はじめに
みなさんこんにちは。晴れる屋メディアチームの富澤です。
禁止改定によりスタンダード情勢は大きく変化しました。トップメタに位置していたデッキがそれぞれ影響を受けたことで、スタンダードはまさに群雄割拠の時代を迎えているのです。
今回は$1,000 Cash GGtoor M:TG Arena Cup#1の結果から、新スタンダードに迫っていきます。
先週末の注目トピックは?
冒頭でも述べた通り、禁止改定がスタンダードに与えた影響は大きく、デッキレベルではなく環境そのものがリセットされたことを意味しています。イゼットターンは解体に追い込まれ、《ゼロ除算》を採用していた青系デッキも軒並み後退。単色アグロは《不詳の安息地》の代わりに『フォーゴトン・レルム探訪』のクリーチャー化土地を採用するか、多色化するかいずれかの分岐に立たされています。
今回の禁止改定で恩恵を受けたのはまず間違いなく各種ミッドレンジデッキです。苦手としていた《ゼロ除算》は消え、それでいて《エシカの戦車》も《黄金架のドラゴン》も失っていないのですから。つまりはどのミッドレンジが最強か、ミッドレンジによる覇権争いが始まったのです。
さらにミッドレンジの隆盛を見越してコントロールも増加しています。特にボード掌握に長けた黒系のコントロールはミッドレンジの攻め手が途切れるまで、単体/全体除去を使って時間を稼ぎ、より重く強力なプレインズウォーカーなどのフィニッシャーへ繋げていきます。メタゲームの焦点はミッドレンジ-コントロール間に置かれているようです。
前置きが長くなりましたが、それでは大会結果をみていきましょう。
$1,000 Cash GGtoor M:TG Arena Cup#1
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | Koki Kondo | オルゾフミッドレンジ |
準優勝 | Roope Metsa | イゼットコントロール |
トップ4 | Junya Iyanaga | イゼットドラゴン |
トップ4 | Noe Alessandro Rivera Carvallo | セレズニアランプ |
トップ8 | Florian Trotte | アゾリウスコントロール |
トップ8 | Tim Schaufert | オルゾフコントロール |
トップ8 | Andre Santos | オルゾフコントロール |
トップ8 | krowz | ボロスアグロ |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
参加者245名で開催された$1,000 Cash GGtoor M:TG Arena Cup#1ですが、オルゾフミッドレンジを使用したKoki Kondo選手が制しました。トップ8には多数のコントロールが入賞していましたが、多角的な攻め手をもつオルゾフミッドレンジに軍配が上がっています。
トップ8に2名を送り込んだオルゾフコントロールは黒単氷雪コントロールをベースにして、発展させたアーキタイプです。死亡時に誘発型能力を持つ小型クリーチャーと生け贄を追加コストに持つ呪文を組み合わせて、デッキを円滑に回しながらリソース損せずに対処していきます。「履修」にプレインズウォーカーとアドバンテージ獲得手段がふんだんにあり、青が入っていないにもかかわらず消耗戦に強い構築となっています。
メタゲーム
デッキタイプ | 使用者数 | Top32 |
---|---|---|
オルゾフコントロール | 32 | 9 |
ティムールミッドレンジ | 23 | 2 |
エスパーコントロール | 23 | 0 |
イゼットコントロール | 15 | 1 |
ジャンドミッドレンジ | 14 | 2 |
緑単アグロ | 14 | 1 |
白単アグロ | 11 | 1 |
オルゾフミッドレンジ | 10 | 4 |
アゾリウスコントロール | 9 | 1 |
ディミーアコントロール | 8 | 1 |
イゼットドラゴン | 7 | 1 |
ゴルガリミッドレンジ | 6 | 0 |
その他 | 73 | 9 |
合計 | 245 | 32 |
使用者数ではオルゾフコントロールが頭一つ抜けた人気となりました。比較的クリーチャーが多くミッドレンジに近いコントロールであるため、マッチアップによって硬軟織り交ぜた対応が可能です。環境初戦ならばこそ、柔軟なアーキタイプに人気が集まったのも納得といえます。
ティムールやジャンドといったミッドレンジはオルゾフ系のマークがきつかったことで思ったほど勝率を伸ばせませていません。トップ8に0人と意外な結果に終わりました。
トップ8デッキリストはこちら。
オルゾフミッドレンジ
Kondo Koki選手が使用したオルゾフミッドレンジは《光輝王の野心家》から始まるやや前のめりなミッドレンジです。クリーチャーには戦線を強化するか妨害要素を持つかのいずれかが採用され、攻防一体の展開を可能にしています。1枚で複数体のクリーチャー換算できるトークン生成カードや非クリーチャーパーマネントの採用も多く、《ゼロ除算》亡き後の青系コントロールや愚直に攻めるアグロには厳しいアーキタイプになります。
《光輝王の野心家》の後を受けるのは《婚礼の発表》であり、トークン生成と追加ドローができ、3ターン後には強化エンチャントに変身する自己完結したエンチャントです。相手を問わずに攻防に使えるミッドレンジのためにデザインされたようなカードであり、オルゾフ以外にも採用されています。《ゼロ除算》がなくなったことで活躍する機会はますます増えていくでしょう。
4マナ域を固めるのはアドバンテージの権化と呼ぶべきカードばかり。《魅せられた花婿、エドガー》は除去に強く、サイズ感も相まってクリーチャー戦では特に頼りになるクリーチャーです。《エシカの戦車》を喜んでブロックできるのはスタンダード広しといえど《魅せられた花婿、エドガー》くらいでしょう。追放除去かバウンス、飛行クリーチャーもないデッキではこれ1枚で完封されてしまいます。
《ヘンリカ・ダムナティ》と《不笑のソリン》は状況を選ぶものの、貴重なカードアドバンテージ源となるパーマネント。前者はクリーチャートークンがいれば除去としても機能し、対象を取らないため《黄金架のドラゴン》の対処手段としても適役であり、変身後は絆魂を絡めてダメージレースをけん引してくれる存在です。
後者はトークンサイズが2/3とやや心細いものの、このデッキでは《光輝王の野心家》や《婚礼の発表》など強化できるカードが多いため、見た目以上に強固な防御壁となります。相手のアーキタイプによってアドバンテージの質を変更できる点も優れていますね。
イゼットコントロール
大幅な弱体化をしいられて消えると思われたイゼット系デッキは、純粋なコントロールとして生まれ変わっています。Roope Metsa選手のイゼットコントロールは《感電の反復》や《予想外の授かり物》そのままに、フィニッシャーを《船砕きの怪物》へと置き換えています。
デッキ内でも異彩を放つのが《感電の反復》です。てっきり《アールンドの天啓》とセットで抜けるものかと思っていましたが「フラッシュバック」付きのためか、相手に合わせて用途を変えられるアドバンテージ源として残っています。この枠を打ち消し呪文やドロー、除去にするればマッチアップによっては無駄なカードが増えることになります。
しかし、《感電の反復》を採用することでマッチアップによる不要牌を減らすと同時に、コピー前提にはなりますが有効牌の水増しに成功しているのです。今後も見かける1枚となりそうですね。
さまざまな火力が採用されていますが、メインボードから緑系のデッキを意識していたことが伺えます。白系のデッキが減少もしくは多色化してタフネスの低いクリーチャーが減ることを見越して《棘平原の危険》や《燃えがら地獄》が減少し、代わりに《バーニング・ハンズ》や《悪魔の稲妻》、《家の焼き払い》が多めに採用されています。
《家の焼き払い》は5ターン目の《レンと七番》をはじめ、環境にいるクリーチャーとプレインズウォーカーを軒並み一掃できる強力な全体除去。ミッドレンジ帯のゲームでは特に効果が高く、白単アグロのような多数の小型クリーチャーによるビートダウンが増えない限りは今後も見かける1枚となるでしょう。
セレズニアミッドレンジ
セレズニアミッドレンジは2マナ域のマナクリーチャーからジャンプアップし、3ターン目に4マナ域へと繋ぐ速い展開を強味にしています。ほかにも《フェリダーの撤退》や《シュタルンハイムの解放》など1枚で複数のクリーチャーを展開できるカードを主軸にしており、トークンデッキといっても差し支えありません。
足場を支えるマナクリーチャーは3種10枚。《ドーンハルトの主導者、カティルダ》は人間クリーチャーが多ければ多いほど活躍できますが、このデッキでは大量のマナをブーストすることはありません。2マナから4マナへの加速、これだけで十分なのです。
代わりに中盤以降は余ったマナの使い道として自軍を強化してくれます。《婚礼の発表》や《フェリダーの撤退》、《エシカの戦車》など1枚で複数体のクリーチャートークンを並べるカードが多く、マナコストの割に見た目以上に脅威となります。
このデッキの主力を務めるのは《エシカの戦車》ですが、ほかの4マナ域も負けてはいません。《フェリダーの撤退》はコントロール戦に強い非クリーチャーパーマネントであり、中盤以降の土地カードをすべて有効牌へと変換してくれます。ミッドレンジながら《シュタルンハイムの解放》や《エメリアの呼び声》などマナコストの重い呪文も多いため、マナを伸ばしつつブロッカーを提供してくれるこのカードは時間稼ぎにもピッタリ。頭数が揃えばボードの強化もできるため、無駄になることはありません。
単純な脅威よりもメタカード的な意味合いが強いのは《鎮まらぬ大地、ヤシャーン》です。コストの支払いの一部に生け贄に捧げることを要求するオルゾフ系には強く、イゼットの《予想外の授かり物》や《黄金架のドラゴン》の効果も半減させてくれます。
ミッドレンジデッキながらスペルランドを加味するとマナソースは多く、余る場面も発生します。そこで《シュタルンハイムの解放》のようなマナコストにXを含むカードや《エメリアの呼び声》のような重めのスペルランドを採用することで、土地を引きすぎた際の受けを用意しています。これらのトークンはミッドレンジ同士の勝負に限らず、全体除去がない限りコントロール戦においても有効な一手となります。
ボロスアグロ
トップ8に唯一残ったアグロデッキ、それがボロスアグロでした。白単アグロをベースに1マナ域を削り、《黄金架のドラゴン》と《スカルドの決戦》へと入れ替えて攻撃の選択肢を増やしています。クリーチャー化土地やスペルランドも多く、速いデッキながら中盤以降も攻め手が途切れない工夫が見られます。
改定後も《光輝王の野心家》の強さは変わることなく、環境でベストの2マナ域のクリーチャーです。出すターンが早ければ早いほどリターンが大きく、環境から《棘平原の危険》や《燃えがら地獄》が減ったことでこれまで以上に定着しやすくなっています。
最近単色化に拍車がかかっていたため久しく見ることのなかった《スカルドの決戦》が採用されています。このデッキでは従来通り、リソース補充と戦場強化の二役を兼ねていますが、2マナ以上のカードで構築されているためできればセットランド権のある5ターン目以降にプレイしたいところ。そうすることで余すことなくカードを使い切ることができます。もっとも打ち消し呪文がある相手や押されている状況では4ターン目に設置せざるを得ませんが。
見慣れない《天使火の覚醒》は単体を二回り強化してくれるカードであり、一時的ですが絆魂や警戒、破壊不能が付与されるため隙を作ることなく攻撃へ向かえます。1枚でダメージレースをひっくり返せるためアグロには効果てきめんですが、できることなら飛行を持つクリーチャーを対象にしてダメージレースをリードし続けたいところです。
5枚のクリーチャー化土地に8枚のスペルランドと、マナの引きすぎをこれでもかというくらいケアしています。スペルランドの中でも《セジーリの防護》は貴重な除去に対するカウンターカードであり、《天使火の覚醒》や《スカルドの決戦》で育てたクリーチャーを単体除去から守ってくれます。マナコストも2マナと《黄金架のドラゴン》と相性がいいため、オルゾフ相手には構えながら着地を目指しましょう。
おわりに
始まったばかりの新環境ですが、オルゾフ系が一歩抜け出していることがわかりました。メタゲームも判明したため、来週にはコントロール側の構築も適正化されるはず。そうなるとさらに別のデッキが活躍する可能性があり、しばらくはスタンダードから目が離せませんね。
次回もスタンダードの情報をお届けします。それでは!