パイオニア情報局 vol.7 -『団結のドミナリア』がもたらした力-

富澤 洋平

はじめに

みなさんこんにちは。晴れる屋メディアチームの富澤です。

かつてのPTQ(プロツアー予選)を彷彿させるように各地で開催されているチャンピオンズカップ予選。プレイヤーとプロツアーの最短距離を繋ぐこのルートには、毎週末多くの参加者が集まっています。

本稿は、毎週末に各地で開催されているエリア予選へと可能な限り帯同し、デッキ分布(メタゲーム)の分析とトップ8デッキを紹介していく企画となります。

それでは早速、先週晴れる屋各店で開催された大会をみていきましょう。今回は東京大阪の両トーナメントセンターと、札幌店の大会結果を振り返っていきます。

先週末のトピック

今週末のトピックは、『団結のドミナリア』のリリースです。約10年分のエキスパンションで構成されたパイオニアにとっても、新セットのカードは魅力的に映ったようです。細部のアップデートに加えて、新しいアーキタイプも誕生しています。

ヴェールのリリアナ黙示録、シェオルドレッド硫黄泉

既存のデッキを強化したのは、《ヴェールのリリアナ》《黙示録、シェオルドレッド》といった黒い面々。《硫黄泉》もあり、トップメタであったラクドスミッドレンジはますます強化されたわけです。

特に《ヴェールのリリアナ》等価交換の難しかった《墓地の侵入者》や、《致命的な一押し》の範囲外である3マナ以上のクリーチャーをいともたやすく対処してくれます。

カーンの酒杯

緑単信心のサイドボードには《カーンの酒杯》の姿があります。常在型能力が影響するのは《しつこい負け犬》程度ですが、《大いなる創造者、カーン》から持ってこられる貴重な無色の全体除去となります。

本来はタップインによる起動までのラグが気になるところですが、《ビヒモスを招く者、キオーラ》《日没を遅らせる者、テフェリー》を採用したこのデッキでは即起動可能。対戦相手からすればライフとプレインズウォーカー、どちらを攻めるべきか悩ましい選択を迫られることになりそうです。

葉冠の幻想家

新興勢力についてはエルフがあげられます。《葉冠の幻想家》を得たことで《エルフの部族呼び》と合わせて8枚のロードを得ており、安定したボードの強化が見込めるようになりました

緑単信心と同じく、《エルフの神秘家》《ラノワールのエルフ》と8枚のマナクリーチャーから始まる展開力は、ほかのデッキを凌駕します。生きた《ガイアの揺籃の地》こと《夢の円環のドルイド》もおり、このマナを《葉冠の幻想家》でリソースへと変換していくことになります。

基本的にはロードや《エルフの戦練者》の強化でフィニッシュするわけですが、このデッキは緑らしからぬ飛び道具も擁しています。《群れのシャーマン》はこのデッキのみに許されたX火力《集合した中隊》を絡めて、思わぬ角度からライフを詰めていきます。

続いては実際のメタゲームを見ていきましょう。

各大会のメタゲームブレイクダウン

第1週(土) 晴れる屋札幌店

デッキタイプ 使用者数 占有率
ラクドスミッドレンジ 4 (20)
《不屈の独創力》コンボ 4 (20)
緑単信心 3 (15)
アブザンパルヘリオン 2 (10)
アゾリウスコントロール 2 (10)
白単アグロ 2 (10)
その他 3 (15)
合計 20 (100%)

ラクドスミッドレンジ、緑単信心、アブザンパルヘリオンとお馴染みの面々に続くのは、《不屈の独創力》コンボ。ラクドスミッドレンジの急先鋒となったデッキがここに来て再び浮上してきました。

歓楽の神、ゼナゴス不屈の独創力世界棘のワーム

トピックにあげた通り、ラクドスミッドレンジは大幅に強化、いや、強化され過ぎてしまいました。多くのプレイヤーが《ヴェールのリリアナ》入りラクドスミッドレンジを手に取ることは想像に難くなく、《不屈の独創力》コンボがメタゲームのど真ん中を狙い撃ったかたちとなりました。

環境最序盤ということも相まって、参加者の思考はデッキパワーと安定性の両立へとたどり着きます。既存のデッキへ傾倒しやすく、苦手とする青いデッキも少ない、《不屈の独創力》コンボにとって理想的なメタゲームがあったのです。

第1週 トーナメントセンター大阪&東京

デッキ名 大阪 占有率 東京 占有率
ラクドスミッドレンジ 23 (24.2) 27 (23.3)
緑単信心 14 (14.7) 13 (11.2)
アブザンパルヘリオン 9 (9.5) 11 (9.5)
《不屈の独創力》コンボ 8 (8.4) 10 (8.6)
青単スピリット 6 (6.4) 1 (0.86)
ラクドスサクリファイス 5 (5.3) 3 (2.6)
白単アグロ 4 (4.2) 6 (5.2)
アゾリウスコントロール 4 (4.2) 6 (5.2)
バントスピリット 4 (4.2) 3 (2.6)
その他 18 (18.9) 36 (31.0)
合計 95 (100%) 116 (100%)

大阪、東京の両予選は非常に似通ったメタゲームとなりましたので、比較しながら見てきます。人気が集まったのはデッキパワーの高い上位3デッキに対し、奇襲性の高い《不屈の独創力》コンボといった選択肢です。両トーナメントセンターで開催されたエリア予選でもこの傾向は変わりません。やや数を落としたものの、《不屈の独創力》コンボはアブザンパルヘリオンと肩を並べています。

隆盛するスピリット呪文捕らえ

大阪予選では、スピリットの選択者が多いのがポイント。ラクドスミッドレンジには目をつぶり、得意としている緑単信心、コンボデッキの増加を睨んだ鋭い選択です。

エリア予選の特性上、参加者に求められるのは優勝ではなくスイスラウンドでの上位数名以内に入ること。最後まで勝ち切る必要はなく、どちらかといえばトップ8前後のラインまで残れれば良いのです。ラクドスミッドレンジと緑単信心に人気が集中するのは必然といえるでしょう。

続いては実際の大会結果をみていきましょう。

大会結果

チャンピオンズカップエリア予選 in 晴れる屋札幌店

順位 プレイヤー名 デッキタイプ
権利獲得 ウメツボ トモヤ 緑単信心
権利獲得 カガ ヒロユキ アブザンパルヘリオン
権利獲得 エビタニ ケイスケ ラクドスミッドレンジ
権利獲得 ジンバ ノブアキ ラクドスサクリファイス

(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)

参加者20名で開催されたエリア予選(札幌店)を通過したのは、青を含まない4種類のアーキタイプ。好ポジションにつけていた《不屈の独創力》コンボの奇襲は失敗に終わっています。

ラクドスミッドレンジ

ラクドスミッドレンジは1枚で何役もこなすクリーチャーと手札破壊、クリーチャー除去にプレインズウォーカーとミッドレンジの王道をいくデッキ。軽量除去が多いことから青単スピリットやボロスヒロイックに強く、クリアになったボードを骨太なクリーチャーで制圧します。この手のデッキにありがちだった引きムラも《鏡割りの寓話》の加入により改善されています。

黙示録、シェオルドレッド

《黙示録、シェオルドレッド》《ゲトの裏切り者、カリタス》とマナ域が被っていますが、タフネス5は魅力的。《電圧のうねり》で落ちず、《エシカの戦車》《老樹林のトロール》を受け止め、相手の《鏡割りの寓話》やドロー呪文を牽制してくれます。

チャンピオンズカップエリア予選 in 晴れる屋 トーナメントセンター 大阪

順位 プレイヤー名 デッキタイプ
権利獲得 オカムラ マレイ ラクドスミッドレンジ
権利獲得 タツタ カズキ 緑単信心
権利獲得 ホンダ アツオ バントスピリット
権利獲得 キオ ユウスケ 青単スピリット
権利獲得 カワタ カズキ 《不屈の独創力》コンボ
権利獲得 ムラカミ カズヤ ラクドスミッドレンジ
権利獲得 トクヤマ ヨシヒコ 《不屈の独創力》コンボ
権利獲得 ハシズメ ハヤト アゾリウスコントロール

(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)

参加者95名で開催されたエリア予選(TC大阪)ですが、複数名の権利獲得者を出したアーキタイプはラクドスミッドレンジと《不屈の独創力》コンボ。メタゲーム部分で述べた通り、緑単信心とコンボの増加を見越していたスピリットも2名が権利を獲得しています。

緑単信心

緑単信心はマナクリーチャーからシンボルの濃いパーマネントを展開していき、「信心」を稼ぎます。集まった「信心」を《ニクスの祭殿、ニクソス》で膨大なマナへと変換し、《収穫祭の襲撃》へと繋げてより強固なボードを築き上げます。《ビヒモスを招く者、キオーラ》《大いなる創造者、カーン》を使った無限マナパッケージなど攻め手が多彩なアーキタイプです。

日没を遅らせる者、テフェリー龍神、ニコル・ボーラス

緑単信心はプレインズウォーカーを多用したデッキですが、中には緑マナを含まないカードが採用されています。《収穫祭の襲撃》《ニッサの誓い》により、適切な色マナがなくともプレイ可能なためです。

《日没を遅らせる者、テフェリー》は追加の《ビヒモスを招く者、キオーラ》的な立ち位置のカードですが、これ単体でデッキを掘り進められるのが利点です。無から次の《収穫祭の襲撃》《茨の騎兵》へと繋ぐ、コンボとリソース補充の兼任役なのです。

あらゆるプレインズウォーカーの頂点に立つ《龍神、ニコル・ボーラス》は、全知全能というべきカード。膠着した場面では一方的にアドバンテージを稼ぎ、プレインズウォーカーが睨みあえばコントローラーを無視してあらゆる忠誠度能力を使えます。また、ミラーマッチでは貴重なプレインズウォーカー対策となるのです。

チャンピオンズカップエリア予選 in 晴れる屋 トーナメントセンター 東京

順位 プレイヤー名 デッキタイプ
権利獲得 ツジカワ タイガ ラクドスミッドレンジ
権利獲得 ナイトウ ケイスケ ジェスカイエンソウル
権利獲得 カワサキ ケイタ ラクドスミッドレンジ
権利獲得 アダチ ナオヒコ 緑単信心
権利獲得 ナカムラ ツヨシ ラクドスミッドレンジ
権利獲得 ハセガワ アツシ 白単アグロ
権利獲得 ヤマモト ハンニャ 黒単アグロ
権利獲得 イノウエ トオル 緑単信心
権利獲得 スギザキ シュンスケ バント人間
権利獲得 マツウラ タクミ 赤単アグロ
権利獲得 ミヤタ ヒロキ ラクドスミッドレンジ
権利獲得 オノダ ケンジ アブザンパルヘリオン

(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)

参加者117名で開催されたエリア予選(TC東京)は12名抜けと最大規模の予選となりました。ラクドスミッドレンジを選んだ4名が権利獲得と抜群の安定感を示しています。緑単信心や《不屈の独創力》コンボといった厳しい相手が多かったのは間違いありませんが、サイドボードを含めての対応力の高さを含めて上手く立ち回ったようです。

ジェスカイエンソウル

ジェスカイエンソウルは軽量アーティファクトに、デッキ名にもなっている《アーティファクトの魂込め》をエンチャントする速攻系のデッキ。《ジンジャーブルート》《石とぐろの海蛇》など回避能力を持つクリーチャーが増えたことで序盤からダメージを稼ぎやすく、《魅知子の真理の支配》《爆片破》といった最後の数点を削りきるオプションも加えられています。

アーティファクトの魂込め魅知子の真理の支配

一見するとクリーチャーが細く、ラクドスミッドレンジの除去や緑単信心のブロッカーを前になす術もないように思えます。しかし0~1マナに採られたクリーチャーこそ相手の除去を避け、最後のライフを削りきる攻略する糸口なのです。

ジンジャーブルート石とぐろの海蛇ダークスティールの城塞

《ジンジャーブルート》は緑単信心相手には事実上ブロックされず、《アーティファクトの魂込め》をプレイすれば2ターン目から確定5点クロックが始まります。不可避なクロックへ《魅知子の真理の支配》《爆片破》が組み合わさればあっという間にライフは0を割ってしまいますね。

《石とぐろの海蛇》はマルチカードへ耐性があります。メタゲームの筆頭に位置するラクドスミッドレンジはマルチカードの宝庫であり、《税血の収穫者》《戦慄掘り》《コラガンの命令》で対処されないことを意味します。《致命的な一押し》を警戒するならば《ダークスティールの城塞》に貼るのも手でしょう。

おわりに

今回は始まったばかりのエリア予選の結果をお届けしました。初週ということでラクドスミッドレンジや緑単信心といったデッキパワーの高いものに人気が集まっていましたが、《不屈の独創力》コンボはそれを見越した奇襲的な選択でした。

以下に、権利を獲得したデッキを一覧にまとめました。来週以降はどのように変化していくのでしょうか。

デッキタイプ 使用者数
ラクドスミッドレンジ 7
緑単信心 4
アブザンパルヘリオン 2
《不屈の独創力》コンボ 2
白単アグロ 1
青単スピリット 1
黒単アグロ 1
赤単アグロ 1
アゾリウスコントロール 1
ラクドスサクリファイス 1
バント人間 1
バントスピリット 1
ジェスカイエンソウル 1
合計 24名

次回もエリア予選のメタゲームをご紹介したいと思います。それでは!

(本稿ではデッキの詳細解説は行わないため、それにつきましては以下の記事をご覧ください。トッププレイヤー視点での環境解説がございます。 )

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富澤 洋平 晴れる屋メディアチームスタッフです。《黄金架のドラゴン》のカードパワーに圧倒される毎日です。 富澤 洋平の記事はこちら

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