はじめに
みなさんこんにちは。晴れる屋メディアチームの富澤です。
テーブルトップでも『団結のドミナリア』が発売され、スタンダードは盛り上がりを見せています。スタートダッシュに成功した黒単ミッドレンジを追従するデッキに迫っていきましょう。
今回はマジック:ザ・ギャザリング ジャパンオープン2022などの大会結果を振り返っていきます。
先週末の注目トピックは?
今週のトピックは黒単ミッドレンジの攻略です。『団結のドミナリア』の新戦力と多色環境で活躍できなかった既存カードが手を取り合った黒単ミッドレンジ。派生形であるラクドスミッドレンジまで含めると大会上位は黒系デッキばかり目につき、スタンダードは漆黒の闇に包まれています。
しかし、なす術なしと諦める必要はありません。初週こそ黒単ミッドレンジのパワーに押し切られてしまいましたが、攻略の糸口を見つけつつあります。
多角的な攻め手と除去、手札破壊と、一見すると穴のない構築に思えます。プレイヤーはどこに隙を見出したのでしょうか。
高コストカードを狙い撃つ
黒単ミッドレンジは《絶望招来》や《食肉鉤虐殺事件》といった瞬間的に大きなアドバンテージを生むカードや、《不笑のソリン》や《黙示録、シェオルドレッド》など戦場にあるだけで継続的にアドバンテージを得られるカードが多数採用されています。マナコストの重さから同一ターンに複数アクションをとることはできませんが、一手でゲームの主導権を強引に自分へと手繰り寄せることが可能です。
青絡みのミッドレンジが狙ったのはこのマナコストの重いパワーカードでした。相手のビッグアクションを無効化するとともに、余ったマナで脅威を展開することこそ青絡みのミッドレンジが見出した戦略だったのです。カードパワーの比較では劣るものの、重い呪文に対して軽量クロックと妨害札を組み合わせた行動回数で差をつけています。
たとえばエスパーミッドレンジは2~3マナのクリーチャーを展開しつつ、黒単ミッドレンジの行動を打ち消し呪文で阻害します。どんなパワーカードであっても解決されなければ効果を発揮できず、複数行動できないデッキに対して打ち消し呪文は『事実上ターンをパスしたに等しい効果』となってしまいます。
マジック:ザ・ギャザリング ジャパンオープン2022
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | 卯月 祐至 | エスパーミッドレンジ |
準優勝 | O. Nozomi | 黒単ミッドレンジ |
トップ4 | Lull | ジャンドミッドレンジ |
トップ4 | 平見 友徳 | 黒単ミッドレンジ |
トップ8 | 丹生 裕之 | エスパーミッドレンジ |
トップ8 | 伊藤 勇 | オルゾフミッドレンジ |
トップ8 | Syain Slayer | マルドゥミッドレンジ |
トップ8 | 森山 真秀 | グリクシスミッドレンジ |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
参加者687名で開催されたマジック:ザ・ギャザリング ジャパンオープン2022はエスパーミッドレンジを使用した卯月 祐至選手が優勝しました。除去耐性のあるクリーチャーとインスタントアクションを組み合わせた、黒単ミッドレンジを意識した構築です。
トップ8全員が黒いデッキとなったわけですが、対黒用にさまざまなカードが用意されています。《魂転移》は追加の《冥府の掌握》であり、《しつこい負け犬》を後腐れなく処理してくれます。プレインズウォーカーも対象に取れる便利なカードですが、回収モードがついていることも覚えておきましょう。
メタゲーム
デッキタイプ | 予選ラウンド | 決勝トーナメント |
---|---|---|
グリクシスミッドレンジ | 122 | 11 |
黒単ミッドレンジ | 108 | 14 |
ラクドスミッドレンジ | 67 | 6 |
ジャンドミッドレンジ | 65 | 7 |
エスパーミッドレンジ | 54 | 13 |
オルゾフミッドレンジ | 37 | 3 |
マルドゥミッドレンジ | 24 | 3 |
エスパーコントロール | 15 | 0 |
赤単アグロ | 12 | 1 |
グリクシスコントロール | 10 | 1 |
その他 | 173 | 5 |
合計 | 687 | 64 |
公式のメタゲームブレイクダウンでも語られている通り、大会が進むにつれてデッキの明暗ははっきりと分かれました。グリクシスミッドレンジが数を1/10に減らしたのに対して、エスパーミッドレンジがトップ64に占める割合は20%まで増加しています。ほかのミッドレンジよりも一歩早く動け、軽快なインスタントを使いまわせることがカギだったのです。
トップ8デッキリストはこちら。
大会放送リンク:Top8ラウンドまで/Top8ラウンド以降
エスパーミッドレンジ
エスパーミッドレンジは2~3マナの軽いクリーチャーを《策謀の予見者、ラフィーン》や《婚礼の発表》でバックアップしていく攻撃的なミッドレンジ。インスタントアクションが多く、なかでも《放浪皇》は攻守にわたって活躍してくれます。
《ファイレクシアの宣教師》は《敬虔な新米、デニック》と似たクリーチャーですが、色マナ拘束が薄く、安定して2ターン目からプレイできます。中盤以降は「キッカー」を支払うことでアドバンテージ源にもなるフレキシブルなカードです。
《ファイレクシアの宣教師》を複数枚引いた場合、「キッカー」することでお互いを回収し合って、半永久的に使いまわせます。ほかには《策謀の予見者、ラフィーン》の「謀議」で捨てたクリーチャーを拾うなど、能動的な使い方も可能です。
《セラの模範》は《夢の巣のルールス》の生まれ変わりといえる、消耗戦で優秀なクリーチャー。環境から《消失の詩句》が去ったため、除去されることを気にせずに積極的にプレイしていけます。仮に墓地へ落ちたとしても《ファイレクシアの宣教師》で回収すれば良いのですから。エスパーミッドレンジはこれまで以上に消耗戦に強いアーキタイプとなっています。
メインボードに採用された打ち消し呪文は2種4枚であり、どれも黒単を筆頭としたミッドレンジに効果的なカードばかりが選択されています。《黙示録、シェオルドレッド》や《絶望招来》などを狙います。
特徴的な除去呪文としては《邪悪を打ち砕く》があります。《黙示録、シェオルドレッド》や《穢れたもの、ソルカナー》を効率よく対処できる1枚ですが、《勇敢な姿勢》との違いはなんでしょうか。
優先度は環境に対処すべきエンチャントがあるか、ないか。現スタンダードには厄介な《婚礼の発表》と《鏡割りの寓話》があります。《消失の詩句》亡き後、《邪悪を打ち砕く》はフィニッシャーと環境に蔓延るエンチャントの両方を対策できるメタゲームにフィットした1枚だったのです。
グリクシスミッドレンジ
グリクシスミッドレンジは2マナ以下の軽量干渉手段を多用した手数で勝負するデッキ。火力や打ち消し呪文でボードを平らにしていき、3マナ域のパーマネントを軸に攻めていきます。新戦力である《穢れたもの、ソルカナー》はアドバンテージの取れるフィニッシャーです。
攻めの主軸は《死体鑑定士》と《鏡割りの寓話》。前者は《しつこい負け犬》の使い回しを防ぎつつデッキを掘り進め、後者はボードに2体のクリーチャーを用意してくれます。「 変身」後は《死体鑑定士》をコピーすることで延々と手札を補充することもできますね。
《欲深き者、エヴリン》の後釜として採用されている《穢れたもの、ソルカナー》は、単体でアドバンテージを稼ぎ、さらに高いスタッツを活かしてダメージレースにも貢献してくれます。「カードを1枚引く」ばかりに目がいきがちですが、ライフを攻め、プレインズウォーカーも対象に取れる効果範囲の広いクリーチャーとなります。
打ち消しに加えて、クリーチャーとプレインズウォーカーまで対処してくれる器用なデザインとなった《復活したアーテイ》。代償としてカードをプレゼントしてしまいますが、クリーチャーがついてくるので交換枚数で損はしていません。ビッグアクションを狙い、妨害しつつ打点を伸ばしていきます。
先ほどの《穢れたもの、ソルカナー》の処理役としても適役です。コントロール譲渡効果を《もみ消し》することで、永続的に5/5を配下にできます。
『団結のドミナリア』環境初陣戦
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | 柴崎 晃輔 | ラクドスミッドレンジ |
準優勝 | 竹内 篤史 | エスパーミッドレンジ |
トップ4 | 井田 裕二 | 青単デルバー |
トップ4 | 齋藤 昂也 | エスパーミッドレンジ |
トップ8 | 河内 大樹 | 赤単ミッドレンジ |
トップ8 | 石川 孔亮 | バントドメイン |
トップ8 | 宮坂 渚 | 黒単ミッドレンジ |
トップ8 | 原 康貴 | ボロスリアニメイト |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
参加者33名で開催された『団結のドミナリア』環境初陣戦はラクドスミッドレンジを使用した柴崎 晃輔選手が優勝しています。ミラーマッチで差をつけられるように《軽蔑的な一撃》がタッチされていました。
カバレージページはこちら
青単デルバー
青単デルバーは軽いクリーチャーを打ち消し呪文でバックアップしていくクロックパーミッション戦略。レガシークラスのクリーチャーである《秘密を掘り下げる者》を筆頭に、軽快に攻め立てます。ほとんどが2マナ以下のやや細いデッキですが、打ち消し呪文があるためパワーカードで勝負してくるミッドレンジには強いアーキタイプです。
《傲慢なジン》と《トレイリアの恐怖》はどちらもインスタントの多いこのデッキに適したクリーチャーです。《傲慢なジン》はマナコストは張るものの、定着すればマナコスト軽減効果も相まってゲームを支配してしまいます。ただでさえ軽い打ち消し呪文が1マナで使えるようになるわけですから、相手からすればマナがいくらあっても足りません。打点が伸びやすく、回避能力もあるので、2~3ターンでゲームを決めてしまいます。
《トレイリアの恐怖》は中盤以降に顔を出すフィニッシャークラスのカード。最小1マナで唱えられるこの海蛇は5/5のサイズに「護法2」のおまけつきと、かなり対処しにくくなっています。「護法」分のマナを支払って除去しようにも、《呪文貫き》や《否認》が待ち構えており、そうこうしているうちにダメージを稼いでくれます。回避能力がない分競ったダメージレースよりは、ミッドレンジやコントロールといったクリーチャーの少ない相手に効果的です。
基本的にはクロックを展開し、相手の除去で対処されずに20点削りきるのが理想です。とはいえあらゆるタイプの除去が飛び交うスタンダードにおいて生き残るのは至難の業。除去は防護呪文で対策しています。
《呪文貫き》はレガシークラスの妨害カードであり、マナコストの軽さも相まってクロックの定着に貢献してくれます。ミッドレンジの中軸を担う《鏡割りの寓話》や《婚礼の発表》を対処できるメタ的にも優秀なカードです。《呪文貫き》が多い目に採用されているのは、《トレイリアの恐怖》の「護法」のおかげで中盤以降も効果的に機能するためです。
黒単ミッドレンジは《ヴェールのリリアナ》や《食肉鉤虐殺事件》のように対象を選ばないボードコントロール手段を有しています。そこで活躍するのが《とんずら》。「フェイズアウト」するため同じターン中に追加で除去の的になる心配がなく、ソーサリータイミングでしか動けない相手には特に効果的です。
青単の唯一の欠点はクリーチャー除去手段が乏しいこと。《消えゆく希望》のような一時しのぎか、《証人保護》くらいしかありません。
《嵐風招来》は厄介なクリーチャーを対処しつつ、自軍へと引き入れるコントロール奪取呪文。対象となったカードはアンタップされ、すぐに攻防に参加できます。アーティファクトも対象に取れるため、《勢団の銀行破り》を奪えることも覚えておきましょう。
その他の大会結果
9/10(土):Standard Challenge #12470337
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | Mogged | エスパーミッドレンジ |
準優勝 | ziyanghuakai | グリクシスミッドレンジ |
トップ4 | Gul_Dukat | グリクシスミッドレンジ |
トップ4 | Venom1 | ラクドスミッドレンジ |
トップ8 | bless_von | エスパーミッドレンジ |
トップ8 | Harry13 | 黒単ミッドレンジ |
トップ8 | Hailestorm | ラクドスミッドレンジ |
トップ8 | T1_Tinker | ボロスリアニメイト |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
Standard Challenge #12470337はエスパーミッドレンジを使用したMogged選手が制しています。
Mogged選手が使用したのは黒単ミッドレンジを強く意識したエスパーミッドレンジ。全体的にシェイプアップしており、4マナ以上のカードは7枚のみ。しかも《常夜会一家の介入者》と《放浪皇》と、インスタントでプレイ可能なカードなのです。
3マナ以下のクリーチャーでボードを構築し、除去を絡ませ、相手の反撃を封じます。しびれを切らしてビッグアクションをプレイしたところに《常夜会一家の介入者》を合わせて打点を上げ、返すターンに一気にライフを削りきってしまいます。インスタントアクションを重視しているとはいえ、《常夜会一家の介入者》4枚には驚きを隠せません。やはりエスパーミッドレンジの名手、メタゲームを読み切った素晴らしい構築です。
メタゲーム
デッキタイプ | トップ32 | トップ16 |
---|---|---|
黒単ミッドレンジ | 6 | 1 |
ラクドスミッドレンジ | 5 | 3 |
エスパーミッドレンジ | 4 | 3 |
ボロスリアニメイト | 4 | 2 |
ジャンドミッドレンジ | 3 | 0 |
その他 | 10 | 7 |
合計 | 32 | 16 |
母数で見れば黒単ミッドレンジやラクドスミッドレンジが多いものの、トップ16へ至る過程で数を減らしています。代わりに伸びたのはエスパーミッドレンジ。打ち消し呪文の有無が明暗を分けたのです。
トップ8デッキリストはこちら。
9/11(日):Standard Challenge #12470350
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | Fwanz | エスパーミッドレンジ |
準優勝 | Skpchino | エスパーミッドレンジ |
トップ4 | Cabezadebolo | ラクドスサクリファイス |
トップ4 | LucasG1ggs | グリクシスミッドレンジ |
トップ8 | Ivan_Draw_Go | 黒単ミッドレンジ |
トップ8 | markgabriele | エスパーミッドレンジ |
トップ8 | Rocardito | アゾリウスフラッシュ |
トップ8 | Misplacedginger | グリクシスミッドレンジ |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
前日に引き続き、エスパーミッドレンジが大活躍しています。Standard Challenge #12470350ではワンツーフィニッシュと完全な勝ち組となりました。
メタゲーム
デッキタイプ | トップ32 | トップ16 |
---|---|---|
グリクシスミッドレンジ | 6 | 4 |
エスパーミッドレンジ | 5 | 4 |
黒単ミッドレンジ | 5 | 3 |
ラクドスミッドレンジ | 3 | 0 |
ラクドスサクリファイス | 2 | 1 |
ジャンドミッドレンジ | 2 | 1 |
その他 | 9 | 3 |
合計 | 32 | 16 |
グリクシスミッドレンジはからは《絶望招来》の姿が消え、軽い構築になっています。ゲームレンジを前に寄せることで黒単ミッドレンジに対して速度で有利を取ろうとしています。
トップ8デッキリストはこちら。
おわりに
今回は黒単ミッドレンジ攻略と称して、打ち消し呪文を採用したデッキを紹介してきました。エスパーやグリクシスのように多色化せずとも、黒単ミッドレンジに打ち消し呪文だけをタッチしただけでもだいぶ差がつきそうですね。青単デルバーといい、メタゲームの変化を感じる結果となりました。
次回もスタンダードの情報をお届けしたいと思います。それでは!