はじめに

みなさんこんにちは。晴れる屋メディアチームの富澤です。

先週末よりチャンピオンズカップ予選サイクル2が始まりました。フォーマットはスタンダードであるため、今回よりしばらくの間はプレミアム予選の情報を中心にお届けしていきます。

今回はプレミアム予選(静岡店)とStandard Challengeの大会結果を振り返っていきます。

先週末の注目トピックは？

現在のスタンダードは大ミッドレンジ環境。どのデッキも攻めの軸となるカードとそれらを対処できるカードのバランスに頭を悩ませています。その代表格といえるのが《黙示録、シェオルドレッド》であり、この生きた《苦悶の触手》はターン経過とともにライフに深刻なダメージを与えます。

発売当初は2枚程度だった《黙示録、シェオルドレッド》ですが、環境が進むにつれて採用枚数は3枚、4枚と増えていきました。伝説のクリーチャーにもかかわらず、です。

火力にこそ耐性がありますが、《冥府の掌握》や《放浪皇》など対処可能なカードは揃っており、打ち消し呪文の良い的としか思えません。なぜ、これほどまでに《黙示録、シェオルドレッド》は存在感を示しているのでしょうか？

今回は増加の一途をたどる《黙示録、シェオルドレッド》に注目していきます。

伝説のクリーチャーを複数枚採用する意味

改めて言うまでもなくミッドレンジとは、速度ではなく質の高いクリーチャーによってゲームの掌握を狙う戦略です。現在のスタンダードのカードプールの中でもっともミッドレンジ戦略に合致しているのは《黙示録、シェオルドレッド》で間違いありません。攻防どちらにも適したスタッツと誘発型能力を持っています。

極端な話、《黙示録、シェオルドレッド》が10ターンいるだけでゲームに勝利することができるのです。除去耐性のない4マナのカードが長く生き残るのは非現実的に感じるかもしれませんが、ではそのターンが3ターンならどうでしょう。

ジャンドやグリクシスの2マナ域には《税血の収穫者》や《しつこい負け犬》といった優れたアタッカーが採用されています。除去呪文と組み合わせればブロッカーをどかしてライフを削るのは朝飯前です。こうしてライフが落ち込んだ状況で《黙示録、シェオルドレッド》へと繋がれば、誘発型能力はより効果的に機能します。

劣勢な状況で有効牌を引くべくプレイされた《鏡割りの寓話》のII章や《勢団の銀行破り》は自らの首を締めるカードとなってしまいますし、《冥府の掌握》の2点も無視にできないデメリットとなります。

序盤からライフを攻める手段を確保したことで《黙示録、シェオルドレッド》はグッドカードから、ゲームに蓋をする存在となるのです。序盤のクリーチャーを対処するために除去呪文を使ってしまえば、それだけ《黙示録、シェオルドレッド》の生存確率も上がることになります。攻撃へ向かわなければ《放浪皇》も怖くありません。

アグロやコントロールが少ないこともあり、ゲームの焦点は《黙示録、シェオルドレッド》に依存しています。ならば少しでも引く確率を上げ、対処されたとしても瞬時に出しなおしたいところ。極論、お互いの戦場にこのファイレクシアンがいれば誘発型能力は相殺することができます。こうして《黙示録、シェオルドレッド》の採用枚数は増えていったのです。

《黙示録、シェオルドレッド》の与えた影響は除去呪文にも現れています。これまでは序盤をさばいて先手と後手の差を埋める《電圧のうねり》や《切り崩し》、全体リセットの《食肉鉤虐殺事件》は必要枠として採用されてきました。しかし、ゲームの焦点が《黙示録、シェオルドレッド》へと寄ったことで、多少重くとも効果範囲の広い除去に代わっています。

前置きが長くなりましたが、それでは《黙示録、シェオルドレッド》の活躍をみていきましょう。

チャンピオンズカッププレミアム予選 in 静岡

(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)

参加者36名で開催されたチャンピオンズカッププレミアム予選 in 静岡はジャンドミッドレンジを使用したナカミチ ダイスケ選手が優勝しました。決勝戦に進んだどちらのデッキにも《黙示録、シェオルドレッド》は4枚ずつ採用されています。

スガヌマ選手が使用したエスパーミッドレンジは《絶望招来》をフィニッシュブローとしたコントロール色の強い構築。青いカードは数枚の打ち消し呪文のみであり、ミッドレンジ同士で差をつけるために採用されています。ここでは《策謀の予見者、ラフィーン》と差別化するために招来型としてあります。

メタゲーム

(編集者注：《策謀の予見者、ラフィーン》入りのエスパーミッドレンジは「ラフィーン型」、メインボードに《絶望招来》と打ち消し呪文などの青いカードを3～5枚程度採用したエスパーミッドレンジは「招来型」と分類しています。)

環境を占う一発目のプレミアム予選は、エスパーミッドレンジに人気が偏ったメタゲームとなりました。環境定義の片割れである《婚礼の発表》、ボードコントロールを担う《放浪皇》と《食肉鉤虐殺事件》、重い呪文を牽制する打ち消し呪文とどんな相手にも対応できるカードが揃っています。

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ジャンドミッドレンジ

ジャンドミッドレンジは骨太のクリーチャーと除去呪文を組み合わせた王道のミッドレンジ。《茨橋の追跡者》や《作業場の戦長》など戦場に出すだけでアドバンテージが取れるパーマネントを軸に構成されています。

このデッキの特徴は、脅威を展開して相手に対処を迫り続ける押し付けの強い構築です。《しつこい負け犬》にはじまり、《茨橋の追跡者》や《作業場の戦長》など除去に強く、単体でプレッシャーをかけられるクリーチャーがこれでもかと採用されています。

《黙示録、シェオルドレッド》はあらゆる干渉手段を受けるため、決して除去に強いクリーチャーではありません。しかし、除去しなければならない対象が多いことで、結果的に定着しやすくなっています。仮に《黙示録、シェオルドレッド》を恐れて除去呪文を抱えてしまえば、ほかのクリーチャーから致命的なダメージを受けてしまいかねません。一旦対応する側へ回ってしまうと、不自由な二択を迫られ続けることになります。

《電圧のうねり》や《切り崩し》がすべてサイドボードに置かれているのも特徴です。《黙示録、シェオルドレッド》こそ対処必須のカードと見定めており、このクリーチャーを対処できることが除去呪文の採用条件となっています。

《魂転移》は増加傾向にある1枚であり、対象を追放するため《見捨てられたぬかるみ、竹沼》などで再利用される心配がありません。2つのモードがあり、状況に応じて打ち分けられるのも嬉しいところ。ジャンドミッドレンジはエンチャントとアーティファクトの数が多く、条件を満たしてアドバンテージ源としてもカウントできます。

サイドボードにはアグロ用の除去、コントロール用の手札破壊、ミッドレンジ用の追加クリーチャーが揃っています。《羅利骨灰》は《婚礼の発表》や《勢団の銀行破り》を対処しつつ、クリーチャーやプレインズウォーカーの対策にもなる便利な1枚。中～長期戦でサイドインしていきます。

10/1(土)：Standard Challenge #12480069

(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)

Standard Challenge #12480069はラクドスサクリファイスを使用したMisplacedgingerが勝利しています。

Sapoa選手のオルゾフミッドレンジは《忘却の儀式》を上手く使えるように構築されています。《神憑く相棒》や《ウイルスの甲虫》をコストにし、墓地へ落ちれば《救出専門家》で釣り上げるといったシステムなのです。

Hamuda選手のナヤエンチャントは前回紹介したものと比べて、かなり攻撃的な構築へとシフトしています。《調和の儀式》や《神聖なる憑依》に代わって採用されたのは、ナヤルーンでお馴染みの《気前のいい訪問者》と《無常の神》。ボードを強化しつつ積極的にライフを削り、《魅知子の真理の支配》で止めを刺します。

メタゲーム

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ラクドスサクリファイス

ラクドスサクリファイスは生け贄に捧げることでメリットを生むカードと、それらを生け贄に捧げるためのカード(以下、サクリ台)を組み合わせてデッキを循環させていきます。《税血の収穫者》の血トークンや《実験統合機》をコストに、《鬼流の金床》でクリーチャートークンとライフを生み出します。

《鬼流の金床》はデッキ内のあらゆるカードとシナジーを形成するキーカード。血トークンはクリーチャーへと早変わりし、固まったボードでも直接ライフを攻める火力となります。《実験統合機》を使いまわすには最適なカードです。

《命取りの論争》を失ったことで、リソース回収部分が薄くなっていますが、補うカードも見つかっています。《アーボーグの奪還》は通常プレイでは2点ライフ回復付きの《死者再生》と何ら変わりませんが、「キッカー」の有無が両者の評価を大きく変えています。「キッカー」コストを支払えば、追加で「パーマネント・カード1枚戻せる」のです。

これにより《実験統合機》やプレインズウォーカーを使いまわせますし、《鏡割りの寓話》で捨てた《食肉鉤虐殺事件》を拾うことも可能なのです。緑マナは《ジアトラの試練場》と《鏡割りの寓話》、《勢団の銀行破り》しか供給できませんのでご注意を。

10/2(日)：Standard Challenge #12480081

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Standard Challenge #12480081はラフィーン型のエスパーミッドレンジが制しています。除去呪文が少なく、《黙示録、シェオルドレッド》対策は打ち消し呪文に頼っています。

メタゲーム

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4色ドメイン

Edel選手が使用した4色ドメインは、その名のとおり「版図」システムを最大限活用したミッドレンジデッキ。《ジェトミアの庭》などを活用して基本土地タイプを揃え、カードの効果を最大限引き出せるように構築されています。5種類の基本土地タイプが用意されていますが、ベースはナヤカラーであり安定しています。誰もが夢見た《婚礼の発表》と《鏡割りの寓話》が共存したデッキでもあります。

モダンやレガシーでも注目されている《力線の束縛》は、《ジェトミアの庭》が1枚あるだけで「瞬速」付きの《忘却の輪》へと早変わりします。仮に《スパーラの本部》、《ジアトラの試練場》とセットできれば2ターン目にしてわずか1マナと、《剣を鍬に》もびっくりなコストパフォーマンスを誇ります。《黙示録、シェオルドレッド》対策としても最適です。

あらゆるパーマネントを瞬時に対処してくれる使い勝手の良い除去でありながら、本来のマナコストとプレイ時のコストに開きがあるのもポイントです。《力線の束縛》はプレイするには1～2マナ程度ですが、マナ総量は6であるため《豪火を放て》で巻き込んで破壊するには難しくなっています。このカードが増えるようなら《羅利骨灰》や《邪悪を打ち砕く》は外せません。

《群れの渡り》はマナコストはやや重いものの、最大3/3トークンを5体生成するフィニッシャーです。アグロデッキがいないことで黒系ミッドレンジから《食肉鉤虐殺事件》は減少傾向にあり、環境の隙をついたチョイスといえます。

初手で引くとげんなりしそうなマナコストですが、必要に応じてモードの使い分けができるのがポイントです。序盤は土地サーチとして、マナベースの安定化に貢献してくれます。《セラの模範》や《作業場の戦長》など攻め手は厚く用意されているため、《活力回復》として積極的に使ってしまいましょう。

《セラの模範》は貴重なリソースを伸ばすカードです。環境を代表する2大エンチャント、《鏡割りの寓話》と《婚礼の発表》が両方とも採用されており、昨今の対策カードの採用率を見ても、プレイ先に困ることはありません。よほどのことがない限り、7マナ以上ある状況でプレイしたいところです。

序盤のマナ域を埋めているのは《急使の手提げ鞄》。ブロッカーを用意しつつ、緊急時には色マナを提供してくれます。規定ターンよりも早く、《作業場の戦長》や《群れの渡り》をプレイする助けとなります。

ゲームが長引き、手札が足りないときも《急使の手提げ鞄》の出番です。5色揃えばドローソースへと早変わり。《セラの模範》でリプレイして、一気にアドバンテージを稼いでくれます。1枚で序盤から終盤まで活躍できる縁の下の力持ちなのです。

おわりに

今回は増加傾向にある《黙示録、シェオルドレッド》に焦点をあててきました。生存ターンがそのまま勝敗へと直結する脅威であり、除去必須のクリーチャーです。環境の中心がミッドレンジ帯にある限り、このまま採用され続けていくでしょう。

今週末には晴れる屋三宮店と日本橋店、TC大阪でプレミアム予選が控えています。次回はそれらの情報をお届けしたいと思います。