あなたの隣のプレインズウォーカー ~第125回 神河からネオ神河へ~

若月 繭子

ようやく語れるネオ神河

こんにちは、ご無沙汰しておりました。若月です。ネオ神河の仕事が忙しくて、なかなかネオ神河の記事が書けませんでした。本末転倒だ。その仕事専用の担当をください!!!

欠片の双子

ネオ神河の仕事。そのひとつはこちらです。みなさん行きました?

「マジック:ザ・ギャザリング バーチャル・アート展 ~総勢83名のアーティストたちが描く『神河:輝ける世界』~」。展示構成やアドバイスやテキスト作成などいろいろ関わらせていただきました。私もVRに触れたのは初めて、それも専用機器ではなくごく普通のPCでの閲覧でしたが、それでもすごい没入感!実際に神河世界を歩いてる……と圧倒されました。美麗なアートを詳細に存分に眺め、アーティストさんのコメントやラフ画までも堪能できる。期間限定開催なんてもったいなさすぎますよね。

せっかくなので記念自撮り。スクショもたくさん撮ってきました。これはほかの次元にも行ってみたいと思いません?ラヴニカの街路やイニストラードの古城を歩いてみたい!ゼンディカーで面晶体に登ったり、イクサランの海賊船に乗ったりしてみたい!!

さて、ネオ神河。ここまで様変わりした世界に「再訪」するは初めてかと思います。前回の訪問から1200年を経て様変わりした新たな神河は、予告通りの和風サイバーパンク世界……でしたがカードや物語で明らかになったその様子は、大方の予想を遥かにぶっち切っていました。

メカ巨神のコア都和市の整歌師大牙勢団の襲撃

巨大ロボ!DJ!暴走族!誰がそこまでやれと言った!!過去にも『タルキール』ブロックや『カラデシュ』ブロックのように、これまでのマジックとは一味違う雰囲気の次元が登場したときは大いに盛り上がっていましたが、ネオ神河も例外ではありませんでした。メインストーリーでは冒頭からラーメンと餃子とカツカレーですよ、と思ったらカードにまでラーメンが出てるって本当に何だよ腹減るわ!!!飲める屋のメニューにどうです?

波止場の料理人

このようにこれまでにない要素だらけなネオ神河、取り上げたい内容がとてもたくさんあります。とはいえ、まずはあまり深くないところから始めるのが良いかなと。そういうわけで今回は、旧神河とネオ神河を繋ぐ出来事や人物について、新カードや旧神河のストーリーも交えつつ解説します。

1. 「ネオ神河」という呼称

カードの話に入る前に、やっぱりこれについて書いておこうと思います。複数回訪問している次元では、「いつの訪問のセット/ブロックか」を判別するための呼称が必要とされます。だいたいは定まったものがあるわけでなく、わかりやすく言いやすいものが自然と採用される傾向にあります。『ラヴニカ』ブロックに対する『回帰』ブロック、『イニストラード』ブロックに対する『イニ影』ブロック、などです。また初回のセットに「初代」「旧」といった接頭語をつけて区別することもあります。

新たな視点

そんな中で『神河:輝ける世界』は、初報から自然発生的に「ネオ神河」と呼ばれていました。これは決して正式な呼称ではありませんし、さすがに公式では使用されないものの、すっかり「ネオ神河」で定着しています。

ここで疑問なのは、なぜ「新神河」じゃなくて「ネオ神河」なのか?英語名が「Neon Dynasty」なので決して間違っていないのですが、三文字略称がNEOなのでNEO神河で別に間違っていないのですが、いや三文字略称が公表されたのは初報からずっと後なんだけど、いや疑問でも何でもなく全員がわかっているだろうけど、あえて説明……

「全員がわかっているだろうけど、あえて説明していいものだろうか」と思っていたらド直球に説明しても問題なくなったわ!!!「サイバーパンク日本+忍者」ということで、多くの人がこの「ニンジャスレイヤー」とその舞台である「ネオサイタマ」を連想・意識して「ネオ神河」と呼んでいるというのは間違いないと思います。

さすがにコラボはないかなーって思っていたらまさかの発売日に!NRS(ネオ神河・リアリティ・ショック)起こしたわよ!!そしてこれも何度も書いていますが、「ネオサイタマ」と「ネオカミガワ」で語感が完全に同じなんですよね。そのためなのか、「ネオ神河」の呼称だけでもサイバーパンクな雰囲気が感じられます。もし再訪した神河世界が、旧神河からさほど変わらない戦国時代+日本神話次元、あるいは少し進んで江戸時代くらいの設定であっても「ネオ神河」とは呼ばれなかったかもしれません。

ちなみにこのツイートにある「アブハチトラズ」とはニンジャスレイヤーの文脈(「忍殺語」)で「一挙両得」的な意味であり、ことわざの「虻蜂取らず」の本来の意味「二つのものを同時に取ろうとして両方とも得られないこと、欲を出しすぎると失敗すること」ではありません。正しい用法を理解しているマジック日本公式……

Goblin Ski Patrolゴブリンの洞窟探検家殺戮の叫び

「AIIIEEEE!」

一方で『神河:輝ける世界』の英語名は『Kamigawa: Neon Dynasty』。ネオ神河が日本のポップカルチャーを大いに意識していることを考えると、こちらはやはり「Neon Genesis Evangelion」が頭をよぎりません?巨大ロボたくさんいますし、マローの記事にも「人類補完メカ」なんてありましたし……

真っ当な説明をしますと、Neonは元素としてのネオン(Ne)、それを用いた照明設備の名称(ネオンサイン)でもあります。Kamigawa: Neon Dynastyを直訳すると「神河:ネオンの王朝」という感じですかね。ネオンの明かりというのはサイバーパンク作品に欠かせないイメージであり、現代神河の都和市はきらびやかなネオンに照らされています。

摩天楼や《耐え抜くもの、母聖樹》の影になっていて薄暗いため、という理由がとても現実的。でも一般的サイバーパンクに漂うような退廃的な雰囲気はあまりなく、そこかしこに咲く鮮やかな桜の花もあいまって美しさを感じさせます。

陰鬱な僻地沼

ちなみにこの「三文字略称がNEO」であるためか、「ネオ神河」でググるとしっかり日本公式ウェブサイトがトップに来る(2022年2月末現在)のがよくできています。

2. 神の乱とその周辺

ここでまずは『旧神河』ブロックのメインストーリーである「神の乱」をざっとおさらいしておきましょう。《永岩城の君主、今田》は老いを怖れ、そして永遠の権力を求めて《復讐の神、大口縄》の精髄を盗み出しました。大口縄は怒り狂い、多くの神が人へと牙をむきました。

復讐の神、大口縄最後の裁き

大口縄は人が住まう定命の領域である現し世へと顕現し、《永岩城》に迫って御物を取り戻そうとしました。ですがそこで《梅澤俊郎》が乱入して御物を奪い取ると、樹海に避難していた《真実を求める者、今田魅知子》のもとへと届けたのでした。俊郎は《三日月の神》から話を聞かされて神の乱の真実を知っており、御物を魅知子のもとへ届けるのが最善と判断したのです。魅知子は御物と対話し、その中に封じられた神――香醍を解き放ちました。

真実を求める者、今田魅知子

そして香醍と魅知子、精霊と定命の姉妹は話し合い、それぞれの父親が乱した世界の理を修復すると決めました。ふたりは超常的な技と力をもって大口縄を、続いて今田を倒し、それをもって神の乱を終わらせたのでした。

■神の乱

神の乱神の乱

『神河:輝ける世界』では過去の出来事が英雄譚としてたくさんカード化されています。そうであれば「神の乱」そのものがないわけがない。旧神河のカードではあまりよくわからなかった大口縄の全身が、英雄譚の縦長フレームを生かして美しく描かれています。

カード能力のほうも、大口縄は物語でもまず遥か遠くの空に顔を出してからじわじわと近づいてきたので、英雄譚の章を経て場に損害を与えてから本体が登場というのは展開的に理にかなっている気がします。5色6マナ6/6飛行トランプルという基本ステータスがきちんと《復讐の神、大口縄》と同じなのもいいですよ。

大口縄はヤマタノオロチがモチーフらしいのですが、このカードアートを見るにむしろ東洋龍に小さめの首がもう7つついている形状なんですね。なるほど、複数の首があってもハイドラというよりは龍寄り。大口縄は神河最強の神であり、ほかの次元の神/Godに比較してもなんら遜色ない存在です。

むしろ、そこらの(失礼)「クリーチャー・神」よりずっと強いでしょう。それでも《顕現した大口縄》は(《復讐の神、大口縄》もですが)「ドラゴン・スピリット」。神河の神はGodではなくあくまで森羅万象の精霊、Spiritなのだという一貫性を感じました。

■今田と香醍

永岩城の君主、今田奪われし御物

《永岩城の君主、今田》は「破壊不能」能力を持っていますが、これは彼が手に入れた《奪われし御物》に由来するものです。破壊不能なパーマネントというのは『旧神河』ブロックのひとつ前、最初の『ミラディン』ブロックで登場しましたが(「破壊されない」概念自体はアルファ版から存在しました。《土地の聖別》)、そちらは「破壊されない金属、ダークスティール製であるため」という理由でした。一見ただの人間である今田が「破壊されない」というのは、当時かなりの驚きをもって迎えられたように記憶しています。

そんな「破壊されない」はずの今田は最後どうなったのかといいますと、香醍によって石化され、粉々に砕かれました。その様子が、英雄譚として今回カード化されています。

君主今田の凋落君主今田の凋落

英雄譚《君主今田の凋落》には、今田へと裁きを下す香醍と魅知子の姿が描かれています。そしてこの今田ですが、フレイバーテキストが示すように、死んではいないのです。

《今田の断片》フレイバーテキスト

神に対する罪によって君主今田の不死身の身体は石と化し、砕け散って千の生きた断片になった。

これも『神河救済』小説で言及されていました。今田は香醍によって生きたまま石化され、視覚と聴覚を保ったまま砕かれて破片と化し、それでもなお生きていたのでした。

小説「Guardian: Saviors of Kamigawa」チャプター25より訳

香醍は石化した今田の顔面に拳を叩き込み、頭部と胸の上部までを砕いた。一瞬の静止の後に再び殴りつけると、残る全身が破片と塵に砕け散った。

今田は死ななかった。無数の破片と化したその目に、砕け散った脳からの感覚が送られ続けていた。この森や自分を壊した女性をひとつの視界で見るのではなく、無数の色彩と基調で、その全てが重なり合うと同時にばらばらに離れ、全体を把握する術はなかった。

(略)

香醍は立ち上がり、背を向けた。今田は悲鳴を上げようとした。自らの内に高まりつつある憤怒と恐怖を解き放とうとした。

だが、大名の破片は石のように沈黙を続けた。

「拳を叩き込み」「自分を壊した女性」という描写ですが、御物から顕現したばかりの香醍は、今回のカードにあるようなおどろおどろしくも荘厳な龍ではなく、蛇の面影を宿す人の姿をしていました。だからパンチもできます。この粉々にされた今田が、その後どんな扱われ方をしたのかはわかりません。もしかしたら今も一部が保存されていたりするのでしょうか。

神河の魂、香醍精霊の姉の召集

そしてこちら、香醍。物語では『神河救済』から登場していましたが、カードで言及はされていなかったので知らなかった人も多いかと思います。上で説明したように元は《奪われし御物》、大口縄の精髄でした。ですが今田によって奪い取られたことにより、それは大口縄の一部ではなく自我を持つ一体の神となったのです。

後に御物は魅知子によって解放されますが、「御物」の呼び名を嫌いました。ならば単純なことだ、と俊郎が「香醍」の名を提案し、神はそれを受け入れたのでした。その際、俊郎はキョウダイという名について「Sibling(兄弟姉妹)の意」と説明しているので、つまり兄弟なんですよね(姉妹ですが)。

《精霊の姉の召集》の「精霊の姉」とは香醍のことです。香醍と魅知子で、精霊と定命の姉妹。そして旧神河にいた伝説のスピリットの名前は崩老卑(滅び)、放粉痢(埃)、閼螺示(嵐)という感じなので、香醍(兄弟)もその命名法則に従っていると言えます。

死者の嘆き、崩老卑塵を飲み込むもの、放粉痢空を引き裂くもの、閼螺示

父親(大口縄)が5色というだけあって5色起動能力があるところとか、《奪われし御物》の面影がしっかりある能力なのが良いですよね。ちなみに大きな絵で見ると身体には小さな(実際には大きい)腕がびっしり並んでいて結構怖いです。『神河救済』で初登場した際には上にも書いた通り人型をしていましたので、今回ドラゴンとしてカード化されたのは割と驚きました。

大口縄は神河最強の神であり、隠り世と現し世(精霊の領域と定命の領域)との境界を統べる神でもありました。その大口縄が消失した結果、ふたつの領域は統合を始めました。香醍はこの現象に対処しようとし、それを支えるために設立された組織がやがて皇国となりました。香醍はまた、皇国の皇を指名する役割を担っています。

公式記事「プレインズウォーカーのための『神河:輝ける世界』案内」より引用

定命と精霊の領域はやがてひとつに統合し、神と定命の境界など無いひとつの次元を形成する――哲学者や科学者たちはそう信じている。だがふたつの領域が完全に統合したなら何が起こるのか、それは誰にもわからない。

上で神河の2つの領域を「現し世」「隠り世」と書きましたが、実のところ今回ネオ神河では話中でも外部でも、ほとんどこの呼び名は用いられていません。1200年が経って廃れてしまった、みたいな設定なんでしょうかね。まあメタ的に考えると英語表記でもUtsushiyoとKakuriyoなので日本以外ではわかりにくい、という理由だと思われます。

3. 梅澤俊郎の伝説

まずこちらの話をちょっと。

真実を求める者、今田魅知子三日月の神梅澤俊郎
無情の碑出告神河の歴史、暦記

旧神河の各色メインキャラクターが描かれた「Secret Lair Kamigawa Ink」。どれもかっこいいですよね!実のところ《神河の歴史、暦記》は未登場なのですが、これ旧神河ストーリーに緑のメインキャラがいないための選出と思われます。《清められし者、せし郎》一家や《生網明神》《昇る星、珠眼》がごく短い間出ていたくらいですね。

また、魅知子・俊郎・碑出告はネオ神河のカードに参照があり(碑出告に至っては再カード化されていますな)、暦記はネオ神河における緑の勢力のひとつ、歴史の保存を目的とした芸能集団「歴演衆」の創設者として名が残されています。ですが《三日月の神》はカードにも設定にも見当たりません。こいつは旧神河の黒幕であり(今田のさらに後ろにいた)、『神河救済』終盤で碑出告に食われて消えました。とはいえ一応、ネオ神河メインストーリーにこんな描写が。

『神河:輝ける世界』メインストーリー第1話「永岩城の異邦人」より引用

空腹にかられて中央の卓へ目をやると、青色の丸い餅が揃いの皿に座し、それぞれが小さな黄色い目と、三日月のような笑みで飾られていた。

丸くて青い餅、三日月のような笑み。これは《三日月の神》の名前が「望(もち)」だという旧神河ネタと思われます。モチのモチ。ちなみに名前がMochiで同じですが、ネオ神河のマスコット?「餅の神」ちゃんとはたぶん無関係です。カード化はされませんでしたが《冥途灯りの行進》ショーケース版にいるよ。でもなんで緑色なんだろう……餅は餅でもずんだ餅の神なんだろうか。

冥途灯りの行進

さて本題。旧神河の主人公である梅澤俊郎の名は、1200年を経たネオ神河の時代にもしっかり残されています。

梅澤俊郎の生涯梅澤俊郎の生涯

……それ俊郎本人っていうより十手なんですが。たしかに、我々にとっては梅澤俊郎といえば《梅澤の十手》です。実際私も、十手の方はスタンダードの2年間使い倒しました。でもちょっと笑ってしまうくらいです。

『神河救済』の結末付近。樹海にて大口縄と今田が倒された後、俊郎は魅知子たちに別れを告げてひとり旅立ちました。ですが樹海を出ないうちに、かつて敵対した空民の暗殺者に襲われます。絶体絶命のピンチの彼を救ったのは《夜陰明神》でした。明神は今一度忠誠を問いかけ、俊郎が応えると彼を神河ではない世界――ドミナリアへと連れ出したのでした。

神河でこの事実を知る者は、恐らく明神本人が伝えない限りは誰もいません。つまり「神の乱は終結したが、その後梅澤俊郎の姿を見た者はいない」。俊郎の行方は、神河の歴史における解けない謎のひとつとして残されているのではないでしょうか。

元々没落した侍一家の出身で無頼のアウトローな俊郎に、信頼のおける記録が残っているとは考えにくい。俊郎については、面識があった者たちの証言から推測するしかないわけです。よって俊郎は神河の歴史における重要人物でありながら、本人の記録も記憶も曖昧にしか残されていない――というのは理にかなっていると言えます。

《俊郎の記憶》フレイバーテキスト

「ある者は彼を神の乱の英雄と呼ぶ。ある者は彼を身勝手な盗人と呼ぶ。この世のすべてのものと同様に、真実はどこかに隠れているのだ。」――歴演衆の創始者、暦記

公式記事「神河史譚:梅澤俊郎の生涯」より引用

歴史的記録は俊郎を、魅知子姫に誓いを捧げた気高く献身的な人物であるように描きがちである。

この記述には「ないないそれはない」と笑ってしまいました。英雄譚《梅澤俊郎の生涯》について解説したこの記事には「俊郎の悪行」が列挙されているのですが、実際その通りなので笑うしかない。高度な技術が発達した神河には、さまざまなエンターテインメントが栄えているでしょう(DJがいるくらいですし)。我々の次元における歴史小説やドラマやゲームのように、現代の神河において梅澤俊郎という人物は、いろいろな媒体と解釈で表現されているのだと思います。ロマン。

同記事より引用

以来神河では千年以上が過ぎたが、俊郎の冒険の物語に心動かされる者は今も存在する。長い年月を経ようとも、見覚えのある者たちが、彼を忘れていない者たちが今もこの次元に生きているかもしれない……あるいは、梅澤の家名を受け継ぐ者すらいるかもしれない。

「見覚えのある者たち」「彼を忘れていない者たち」は碑出告と香醍ですね。ちなみにこの両者も面識があります。『神河救済』終盤にて大口縄と今田が倒された後、三日月の神が俊郎・魅知子・香醍の前に現れました。そして黒幕であるこいつの処遇をどうしてやろうかという話になった際、香醍は俊郎に受けた恩について語りました。お前は決して善人などではないが、何の見返りも求めずに自分を救い出してくれたと。香醍は碑出告を召喚しました。碑出告にとって三日月の神は、弟子のひとりの死をもたらした仇だったのです。碑出告は喜んで三日月の神を食らい、俊郎にも礼を言うと去っていったのでした。

そして「梅澤の家名を受け継ぐ者」は、言うまでもなくこの人です。

梅澤悟

登場当時から何者なんだと話題になっていた悟ですが、先日正式な解説が出ました。「自称子孫」だそうです。

公式記事「『神河:輝ける世界』の伝説たち」より引用

彼はかの有名な梅澤俊郎の子孫を自称している。それを証明することは誰もできないが、あえて疑問を呈する者もまたいない。

これはとても納得のいくところです。証明はできないけれど否定もできない。1200年前の事情を知る我々も実際そうなんだよな。本当に俊郎の子孫かもしれないし違うかもしれない。俊郎本人はドミナリアへ渡ったので直接の血筋は残っていないはずだけど、話中で《夜の華、切苦》と一夜の関係を持っていたので絶対ないとも言い切れない(詳しくは第123回に)。

悟の存在を最初に知ったときは、一瞬首をかしげた後にその件を思い出して「俊郎お前ェェェ!!」ってなったわ。神河世界内で「疑問を呈する者もまたいない」のは、極道のボスが自分のルーツを主張していたらそれを否定するなんて怖くて誰もできないのはそりゃそうですよね。真実は誰もわからない、それでいいじゃないですかロマンあって。

またこれは与太話ですが、仮に悟が俊郎の直系だとしたら、ドミナリア梅澤家と神河梅澤家はどっちが本流になるんでしょう。本人が渡ったドミナリアのほうなのか、本人の故郷である神河のほうなのか。どう思いますか哲子ちゃん。

4. 今回はここまで

以上になります。やはりこういう過去ストーリーを踏まえた設定話をするのは楽しい! 初動こそ遅くはなりましたが、ネオ神河についてはまだ数本書く予定です。色々取り上げたいんですよ。ネオ神河の様々な物事やプレインズウォーカーたち、そして「異次元の脅威」についても……

放浪皇漆月魁渡Jin-Gitaxias, Progress Tyrant

それではまた次回に。

(終)

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若月 繭子 マジック歴20年を超える古参でありながら、当初から背景世界を追うことに心を傾け、言語の壁を越えてマジックの物語の面白さを日本に広めるべく奮闘してきた変わり者。 黎明期から現在までの歴代ストーリーとカードの膨大な知識量を武器にライターとして活動中。 若月 繭子の記事はこちら