Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2021/08/11)
はじめに
やはりと言うべきか、『モダンホライゾン2』がモダンに参入すると、環境はがらりと変わりました。それがモダンにとって良いことなのか、悪いことなのか、意見はさまざまあると思います。しかし、私はその議論には加わらず、ただモダンを遊び、楽しむようにしています。
直近の結果を見るに、今のモダンは好きなデッキを使って勝てる環境のようです。私もその一人であり、あれやこれやとデッキを使いました。しかし結局最後に心を決めたのはイゼット《濁浪の執政》(イゼット執政)でした。
イゼット執政は現環境のベストデッキに名乗りを上げるだけの強さがありますし、使っていて最高に楽しいデッキです。
デッキの基礎と自由枠
ではそのイゼット執政を見ていくことにしましょう。まずは、私がデッキの核だと思っている部分からです。
(絶対なんてありませんが)この56枚は変えるつもりがない部分であり、残る4枚は自由枠になります。
この4枠は頻繁に変更している箇所であり、予想されるメタゲームに合わせて調整します。たとえば、ハンマータイムや《衝撃の足音》続唱(サイ続唱)へのガードを上げたいときは、《仕組まれた爆薬》を1枚入れていました。
こういったデッキでは最低でもメインに打ち消し呪文を4枚は入れたいと思っているので、自由枠のひとつには《大魔導師の魔除け》をよく入れます。3マナではありますが、ドローしたり、パーマネントを奪ったりと、今の環境で強いカードです。ロングゲームになることが多いため、3ターン目に使って良し、9ターン目に使っても良しのカードがあるのはありがたいことですよ。
最近試しているカードのひとつが《火/氷》です。クリーチャーを2体まとめて除去できる強みがあり、自分の行動を押し通すために相手のパーマネントをタップさせたりします。今のところ良い働きをしてくれていますね。
《厚かましい借り手》も予想以上に強いカードでした。ヘイトカードをメイン戦から対処できるようになったり、瞬速のクロックになったりと、このフェアリーは何でもこなします。3枚まで増やしたこともありましたが、感触はイマイチでした。適正枚数はおそらく0~2枚のどこかでしょう。
ほかにも試すべきカードはあるでしょうが、ここまで紹介したカードからもわかるように、手札にあるときに選択肢が多いカードを積極的に採るようにしています。結局は予想されるメタゲームやみなさんの好みでこの自由枠は決めることになるでしょう。サイドボードも同様であり、みなさんに賛同されるものもあれば、そうでないものもあるはずです。
デッキリスト
こちらが最新のリストになります。
マッチアップ
では、デッキごとの戦い方を見ていきましょう。
ハンマータイム
かつて隆盛を極め、最近になって衰え始めているのがハンマータイムです。
1本目はかなり相性が悪いです。《対抗呪文》のみならず、《敏捷なこそ泥、ラガバン》もほとんど使い物になりません。
理想を言えば、初動を《ドラゴンの怒りの媒介者》にし、高速で大型の《濁浪の執政》を出し、死なないうちになんとか勝ちを狙いたいところです。この狙い通りに行けば勝ちが見えてくるでしょう。《大魔導師の魔除け》は相手の装備品とクリーチャーを奪えますので、使いどころを見極めてから使いましょう。
サイド後は展開が変わります。通常、《ラガバン》と《対抗呪文》を全てサイドアウトし、《仕組まれた爆薬》や《削剥》といった除去を追加します。《仕組まれた爆薬》は0か1で設置し、多くのパーマネントを巻き込めるようにしましょう。ただし、相手のデッキには《虹色の終焉》がありますので、《仕組まれた爆薬》を迂闊に置かないよう注意してください。
ぜひ理解しておいて欲しいのは、このマッチアップではコントロールとして立ち回ることです。急いで勝ちに向かわないようにしましょう。
対 ハンマータイム
エレメンタル
いま勢いがあり、注意を要する新時代のデッキがエレメンタルです。
デッキリストを見る限り、イゼット執政を倒すことを意識して作られたデッキに思えますね。《激情》《孤独》《忍耐》。フリースペルであるクリーチャーが10枚ほど入っており、《儚い存在》が絡むと手が付けられなくなります。
1ゲーム目は「想起」クリーチャーに備えて《対抗呪文》を構えながら、とにかく早く勝ちを目指します。
どの多色デッキにも言えることですが、そのマナベースは犠牲なしには運用できません。単体除去に替えて《血染めの月》をサイドインしましょう。
このマッチアップを警戒し、サイドボードで新たに試しているのが《倦怠の宝珠》です。ここまでは狙い通りの活躍をしてくれていますが、《血染めの月》のほうがゲームへのインパクトは大きいように思います。
対 エレメンタル
サイ続唱
1ターン目の《ラガバン》は当然強いのですが、ほかのマッチアップほどではありません。というのも、奪って唱えたい相手の呪文はほとんどなく、《ラガバン》は基本的にマナ加速しかしないからです。
それを理解している今だからこそ言えることですが、相手が《ラガバン》を対処しようとしてきたら、抵抗せずに思うようにさせましょう。たとえば《火/氷》を打ち消し、その後《衝撃の足音》を解決させてしまうとしたらどうでしょう。このマッチアップでは《ラガバン》が弱いと同時に、相手が攻めてくることを忘れないでください。
サイド後、《稲妻》などをサイドアウトし、《仕組まれた爆薬》や追加の打ち消しを投入しましょう。《対抗呪文》を一部抜いていますが、より使いやすいものにアップグレードしていますので、これは問題ありません。ただ、サイド後に相手の「想起」エレメンタルがどれぐらい残っているか注意しておき、それに合わせて《対抗呪文》をデッキに戻す可能性はあります。
対 サイ続唱
ライブラリーアウト
『モダンホライゾン2』による恩恵が小さかったものの、『フォーゴトン・レルム探訪』で非常に重要な1枚を手に入れたデッキ。それがライブラリーアウトです。このデッキと対戦したくない、考えたくもないという人も少なくないでしょう。しかし、実際にはいずれどこかで当たることになります。
ライブラリーアウトとの相性はかなり良いと思っています。自分のゲームプランを進めていき、必要に応じて相手の邪魔をするだけです。クリーチャーを展開し、「カニ」を除去し、《ターシャズ・ヒディアス・ラフター》に《対抗呪文》を合わせる。こうすれば万事問題ないでしょう。
ライブラリーアウトとの相性が良いと考える理由は《濁浪の執政》にあります。かなり早い段階から展開でき、《湖での水難》や《彼方の映像》を使いづらくさせるのです。できることなら敵に塩を送ることのないよう、《思考掃き》は自分を対象に撃たないようにしましょう。サイド後も基本的にやることは同じであり、追加された打ち消し呪文を力にして戦います。
対 ライブラリーアウト
アドバイス集
モダンは常に変化しており、毎週のように新しいデッキがトップへと躍り出ます。そのデッキの多様性ゆえ、完璧なサイドボードガイドを書くことはなかなかできません。
そこで、イゼット執政を構築・プレイするうえで役立つアドバイスをいくつか送ることにしましょう。
《ミシュラのガラクタ》の使い方
以前に《死の影》デッキに関連して《ミシュラのガラクタ》の使い方を解説した記事を書きましたので、ぜひそちらもご覧ください。
上記の記事に加え、イゼット執政にだけ当てはまることもあります。このデッキは「昂揚」を積極的に狙いたいデッキですから、デッキ内で唯一のアーティファクトである《ミシュラのガラクタ》は追放しないようにしてください、
もうひとつ面白いテクニックを紹介しますと、《ラガバン》が戦場にいるとき、相手のライブラリートップを《ミシュラのガラクタ》で確認し、それを奪うのか、相手にそのカードを引かせるのか判断することができます。
《思考掃き》は自分だけじゃない
《思考掃き》は相手も対象に取れます。それが正しいと思ったら、迷わずそうしましょう!おおよそ25%はこの使い方をしているはずです。
《ドラゴンの怒りの媒介者》の「諜報」と「昂揚」
《ドラゴンの怒りの媒介者》は「諜報」持ちです!特定のカードを探しているときは、《思考掃き》の対象を相手にすることも考えられます。
また、「諜報」を誘発する呪文は墓地を肥やし、《ドラゴンの怒りの媒介者》を《秘密を掘り下げる者》モードにすることが可能です。相手にプレッシャーをかけたいとき、ブロッカーが欲しいときに選択肢に入れましょう。
たとえば、《ミシュラのガラクタ》と土地が墓地にあれば、相手のアタッカーを《稲妻》で破壊し、《血清の幻視》を「諜報」で墓地に落とす、そして「昂揚」を達成した《ドラゴンの怒りの媒介者》をブロックに回すといった動きが考えられますね。
《濁浪の執政》同士のシナジー
2体目の《濁浪の執政》は、1体目の《濁浪の執政》の能力を誘発させます。そのため、2体目は戦闘前に出すのが原則です。
フェッチランドの配分
フェッチランドの種類は散らしましょう。《沸騰する小湖》4枚、《汚染された三角州》2枚といった構成はNGです。
基本土地は《島》しかないので、青絡みのフェッチランドを採用する必要がありますが、運悪く《真髄の針》で複数のフェッチランドが機能不全に陥るといったことのないようにしましょう。
《敏捷なこそ泥、ラガバン》の「疾駆」
《ラガバン》には「疾駆」があります!3ターン目以降、あるいは《ラガバン》を「疾駆」させた後に少なくとも1アクション以上できるときは基本的に「疾駆」させます。
攻めか守りか
そのゲームで自分の立場がどちらなのか明確にしましょう。そうすれば、サイドボーディングやカードの扱いを上手くできるようになるでしょう。
日々のアップデート
モダン環境は刻々と変化していますから、その流れについていき、新しいカードを臆さず試していきましょう。モダンチャレンジでトップ4に入賞したときは《ハーキルの召還術》《侵襲手術》《幻惑の旋律》をサイドボードに忍ばせていました。いかに思い切った構築ができるか、おわかりいただけると思います。
おわりに
今回は、イゼット執政の一端をお伝えしてきました。最近はこのデッキを使うのが楽しくて仕方ないので、まだまだ調整していこうと思います。
イゼット執政に関して何か質問や、突飛なアイディアがありましたら、お気軽にコンタクトをとってくださいね。このデッキやモダン全般についてなら喜んでお話しましょう。
それではお体に気をつけて。また次回。
イマニュエル・ゲルシェンソン(Twitter)