Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2021/7/19)
はじめに
ここしばらく、スタンダード環境はやや停滞している印象を受けます。いくつかのアーキタイプが長らく支配し続けている状況です。悲しいことに、このムードを打破するだけの力は『フォーゴトン・レルム探訪』にはなさそうです。
ただ、悲しいことばかりではありません。あと2か月もすれば、スタンダードを支配してきた多くのカードがローテーション落ちします。「出来事」、「相棒」、根本原理などにようやく別れを告げる時がきたのです。楽しそうな新デッキが登場する余地が生まれることでしょう。しかし、私が期待していることはただひとつ。新しいコントロールデッキの誕生です。
イゼットドラゴン
まずは、スタンダード2022から代表的な遅めのコントロールデッキを取り上げましょう。イゼットドラゴンはローテーションで失うカードはたったの数枚です。基本的には《厚かましい借り手》と《砕骨の巨人》だけと考えて良いでしょう。
この2枚は脅威と解答を兼ねる器用さを持つ重要なカードでした。残念ながら、このような一石二鳥のカードはほかになく、脅威か除去かの二つに一つを選ばねばなりません。
《ドラゴンの火》
《ドラゴンの火》はなかなか強い除去ではないでしょうか。総合的に見れば1マナ分軽い《霜噛み》にやや劣るかもしれませんが、同型のドラゴンデッキが増えてきた場合はドラゴンクリーチャーを除去できるポテンシャルがあるため、《ドラゴンの火》のほうが強くなるということもあり得そうです。《砕骨の巨人》の穴埋めとしては心もとないですが、悪くはない除去でしょう。
《砂漠滅ぼし、イムリス》
『フォーゴトン・レルム探訪』のなかではトップクラスのカードであるように思います。《龍王オジュタイ》っぽい感じがしますよね。
「護法4」があるので、出したターンにすぐ除去されづらいはずです。また、相手の除去に対応できるときだけそのガードを緩めれば、以降のターンも守りやすいでしょう。《龍王オジュタイ》と違って青単色なので、もっと幅広い色のデッキで採用しやすいという特徴があります。
イゼットドラゴンに限って言えば、《黄金架のドラゴン》と直接的なライバルになってしまうのは残念ですね。《黄金架のドラゴン》のほうが若干強いはずですから。
《ストーム・ジャイアントの聖堂》
かなりのパンチ力がありますね。今回のミシュラランドはアンタップインする可能性があり、採用する裏目が特別大きいわけではありません。初手にあれば基本土地の上位互換です。《ストーム・ジャイアントの聖堂》は追加の勝ち筋として申し分なく、特にコントロールにピッタリな1枚になるでしょう。
スタンダード2022をまずこのデッキから始めてみるのは良い手かもしれません。『イニストラード:真夜中の狩り』のカードが一切なくてもデッキになっていますからね。必ずやイゼットドラゴンに類するデッキが出てくるはずです。
ですが、イゼットドラゴンは前から存在していますし、ちょっと面白味に欠けますね。堂々とコントロールを名乗ることも難しそうです。とすれば、もっとゆっくりした受け身なデッキで、将来に期待できそうなものはないでしょうか?伸びしろがあるデッキと言い換えても良いかもしれません。
スタンダードが一新されるとき、誰しもがこう思うはずです。「アゾリウスコントロールはどうだろう?」と。では、ちょっと覗いてみることにしましょう。
アゾリウスコントロール
《忠実な軍用犬》
スタンダードに《白蘭の騎士》がいた時代から随分と時間が経ちました。《白蘭の騎士》はなかなか良いカードでしたし、リメイクである《忠実な軍用犬》も似た効果を持っています。《不屈の自然》を内蔵したクリーチャーであり、後手からの巻き返しにとても役立ちそうですね。
《ポータブル・ホール》
実際にどれだけこの穴に引っかかるクリーチャーが環境にいるかによりますが、おそらく通用する除去じゃないかと思います。少なくともアグロ相手のサイドカードとして有望でしょう。
《ニコ・アリス》
《ニコ・アリス》はまだ見捨ててはならないカードだと私は思います。スタンダード環境のパワーが低下し、その効果を上手く使えるアゾリウスカラーのデッキが出てくれば、という感じですね。《忠実な軍用犬》をバウンスするのも手かもしれません。
《コンタクト・アザー・プレイン》
《多元宇宙の警告》がいる限り出番は回ってこないでしょう。何の工夫もなしにダイスの20を何度も出せるなら《コンタクト・アザー・プレイン》のほうが良いはずですが、そんなことができない人には《多元宇宙の警告》の使い勝手の良さのほうが魅力的でしょうね。
正直に言いますが、イゼットドラゴンと比べるとアゾリウスコントロールはまだ強化が必要でしょう。優秀な打ち消し呪文がもう1枚あると良さそうです。たとえば《認識否定》よりも扱いやすい《本質の散乱》は良いかもしれません。アグロやドラゴンデッキと戦うときに便利そうですよね。
また、万能な除去もあるとなお良いと思います。なかには着地を許してしまうと対処が難しいパーマネントがありますから。《排斥》《エルズペス、死に打ち勝つ》のように高マナ域のパーマネントにも触れるものが理想的です。
特に気がかりなのは、ミシュラランドや速攻のクリーチャーです。現状ではこのアゾリウスコントロールにインスタントタイミングの除去がありません。
良い面に目を向けると、《砂漠滅ぼし、イムリス》はフィニッシャーとして適格です。《エメリアの呼び声》や《ストーム・ジャイアントの聖堂》もありますから、このデッキが勝ち切るのに困るということはそうそうないでしょう。
ディミーアコントロール
《落第》
《無情な行動》と《取り除き》が抜けた穴を埋める除去として悪くなさそうですね。相手の手札が溢れかえっているという状況はあまりないですから、おおむね予想通りの働きをするだろうと期待しての採用です。
《パワー・ワード・キル》もひとつの選択肢ですが、ドラゴンを除去できない点が気になります。とはいえ、次のセットでも《破滅の刃》系の除去が収録されるでしょうから、その時点で改めて評価されるべきカードですね。
《蜘蛛の女王、ロルス》
強そうなプレインズウォーカーではないでしょうか。戦場に出てすぐに到達を持つ2体の蜘蛛トークンを出せるので、しっかりと自衛ができます。そして生き延びてターンが返ってくれば、毎ターン追加のドローです。
勝つまでに時間がかかってしまうプレインズウォーカーであり、このデッキでは奥義に到達するのは難しそうですが、プレインズウォーカーというのは奥義の強さで評価されるべきではありません。
《雪上の血痕》
このデッキは勝ち切るのに手こずるかもしれません。理想的なフィニッシャーとは、不利なときでも使い道があるカードです。
その点、《雪上の血痕》は《神の怒り》でありながら、《砂漠滅ぼし、イムリス》やプレインズウォーカーを蘇生できる手段でもあります。6マナという重さがネックなので、たっぷりアドバンテージが取れるように運用したいものですね。
《モルデンカイネン》
《モルデンカイネン》は《オニキス教授》よりも少々弱めです。似たような能力ですが、誘発型能力の有無が明暗を分けています。必要以上に6マナ域は採用したくありませんので、この2枚を併用することはできれば避けたいですね。
このデッキはもう一声で環境争いに加われると思います。能動的な脅威か柔軟性のあるフィニッシャーがあと1枚あると良さそうです。これまでコントロールプレイヤーは《サメ台風》に甘やかされてきました。序盤から中盤は「サイクリング」でき、一度有利な状況になればあっという間に勝てたのです。
とはいえ、スタンダー2022で正真正銘のコントロールを使おうと思うならディミーアコントロールがベストなのではないかと思います。現時点ですでに強そうですし、『イニストラード:真夜中の狩り』が出ればもう一段階強くなることも十分にあり得そうですね。
判断するには時期尚早ですが、スタンダード2022では少なくとも良いコントロールがいくつか組めそうな気がしています。
グレゴリー・オレンジ(Twitter)