はじめに
みなさんこんにちは。晴れる屋メディアチームの富澤です。
前回は『フォーゴトン・レルム探訪』のカードを軸にしたデッキをご紹介してきました。リリース前は予想だにしなかったアゾリウス鍛冶の誕生に心底驚き、スタンダードの奥深さを改めて知った次第です。
さて、今回は日本選手権2021 SEASON2と$5K SCG Tour Online Championship Qualifierの大会結果を振り返っていきます。
先週末の注目デッキは?
まずは先週末の注目デッキを確認していきましょう!
先週末開催された日本選手権2021 SEASON2で大活躍だったナヤウィノータ。惜しくも優勝は逃しましたが、半数を占める4名がトップ8へと進みました。基本的な動きは非人間クリーチャーを展開しつつ、隙をみて《軍団のまとめ役、ウィノータ》を着地させ、攻撃時の誘発型能力により20点を削りきるコンボ内蔵のクリーチャーデッキです。
このデッキの優れている点は《軍団のまとめ役、ウィノータ》だけに頼らず、ミッドレンジプランがとれる部分であります。相手が干渉手段を構えている場合は《精鋭呪文縛り》や《エシカの戦車》といったスタッツの優れたクリーチャーを絡めながら攻めていきます。ボードでプレッシャーをかけてそのまま押し切るも良し、相手が動いたならばその隙を突き《軍団のまとめ役、ウィノータ》を絡めて大ダメージをたたき込みましょう。
面白いのはアーキタイプ分類上はナヤウィノータながら、複数のタイプが入賞していた点です。大きくわけて「出来事」パッケージをベースにしたナヤアドベンチャーの派生形と、マナクリーチャーをベースに《エシカの戦車》や《帰還した王、ケンリス》といった《軍団のまとめ役、ウィノータ》の効果を最大限発揮できるように構築された型です。ここでは後者を詳しくみていきましょう。
《裕福な亭主》は新しく加わったナヤウィノータのマスターピース。ぱっと見は使いきりのマナクリーチャーですが宝物トークンを生成するため自身をタップする必要がなく、さらに非人間クリーチャーであるため攻撃時に《軍団のまとめ役、ウィノータ》の誘発条件を満たします。従来の《ヤスペラの歩哨》や《絡みつく花面晶体》と違い、マナ加速時に誘発トリガーとなる攻撃役が減る心配がないのです。当たり前ですが、本体が除去されたとしてもマナも減りません。《裕福な亭主》はマナ加速と攻撃手の1枚で二役をこなしてくれる便利なカードなのです。
《裕福な亭主》に加えて6枚のマナクリーチャーを採用し、安定して2マナから4マナへとジャンプアップできるように構築されています。その受け皿となるのは《エシカの戦車》。複数展開できる脅威であると同時に、1枚で《軍団のまとめ役、ウィノータ》の下準備を済ませてくれるカードです。続くターンに《軍団のまとめ役、ウィノータ》をプレイして戦車へと「搭乗」すれば、3回誘発することになるのですから。
《軍団のまとめ役、ウィノータ》の当たり牌は《刃の歴史家》と《帰還した王、ケンリス》の2種5枚。《刃の歴史家》は単純にダメージが倍化するため、予想外の角度からライフを削りきることも可能です。
デッキの半分以上がマナソースのため、中盤以降のマナの使い道も必要となります。《怪物の代言者、ビビアン》は軸が違う(ほかのカードと対処手段が異なる)脅威であり、ひとたび着地しようものならこれ1枚で延々とトークンを生成してくれます。さらにデッキの半数がクリーチャーであるため、ライブラリートップから次々とクリーチャーをプレイできそうです。
日本選手権2021 SEASON2
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | 廣澤 遊太 | マグダグルール |
準優勝 | 二俣 洋次郎 | ナヤウィノータ |
トップ4 | 佐藤 啓輔 | スゥルタイ根本原理 |
トップ4 | 正松本 裕司 | ナヤウィノータ |
トップ8 | 河野 融 | ジェスカイ変容 |
トップ8 | 堀江 徹 | ナヤウィノータ |
トップ8 | 西 悠太郎 | ナヤウィノータ |
トップ8 | 簗瀬 要 | 緑単アグロ |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
参加者165名で開催された日本選手権2021 SEASON2。優勝は、グランプリなどで複数のトップ8入賞経験を持つ廣澤 遊太選手でした。
トップ8の半数をナヤウィノータが占めていたこともトピックの一つとなりました。
メタゲーム
デッキタイプ | 1日目 | 2日目 |
---|---|---|
スゥルタイ根本原理 | 31 | 12 |
ナヤウィノータ | 22 | 10 |
緑単アグロ | 19 | 9 |
ティムールアドベンチャー | 11 | 4 |
白単アグロ | 11 | 2 |
グルールアドベンチャー | 10 | 7 |
ジェスカイ変容 | 9 | 3 |
イゼットドラゴン | 6 | 0 |
ナヤアドベンチャー | 5 | 3 |
ディミーアローグ | 5 | 3 |
その他 | 36 | 11 |
合計 | 165 | 64 |
初日突破者数で高い数値を示したのはグルールアドベンチャーでした。それに対してイゼットドラゴンは誰一人として2日目に進出することは叶いませんでした。火力によるボードコントロールを得意としたデッキでしたが、火力の圏外となる緑系のデッキが増加したことが要因と思われます。
トップ8デッキリストはこちら。
マグダグルール
マグダグルールは「出来事」パッケージを軸に、マナ加速を取り入れたアドベンチャーデッキ。《厚顔の無法者、マグダ》は《エシカの戦車》や《黄金架のドラゴン》のプレイを早め、中盤以降は宝物トークンをリソースへと変換してくれるいつ引いても無駄にならないクリーチャーです。
パッと見前環境とほとんど変化はありませんが、《レンジャー・クラス》とクリーチャー化土地を手に入れたことで大幅にパワーアップしています。
『フォーゴトン・レルム探訪』の中でもっともスタンダードに影響を与えたといわれる《レンジャー・クラス》。2マナを埋めるとともに戦場を強化して膠着を打破し、《無情な行動》に耐性も付与してくれます。
レベル3まであげれば、リソースゲームをも制す万能カードとなります。マナコストが分割払いになった《グレートヘンジ》ともいうべき存在です。
『フォーゴトン・レルム探訪』以前のアグロデッキは、《不詳の安息地》を採用できることから単色優位となってきました。2色以上のデッキではダメージソースを呪文のみに頼らざるをえず、中盤以降に土地を引き過ぎた際にもターンを返すしかない状況すらも生まれていました。
6枚採用されたクリーチャー化土地のおかげで、マグダグルールは手を止めることなく攻め続けることが可能になりました。《バグベアの居住地》は4点分のクロックであり、攻撃に向かうターンが増えるほどクロックも増加していきます。トークンは攻撃状態で生成されるため《エンバレスの宝剣》とも相性が良くなっています。
また、是非とも覚えておきたいのは《バグベアの居住地》のトークン生成数です。《バグベアの居住地》は予め複数回クリーチャー化してから攻撃に向かうことで、その回数に等しいゴブリントークンを生成してくれます。2回クリーチャー化すれば2体生成されますので、土地を引き過ぎてしまった際お試しあれ。
$5K SCG Tour Online Championship Qualifier
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | Martin Del Guercio | ナヤウィノータ |
準優勝 | junichi takayama | マグダグルール |
トップ4 | Will Pulliam | ジェスカイ変容 |
トップ4 | 森山 真秀 | マグダグルール |
トップ8 | Antonio Mancilla | ティムールルーカ |
トップ8 | Simon Nielsen | ナヤウィノータ |
トップ8 | 小泉 祐真 | ジェスカイ変容 |
トップ8 | Mark Ramos | スゥルタイ根本原理 |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
参加者183名で開催された$5K SCG Tour Online Championship QualifierはMartin Del Guercio選手のナヤウィノータが制しました。《敬愛されるレンジャー、ミンスク》が複数採用されトリガー役と当たり牌を増やしつつ、ミッドレンジプランを強化しています。さらに戦略を邪魔しない干渉手段として《髑髏砕きの一撃》が採用されています。
メタゲーム
デッキタイプ | 使用者数 | トップ16 |
---|---|---|
ティムールアドベンチャー | 27 | 3 |
スゥルタイ根本原理 | 25 | 1 |
緑単アグロ | 21 | 0 |
ナヤウィノータ | 20 | 4 |
ディミーアローグ | 15 | 0 |
グルールアドベンチャー | 11 | 5 |
アブザンブリンク | 9 | 1 |
白単アグロ | 8 | 0 |
サイクリング | 7 | 0 |
イゼットドラゴン | 7 | 0 |
ラクドスサクリファイス | 6 | 0 |
ジェスカイ変容 | 5 | 2 |
その他 | 22 | 0 |
合計 | 183 | 16 |
グルールアドベンチャーが安定した戦果を残す一方で、非常に苦しい結果となったスゥルタイ根本原理と緑単アグロ。環境最初期をけん引してきた二大デッキがここで振り落とされました。複数の攻め方を持つデッキが増えたことでスゥルタイ根本原理はデッキの最適化が難しくなってきています。緑単アグロはサイズが強みでしたが、ティムールルーカやナヤウィノータといったコンボ入りのクリーチャーデッキが増えたことで押し切ることが難しくなっています。
トップ8デッキリストはこちら。
ティムールルーカ
ティムールルーカはミッドレンジプランをとりながら、《銅纏いののけ者、ルーカ》による《変身》コンボを内蔵したデッキです。ひとたび決まれば《星界の大蛇、コーマ》が攻防を制し、インスタントでの干渉手段が多数たるため、幅広いレンジに対応できるようになっています。
環境にタフなクリーチャー増えたことで、《砕骨の巨人》の評価はやや下がったといえます。流行の《軍団のまとめ役、ウィノータ》は誘発したら最後、仕事どころか試合自体が終わりかねないため、少ないマナで対処する必要があります。
《厚かましい借り手》はクリーチャーをはじめ土地を除くあらゆるパーマネントに対処できる万能カード。しかも厄介なパーマネントを戻しつつ、隙を最小源に抑えてクロックを形成できるのです。仮に対戦相手のマナがタップアウトならば《厚かましい借り手》を出した返しに《銅纏いののけ者、ルーカ》を着地させ、除去を挟まれることなく《星界の大蛇、コーマ》を呼び出せます。
《バーニング・ハンズ》は緑系のデッキが多いメタゲームでは、最良の1枚となります。わずか2マナで《探索する獣》や《恋煩いの野獣》、果ては《鎖を解かれしもの、ポルクラノス》まで対処できるです。
《レッドキャップの乱闘》は《黄金架のドラゴン》や《軍団のまとめ役、ウィノータ》に対して大きくテンポが取れる火力となります。
おわりに
先週末の大会結果を確認したことで、わずか1スロットでも違えばデッキに大きな変化を生むことがわかりました。軽量クリーチャーであったり、土地であったりとアーキタイプによって異なりますが、それはメタゲームにおける明暗を分けるほどなのです。
次回もスタンダードの情報をお届けしたいと思います。それでは!