はじめに
みなさんこんにちは。晴れる屋メディアチームの富澤です。
前回は勢力を伸ばしつつあるナヤルーンと、《策謀の予見者、ラフィーン》の強さが際立つエスパーミッドレンジをご紹介しました。どちらも序盤からボードにプレッシャーをかけていく攻撃的な戦略をとりながら、長いレンジも戦えるアーキタイプです。
先週末にメタゲームの変化はあったのでしょうか?今回はMOのオンラインイベントの結果を振り返っていきます。
先週末の注目トピックは?
『ニューカペナの街角』がリリースされて3週目となり、メタゲームが固まってきました。最序盤からマウントをとってくるエスパーとナヤルーン、豊富な除去と《エシカの戦車》で盛り返すジャンドが先頭集団、ほかのデッキが第二集団を形成しています。
トップメタの一角となったエスパーミッドレンジの強さを支えているのは間違いなく《策謀の予見者、ラフィーン》です。高タフネスに「護法」、さらに多色かつデーモンのため《消失の詩句》と《パワー・ワード・キル》の高性能除去に耐性があり、適切なタイミングで対処するのは困難を極めます。
しかし、いつまでも《策謀の予見者、ラフィーン》を出されて「はい、そうですか」と諦めているわけにはいきません。メタゲームが明確になるにつれて各々のデッキはアップデートされ、メタカードを積むことでエスパーミッドレンジの牙城を崩さんとしています。
今回はメインボードに増えつつある《策謀の予見者、ラフィーン》対策を見ていきます。
「護法」の影響を受けない
「護法」とは、“このパーマネントがあなたの対戦相手がコントロールする呪文や能力の対象になるたび、特定のコストを要求する”誘発型能力です。つまり、クリーチャーを対象にとらない除去ならば追加コストを支払わずにテンポ良く対処できるわけです。
《土建組一家の魔除け》と《魂の粉砕》はこの条件を満たす除去呪文であり、自分が先手でも後手でも、3ターン目に出された《策謀の予見者、ラフィーン》を対処してくれます。マナコストを参照するため中盤以降は《漆月魁渡》や《放浪皇》など的が増えてしまいますが、ほかの除去呪文とセットで使うことである程度狙いを絞り込めます。
《策謀の予見者、ラフィーン》専用カード
「色拘束が厳しくなっただけの《名誉回復》」と囁かれていた《虚空裂き》ですが、《策謀の予見者、ラフィーン》を前にしてこれほど頼もしい除去呪文はありません。まさか「打ち消されない」の一文がこんなにも早く脚光を浴びるだなんて。先ほどの《土建組一家の魔除け》などと比べて、いつ引いても(土地を除く)好きな対象を除去できるのがメリットです。
また、かつては白単アグロ専用カードであった《レイ・オヴ・エンフィーブルメント》はエスパーミッドレンジ専用カードへと姿を変えつつあります。「護法」の追加マナを支払ったとしても2マナでプレイできる最軽量の除去呪文であり、先手3ターン目にプレイされた《策謀の予見者、ラフィーン》に対しても「謀議」を誘発させることなく処理してくれます。
上記の流れにのれば、続く3ターン目には自分のパーマネントを展開するゆとりが生まれます。テンポ面に優れる《レイ・オヴ・エンフィーブルメント》は先手後手を入れ替えるきっかけとなります。
《策謀の予見者、ラフィーン》を使わせない
ここまで戦場へ出た《策謀の予見者、ラフィーン》をどう対処するかについて述べてきましたが、究極的にはプレイさせなければ良いわけです。手札破壊や打ち消し呪文がパッと思い浮かびますが、ここでは赤の特権である土地破壊に着目しましょう。
《ラフィーンの塔》を手に入れましたが、エスパーミッドレンジはかなり色マナがタイトなデッキです。2ターン目までに白と黒、3ターン目に白青黒の3色を揃える必要があり、基本土地はほとんど採用されていません。入っていてもせいぜい1~2枚程度で、仮に引いてしまっても滞りなく呪文がプレイできるように、デッキの大半を占めるカラーである《平地》か《沼》になっています。
ここに大いに隙あり。《浄化の野火》や《廃墟の地》で青マナを狙い撃ち色マナを不足させ、《策謀の予見者、ラフィーン》の着地を遅らせるのです。1枚目の《浄化の野火》こそ悠々と基本土地をサーチされてしまうかもしれませんが、2枚目3枚目と割っていくうちにデッキ内の基本土地は枯渇していきます。必要な色マナが揃わなければ呪文をプレイすることすらかないません。
土地破壊戦略は色マナの厳しさを逆手に取った《策謀の予見者、ラフィーン》自体を使わせない対策なのです。
前置きが長くなりましたが、それでは大会結果をみていきましょう。
Standard Challenge #12418747
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | sokos13 | エスパーミッドレンジ |
準優勝 | LarryBeal | ナヤルーン |
トップ4 | Diem4x | 白単アグロ |
トップ4 | wefoldforfood | ナヤルーン |
トップ8 | XlperTxT | ロアホールドシュート |
トップ8 | ovmlcabrera | エスパーミッドレンジ |
トップ8 | _INF_ | エスパーコントロール |
トップ8 | LucasG1ggs | 5色エシカ |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
Standard Challenge #12418747はエスパーミッドレンジを使用したsokos13選手が優勝しました。冒頭の対策カード《浄化の野火》を意識してのことか、sokos13選手のデッキには《島》を含む基本土地が計4枚採用されています。
トップ8に入賞したLucasG1ggs選手のデッキは《樹の神、エシカ》から《産業のタイタン》を呼び出す踏み倒しコンボです。《ジェトミアの庭》などの3色土地が出たことでマナベースが強化され、《急使の手提げ鞄》《鏡割りの寓話》が早期プレイを助けます。
仮にコンボが決まらなければ豊富な英雄譚をいかした除去コントロールとして立ち回ります。英雄譚は《樹の神、エシカ》の効果に引っかからずにフィニッシャーを確保できるため、多めに採用されているのです。
メタゲーム
デッキタイプ | トップ32 | トップ16 |
---|---|---|
エスパーミッドレンジ | 12 | 5 |
ナヤルーン | 5 | 3 |
ジャンドミッドレンジ | 3 | 1 |
オルゾフミッドレンジ | 3 | 1 |
白単アグロ | 1 | 1 |
オルゾフミッドレンジ | 1 | 1 |
その他 | 7 | 4 |
合計 | 32 | 16 |
前回のStandard Challengeと最多勢力が入れ替わり、エスパーミッドレンジが一番手となりました。ナヤルーンと同じく相手に対処を迫るデッキではありますが、除去耐性と攻撃手段の多さ、サイドボードの質から軍配が上がったと思われます。メインボードは直線的な仕様ながらサイドボードにはインスタントトリックが豊富にあり、硬軟織り交ぜた戦略が可能となります。
トップ8デッキリストはこちら。
エスパーミッドレンジ
一口にエスパーミッドレンジといっても環境が進んだことで構成はバラつきをみせるようになりました。プレインズウォーカー多めの消耗戦を意識した構築もあれば、重いカードを減らして《常夜会一家の介入者》を厚めに取ったリアクション型も増えています。3ターン目までは同じようにボードにクリーチャーを展開してプレッシャーをかけていきますが、それ以降は構築により動きがガラッと変わっていきます。今回ご紹介するのは呪文軸のコントロールに耐性をつけた、やや珍しいリストです。
コロンブスの卵というべきか、これまで使われる側だったエスパーミッドレンジに《スレイベンの守護者、サリア》が採用されています。元々エスパーはミッドレンジにしては非クリーチャー呪文が少なめでしたが、ここまで思い切った構築は初めてです。
当たり前のことですが、《スレイベンの守護者、サリア》を採用することで各種呪文のマナコストは引き上げられます。《スレイベンの守護者、サリア》がいる状態で《策謀の予見者、ラフィーン》を対象にとろうものなら、元のカードのマナコスト+2マナを要求するわけです。彼女の庇護のもと《策謀の予見者、ラフィーン》が定着することで「謀議」に対応して除去することも困難となり、安心して攻撃を押し通せるようになります。イゼットのような呪文に寄せたコントロールに対してかなり強い構築です。
《スレイベンの守護者、サリア》を採用するデメリットは、自身の呪文も影響を受けてしまう点です。そのため除去枠にはクリーチャーである《スカイクレイブの亡霊》が採用されています。4マナ以下のあらゆるパーマネントを対処し、しかも追放するため《しつこい負け犬》を使いまわされる心配もありません。
クリーチャーであるメリットは先に出しておくことで、《策謀の予見者、ラフィーン》が着地してすぐに「謀議」が誘発できる点にあります。最近は《蜘蛛の女王、ロルス》よりも《漆月魁渡》や《放浪皇》など4マナ以下のプレインズウォーカーが増えているのも追い風となっています。
オルゾフカラーを基調としたデッキでは確定枠と言われる《消失の詩句》ですが、エスパーミッドレンジなど多色クリーチャーを採用したデッキの増加にともない《冥府の掌握》と枠を分け合っています。主目的は《策謀の予見者、ラフィーン》ですが、ほかにも《税血の収穫者》や《樹海の自然主義者》などかゆいところへ手が届く除去です。
Standard League 2022-05-16
普段はトーナメント形式のStandard Challengeに注目していますが、今回はリーグ形式のイベントであるでStandard Leagueからデッキをご紹介します。5月16日に開催されたStandard Leagueで5勝したイゼットコントロールを見ていきましょう。
5-0デッキリストはこちら。
イゼットコントロール
一時は存在すらも危ぶまれていたイゼットコントロールですが、エスパーミッドレンジが流行するにつれて日の当たる場所へ戻ってきました。各種火力はそのままに、メインボードから一切の打ち消し呪文が排除されたかなり尖った構築です。打ち消し呪文なしでエスパーミッドレンジと対峙するのは至難の業。どうアプローチしていくものかと眺めていると、土地破壊へと目が止まりました。
冒頭でも触れた通り、現在のエスパーミッドレンジはマナベースのほとんどが特殊地形です。2ターン目、3ターン目と連続して動くならば基本土地だけでは色マナを補えきれず、多色地形が増えるのも必然。
イゼットが目をつけたのはまさにその部分です。エスパーミッドレンジは基本土地の枚数を抑えており、《浄化の野火》や《廃墟の地》は一方的な土地破壊として機能します。仮に基本土地をサーチできたとしても、《平地》や《沼》が優先されるため青マナが枯渇してしまうことがありえます。タイトなマナベースを狙い撃った土地破壊カードの採用こそがイゼットの戦略だったのです。
残るは火力で時間を稼ぎつつ、《表現の反復》や《大勝ち》などリソースを伸ばしていきます。そうして潤沢なマナが用意できれば、いよいよフィニッシュへと向かいます。
このデッキのフィニッシャーを務めるのは《溺神の信奉者、リーア》と新人の《秘儀の砲撃》。このエンチャントを貼って無事にターンが返ってくれば、ほとんど勝ったも同然といえるカードです。各ターンに一度ですが、インスタントかソーサリーを唱えるたびにコピー呪文が増えていくため、ターン経過とともにどんどんリソース差がついていきます。
コピーされる《浄化の野火》で相手のマナベースを完全に破壊するも良し、火力でこんがりと焦がすも良し。《家の焼き払い》が追放されれば、デビル・トークンが群れをなして襲いかかります。《表現の反復》などを手札に抱えて、コピーが連鎖できるように準備しておきましょう。しかもコピーされる呪文は各々唱えるか否かが選択できるのもポイント。自分のクリーチャーを除去したり、余分にカードを引きましてライブラリーアウトになるのを防げる安心仕様です。
重いながらもそれに見合うだけのパワーを秘めたエンチャントですが、単色パーマネントであることをお忘れなく。《消失の詩句》で簡単に対処されてしまいます。
その他の大会結果
Standard Challenge #12418758
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | sandoiche | ジャンドミッドレンジ |
準優勝 | guinthos201111 | ジャンドミッドレンジ |
トップ4 | Tunaktunak | ティムールトレジャー |
トップ4 | eragon777 | 白単コントロール |
トップ8 | Cabezadebolo | ジャンドミッドレンジ |
トップ8 | LarryBeal | ナヤルーン |
トップ8 | Sapoa | オルゾフミッドレンジ |
トップ8 | WingedHussar | ナヤルーン |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
Standard Challenge #12418758はsandoiche選手のジャンドミッドレンジが制しました。
sandoiche選手のジャンドミッドレンジはメインボードからエスパーミッドレンジを強烈に意識しています。これまで軽量除去は《絞殺》や《削剥》など火力が採用されていましたが、《冥府の掌握》《レイ・オヴ・エンフィーブルメント》と《策謀の予見者、ラフィーン》を対処できるカードへと置き換わっています。
3マナには《土建組一家の魔除け》が4枚と《策謀の予見者、ラフィーン》包囲網は構築済。「護法」の上から徹底的にクロックを潰していきます。
メタゲーム
デッキタイプ | トップ32 | トップ16 |
---|---|---|
エスパーミッドレンジ | 11 | 3 |
ナヤルーン | 8 | 4 |
ジャンドミッドレンジ | 3 | 3 |
ジャンドトレジャー | 3 | 1 |
オルゾフミッドレンジ | 2 | 1 |
その他 | 5 | 4 |
合計 | 32 | 16 |
トップ8にこそ残れませんでしたが、エスパーミッドレンジが最大勢力となりました。大健闘を見せたジャンドミッドレンジですが、メタるべきデッキがエスパーミッドレンジとナヤルーンに決まったことで、除去呪文の取捨選択がおこなわれ、デッキ構築の適正化が図られた結果といえるでしょう。
トップ8デッキリストはこちら。
おわりに
今回はエスパーミッドレンジを取り巻く包囲網と、一風変わった呪文メタのエスパーミッドレンジをご紹介しました。イゼットコントロールの土地破壊戦略はエスパーミッドレンジだけではなく、多色化し肥大しきったほかのミッドレンジのマナベースにも有効です。
今週末には『ニューカペナ・チャンピオンシップ』が控えていますね。トッププレイヤーたちはどんなデッキを持ち込むのでしょうか?エスパーミッドレンジの構築などかなり気になりますね。
次回はチャンピオンシップの大会結果を中心にお届けしたいと思います。それでは!