はじめに
みなさんこんにちは。晴れる屋メディアチームの富澤です。
『ストリクスヘイヴン:魔法学院』がリリースされてすでに1ヵ月以上が経過し、スタンダードのメタゲームは固まりつつあります。本命は前環境に引き続きスゥルタイ根本原理であり、除去を絡めてのコントロール、マナ加速からのビッグスペルと隙がありません。攻略法は確立されるのでしょうか?
先週末は複数のスタンダードの大会が開催されましたが、その中でも上位で見かけることが多かったデッキに注目していきます。
先週末の注目デッキ
冒頭で述べた通り、本命は前環境に引き続きスゥルタイ根本原理であり、対抗馬に求められるのはスゥルタイ根本原理を攻略しつつ、ほかのメタデッキに有利がとれるアーキタイプです。先週末の大会で上位に多かったのは2つのクリーチャーデッキ、白単アグロとマグダグルールでした。
白単アグロ
白単アグロは5月30日のStandard Challengeで準優勝しただけではなく、トップ16に4名も残ったアーキタイプでした。スゥルタイ根本原理のような重コントロール相手には、《無私の救助犬》などで自陣を守りつつ、メタクリーチャーで対抗します。
環境初期には《象徴学の教授》を採用して「履修」「講義」のエンジンが導入されていましたが、現在の2マナ域は《歴戦の神聖刃》に戻り、序盤から前のめりにダメージを稼いでいく構築になっています。
『ストリクスヘイヴン:魔法学院』がリリース以来、多くのクリーチャーデッキに採用されているのが《精鋭呪文縛り》です。《絶滅の契機》や《影の評決》など相手が巻き返す呪文を狙うことで攻撃を継続し、立て直される前に削りきりを狙います。手札も確認できるのでプレイの予測が立ち、ゲームを優位に進められるのです。場合によっては《傑士の神、レーデイン》と一緒に使い、重い呪文を完封していきましょう。
《ドラニスの判事》は最近メインボードでの採用率が上がっているクリーチャーであり、手札以外から呪文を唱えることを封じます。スゥルタイ根本原理の勝ち手段である《出現の根本原理》を無効化できるため、《出現の根本原理》をキャストする1ターン前かタップアウトのタイミングで召喚し、相手の動きに干渉していきたいところ。ほかにも《精鋭呪文縛り》とシナジーを形成し、「出来事」や「予顕」など多くのデッキに有効な常在型能力となっています。
呪文枠にはこれまで採用の多かった《スカイクレイブの大鎚》に代わり、見慣れないエンチャントが1枚。《戦闘講習》は手札を減らさずにクリーチャーを繰り返し強化できるカードであり、タフな《歴戦の神聖刃》や飛行のある《精鋭呪文縛り》と相性抜群。一度+1/+1カウンターがのれば環境に蔓延る《無情な行動》で除去されないという美味しい副次効果も有ります。設置さえできれば《スカイクレイブの大鎚》と違い、除去されてもマナを必要としないので使いやすくなっています。
また、サーチする「講義」も注目です。《謹慎補講》は《沈黙》の亜種であり、特定の呪文のプレイまたはクリーチャーの攻撃やブロックを禁じます。限定的な効果ですが、《出現の根本原理》や《アールンドの天啓》など、狙うべき呪文がはっきりした相手には実質的に1ターン稼ぐことができるのです。また、戦場に出てしまった《長老ガーガロス》は《巨人落とし》以外では対処できませんでしたが、《謹慎補講》は攻防への参加も防ぐため、アドバンテージを稼がれることなく突破してダメージを与えられるのです。
マグダグルール
日本選手権2021 SEASON2 ウィークリーチャレンジを全勝で通過したマグダグルール。ラファエル・レヴィ/Raphael Levy選手(現マジック・プロツアー殿堂)がミシックランク1位に到達したことで広まったアーキタイプであり、従来のグルールアドベンチャーよりもマナ加速要素を増やし1ターンに複数行動や重いマナ域へのアクセスが可能です。クリーチャーを複数並べるカードもあり、《エンバレスの宝剣》への到達速度は随一といえます。
デッキ名の通り《厚顔の無法者、マグダ》を中心とした、ややシステマチックな構築となっています。詳しい解説はレヴィ選手にお任せし、ここでは主な変更点のみに絞っていきます。詳しくマグダグルールについて知りたい方は下記の記事をぜひ、ご一読ください。
- 2021/4/27
- ミシック1位に到達 ~マグダグルール~
- ラファエル・レヴィ
メインボードの《解き放たれた者、ガラク》は、《エシカの戦車》と同じく1枚でボードに複数の脅威を展開してくれます。特に《クラリオンのスピリット》や《型破りな協力》といったトークン戦略に対して効果的であり、《恋煩いの野獣》や《黄金架のドラゴン》を対象に起動し、プレイヤーへとダメージを与えます。単体でクリーチャートークンを生成できるためいつ引いても無駄にならない1枚といえますね。
《神託者の広間》はあまり見ない土地ですが、マナソースが多いこのデッキでは中盤以降に有益な能力土地となります。気になるのは起動型能力の条件ですが、12枚の「出来事」カードと5枚のスペルランドがあるため困りません。特に「出来事」は1~2マナと軽いため、複数行動も可能です。ただし、《恋煩いの野獣》がいるときにはうっかり1/1クリーチャーに+1/+1カウンターを配置しないように気をつけてください。
メインボードは速度で勝負していきますが、消耗戦にもつれ込むとアドベンチャーデッキにはやや不利となります。というのも《エッジウォールの亭主》こそありますが、《グレートヘンジ》はなく、ほかのアドベンチャーデッキほどリソースを確保できないためです。サイドボード後はこの《グレートヘンジ》と《アクロス戦争》を巡る勝負となるため、対処するために《仮面の蛮人》が3枚採用されています。
白単アグロに対しては《仮面の蛮人》と一緒に《ヴァドロックの神話》も入れ替えていきます。小型クリーチャーを一掃し、厄介な《軍団の天使》すらも除去できます。《仮面の蛮人》は《ガラスの棺》や《スカイクレイブの大鎚》を狙っていくことになります。
スゥルタイ根本原理に対しては、ダメージソースとして《乱動する渦》や《運命の神、クローティス》をサイドインすることが多いものの、このデッキではダメージソースはあくまでもクリーチャーのみに絞っています。代わりに相手の反撃を封じる《軽蔑的な一撃》が2枚。《出現の根本原理》や《アールンドの天啓》だけではなく、《鎖を解かれしもの、ポルクラノス》や《長老ガーガロス》といったクリーチャーも打ち消せるため、自分の手札と相手の土地枚数には気を配り、適切なタイミングでプレイしましょう。
直近の大会結果
5月25日から6月1日までの大会結果になります。スゥルタイ根本原理が安定した戦績を残す一方で、白単アグロも好成績を残しています。スゥルタイ根本原理がメタゲームの中心であるため立ち位置が良く、アドベンチャー系にも《ドラニスの判事》が刺さります。《ドラニスの判事》を除去しない限り、「出来事」カードはどちらか一方しか使用できないのですから。苦手な《クラリオンのスピリット》が少なかったことも影響しているようです。
マグダグルールは数こそ少ないものの、スゥルタイ根本原理に比例して上位に見られるアーキタイプ。マナクリーチャーにバックアップされた展開力と《軽蔑的な一撃》と《蛇皮のヴェール》といったテンポのとれるカウンターカード、返す刀の《エンバレスの宝剣》と隙がありません。
イゼットドラゴンも調子を上げています。メインボードから重い部分を削り、《本質の散乱》を採用するなどシェイプアップしており、Standard Challengeを2度に渡り制しています。2マナ以下の打ち消しと除去が多く、アグロの展開力に引けを取りません。《燃えがら地獄》はノンキックで白単アグロの戦線をズタズタにしてくれる1枚です。
問題はドラゴンや《アールンドの天啓》など重い部分を固め引くことや、割り切ってタップアウトでの展開を余儀なくされる点です。そのためプレイヤーにバランス感覚が求められます。
おわりに
スゥルタイ根本原理を追いかけ、追い越し。白単アグロは先週末の勝ち組といっていいほどの戦績を残しました。
しかし、イゼットドラゴンのサイドボードに採用された《燃えがら地獄》のように、すぐさまメタゲームも対応しつつあります。今週末は苦しい戦いとなりそうですね。
今週末には『ストリクスヘイヴン』チャンピオンシップが控えていますね。次回はそれらの情報をお届けしたいと思います。