『フォーゴトン・レルム探訪』のアグロカード10選

John Rolf

Translated by Nobukazu Kato

原文はこちら
(掲載日 2021/7/17)

はじめに

『フォーゴトン・レルム探訪』発売が迫り、スタンダードに新たなカードが参入する時期がやってきました!スタンダードは長らく環境が固まっていましたから、新鮮なカードが加わるのは喜ばしいですね。

今日は、今後使われる可能性がありそうなアグロ向けのカード10枚を見ていくことにしましょう。

《ドラコリッチ、エボンデス》

ドラコリッチ、エボンデス

まずはこの最高のカードから始めましょう!《ドラコリッチ、エボンデス》は驚異のクロックに加えて、瞬速を持っている優秀さです。ソーサリースピードの除去でやられる前に5点を叩き込んでくれるでしょう。

飛行能力も非常に価値があります。これまで私が使ってきた強いアグロデッキというのは、ダメージを押し通す貴重な手段を備えていました。《ドラコリッチ、エボンデス》はまさにその条件を満たせるカードです。

蘇生能力まで使えれば、もう文句なしでしょう!もちろん追放されてしまう可能性こそありますが、対峙するプレイヤーにとっては厄介なことこの上なしです。追放されるにしても、少なくとも1度は攻撃が通っていることでしょう。

《ドラコリッチ、エボンデス》の構えは相手から読まれやすいでしょうが、そこは大して重要ではありません。別のインスタントタイミングのカードを採用すれば、《ドラコリッチ、エボンデス》を待ち構えている相手の裏をかく柔軟さが加わるため、そういった構成も考えられるかもしれないですね。

死の飢えのタイタン、クロクサ悲哀の徘徊者

いずれにしても、《ドラコリッチ、エボンデス》はスタンダードで注目されるでしょう。その蘇生能力を誘発しやすいことから、ラクドスサクリファイスはわかりやすい居場所になりそうです。とはいえ、ほかのアグロ戦略で使われても何の不思議もありません。

《フレイムスカル》

フレイムスカル

《フレイムスカル》は強力な3マナ域であり、散見されるようになるかもしれません。《ドラコリッチ、エボンデス》と同じく、飛行に加え、戦場を離れても確かなバリューを発生させる能力が備わっています。《フレイムスカル》の再キャストか別のカードを唱えるか選べるのは、どんなときでもありがたい能力でしょう。

古今東西、アグロは序盤からの除去に脆く、その爆発力を抑えられてしまいます。そして、終盤戦にほとんど影響を与えないカードをライブラリートップから引き続けるハメになるのです。《フレイムスカル》は盤面に残ることでデッキの除去耐性を引き上げると同時に、マナフラッドの軽減にも寄与します。

ブロックできないデメリットは、《フレイムスカル》を入れるようなデッキではそう気にならないはずです。そういうデッキでブロックに回るようでは、どっちにしても戦況は苦しいでしょうから。

つまるところ、このクリーチャーにはいくつも優れた点があります。《フレイムスカル》の採用が肯定されるほどのアグレッシブさをデッキに持たせることが重要になってくるでしょう。

《群れ率いの人狼》

群れ率いの人狼

緑単にピッタリのカードですね。緑単はメリット能力付きの3マナ3/3を採用していたことがありますが、《群れ率いの人狼》《樹皮革のトロール》などよりもあきらかに強いのではないでしょうか。

相性が良いのはパンプ呪文/効果ですが、それは緑なら多く持ち合わせています。「集団戦術」を誘発させるのは全く苦ではないはずです。3マナ域のクリーチャーと並べば、たいていは機能し始めるでしょう。2つ目の能力は起動する頻度が低いかもしれませんが、あって困らないメリット能力です。

この記事はスタンダード目線で評価していますが、ヒストリックであれば《生皮収集家》《グルールの呪文砕き》と相性が良い点は見逃せません。

生皮収集家グルールの呪文砕き

1ターン目に《生皮収集家》、2ターン目に《群れ率いの人狼》、3ターン目に《生皮収集家》を育てるパワー3のクリーチャー。こうすれば3ターン目から「集団戦術」が誘発します。あるいは、2ターン目に《群れ率いの人狼》を、3ターン目に速攻モードの《グルールの呪文砕き》を出す動きでも良いでしょう。

このクリーチャーには要注目です。明るい未来が待っていると思いますよ!

《素拳のモンク》

素拳のモンク

このカードを10選に選んだのは、1マナだからです。昨今のスタンダード環境には、合格点をつけられる1マナ域のクリーチャーはほとんどいません(特に《エンバレスの宝剣》登場以降)。ウィザーズが今の環境で強い1マナ域を刷ることにためらう気持ちはよくわかります。

かつてスタンダードに赤の1マナ域が刷られないのは《遁走する蒸気族》がいるからだと睨んでいましたが、今は《エンバレスの宝剣》がその立場になのでしょう。《火刃の突撃者》《熱烈な勇者》《エンバレスの宝剣》と合わせると十分な強さを持つカードになることからも、私の考えは間違っていないだろうと思います。

クラリオンのスピリット

《素拳のモンク》が期待外れに終わる可能性は拭えませんが、《クラリオンのスピリット》との組み合わせを考えると一気に面白そうな感じがしてきます。《クラリオンのスピリット》にフィーチャーした白系デッキは今年活躍してきましたから、「2つ目の呪文」デッキで《素拳のモンク》を試す価値はありそうです。このクリーチャーを活かすには、低マナ圏のクリーチャー/呪文を多く採用できるデッキを構築しましょう。

《バグベアの居住地》/《フロスト・ドラゴンの洞窟》

バグベアの居住地フロスト・ドラゴンの洞窟

《不詳の安息地》が環境にあるため、今回のミシュラランドがどれだけインパクトを与えるかはわかりません。とはいえ、歴史的に見ればスタンダードにあるミシュラランドはアグロ戦略などに影響を与えてきました。

それでも《不詳の安息地》のほうが強いだろうとは思います。《不詳の安息地》ほどスタンダードのアグロデッキにとって強化になったカードはここしばらくありませんでしたからね。土地の枠をひとつ割くだけで全体除去とマナフラッドへの耐性を上げてくれる優れモノです。

不詳の安息地寓話の小道

対して今回のミシュラランドはタップインであることがアグロにとって大きなデメリットとなっています(私は《寓話の小道》を2色デッキで採用することすら、呪文を思うように唱えられなくなるのではないかと抵抗がありました。)

しかし、同じタップイン土地でもクリーチャーが付属するのであれば、そのデメリットはまだ許容しやすいでしょう。アグロデッキでは、同じマナ域帯が渋滞するということは起き得ます。そのような場合、2ターン目に2マナ域を出し、3ターン目に2マナ域を追加しながらタップイン処理すればデメリットはそこまで気になりません。あるいは3ターンに3マナ域を唱え、4ターン目にさらなる3マナ域を出しながらタップイン処理しても良いでしょう。

《不詳の安息地》と合わせて今回のミシュラランドが何枚必要か理解する必要はありますが、少なくともその枚数が0である可能性は低いのではないかと思います。

《レンジャー・クラス》

レンジャー・クラス

《群れ率いの人狼》に続いて、これもまた緑単と相性が良いカード。個人的にかなり期待しています。『フォーゴトン・レルム探訪』だけでも緑単は強力な2マナ域を2枚手に入れているのは素晴らしいですね。緑単が使いやすくなりそうですし、同時に《レンジャー・クラス》が使われる可能性も高まるでしょう。

《レンジャー・クラス》の評価ポイントは、即座に2/2を戦場に並べながらも、いずれカードアドバンテージを発生させることです。アグロを使うなら、序盤は盤面の構築が最優先ですが、そのおまけにアドバンテージ源が内蔵されているのはすごいことですよ。

レベル3は終盤のマナの使い道を用意し、マナフラッドを防止しながら、《レンジャー・クラス》そのものの価値を維持できるようにしてくれます。本来なら膠着してしまう盤面であっても、クリーチャーを横に広げ、リーサルダメージを押し通せるフィニッシャーにもなってくれるでしょう。

《ワイト》

ワイト

確かに《ワイト》は現代のスタンダードには明らかについていけないレベルのカードでしょう。それでも今回の10選に入れたのは、将来的に環境がパワーダウンしたときのことを考えたからです。《砕骨の巨人》を筆頭とした「出来事」クリーチャーがローテーション落ちすれば、環境のパワーは大きく下がるでしょう。ただ、それだけで《ワイト》が活躍できる土壌が整うかはわかりません。

とはいえ、このクリーチャーが良いスペックを持っていることは確かです。黒単アグロなどで使われるかもしれませんね。攻めるデッキならばタップインも気にならないでしょう。10選に入れるほどではない可能性もありますが、最近のスタンダードでこれほどアグロ向きの軽くて強いクリーチャーは希少です。その点を踏まえて、今回は選抜しました。

問題は《ワイト》がスタンダードで通用するほどの打撃力があるのかどうかです。ずっと攻め続けられる構成にしたり、ゾンビというクリーチャータイプに意味が出てきたりすれば、《ワイト》の出番が回ってくるでしょう。

《バード・クラス》

バード・クラス

《バード・クラス》は評価に悩みます。《悪魔牙のノール、ターグ・ナール》など、グルールカラーの伝説クリーチャーと相性が良いものの、出してすぐに大きな仕事をするわけではない点が気になります。レベル1やレベル3が大活躍する展開はあり得そうですが、レベル2はそこまでの期待が持てません。レベル3はゲームを支配するだけの力がありそうですね。

このカードが使用に耐えるかは、将来的に赤と緑の伝説のクリーチャー/呪文がどれだけプールに増えるのかにかかっているでしょう。少なくとも存在を気に留めておきたいカードです。

悪魔牙のノール、ターグ・ナール

私が懸念しているのは、《バード・クラス》を有効に使いたいがために単体では強くない伝説のクリーチャーを採用し、《バード・クラス》が引けずにパワー不足のデッキを使うハメになるのではないか、ということです。

とはいえ、上手い構築を見つけてやれば採用に値するカードになるのでしょう。そういう意味で、自分で色々試したいカードですね。機能すればさまざまな強力な動きができそうですから、今回の10枚に選ばれてもおかしくないと思います。

《バーニング・ハンズ》

バーニング・ハンズ

私のなかにいる赤の魔道士が歓喜しました。強力なサイドカードであり、もっと早く収録されていたら今年一年使っていたでしょう。《恋煩いの野獣》などの緑のクリーチャーへの美しい解答になります。赤のアグロに限らずアグロ全般にとって、緑の大型クリーチャーは常に悩みの種でした。こんなカードならいつだって歓迎しますよ。

さらに、緑以外のクリーチャーにも2点飛ばすことができ、柔軟性も備わっています。ジェスカイサイクリングや白単ウィニー相手にサイドインしてもおかしくないでしょう。まさにサイドボードに欲しい類のカードであり、すぐにでも赤のサイドボードに食い込むはずです。

《ホブゴブリンの山賊の頭》/《月の踊り手、トレラッサーラ 》

ホブゴブリンの山賊の頭月の踊り手、トレラッサーラ

この2枚は10選に入るべきかは疑わしく、将来的にサポートカードが多く登場しなくてはならないでしょう。しかしそのツール(ゴブリン/ライフ回復)が揃えば、デッキに入る可能性があります。

《アジャニの群れ仲間》はスタンダードでは少々物足りませんが、繰り返しライフ回復できる手段があれば、毎ターン占術し、ライブラリートップから不要牌を弾く能力が評価されて《月の踊り手、トレラッサーラ 》が採用される可能性はあるでしょう。白単/セレズニアカラーのライフ回復デッキがスタンダードで通用した歴史がないのは気がかりですが、蓋を開けて見なければわかりません。

《ホブゴブリンの山賊の頭》も可能性を感じる1枚です。特別強いというわけではないものの、ロードであることに変わりはありません。今後のセットで別のロードが出てくれば、ゴブリンが環境に殴り込みするかもしれませんね。現状で《ホブゴブリンの山賊の頭》を使うなら、ゴブリントークンを並べ、《略奪の爆撃》やそれに類するものを活用するデッキになるでしょう。

繰り返しになりますが、これらのクリーチャーは強化を待つ2枚です。存在を忘れないようにしておくと良いかもしれませんね。


というわけで、アグロ向けのカードを10枚ご紹介しました。みなさんの目に留まったカードがあれば嬉しいですね。それでは、楽しんで新しいカードを試していきましょう!

ジョン・ロルフ(Twitter)

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John Rolf アメリカ出身のプロプレイヤー。2017-2018シーズン、《熱烈の神ハゾレト》を相棒にプロツアー『イクサラン』トップ8入賞。それだけには留まらず、グランプリ・プロツアーともに安定した成績を残し続け、ブロンズ・レベルからプラチナレベルまで登り詰めるとともに、自身初の世界選手権出場を成し遂げた。同郷の親友であり、チームメイトでもあるブランドン・エアーズと共に、2018年10月Hareruya Prosに加入。 John Rolfの記事はこちら