Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2022/7/12)
豪華なリミテッド環境を攻略しよう
みなさん、こんにちは。リー・シー・ティエン/Lee Shi Tianです。
『ダブルマスターズ2022』が先週末に発売されました。この環境を攻略するうえでまず念頭に置いて欲しいのは、このセットが新しくデザインされたのではなく再録中心になっているということです。そのため、カード間のシナジーは新セットほど強くありません。また、再録が多いがゆえに、レア/神話レアのなかには単にパックの目玉として収録しただけでリミテッドでは使いづらいものが一部含まれています。
そういった特徴を持つセットではありますが、この記事ではカードリストを掘り下げ、リミテッドにおけるアーキタイプをいくつか開拓していくことにしましょう。
セレズニアカウンター
まずはわかりやすいところから行きましょう。セレズニアカウンターです。
コモン
アンコモン
レア
セレズニアカウンターはいつの時代もわかりやすいアーキタイプですね。基本的なゲームプランは、+1/+1カウンターによるシナジーで相手を踏み荒らすことです。序盤に展開したクリーチャーを強化してサイズで圧倒し、ビートダウンによる勝利を目指します。
《牙守りの隊長》《アイノクの盟族》《アブザンの鷹匠》といった「長久」クリーチャーは、自身でカウンターを置きながらも、カウンターが置かれたクリーチャーに恩恵を与える最高のカード。+1/+1カウンターを持つクリーチャーすべてに何らかの能力を付与してくれます。トップクラスのカードとして優先的にピックしたいですし、中盤から終盤にかけて流れてきた場合は強力なシグナルと捉えてよいでしょう。
《生育》《旅の準備》《生体性改造》などのサポートカードはライフレースを狂わせます。《旅の準備》は幅広いデッキで素晴らしいカードですが、ほかの2枚は比較的流れてきやすいはずです。ただ、クリーチャーと呪文の比率には注意しましょう。ビートダウンデッキなら17~18枚はクリーチャーを入れたいところです。
《議事会の導師》や《硬化した鱗》は使えるデッキが限定的ですが、合うデッキでは異常な強さを見せます。セレズニアカウンターが卓に自分しかいなければ流れてくることでしょう。安定してドロー効果を誘発できなければデッキに入らない《英雄の記録者》も同様です。
最後になりますが、攻撃的な戦略において重要なのは、クリーチャー枚数を多く採ること、そしてテンポ良く動けるようにすることです。デッキの枠を埋めるクリーチャーとして望ましいのは、粘り強い盤面を作るもの(《宿命の旅人》《斑の子猪》)やカードアドバンテージ源となるもの(《民兵のラッパ手》へ《弱者の師》《永遠の証人》《節くれ背のサイ》)です。
スゥルタイ切削
「切削」カード
コモン
アンコモン
「切削」を活かすカード
コモン
アンコモン
レア
このアーキタイプには悩ましいほど2マナ域に優秀な「切削」カードが豊富にそろっています。キャントリップがついていたり、盤面を作ったりしながら、切削した墓地からアドバンテージを発生させていくのです。2ターン目に《錯乱した助手》を出せれば、有利に盤面を構築していけるでしょう。
「切削」を活かすカードに目を移すと、4マナ域は4ターン目に素だししても良いサイズ感のクリーチャーがそろっています。《エイヴンの修練者》や《屑肉の刻み獣》といった墓地リソースとなるカードはマナカーブ通りに出しても、終盤のアドバンテージとしても頼りになるのです。
このアーキタイプの難しいところは、「切削」カードとそれを活かすカードのバランスをとることです。「切削」を活かすカードはマナカーブ通りに唱えても問題ないものを選ぶと、デッキがよりスムーズに動くようになります。終盤になれば《リリアナの精鋭》や《蜘蛛の発生》が相手を圧倒してくれることでしょう。
このセットにはリアニメイト呪文がアンコモンに3種類収録されていて、適当なボムレアと組み合わせることも考えられます。アンコモンですが《闇の末裔》はリアニメイト対象に適した1枚です。
アゾリウスブリンク
ブリンクカード
コモン
アンコモン
レア/神話レア
場に出たときの能力を持つカード
コモン
アンコモン
レア/神話レア
これはアゾリウスの古典的なアーキタイプですね。このセットには「明滅」(ブリンク)カードがコモンにもアンコモンにも多く収録されています。「フラッシュバック」内蔵で二度味わえる《一瞬の瞬き》は紛れもなく最高のカード。《ネファリアの密輸人》や《ミストメドウの魔女》といった繰り返しブリンクさせられるカードもあります。
戦場に出たときに誘発する能力(ETB能力)を持つカードも不足なく収録されています。デッキを掘り進めてアドバンテージを連鎖させる《民兵のラッパ手》《前兆の壁》《熟考漂い》。盤面コントロールをする《探知の接合者》《霊気撃ち》《リーヴの空騎士》。黒をタッチすれば《吸血鬼の君主》《皮裂き》《オルゾフの司教》、あるいは《灰燼の乗り手》すら選択肢に入ります。
このアーキタイプの強さは疑いの余地がありません。ただ、大きな問題がひとつあります。ETB能力を持つクリーチャーはどのデッキからも欲しがられる優秀なカードなのです。《熟考漂い》や《霊気撃ち》が遅めの順手で取れることはまずないでしょう。《超現実的決着》などは、両方の効果を上手く使えないなら割に合わないカードです。こういったカードは卓を一周することを期待し、《熟考漂い》のようなアドバンテージを生むカードを優先させていきましょう。
このように、アゾリウスブリンクをドラフトする場合は、ブリンクカードよりもアドバンテージを生むカードを先に取っていきます。そうすれば、仮に後々ブリンクカードがピックできなかったとしても、アドバンテージ源となるクリーチャーが詰まったデッキに仕上がります。
5色ランプ
最後に紹介するのは、みなさんが大好きなアーキタイプ、5色ランプです。
マナサポート
コモン
アンコモン
その他各種バウンスランド。
マナ加速先のカード
コモン
アンコモン
レア/神話レア
3色のボムレア、エルドラージ。
私のようにレアドラフトが好きな方には、これがデフォルトのアーキタイプになるでしょう。5色ランプと書きましたが、デッキのベースはシミックカラーです。マナ加速呪文が緑や青緑、アーティファクトに複数収録されています。
旧ラヴニカブロックをドラフトした人は、バウンスランドがいかに強力か覚えているはずです。セットするだけで2枚分の働きをしてくれます。《エルフの再生者》から出せれば1枚で3枚分の働きをすることになりますから、これ以上バウンスランドを上手く使えるアーキタイプはないでしょう。マナ加速呪文はほかにも、エルドラージのマナ域までの距離を縮めてくれる《ルクサの恵み》、どんな3色のボムでも唱えさせてくれる《火想者の器》があります。
マナ加速後に展開する呪文についてですが、「想起」クリーチャーをどちらのモードでも勝手良く使えるのはこのアーキタイプです。ただ、コモンのなかで何よりも最高のフィニッシャーは《苛立つアルティサウルス》でしょう。《苛立つアルティサウルス》の「続唱」から6マナの伝説のドラゴンがめくれたら、相手がどんな顔をするか想像してみてください。きっと『マスターズ』シリーズのドラフトの醍醐味のひとつになるでしょう。
このアーキタイプをドラフトするなら、ひたすら流れてきたボムや色マナサポートをピックしていきます。ボムを6枚以上入れられれば、相手を圧倒することができるはずです。
赤の評価は?
以上が『ダブルマスターズ2022』リミテッドに対する私の見解です。気づかれたと思いますが、赤を含むデッキタイプを紹介しませんでした。セットデザイナーたちはジェスカイ果敢やマルドゥサクリファイスを意識してカードリストを作ったのだと思います。
しかし、使い勝手の良いキャントリップやトークン生成カードが環境に少なく、その2つのアーキタイプは組みづらいだろうと判断しました。それから、赤の除去はシングルシンボルのものが中心で、色が合っていないプレイヤーにタッチ目的で取られやすそうでもあります。というわけで、『ダブルマスターズ2022』リミテッドの初期環境では赤は避けたい色だと考えています。
では、『ダブルマスターズ2022』リミテッドをみなさんもお楽しみくださいね。