Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2021/06/14)
『モダンホライゾン2』は構築だけじゃない!
みなさん、こんにちは。
『モダンホライゾン2』がお店に並ぶ時期になりました。このセットは間違いなくモダン環境を揺るがすでしょうが、パワフルなカードとシナジーが満載のドラフト環境もかなり面白いものになっています。
この記事では、私が評価しているドラフトのアーキタイプを3つ紹介しましょう。デッキのサポート役、デッキの主役に加え、実際のピック譜を見ながら各アーキタイプをドラフトするうえでの基本的な考え方を解説していきます。
赤黒マッドネス
デッキのサポート役
《陰謀団の新入り》は優先度低め。
デッキの主役
どんなデッキ?
赤黒マッドネスはこの環境のアグロデッキ。《ヴィーアシーノの鞭爪》で《地獄の雑種犬》を捨て、速攻で攻撃する動きはこの環境屈指の動きです。速攻の「マッドネス」クリーチャーを連続展開できれば、相手を圧倒することは造作もありません。
手札を捨てる手段として《陰謀団の新入り》の評価が低いのは、その能力がアグロ向けではないから。デッキのエンジンが少なければ採用しても良いでしょう。
「マッドネス」カードについては、《スコフォスの肉裂き》と《地獄の雑種犬》は素直な方法で唱えても悪くないですが、《台所のインプ》や《革命主義者》はまともに唱えるとマナコストに見合いません。そのため、こういった「マッドネス」カードはドラフトの後のほうで取ることはよくあります。
また、手札を捨てるカードも「マッドネス」カードも多くはコモンであるため、卓で2人は成立するアーキタイプになっています。
サンプルドラフト
ドラフトのピック譜はこちら。
このドラフトは1パック目に引いたのが《フェールス・ロキーリク将軍》。かなり強いレアです。しかし、1パック目の3手目に《地獄の雑種犬》が流れてきたので、少なくとも上2人は赤黒マッドネスを選んでいない可能性がありました。そこで《地獄の雑種犬》をピックし、赤黒マッドネスに移れるように受けを広くすることにしました。
6手目にも《地獄の雑種犬》が流れてきたうえ、《地獄料理書》も卓を1周。ここまでくれば、赤黒マッドネスを選んでいるのは自分しかいないと思って間違いないでしょう。残りの2パックは優秀な「マッドネス」カードや除去を多くピックでき、ほとんど悩むことはありませんでした。
青白(+X)アーティファクト
デッキのサポート役
アーティファクト土地もデッキのエンジンとなります。軽いバニラアーティファクトクリーチャーも同様ですが、優先度は低めです。
デッキの主役
どんなデッキ?
青白アーティファクトは典型的な飛行デッキです。3マナ域には《積み過ぎた空中要員》《金属の急使》《エーテリウムの紡ぎ手》といった強力な飛行クリーチャーがズラリと揃っています。
他方、地上を守るのはマナコストを軽減できる大型「親和」クリーチャーたち。それを活かすために序盤のマナ域は手がかり/食物/宝物トークンを出すカードで埋めていきましょう。
ピックしやすいコモンにはフィニッシャーとなる飛行クリーチャーがいます。《大理石のガーゴイル》《渡る魂》《守護麒麟》《エアロミーバ》などです。
アーティファクト土地は点数を高くしてピックしますが、個人的には《波ふるい》のために緑をタッチするのが好みです。このクリーチャーは序盤のアーティファクトカウントを稼ぎながらも、終盤になれば強力なカードアドバンテージ源となります。
赤をタッチすれば、クリーチャー全体を強化する《電結のシカール》であったり、相手のクリーチャーやライフを連続射撃する《金屑の徘徊者》が選択肢に入ります。
サンプルドラフト
ドラフトのピック譜はこちら。
このドラフトの開幕は《ウルザの物語》(チケだ!)。このセットでもっとも壊れているカードを軸にしたアーティファクトデッキを狙ってみることにしました。そこで、序盤からアーティファクトを並べられる《堅固な証拠》を4手目と6手目で積極的にピック。
8手目には《剃刀潮の橋》と《エアロミーバ》が流れてきますが、ここは雑多な飛行フィニッシャーよりもシナジーを優先して《剃刀潮の橋》を取りました。
そして9手目は驚いたことに《エーテル宣誓会のスフィンクス》が卓を一周。今思えば5手目に《滞留者の相棒》と《鋼ヒレの鯨》が残っていたので、この卓にはアーティファクト重視のデッキを組んでいるプレイヤーがそう多くないかもしれないという思いが芽生えました。
2パック目は笑えるパックでした。2手目、3手目、4手目と3連続で《陰謀団の貴重品室》をピックしたのです。その3パックとも《波ふるい》が入っていたので、最初は《陰謀団の貴重品室》をクリックできていないだけだと思い込んでしまったのですが、サイドボードに《陰謀団の貴重品室》が4枚も入っていると気付いたときに全てを理解しました。
2パック目は4枚分をレアピックに消費しましたが、依然として卓内でのポジションはかなり良かったようです。《滞留者の相棒》や《波ふるい》は卓を一周し、15手目には多色のマナベースを活かせる《空一面》をピックしました。
3パック目に移ると、《エーテリウムの紡ぎ手》2枚に加え、デッキの色に合ったアーティファクト土地を3枚もピック。これでデッキが完成しました。
青緑多色
デッキのサポート役
デッキの主役
そのほかにもレア/神話レアのボムも含まれます。
どんなデッキ?
カードパワーの高いドラフト環境では、5色デッキは強いと相場が決まっています。ほかのプレイヤーたちが特定の色に固執しているところを狙い、終盤に流れてきたレアをピックしてタッチしていきます。
色マナサポートの点でいうと、緑には優秀な《裂け目を蒔く者》がいます。また、「土地サイクリング」は各色にありますが、特に青と緑は強力。《精神の旅》は序盤に色マナサポートの役割を埋めながらも、終盤になればデッキを掘り進めてパワーカードへたどり着きやすくしてくれます。
このアーキタイプは序盤をマナ基盤調整に使うため、《果樹園の徘徊者》はそこで失ったライフを補填してくれる存在。4ターン目に《晩餐への遅刻》でリアニメイトすればさらに良いでしょう。だからこそ、《果樹園の徘徊者》が2枚以上取れたときの《晩餐への遅刻》は使いやすく、上記ではデッキの主役の枠に入れています。
《宝石眼のコブラ》や《積み過ぎた空中要員》は宝物トークンを生成するコモンであり、これもまた優秀です。使いきりの色マナではありますが、デッキの色を外れたカードはピン挿しであることがほとんどなので、繰り返し使える色マナ源である必要はないのです。
アーティファクト土地に関しては、(緑or青)+タッチカラーの組み合わせのものを優先します。そうすれば、デッキのメインカラーにアクセスしつつも、強力なカードを追加できる基盤が整います。
青緑多色では、フィニッシャーとなるカードを2~3枚用意しましょう。《ガラクタ這い》や《連合の蛹》はアンコモンであり、特に優秀です。
サンプルドラフト
ドラフトのピック譜はこちら。
このドラフトが動き始めたのは1パック目の3手目《裂け目を蒔く者》と4手目の《地の変幻》からでした。初手で《新緑の地下墓地》を取っていることもあり、多色デッキを組む下地が整いつつありました。
6手目と9手目で《果樹園の徘徊者》が流れてきたので、この時点であらゆるボムをタッチできるだけの強固なマナベースがほぼ完成を見ていました。
2パック目、《霊体の先達》に加え、《果樹園の徘徊者》とシナジーのある《晩餐への遅刻》をピック。6手目にはトークン生成カードと相性のよい《ガラクタ這い》を取りました。3パック目は《堅固な証拠》《宝石眼のコブラ》《エーテリウムの紡ぎ手》《波ふるい》をピックしてデッキの完成です。
お気づきのとおり、青白アーティファクトと青緑多色は採用するカードが多く共通しています。だからこそ、そこそこ強いカードを取るよりも、さまざまなデッキをまとめ上げられる《堅固な証拠》を優先してピックするようにしているのです。青白アーティファクトと青緑多色を異なる2つのアーキタイプとして紹介しましたが、これらを組み合わせることも難なくできます。
というわけで、おすすめのアーキタイプを紹介してきました。《ウルザの物語》や《敏捷なこそ泥、ラガバン》を引けると良いですね。そして何よりも、ドラフトを楽しむことをお忘れなく!