Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2022/5/19)
決戦の相棒、ビビアンポッド
みなさんこんにちは。ジェレミー・デザーニ/Jeremy Dezaniです。
先日、第20期モダン神決定戦で防衛に成功しました。その際に使用したデッキ、ビビアンポッドについて今日は解説したいと思います。
ビビアンポッドを選んだ理由
このデッキがビビアンポッドと呼ばれるのは、現在モダンで禁止されている《出産の殻》と似たことを《狩りに出るビビアン》でやろうとするデッキだからです。
このデッキはカードアドバンテージを獲得したり相手のプランを妨害したりしながらも、いざというときは瞬時に勝てるコンボを狙えるのが特徴です。
モダン神決定戦の3日前、木原 惇希さんと細川 侑也さんと最強チーム決定戦でトップ4に入賞しました。そのときに使用したのは従来からある4色エレメンタルでしたが、ビビアンポッドとの大きな違いは瞬殺コンボが内蔵されているかどうかです。
4色エレメンタル
エレメンタルはアドバンテージ獲得力がすさまじかったのですが、ゲームの決着力に不安が残りました。コンボ相手にそれが顕著で、アミュレットタイタン相手に《月の大魔術師》を出したものの、それ以外に攻め手がなく、結局《月の大魔術師》が除去されて負けたことがありました。
誤解のないように言っておきますが、フェアなマッチアップを想定するならエレメンタルはモダンのベストデッキだと思います。ただ、一部のコンボデッキに弱すぎるのです。確かに絶対に勝てないわけではないですが、そのマッチアップでキーとなるカードが数枚しかない80枚デッキなのです。
そのマッチアップで弱い4枚と土地3枚が初手に来たらどうするでしょう?マリガンするでしょうか?引き直したとして、手札が良くなるのでしょうか?そう簡単にはいかないでしょう。
だからこそ、コンボ戦略に速度で勝ち得るビビアンポッドを選ぶことにしました。妨害やドローをするだけでなく能動的なプランがあり、あらゆるデッキに対して戦えると感じたのです。
コンボのやり方
デッキリスト:ビビアンポッド
このデッキは《守護フェリダー》と《鏡割りのキキジキ》で《守護フェリダー》を無限に出すコンボが軸になっています。そしてこの2枚のクリーチャーを揃えるうえで《狩りに出るビビアン》の[+2]能力が活きてくるわけです。
コンボの手順
(1)《次元縛りの共謀者》をプレイし、その能力で《狩りに出るビビアン》を戦場へ。
(2)《狩りに出るビビアン》の[+2]能力で《次元縛りの共謀者》を生け贄に捧げ、《守護フェリダー》をサーチ。
(3)《守護フェリダー》の能力で《狩りに出るビビアン》をブリンクし、もう一度[+2]能力を使えるように。
(4)《狩りに出るビビアン》で《守護フェリダー》を生け贄に《霊体の先達》をサーチし、《守護フェリダー》をリアニメイトして《狩りに出るビビアン》を再びブリンク。
(5)《守護フェリダー》を生け贄に《鏡割りのキキジキ》を戦場に。
(6)《鏡割りのキキジキ》で《霊体の先達》のコピーを作り、《守護フェリダー》をリアニメイト。《鏡割りのキキジキ》をブリンクして《守護フェリダー》をコピーする。
カード選択
土地
フェッチランドは《改革派の結集者》《創造の座、オムナス》《レンと六番》とシナジーがあるので、16枚フル投入しました。
黒を含まないショックランドを1枚ずつ採用し、どんなフェッチランドからでも好きな色をサーチできるようにしています。
タップイン土地でも問題ない状況でマナ基盤を強化できるように、3色土地を2枚採りました。《楽園の拡散》と《鏡割りのキキジキ》を採用している関係で「森」と「山」を含む3色土地を選びましたが、《ラウグリンのトライオーム》や《スパーラの本部》でも良かったかもしれません。
《氷牙のコアトル》を使っていないので冠雪土地にする深い理由はありません。「森」はゲーム中に2枚サーチすることが多々あったので、2枚採用して正解でした。
呪文
マナ加速
《楽園の拡散》との強烈なシナジーがある《東屋のエルフ》は4枚。この2枚が揃えば2ターン目に勝てます。《極楽鳥》については、1マナのマナ加速があと1枚欲しいと感じていたこと、そして色事故の防止を同時にしてくれることから採用しました。
We actually got the combo into play on Turn2!!!!! This deck can win on Turn2!!!!!!!! 😱😱😱😱😱😱 #MTGModern pic.twitter.com/k4Xe9j08VA
— Andrea Mengucci (@Mengu09) May 11, 2022
「2ターン目に無限コンボ決まった!このデッキ2ターン目に勝てるよ!!」
コンボパーツ
《次元縛りの共謀者》と《狩りに出るビビアン》は、かつての《詐欺師の総督》と《欠片の双子》コンボを彷彿とさせます。また、《サヒーリ・ライ》と《守護フェリダー》でも《守護フェリダー》を無限に並べられます。
《霊体の先達》が2枚なのは、1枚だけだと手札に来てしまったときにコンボが成立しないですし、手札破壊や除去されたときにライブラリーに2枚目が欲しくなるからです。
反対に《鏡割りのキキジキ》が1枚なのは、いざとなれば2枚ある《霊体の先達》で墓地から戻せるからですね。
アドバンテージ源
この3種に共通するのは、カードアドバンテージを稼ぎ、土地を伸ばし、マナ基盤を整えてくれることです。《創造の座、オムナス》はライフを回復し、プレインズウォーカーとプレイヤーにダメージを与え、戦場に出たターンに5マナを使える状態を演出します。
《レンと六番》は《敏捷なこそ泥、ラガバン》や《発現する浅瀬》といったタフネス1のクリーチャーの排除に。《改革派の結集者》は《レンと六番》を戦場に戻すこともできれば、《狩りに出るビビアン》で《守護フェリダー》をサーチするタネとして適しており、《孤独》のピッチコストにもなります。
《孤独》
足の生えた《剣を鍬に》。ライフを回復してくれるだけでなく、《空を放浪するもの、ヨーリオン》のブリンク対象としてもグッド。手札が溢れかえるデッキなので、ピッチスペルとして稼げるテンポには大きな価値があります。
《霊体の先達》で墓地から戻しやすいのも利点ですね。《原始のタイタン》や《濁浪の執政》といった大型クリーチャーを念頭に、使いどころを見極めましょう。
《時を解す者、テフェリー》
このデッキの《時を解す者、テフェリー》には役割が山ほどあります。インスタント除去に邪魔させずにコンボを決めたり、打ち消しを無視して大型呪文を通したり。マナ加速を交えれば2ターン目に出すことも可能です。
そのほかにも《濁浪の執政》の除去。《孤独》や《霊体の先達》をバウンスして再利用。《空を放浪するもの、ヨーリオン》でブリンクしてもう1回[-3]能力の起動。《死せる生》や《衝撃の足音》といった「続唱」デッキへの切り札にもなります。
《時を解す者、テフェリー》は今のモダンで非常に強く、デッキに入れたいカードナンバーワンかもしれません。
《虹色の終焉》
《精力の護符》《敏捷なこそ泥、ラガバン》《レンと六番》の除去に適した1枚。楽々と4色を出せるデッキであり、《楽園の拡散》や《極楽鳥》があれば5色の捻出も夢ではありません。
《ニッサの誓い》
《ニッサの誓い》はビビアンポッドにおいて大きな意味を持つカードです。コンボパーツを探す、2ターン目に《レンと六番》を出せる確率を上げる、《レンと六番》と《改革派の結集者》で回収するフェッチランドを掘り当てる、土地にも呪文にもなれるのでマリガンの頻度を下げてくれる、《空を放浪するもの、ヨーリオン》でブリンクしてアドバンテージを得られる。
プレインズウォーカーの色拘束を無視できるようにもなり、レジェンドルールで2枚目を墓地に送れば《改革派の結集者》で墓地から戻すことも可能です。
サイドボード
《忍耐》
墓地対策でありながら、《ドラゴンの怒りの媒介者》を綺麗にブロックできるサイズ。《死せる生》に対しては《否定の力》をすり抜け、ゲームに大きなインパクトを与えます。
《月の大魔術師》
今もなおアミュレットタイタンへの最高の対策カードであり、このマッチアップを意識して3枚採用しています。
《狼狽の嵐》
「続唱」デッキに非常に効果的。コントロールに対しても、重めのソーサリータイミングの脅威を出しながら1マナで構えられる強さがあります。
《古えの遺恨》
《活性の力》や《耐え抜くもの、母聖樹》ではなく《古えの遺恨》を選びました。《活性の力》のように一気に2枚を破壊するよりも、序盤に1枚破壊し、後々のために1枚分を温存しておきたいケースが少なくないからです。
《夢を引き裂く者、アショク》
墓地対策とサーチ対策の一人二役。アミュレットタイタンとリビングエンドの両方に強い、数少ない1枚です。フェッチランドや《召喚士の契約》に対応して《次元縛りの共謀者》から《夢を引き裂く者、アショク》を出すプレイングもあるので覚えておきましょう。
《目覚めた猛火、チャンドラ》
自分のターンに行動せずに打ち消しを構えてくるコントロール相手に。《目覚めた猛火、チャンドラ》はそういった相手に最高のカードで、高橋 優太さんとの神決定戦3ゲーム目でも活躍してくれました。
《空を放浪するもの、ヨーリオン》
いまモダンで使える「相棒」のなかで最強です。
サイドボードプラン
デッキを選択するにあたり、アミュレットタイタン・リビングエンド・イゼットラガバン・アゾリウスコントロールとしっかり戦えるものを選びたいと考えました。
神決定戦ではこのどれかと戦うだろうと予想していました。この4つが現在のベストデッキであり、上手いプレイヤーならこのなから選ぶはずだからです。
では、これらのデッキに対するサイドボードプランを紹介しましょう。
アミュレットタイタン
対 アミュレットタイタン
リビングエンド
対 リビングエンド
イゼットラガバン
対 イゼットラガバン
アゾリウスコントロール
対 アゾリウスコントロール
神決定戦は高橋 優太さんとの対戦。現世界王者でイゼットラガバンを持ち込んだ彼に対し、3-0で勝つことができました。
今回、モダン神の座を防衛したので、次回も神決定戦に出られます。嬉しいですね。
デッキを構築し、練習相手になってくれた木原 惇希さんに感謝します。
ここまで読んでくれてありがとうございました。
ジェレミー・デザーニ (Twitter)