Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2021/4/26)
最後の戦い
みなさん、こんにちは。
前回の記事から多くの変化があった。たくさん大会にも出場した。残念なことに、シーズン開始当初から調子を落とすことになってしまった。
来シーズンにライバルズリーグ降格を避けるためには、最後のリーグ・ウィークエンドで突出した成績を残すことが求められていた。実際のところ、世界最高峰の戦いに挑むには最善の状況ではなかった。学校が閉鎖され、生まれたばかりの娘と3歳児の息子がいるのは、重要な大会に向けて入念な準備をするには最適な環境とは言えない。
『カルドハイム』チャンピオンシップで2日目進出を逃すとMPL残留の望みが一気に薄れ、本当に辛い時間を過ごすことになった。
3-1 into 3-4 at #KHMChamps ><
— Raphael Levy (@raphlevymtg) March 27, 2021
First time in a while I couldn't hold the tears in after a match. Trying to give the best (time, attention, love) to your family, and play competitive Magic is hard. Feels like I failed them.
I'll feel better tomorrow!
『カルドハイム』チャンピオンシップで初日落ちし、家庭と競技マジックの両立の難しさを痛感したレヴィ。
降格が決まり始めるリーグ・ウィークエンドに向けて回復と調整に数日努めたが、道に迷い、意気消沈するのは当然の結果だった。デッキ登録の前日、スタンダードで連敗に連敗を重ね、ジョギングに出かけると新しいデッキを考案し始めた……。
家に着くと、考えをまとめて、夜通しの練習。そして後に成功を収めるデッキの原案を登録した。
I put my fate into Magda's hands today. You've probably seen the deck crushing on the ladder the last few days, here's the list for you.#MTGLeagueWeekend @hareruyaEnglish pic.twitter.com/MOIten97Za
— Raphael Levy (@raphlevymtg) April 10, 2021
マグダグルールの初期構成
調整する時間が足りず、明確に欠陥のあるデッキだった。でも、自分なりのやり方で戦いたかった。スタンダードは2-4、ヒストリックもアブザンミッドレンジで2-4となり、結果的に間違ったデッキ選択にだったと思う。
自分の運命が決まると、とうとう家族のための時間を確保することができた。しかし、まだやり残したことがある。
自分で構築したあのデッキは非常に高いポテンシャルを持っていると思っていた。数週間かけて理想の構成にたどり着くと、4月23日にミシックランク1位へと登り詰めた。
FUCK YEAH!!
— Raphael Levy (@raphlevymtg) April 23, 2021
It's been moving at the top of the constructed ladder and the people who've been sitting on their ranking had to play. It was time for me to sneak in and seize #1. 🏆#Magdaisqueen pic.twitter.com/NwuzPRBtar
マグダグルールでミシック1位を達成
デッキリスト:ミシック1位のマグダグルール
マグダグルールは、宝物トークンをサブテーマに据えた赤緑のアドベンチャーデッキだ。《恋煩いの野獣》《砕骨の巨人》《エッジウォールの亭主》といった従来のグルールアドベンチャーが使用していたカードアドバンテージ源を駆使し、早々にゲームに決着をつける《エンバレスの宝剣》も採用している。
このデッキの軸となるのは《厚顔の無法者、マグダ》だ。ドラゴンの母であり、《エンバレスの宝剣》の鍛冶工であり、宝物の探鉱者であり、《エシカの戦車》の乗り手であり、ゲームに幕を引く者でもある。
《エッジウォールの亭主》はすぐに対処しなければならない脅威であり、《厚顔の無法者、マグダ》も同様だ。《砕骨の巨人》の対象が多いため、赤のデッキと対峙したときにはその内の1体が残るだろう。
カード間のシナジー
デッキ内のカードを1枚1枚解説することはしない。その代わり、パッと見ただけでは気づけないようなトリッキーな動きやコンボを全て列挙してみる。
《ヤスペラの歩哨》+《厚顔の無法者、マグダ》
理想的な初手はこの2枚を含むものだ。《ヤスペラの歩哨》は別のクリーチャーと一緒にタップすることでマナを供給し、《厚顔の無法者、マグダ》はタップされたときに宝物トークンを出す。この2体が揃えば、2ターン目に3マナにアクセスでき、なおかつ次のターンに備えて宝物トークンを配置しておける。
ゲーム後半になると何の行動もとれないときがあるが、そういうときでもこの2体をタップして宝物トークンを出すことができる。MTGアリーナで遊ぶ場合、手札から何も唱えるものや起動するものが何もないと優先権が保持されないから気をつけよう。特定のフェイズで止まるようにするか、フルコントロールモードにすれば対策できる。
《リムロックの騎士》と……全てのカード
《リムロックの騎士》は総じて弱いカードに見えるが、デッキをまとめ上げる存在だ。2ターン目に出せるアグロクリーチャーであり、《厚顔の無法者、マグダ》で強化すれば4点をたたき込める。ドワーフであることから、攻撃時にタップされれば宝物トークンを与えてくれる。
《リムロックの騎士》を採用したことで、デッキ内の「出来事」クリーチャーは12体となっている。その結果、通常のグルールアドベンチャーよりも《エッジウォールの亭主》の価値が一層高くなっている。
《石弾の猛進》はとても便利だ。《長老ガーガロス》を打ち倒すパワーまで引き上げたり、《黄金架のドラゴン》を強化したり、《エンバレスの宝剣》を装備したクリーチャーの打点を都合4点上げたりできる。
《リムロックの騎士》はブロックできないからアグロ相手にはサイドアウトしたくなるだろうが、ほとんど場合それは間違いだ。このデッキでは用途があまりにも広い。
《厚顔の無法者、マグダ》+《エシカの戦車》
戦闘で死亡するリスクを負わずに《厚顔の無法者、マグダ》をタップさせるもうひとつの方法が《エシカの戦車》に搭乗させることだ。《エシカの戦車》のさらなる利点は、《厚顔の無法者、マグダ》と合わせて《リムロックの騎士》をタップし、一気に2つの宝物トークンを生成できる点である。
《仮面の蛮人》もまたドワーフだから忘れないでおこう。
《エシカの戦車》は攻撃するとトークンをコピーする機会を与えてくれる。もっとも無難な選択肢は猫トークンだろうが、宝物トークンをコピーして5つ貯めることで《厚顔の無法者、マグダ》の能力起動を目指すことも十分に考えられる。
《エシカの戦車》は全体除去からのリカバリー手段にも適している。《恋煩いの野獣》を手札に抱えておけばさらに好都合だ。全体除去を使わせ、《切なる想い》、《恋煩いの野獣》、搭乗、攻撃、人間トークンをコピーという動きがとれる。
《厚顔の無法者、マグダ》とそのサーチ対象
《厚顔の無法者、マグダ》はデッキ内のアーティファクトかドラゴンをサーチする能力を持っている。宝物トークンを積極的に作り出し、通常は《エンバレスの宝剣》を持ってきて相手のライフを削りきる動きを狙う。ときおり《黄金架のドラゴン》や《エシカの戦車》を相手のエンドフェイズに探し出し、返しのターンに致死量のダメージを与えられるようにすることもある。
必要であれば《仮面の蛮人》もサーチできるから忘れないように(ドラゴンでありドワーフでもある!)
《黄金架のドラゴン》+対象をとる呪文
《黄金架のドラゴン》は有用な宝物トークンを攻撃時に生み出すが、相手または自分の呪文の対象になったときもその能力を誘発させる。宝物トークンを5つ並べるために《石弾の猛進》や《髑髏砕きの一撃》で対象にとることもある(《髑髏砕きの一撃》の場合は《黄金架のドラゴン》を対象のひとつに含めておく必要あり)。
《ヤスペラの歩哨》+《アクロス戦争》
《アクロス戦争》のIII章が終われば、奪ったクリーチャーはアンタップ状態で相手に帰ってしまう。だったら《ヤスペラの歩哨》でタップして自らにダメージを与えてもらおう。
両面土地の採用
《歌狂いの裏切り》
調整初期のころ、土地は何枚が適切なのか悩んでいた。23枚は少なすぎる印象だし、かといって基本土地を増やしてマナフラッドすることも避けたい。しばらくは弱いと思いながらも《アクロス戦争》をメインデッキに入れていたが、それは《長老ガーガロス》をメインから対処できる手段が欲しかったからだった。
代案はないかと「モードを持つ両面カード」を眺めていると、《歌狂いの裏切り》こそ求めているものだと気づいた。あのビーストクリーチャーを恒久的に対処することはできないが、6点分のダメージを追加しながら攻撃の道を切り開ける。これが決まればたいていはライフを0にできる。土地の枚数を増やせるのも好感触だった。
《絡みつく花面晶体》
その後《絡みつく花面晶体》を25枚目の土地として採用している。
《絡みつく花面晶体》はデッキ内でもっとも採用に自信のないカードだ。当初《熱烈な勇者》を試しており、《石とぐろの海蛇》に変更した。狙いは《恋煩いの野獣》で攻撃できるように1/1のクリーチャーを8体以上にすることだった。
ピン挿しのカードとして《絡みつく花面晶体》は同じ役割を期待できる。さらに追加の土地にもなり、のちに採用することになる4マナ域(《エシカの戦車》)にとってもありがたい存在となった。
ピン挿しのサイドカード
サイドボードにピン挿しでカードを採用することに違和感を覚える人も多いかもしれない。ここで重要なのは、このデッキはシナジーに寄せてあり、メインデッキのカードは相互に作用するようになっているため、サイドアウトする枚数を増やすほどメインのゲームプラン遂行に支障が出てしまうことだ。
そう考えると、《朱地洞の族長、トーブラン》や《黄金架のドラゴン》に対して強力かつ手軽な解答となる《レッドキャップの乱闘》や、大きなテンポを獲得する可能性を秘めた《蛇皮のヴェール》を投入するのは構わないが、ゲーム中に引きすぎるのも問題だ。
1枚引く分には喜ばしい。引かなければ本来のプランをただ進めれば良いだろう。しかし追加のクリーチャーが欲しいときに《蛇皮のヴェール》や《レッドキャップの乱闘》しか引けなければ、相手に時間をたっぷりと与えてしまい、サイドカードがかえって足を引っ張ることになる。
サイドボードガイド
スゥルタイ根本原理
対 スゥルタイ根本原理
スゥルタイとの相性は良い。《出現の根本原理》を耐え抜くのは難しいため、ゲームプランは長期戦にさせないことだ(ターンが返ってくれば《出現の根本原理》を撃たれても勝てるチャンスはある)。
大切なのは速攻をしかけること、そして速攻を持つ《黄金架のドラゴン》や《エンバレスの宝剣》《エシカの戦車》で全体除去から立て直すことだ。高速で大量のダメージを与える手段は豊富に揃っているから、5ターン目までに《出現の根本原理》を撃たれるようなことがなければ、たいていは問題ないだろう。
サイド後は《乱動する渦》を投入できる。大きなクロックと合わせて設置できれば、《出現の根本原理》をキャストできなくなるだろう。
直接火力を与える《運命の神、クローティス》はじわじわと相手の首を絞めていく。うっかり「信心」条件を達成してクリーチャー化しないようにしよう。《影の評決》や《絶滅の契機》で追放されかねない。
《長老ガーガロス》が多めに投入されてくると思うのであれば、2枚目の《アクロス戦争》をサイドインするのも悪くない。ハッキリと答えを示しづらいところだ。
赤単
対 赤単
赤単との相性も良好だ。後手で3ターン目に《エンバレスの宝剣》を出されると勝てないが、それを除けば相手を圧倒できるだけのカードが揃っている。《恋煩いの野獣》は悪魔のような存在だし、メインの《黄金架のドラゴン》は高速のクロックを突きつける。
サイド後は《長老ガーガロス》が大役を果たす。《アクロス戦争》に奪われないようにだけ気をつけよう。
追放能力を持つ《仮面の蛮人》は《鍛冶で鍛えられしアナックス》と《アクロス戦争》への最高の解答だ。《エンバレスの宝剣》を追放したいのであれば、それに相応しいプレイが求められる。《長老ガーガロス》が盤面を安定させるまで生き残るようにする、あるいは2回目の攻撃をさせないようにしよう。
ディミーアローグ
対 ディミーアローグ
ローグに対しても有利に戦える。脅威を出し続けられれば、《物語への没入》で息をついている暇を与えないだろう。相手は《エシカの戦車》に大きなプレッシャーを与えられ、《エンバレスの宝剣》を常に警戒し、《リムロックの騎士》をケアして《遺跡ガニ》ではブロックできない。
《アゴナスの雄牛》をサイドインするため、「脱出」前に手札が空になるようにマナコストの重い呪文はサイドアウトする。《黄金架のドラゴン》と《エンバレスの宝剣》をサイドアウトしているのはそういう理由がある。
《運命の神、クローティス》は墓地枚数を上手く管理してくれる。自分の墓地を少ないままにしたり、相手が《アガディームの覚醒》《塵へのしがみつき》《夢の巣のルールス》などで墓地利用できないようにする。
ローグ側は単体/全体除去をサイドインしてくるため、通常のクリーチャーでは苦労すること(ダメージを与えること)を《運命の神、クローティス》はやってのける。一度盤面に出れば除去する術がないので、カウンターするかダメージレースするしかなくなるだろう。
ティムールアドベンチャー
もっとも難しいマッチアップだ。《銅纏いののけ者、ルーカ》が入ってない構成には互角に戦えるが、《ルーカ》と《星界の大蛇、コーマ》が入っている構成はもっとも苦手とする。伝説のサーペントは戦場に出てしまうと対処する手段がないため、《ルーカ》が出る前に相手を倒さなくてはならない。
現時点でのサイドボードプランを示すが、今もなお研究中であるため日々変化している。
対 ティムールアドベンチャー
ほとんどのアドベンチャーデッキに対して《蛇皮のヴェール》をサイドインし、《踏みつけ》や《些細な盗み》を弾けるようにする。
《仮面の蛮人》は非ルーカ型の《グレートヘンジ》や《アクロス戦争》を追放するための必要悪だ。この2枚は対処しないと敗北してしまう。
自分自身の《アクロス戦争》には大きな疑問符が付く。強いときはブロッカーを奪取し、次のターンに攻撃の道を切り開き、盤面を一掃する。弱いときは奪ったクリーチャーを《厚かましい借り手》で上手いことバウンスされてしまう、あるいは《アクロス戦争》をバウンスされてチャンプアタックするハメになる。先手ではテンポで押し切るためにサイドインを推奨するが、後手はサイドインしなくていい。
《長老ガーガロス》は当たるときとハズれるときがある。《厚かましい借り手》や《アクロス戦争》に弱いため、サイドインすべきではないと考えている(特に《厚かましい借り手》に対しては5マナかけて何の見返りも残らない)。
もうひとつの弱点は、赤単戦と違ってカードアドバンテージをほとんど生まないことだ。ティムールアドベンチャーはトレードしても構わない大型のクリーチャーを多く抱えているため、《長老ガーガロス》は攻撃すらできない(《恋煩いの野獣》と相撃ちするだけだ)。
ここ数日ほかのプレイヤーがこのデッキを回すなかで、最大かつありがちなミスを見かけた。スゥルタイからローグ、白単までありとあらゆるデッキに対して《長老ガーガロス》をサイドインしてしまうのだ。このデッキはすでに強力な5マナ域である《黄金架のドラゴン》を抱えている。このドラゴンは《無情な行動》《巨人落とし》といったほとんどの除去に当たってしまうが、少なくとも1~2つの宝物トークンを出すという見返りを残す。
赤単戦以外では《長老ガーガロス》よりも《黄金架のドラゴン》のほうが上だ。《長老ガーガロス》にはベンチを温めておいてもらおう。
マグダグルールの未来
『ストリクスヘイヴン:魔法学院』の新カードは入っていないが、マグダグルールは新環境でも戦えると確信している。「上陸」型グルールのポジションを奪うポテンシャルがあるだろう。
上記の構成で満足しているものの、改良の余地はある。《絡みつく花面晶体》あるいは4枚目の《エシカの戦車》の枠に《グレートヘンジ》を入れる構成を試し始めたが、これがかなり良さそうだ。
相性の良いマッチアップは多いが、実に厳しいマッチアップもひとつだけある。グルールというカラーにとって、ルーカ型のティムールアドベンチャーを倒す手段は乏しい。ただ、サイドカードのために3色目をタッチする可能性はある。「小道」8枚と《ヤスペラの歩哨》、宝物トークンがあれば好きなものを唱えられるはずだ。
《封じ込める僧侶》はどうだろうか?《踏みつけ》に弱いが、《星界の大蛇、コーマ》を踏み倒すことはできなくなる。厳しい相手だと耳にしている《軍団のまとめ役、ウィノータ》デッキに対しても有効だろう。《巨人落とし》もアリかもしれない。
私自身もこのデッキを調整し続けている。ミシック1位を獲った画像を投稿した”だけ”でデッキへの注目も集めることができた。世界中のプレイヤーたちが加わったのだから、マグダグルールはさらなるレベルへと瞬く間に進化していくだろう!