ドローにしていけます。
最適な居場所となるデッキはまだわからないものの、「果敢」クリーチャーと合わせる価値があるのは間違いありません。イゼット果敢の《舞台照らし》と入れ替えたり、グリクシスシャドウのようなデッキでも面白いかもしれませんね。
《賢い光術師》《レオニンの光写し》《龍護りの精鋭》
モダン視点で考えると、新セットからもっとも将来性を感じさせるのは「魔技」のカード群です。その能力の書き方からして、「ストーム」を使うことで大量の誘発を狙えます。モダンのプールにある1マナの「ストーム」呪文は2つ、《大地の裂け目》と《狼狽の嵐》です。このいずれかを使えば、1ターン内に「魔技」の誘発を連打することも難しくないでしょう。
こういった発想でいくと、「魔技」カードはできるだけマナコストが軽く、かつ「魔技」能力が積み重なっていくものが望ましいと考えられます。
1マナの「魔技」カードのなかで、ダントツで最強の選択肢になっているのが《賢い光術師》です。呪文を唱える/コピーするたびにパワーが2上がっていくので、2ターンキルも夢ではありません。《溶岩の投げ矢》、《魔力変》、ファイレクシアマナ呪文。これらは《賢い光術師》を誘発させながらも、「ストーム」カウントを稼ぎだします。《賢い光術師》の長所はほかにもあり、5枚目以降の《ニヴメイガスの精霊》として機能します。
《レオニンの光写し》は単体では地味なカードですが、こちらも「ストーム」呪文から価値を生み出すカードとして採用できるでしょう。これまで《道の探求者》がモダンの果敢デッキにたまに入っていたぐらいですからね。似た効果を持つ2マナ域ですが、《レオニンの光写し》の全体強化の側面は残念ながらあまり重要ではなさそうです。便利なときがあるとすれば、速攻を持つ《僧院の速槍》を出したターンに、実質2倍の「果敢」を誘発できることでしょう。
最後は《龍護りの精鋭》。この3枚のなかではもっとも《タルモゴイフ》に近い存在ですね。「魔技」の誘発に適した呪文や果敢デッキが赤軸であることから、2色目をタッチしない限りは《龍護りの精鋭》を採用する可能性は低そうです。とはいえ、ひとつの選択肢であることに変わりはないでしょう。
カニスター謹製の「魔技」デッキ
「魔技」クリーチャーを使ったデッキをたたき台として2つ作ってみました。極限まで振り切ったオールイン型と、素直で古典的な果敢型です。
オールイン型
《ニヴメイガスの精霊》構成はストーム呪文とファイレクシアマナ呪文を8枚ずつ採用し、それを存分に活用する12枚のクリーチャーが入っている全力突撃型です。
このデッキの良いところは、2枚のストーム呪文のテキスト欄が空欄でないことです。《狼狽の嵐》は除去を弾き、《大地の裂け目》はブロッカーをどけて攻撃をねじ込めます。こういった構築は環境に長く生き残ることは少ないですが、このデッキはとんでもない爆発力を秘めているかもしれません。
果敢型
2つ目のアプローチはより安定性を求めた構成であり、同時に《大地の裂け目》によるコンボ要素も少し残してあります。
『ストリクスヘイヴン』の全カードを見回してみても、モダンに一番影響を与えるのは《賢い光術師》だと予想しています。
モダン期待のカード:後編
《火花の学者、ローアン》/《霜の学者、ウィル》
両面とも忠誠度能力は地味なものになっていますが、常在型能力は《遵法長、バラル》や《ゴブリンの電術師》と同じものです。インスタント・ソーサリーのマナコスト軽減能力は、これまで除去されやすいクリーチャーだけに付随するものでした。それが3マナのプレインズウォーカーに付いたのですから、これは決して悪い提案ではないでしょう。
残念ながら、《ローアン》の忠誠度は《稲妻》一枚やちょっとしたクリーチャーの攻撃でやられてしまう低さです。[+1]能力も力不足であり、エンブレム能力はクリーチャーを含まないコントロールに対してだけ使えるものでしょう。《ウィル》は遅いコントロールに対してドローソースとして使えるといえばもっともらしいですが、マナコストが重すぎる状況がほとんどのはずです。
この両面プレインズウォーカーに大きな期待はしていませんが、青赤ストームのサイドボードに数枚忍び込ませる可能性はありそうです。ストームはだいぶ低いTierデッキになっていますけどね。
《生態学的な理解》
《生態学的な理解》は《けちな贈り物》のクリーチャー版。プレビュー期間に頻繁に評価を尋ねられたカードです。
一見すると、コンボパーツとなるクリーチャーをサーチするうえでとても便利そうに思えます。しかし、実際にサーチする4枚を考えてみると、その期待が崩れ始めます。確かに《太陽冠のヘリオッド》と《スパイクの飼育係》は同じ3マナですが、必ず相手はその2枚が揃わないように選んでくるでしょう。つまり、6マナ払って3マナのクリーチャーが2体並ぶ結果になります。
悪さができないように《生態学的な理解》は自身を追放するうえに、選択されたカードはライブラリーに混ぜ込まれるようになっています。そのため、《永遠の証人》などで相手に苦しい選択を迫ることができません。《生態学的な理解》を上手く使うのは難しいだろうなと思います。
おわりに
というわけで、モダンに参入してきそうな主だったカードを紹介してきました。記事の冒頭で触れたとおり、このエキスパンションはおそらく普段よりもモダンへのインパクトが小さいでしょう。しかし、それでも試すべき新デッキやサイドボードテクニックはたくさんあると思いますよ。
ここまで読んでくれてありがとうございました。健康に気をつけて!